小説「緑髪の少年(再会編)」~懐かしさと惹かれる心~(後編)

※嘔吐描写あり。

夜中…ポナは目を覚ました。

外は真っ暗で…外灯がほんのりと輝いている程度だ…。

体は大分楽になったが…少し強めの吐き気があった。

どうやら夕飯で食べたおかゆを、体が受け付けなかったようだ…このままだと吐いてしまう。

トイレに行こう…そう思ったポナはゆっくりと起き上がり、少しふらつきながらも部屋を出た。

いつもなら何でも無いトイレまでの距離…しかし今は風邪で体が弱っているせいか、足下がふらついて一苦労だ。

壁に手を付きながらゆっくりと歩いていたポナ。

しかし段々と吐き気が強まってきてしまった…。

ポナ「うっ…!」

吐きそうになり口元を押さえるポナ…何とか持ち堪えたが、次は抑えられる保証は無い…。

よろよろと立ち上がり…再びトイレへ向かって歩き出した。

一方…まめみもふっと目を覚ました。

眠っていたのに…誰かに呼ばれた様な気がしたのだ。

普段はそんな事ないのに…まめみは眠い目を擦りつつも、気になってポナの部屋へ向かった。

すると…部屋にポナはいない。

まめみ「(トイレかな…大丈夫かな…ポナ君…。)」

ポナが心配なまめみ、そのままトイレへ向かって様子を見に行く事にした。

すると…トイレの手前でポナが息を切らしていた…。

ポナ「はぁ…はぁ…。」

まめみ「ポナ君…!」

ポナ「はぁ…はぁ…まめみ…!?」

まめみ「ふと…誰かに呼ばれた気がして目が覚めて…気になって部屋を覗いたら、ポナ君居なかったから…トイレかなって思って…。苦しいの…?」

ポナ「気持ち…悪…くて…うっ…!」

そう言って再び口を押さえたポナ。

まめみ「ポナ君!」

ポナ「うっ…ぐっ…はぁ…はぁ…!」

まめみ「…トイレまで行けそう…?」

ポナ「はぁ…はぁ…もう目の前だから…頑…張る…!」

そう言うとポナは壁伝いにゆっくり歩き出し、まめみもポナを支えて一緒に歩き出した。

やっとの思いでトイレへ辿り着いたが…それと同時にポナは限界が来てしまい…その場に倒れ込んだ!

まめみ「ポナ君…ポナ君大丈夫!?」

ポナ「うっ…まめみ…離れ…うっ…うぇっ…!」

ゲボォッ!

まめみ「!!」

ビシャッ…!

ポナ「うぇ…ゴホッ…ゴボッ…!」

ビチャビチャビチャ…!

間に合わずに、便器の前で夕飯に食べたおかゆを吐いてしまったポナ。

床だけでなく、心配して目の前に座ったまめみのパジャマや体にも吐いたものがかかってしまった…。

ポナは強い罪悪感に襲われつつも、吐き気が止まらず吐き続けてしまう…。

まめみは何も言わずポナの背中に手を回して、優しくさすり続けていた。

少しして…ポナが酷く咳き込んでいるのを聞いて起きたまめおもトイレに駆けつけた。

まめお「ポナ、まめみ…!」

ポナ「はぁ…はぁっ…!」

まめみ「まめお、ポナ君…間に合わなくて吐いちゃったの。」

まめお「そうみたいだな。今、袋とか持ってくる。」

そう言うとまめおは袋や雑巾、バケツに水を汲んできた。

その間にまめみは、ポナをトイレの外へ連れて壁にもたれかかる様に座らせて床をトイレットペーパーで簡単に拭き、自身の服に付いたポナが吐いた物も拭き取った。

そして2人で掃除して、まめおはポナをおぶって浴室に行き…インクリング専用のシャワーでポナの体を洗った。

ポナ「…まめお…ごめん…。」

苦しそうにしながらも謝罪の言葉を口にするポナだったが…

まめお「何も気にするなポナ、俺達は大丈夫だ…今は自分の体を治す方に専念しような。」

相変わらず優しく接してくれるまめお達に、ポナはまだ苦しそうにしつつも…その口元はうっすらと笑みを浮かべていた。

まめおがポナを洗い終えた後、まめみがシャワーを浴び始めた。そして上がってからタオルで拭き、新しいパジャマに着替えると洗濯機のスイッチを入れた。

その後まめみがリビングでお茶を飲んで一息ついていると、まめおが来た。

まめみ「お疲れ様、まめお。ありがとうね。」

まめお「どういたしまして、まめみもお疲れさん。」

まめみ「ポナ君は?」

まめお「水を一杯飲んで、また眠ったよ。」

まめみ「そう…それならよかった。」

そう言ってまめみは安堵の表情を浮かべた。

まめお「…何か懐かしいな。」

まめみ「え…?」

まめお「…俺達がポナと出会って間もない頃も…こんな事があったなって思い出して…。」

まめみ「うん、あったね。」

まめお「記憶を失っても…ポナはポナだ。俺達にとって大事な存在なんだ。」

まめみ「うん。」

そう言うと2人は…リビングに飾られた写真立てを見た。

そこには、事故で記憶を失う前…モンガラキャンプ場で3人で撮った笑顔の写真があった。

しばらくまめおと話した後、再び寝る為に自分の部屋へ戻ったまめみ。

机の上には…お揃いのF-190を着て仲良く寄り添う2人の写真。付き合って間もない頃に撮ってもらったものだ。

撮る直前までは、恥ずかしがって瞳の色が青く変化していたポナだが、撮影した時はいつもの黄色で…とても幸せそうないい笑顔だった。

ポナ「まめみちゃん。」

あの頃のポナを思い出して、クスッと笑うまめみ。

そのまま写真にキスをして戻し、ベッドに横になった。そしてライムグリーンのイカクッションを抱きしめると…再び夢の世界へ旅立った。

To be continued…