まめみに話す事を決めたまめお。
その日の夜、まめおはポナが寝た後に…まめみの部屋へ行った。
まめみ「まめお、どうしたの?」
まめお「ちょっと話したい事があってな…いいか?」
まめみ「うん。」
部屋に入り、お互いに向き合って床に座った。
まめお「……………。」
まめみ「まめお、どうしたの…?そんなに深刻な顔して…。」
まめお「…まめみ、お前…もし俺達が長く生きられない運命だったら…どうする?」
まめみ「え…?」
一体何の冗談を言っているのか…普段ならそう思うだろう
しかし…まめみは気づいていた
その質問を投げかけてきたまめおは本気だという事に
まめお「…………。」
まめみ「……何かあったんだね…まめお。」
まめお「……前にブキチにこの力がバレた時…他にも話を聞いていたんだ。それは…。」
まめみ「…それは…?」
深く深呼吸をすると…まめおは静かに話し始めた。
ブキと心を通わせる力を持つが故の苦悩…繰り返された近縁同士の交わり…その結末がもたらした悲しき運命…
まめみは驚いて言葉を失った…
しかし…それでも最後までしっかりと話を聞いていた。
まめお「…お前には黙っておこうと思ってたんだ…。けど…お前の髪が黄色になって…ブキチからシンクロの話とその影響を聞いた時…俺は怖くなった。どうしてその強い力を継いだのが俺じゃ無かったのか…万が一お前に何かがあって…俺だけが残されたら…それが怖くて仕方が無かった…。」
まめみ「まめお…!」
まめお「けど…スーに諭されたんだ。」
まめみ「スーちゃんに…?」
まめお「あぁ。スーはお前にも話すべきだと…もし何も言わずに失ったら…俺もまめみも絶対に後悔すると…。そして…たとえ短命だったとしても…精一杯生きろと…どんな事があっても絶対に離れたりしないと言ってくれたんだ。」
まめみ「スーちゃん…!」
まめお「…まめみ、俺達は父親を知らない。だから…俺達がどうなるかは分からない。母さん達と同じ様に…近い者同士で交わっていれば短命…けど他の者と交わってるなら…俺達は長く生きられる。」
まめみ「……………。」
まめお「…まめみ、お前は…どんな運命だろうと…それを受け入れて行くか?」
瞳を閉じて、静かに考え込んでいたまめみだが…
ゆっくりと目を開け、まめおの青い瞳をしっかりと見て口を開いた。
まめみ「あたしは…たとえ短命だったとしても…それでも…精一杯生きるよ。」
まめお「まめみ…!」
まめみ「命尽きる瞬間まで…まめおと…みんなと一緒に生き抜く。」
そう話す彼女の桃色の瞳は、強い決意が込もっていて…まめおも強く頷いた。
まめお「俺も同じだ、まめみ。どんな運命だったとしても…俺達は逃げない。一緒に精一杯生きるぞ。」
まめみ「うん!」
そう話す2人は笑顔だった。
次の日…2人はブキチが立ち会いの元、スルメさんのお店にポナ達を呼んで、全てを話した。
フーはスーと同様、納得した様子で全てを受け入れていたが…
ポナとペコ…特にポナは、その運命をすぐには受け入れられずにいた…。
どうして…どうしてそんな悲しい運命と知りながら…
それを受け入れて強くいられるのか…いつも通りに笑っていられるのか…
まめおとまめみを失うのは嫌だ…
特にまめみに対して好意を抱いている事に気づいたポナは…更に苦しくて…1人悩んでいた…。
一方、その場に立ち会っていたブキチだが…
ブキチ「突然でしが…まめお君とまめみちゃん、スルメさんとよっちゃんのデータを取らせて欲しいでし。」
よっちゃん「ブキチ君…突然どうしたの?」
ブキチ「前々から気になってたんでしが、2人の顔つきや仕草が所々似てるんでし。それと先日のまめみちゃんの髪の色が変わる件、よっちゃんも昔同じ様な特徴があった話…どうにも気になるんでし。」
スルメさん「似るのは2人が小さい頃から見てきたさかい、自然と似たもんとちゃうの?まぁ、調べる分には全然構わんで。」
よっちゃん「私も大丈夫よ。まめお君とまめみちゃんは?」
まめお「俺も問題ないぜ。」
まめみ「うん、あたしも大丈夫。」
ブキチ「それじゃあ、失礼するでし。」
そう言うとブキチは4人から少量のインクを採取して帰って行った。
検査の結果には数日かかる様なので、気長に待つことにした。
夕方…店の手伝いが一段落したフーは、空き地に来た。
すると…そこにはペコの姿が…。
夕暮れの空を見て…とても寂しそうにしている…。
フー「どうしたんだ…?」
ペコ「…フー…。…まめみが…昨日倒れた時の事…そして…今日の話を思い出していたの…。」
フー「…昨日の事を覚えているのか?記憶が消えると聞いていたが…。」
ペコ「…ポナが毎日話して教えてくれるから…。」
フー「そうか…。」
ペコ「……あの2人の運命…今こうして悲しくて…もどかしい気持ちも…眠ってしまえば…忘れてしまうわ…。」
フー「……………!」
ペコ「…ポナに聞かなければ分からない…何もかも忘れてしまう…聞かなければ私は…何も覚えていられない……っ………!」
フー「…ペコ…!」
ペコ「もしあの2人が居なくなって…ポナも話さなくなってしまえば…私は忘れてしまう…あの笑顔も…思い出も…全て…!」
珍しく感情的になっているペコ…
彼女の白いゲソは夕焼けで美しく輝き…その茶色の瞳は大粒の涙が…。
フー「……………。」
ペコ「…っ…!」
一瞬何が起きたのか分からなかったが…すぐに気づいた。フーが自分を強く抱きしめていたのだ。
フー「……寝たら記憶を失う……。……それなら、俺があんたの記憶になってやるよ。」
ペコ「え…?」
抱きしめていた腕を離して、今度はペコの肩を優しくもしっかり掴み…彼女の目をしっかりと見て口を開いた。
フー「俺があんたの記憶になり…毎日話して聞かせる…何度だって聞かせる。……あんたを見てると…何故かほっとけないんだよ。俺がずっと覚えて傍にいてやる。だからそんなに悲しそうな顔をするな……ペコ。」
ペコ「フー……。」
恥ずかしそうに頬を赤らめながら、プイッとそっぽを向いてしまったフーだが…その口元は僅かに笑っていて…
ペコは目に涙を浮かべつつ、優しく微笑んだ。
To be continued…