オリジナル小説「牙の共鳴」

遂にセイレーン・ケイヴへ到着した一行。

そして、アクアは父ブルースと母マリンとの再会を果たす。

しかし喜びも束の間、父の解放の為、アクアは姿を現したガーリルによって連れ去られてしまう…。衰弱したブルースを連れて、一行はいったん船へ引き返すのだった。

 

~牙の共鳴~

 

ガーリルに連れられて薄暗い洞窟を進むアクア。

会話もなく、ひたすら歩き続ける2人。しかし…!

アクア「きゃあ!」

足を滑らせ、転びそうになってしまったアクア。

しかし、それを優しく受け止めたのは…ガーリルだった。

ガーリル「大丈夫か?」

さっきまでの鋭い声とは違い、とても優しく暖かい声。

暗闇の中に光るガーリルの瞳はとても妖艶で、吸い込まれてしまいそうな不思議な気持ちになる。

アクア「ありがとう。」

ガーリル「ありがとう、か。そんな言葉を聞くのは随分と久しぶりだな。」

そう言うと再び歩き出したガーリル。しかし、今度はアクアの手をしっかりと握っていた。

一方、船に到着したスノウ達は、すぐにブルースを寝室へと運び水と食料を持って行った。

ブルースはひたすら夢中で食べ、水を飲み干した。

そして、しばしの眠りについた…。

マリン「次に目を覚ました頃には、人の姿に変わるくらいはできると思うわ。」

スノウ「だいぶ衰弱していたからな…手遅れにならなくて良かった。だが、これからアクアを助け出す策を練らねばならない。」

ラクト「アルマとペルラが今ガーリルの居場所を懸命に捜している。少なくとも、あの洞窟のどこかに別の入り口があるのは確かだ。」

マリン「アクア…早く助けてあげたい…!」

無事を願い捜索を続けている中、ガーリルとアクアは薄暗い洞窟内を抜け、今までとは違う不思議な空間へ辿り着いた。洞窟の中とは思えないほど明るく、暖かい。

しかし、周りを見渡してアクアは気付いた!その明かりの正体は、【牙】だったのだ!

アクア「牙が輝いて…!」

ガーリル「これほど眩い光を発したことは無い。やはり牙が全て集まった事により、共鳴しているようだな。さて…アクア、牙を渡して貰おうか。お前の身に付けているそのブレスレットにしまわれているのだろう?」

アクアが拒むと、ガーリルは少し困った顔をした。牙を欲しているガーリルが、無理矢理にでも牙を奪い取るかと思いきや、全く手を出す様子は無い。

アクア「どうしたの…?」

ガーリル「俺はその牙を護っている結晶に…手を出すことは出来ない。」

アクア「手を出せないって…どういう意味?」

ガーリル「俺とスノウ…我がダーク一族とルーエ一族は互いを支え合う存在、一心同体なんだ。つまり…俺がその水晶に傷を付けるのは、自分自身を傷つけているようなもの。」

アクア「それなら何故貴方はスノウ達を傷つけるような…悲しませるような事をするの?自分を悪者にしてまでどうして…!?」

ガーリル「俺は過去を…あの幸せな時を捨てたんだ。今の俺に残っているのはこの醜い感情のみ、復讐を決めた心のみだ!さぁアクア、早く牙を渡せ!」

そう言うと、ガーリルはじりじりとアクアに迫って来た。アクアは拒み続けながらも彼の気迫に恐怖を感じ、後ずさりしていった…。

その頃…船で待っていたスノウ達の元へ、捜索をしていたアルマとペルラが戻ってきた。

アルマ「あの方の居場所を見つけました!」

ペルラ「ダーク一族の者が入っていくのを見たので、間違いないです!」

スノウ「よし、行こう!」

謎の声「待て。」

驚いた表情のスノウ達が振り向いた先にいたのは…人に姿を変えたブルースだった!

ラクト「ブルース!お前もう動いて大丈夫なのか!?」

ブルース「これだけ回復すれば十分だ、俺も行くぞ。娘を助けたい!」

スノウ「…分かった、行くぞみんな。2人共、案内を頼む!」

アルマ「はっ!」

ペルラ「お任せを!」

こうして2人の案内の元、アクアを救出すべく一行はもう1つの入り口へと向かった。

一方その頃…。

アクア「貴方が何て言おうと、私の決意は変わらないわ。牙を渡すわけにはいかない!」

追い詰められて逃げ場を失ったアクア、しかしそれでも変わらぬ強い決意を示す彼女にガーリルは近づくと、アクアの頬に触れ、自分の顔へと近づけた。そして…表情を変えずにじっと見つめていた。しばらくの沈黙の後、ガーリルが口を開いた。

ガーリル「さすがはマリンの娘、とても美しい…。その強い意志は認めよう。しかしそれもいつまで持つのかな?」

そう言うと、ガーリルは闇の牙を手に取った。次の瞬間、牙はダークサーベルへと姿を変えた。

そして、アクアの目の前へと突きつけたのである。

アクア「私を…殺すの?」

ガーリル「殺しはしない。だが…お前が牙を渡さないと言うのなら、少し痛い思いをして貰うことになる。」

ガーラス「お取り込み中失礼いたします。」

アクア「(気配もなく…!一体どこから!?)」

ガーリル「どうした?」

ガーラス「ブルース様達が、第2の入り口を見つけ、こちらへと向かって来ているとの情報が。」

この情報には、さすがのガーリルも驚いた表情をした。

ガーリル「第2の入り口を見つけられた事も驚いたが…ブルース、もう動けるのか…!?」

ガーラス「いかが致しましょう?」

ガーリル「…全員手出しをするな、そのままここへ来て貰う。ブルース達が来ればアクアの考えも変わるだろう。」

ガーラス「はっ。それでは失礼します。」

暗闇へと消えていったガーラスを見届けると、ガーリルはアクアに突きつけていたダークサーベルを彼女の元から離した。剣は黒い闇の光に包まれて、闇の牙へと姿を戻した。

アクア「どうして何もしなかったの…?」

ガーリル「気が変わった、とでも言っておこうか?尤も…その美しさだ、傷をつけるのは勿体ないと判断した。」

全てを見抜かれているとは知るよしも無く、ブルース達は進む。

果たして、無事にアクアを助け出すことはできるのか!?

 

~To be continued…~