小説「孤独なヒーローと瞳に映る2つの光」~消えたポナと新たなヒーロー~

まめおが起きてリビングへ行くと、まめみがご機嫌な様子で朝ご飯を作っていて…

ソファーには昨日の抱き枕が…

まめみ「あ、おはようまめお。」

まめお「おはよう。…まめみ、どうしたんだこれ?」

まめみ「ポナ君がプレゼントとして置いてってくれたみたいなの!」

お店が開くのにもまだ早すぎる。それなのにどうしてここに…?不思議に思いながら問うまめおに、まめみは満面の笑みで嬉しそうに答えた。

まめお「ポナが置いてってくれたみたいって…どういうことだよ?」

まめみ「あたしが起きたら机の側にプレゼントの袋が置いてあって、ポナ君からあたし宛のカードも入ってたの。」

まめお「そうだったのか、よかったなまめみ。」

まめみ「うん!」

とても嬉しそうにぬいぐるみを抱きしめるまめみに、まめおも優しく笑って彼女の頭を撫でた。

まめお「ポナ、来たなら声かけてくれてもいいのにな。」

まめみ「あたし達が寝てたから、起こしたら悪いと思っちゃったかな?」

まめお「気にする必要ねぇのに…。」

まめみ「ごはん食べ終えたら、ポナ君の家に行ってお礼を言ってくるよ。」

まめお「そうだな。俺もスルメさんの店に手伝いに行くから、途中まで一緒に行こうぜ。」

まめみ「うん。」

朝ご飯を食べ終えて片付けを済ませると2人は歯を磨いて着替え、途中まで一緒に歩いた。

まめお「それじゃあここで。気をつけて行ってこいよ。」

まめみ「うん、まめおも気をつけてね!」

まめお「おう!」

2人は別れ、それぞれ目的の場所へ向かった。

初夏ということもあって緑が生い茂り、緑風が心地よく頬を撫でる。

しばらく歩いてポナの家に着いたまめみ。

合い鍵で入ったが…部屋は暗い。

また暗い場所で小説を読んでいるのかな…そう思ったまめみだったが、部屋の明かりを付けると…ポナの姿はどこにも無かった。

どこかに出かけている…?しばらく待っていれば戻ってくる…

まめみはポナの家で待つ事にした。

しかし…いつまで待ってもポナは帰って来なくて…

まめみ「ん…寝ちゃってた……ポナ君…?」

待ちくたびれてポナのベッドで寝てしまったまめみ。

辺りはすっかり日が暮れて…夕方になっていた。

まめみは心配になり、ポナに電話をかけたが…

おかけになった電話は電波が届かないか電源が切れている為、繋がりません…

今度はイカラインを送って見たが…これもいつまで待っても既読は付かず…

ドクン…ドクン…まめみは強い不安と胸騒ぎを覚えた。

しかし、そろそろ戻らなければまめおが心配してしまう…。

まめみはポナの家を後にした。

その帰り道、まめおとスーが向こうから歩いて来て…

まめお「お、まめみ。」

スー「ポナの家に行ってたんでしょ?」

まめみ「うん…。」

スー「どうしたの…何だか元気が無いけど…?」

まめみ「え…う…ううん、そんな事無いよ!ちょっと疲れてるだけ。」

スー「そう…?それならいいけど…。」

まめお「……………。」

スー「それじゃあ、あたしはここで…2人共、帰り気をつけてね。」

まめみ「うん、ありがとうスーちゃん!」

まめお「ありがとな、スー。」

スーはお店に戻って行き、その場にはまめおとまめみが残されたが…

まめみ「……………。」

まめお「…まめみ、何があった?」

まめみ「まめお…。」

スーの目は誤魔化せたものの、まめおは気づいていた。

まめみの表情が明らかにつらそうな事に…

まめお「ポナと喧嘩でもしたのか…?」

まめみ「ううん…。」

そう言って俯くまめみは、両手を握りしめて震えていた…。

まめお「…家に帰ろうまめみ、ゆっくりでいいから…俺に話してくれ。」

そう言うと、まめおはまめみの手を取った。

まめみ「…うん…。」

俯いたまま…涙声で返事をしたまめみは、まめおの手を握り返し、2人はそのまま家に向かって歩き出した。

家に着いた後…2人はリビングのテーブルに向かい合って座り、まめおは切り出した。

まめお「まめみ…ポナの家で何があった?」

まめみ「…ポナ君…居なかった…。」

まめお「ポナが…?どっかに出かけてたんじゃねぇのか…ペコの家とか…?」

まめみ「…あたしもそのうち戻ってくると思って待ってて…そのうち寝ちゃって…起きたら夕方だったけど…ポナ君…帰ってなかった…。」

まめお「…ポナのイカスマホの電話は…?」

まめみ「…かけたけど…電波が届かないか電源がって言われて…イカラインも…全然既読が付かない…。」

そう話すまめみの体も声も震えていて…桃色の瞳から頬を伝って涙が零れ落ちた。

まめお「…俺が今かけてみる。」

これはただ事ではない…そう思ったまめおはポナに電話をかけたが、やはり繋がらなくて…イカラインを送っても既読は付かなかった。

まめみ「まめお…ポナ君…どこに…っ…!」

まめお「まめみ…!」

大粒の涙を流すまめみを、まめおは悲痛な表情で抱きしめた。

ポナ…お前…何があったんだ…!?

この日はまめみを落ち着かせて寝かせ、ポナに関しては2人だけの秘密にして、ペコ達には風邪で寝込んでしばらく会えそうにないとの連絡があったという事にしておいた。

次の日も連絡はつかず、既読も付くことは無かった…。

そしてこの日はこんなニュースが…

ハイカラスクエアに居たオオデンチナマズと

大人気アイドル『シオカラーズ』のアオリちゃんが行方不明

ポナも行方が分からないのに、オオデンチナマズにアオリちゃんまで…?

…まさかとは思うが、何か事件に巻き込まれたのでは…!?

まめみとまめおは不安と心配が募るばかりだったが、どうする事も出来ず…ただポナの身を案じて連絡を待つしか無かった…。

その次の日…まめみはハイカラスクエアに来ていた。

もしかしたらポナがいるかもしれない…そんな事を思いながら、愛しい彼の姿を…緑髪のあのクセッ毛の少年を探した…。

まめみ「ポナ君…?…どこ…どこにいるの…ねぇ…。」

どこを探しても彼の姿は無く…気づけば辺りは暗くなっていて…夕焼けと星空が見え始めていた…。

ポナ『まめみ。』

頭の中では、あの優しい声で自分を呼ぶポナの声が聞こえて…

まめみ「ひっく…ひっく…ポナ君…ポナ…く…ん…!」

暗くなった道を照らす外灯の下でしゃがみ込み、大粒の涙を流して泣いているまめみ…。

すると…後ろから温かい手がまめみの背中に触れた。

まめお「まめみ…。」

まめみ「まめお…。」

まめお「…帰ろう…まめみ…。」

まめみ「…うん…。」

立ち上がって涙を拭き、帰ろうとしたその時…

「プギギ…!」

まめお「…何だ、今の…?」

まめみ「…今…何か聞こえたよね…?」

まめお「…あぁ…。」

まめみ「…でも…誰も居な…」

そう言いかけたまめみだったが…!

まめお「!!まめみ!」

まめみ「きゃあっ!」

ドサッ!

暗闇から突然『何か』が飛び出して来て、まめみに向かってインクを吐き出し、まめおは咄嗟にまめみを抱きしめて…2人はそのまま地面に倒れた。

まめお「ぐっ…うぅ…!」

まめみ「まめお…!」

まめお「俺は大丈夫だ…!」

謎の声「グル…グルル…!」

まめみ「な…何…あれ…!?」

まめお「見たことない…けど…子供の頃に母さん達から聞いた生き物…タコに似てる…?」

タコ「グルルルル…!」

2人を鋭く睨むタコは、インクを吹きかけようと大きく息を吸っている…!

まめみ「あ…あぁ…まめ…お…!」

まめお「大丈夫だ…俺がいる…!」

タコはじりじりと2人の元へ近づいて来て…大きく飛び上がった!

まめみ「きゃあぁ!」

まめお「まめみ!」

まめおはまめみを庇うように抱きしめた!

まめみ「まめおぉ…!」

まめお「…っ…!ポナがいない間は…お前は俺が必ず守ってみせる!!」

そう叫んでまめみを強く抱きしめたまめお!

タコは2人の上に飛び上がって…もうダメだと思ったその時!

ズドォン!

タコ「ぷぎぇっ!」

2人「!?」

驚いた2人が顔を上げると…視線の先には黄緑のインクを受けて弱っているタコの姿…。

振り返ると、そこには着物を着た1人のガールが立っていた。

謎のガール「2人に手出しはさせないよ~、分かったらさっさと地下に帰るんね~。」

タコはよろよろしつつ、マンホールの中に姿を消した。

まめお「大丈夫か、まめみ?」

まめみ「う…うん…。」

まめおの手を取って立ち上がったまめみ。

そして2人はそのガールの方を見た。

謎のガール「危ないとこだったね、怪我は無い?」

まめみ「あ…は、はい…。…あ、あの…貴女は…」

まめお「その姿…その声…もしかして…?」

白くて短いゲソ…垂れ目で特徴的なホクロ…

ホタル「あ、気がついた?そう、みなさんご存知『シオカラーズ』のホタルで~す。」

まめみ「やっぱり!ど、どうしてこんな所に…!?」

まめお「もしかして…アオリちゃんが居なくなった事と関係が…!?」

ホタル「ま~詳しい事はここではちょっとね…。とにかく、アタシと一緒に地下に来て欲しいんよ~。」

まめみ「地下…?」

ホタル「アタシに付いてきてね~。」

そう言うとホタルはイカの姿になって、先程タコが逃げていったマンホールの中へ…

まめお「…迷ってる暇は無さそうだな、行くぞまめみ!」

まめみ「うん…!」

2人はホタルの後を追ってマンホールの中へ入り、次に目を開けると…そこは自分達の住む世界とは明らかに違う世界が広がっていた…。

まめお「ここは…!?」

まめみ「あたし達の世界と違って…寂れてる…。」

ホタル「…ここはアタシ達イカの世界とは違う…タコの『オクタリアン』族の住む世界。」

まめお「タコの…オクタリアン族の世界…?」

まめみ「タコ達は…子供の頃に聞かされるあのおとぎ話は本当だったの…?」

ホタル「…みんなはおとぎ話だと思ってるけど、実はホントの話なんよ。さて…話すか~。」

そう言うとホタルは、2人にアオリちゃんが失踪した経緯を話し始めた。

祖父アタリメ司令の事…2年前の戦いの事…オクタリアンの長「タコワサ」将軍の脱走…そして、アオリちゃんが行方不明になった事…

その間、2人は真剣な表情で聞いていた。

まめみ「そんな事が…。」

まめお「ところで…その3号は今どこに…?」

ホタル「3号は、おじいちゃんと一緒に遠くの岬に調査に行っとるんよ…だから、すぐには戻ってこれなくて…。」

まめみ「そうなのね…。」

ホタル「…ねぇ、2人共…いきなりで申し訳無いけど…ヒーロー4号になって、アオリちゃんとオオデンチナマズを探して欲しいの。」

まめお「えっ!?」

まめみ「あ…あたし達が!?」

ホタル「突然なのは分かってるんよ…けど、もう時間が無いの…一刻も早くアオリちゃんを探さないと…。」

まめお「………。」

まめみ「………。」

ホタル「………。」

まめお「…答えは決まってるよな、まめみ?」

まめみ「…うん!」

ホタル「それじゃあ…!」

まめお「あぁ、俺達がなるぜ!」

まめみ「あたし達で力になれるなら、頑張りたい!」

ホタル「2人共、ありがとうね…!それじゃあ、今から2人をNewカラストンビ部隊のヒーロー4号に任命します!」

まめお「そうと決まったら早速行くぞ!」

まめみ「でも…ブキはどうしたら?」

ホタル「それなら問題ないよ~専用のブキと装備を用意するけんね。」

その後2人はスー達にポナの風邪が移ってしばらく会えないこと…ハイカラスクエアのナワバリ解禁日には必ず間に合うようにするからと言うことを伝えた後に着替え…

ヒーローレシーバーレプリカ、ヒーローフーディーレプリカ、ヒーローブーティレプリカに身を包んだ。

まめみはヒーロー用の靴が大きかった為、代わりに愛用しているウミウシパープルを履いた。

まめお「さて…まずは何をすればいいんだ?」

ホタル「タコ達の住処であるヤカンは、普段は透明になって隠されてるんよ。でも怪しい場所にインクをぶつければ…あら不思議!奴らの住処に行けるんよ。まずはあのゲートを壊す為に、デンチナマズを助けて行かんとね。」

まめみ「了解、それじゃあ…行ってきます!」

まめお「すぐに戻るぜ!」

そう言うと2人はヒーローシューターを手に、ヤカンを探しに旅立った。

ホタル「…頼んだよ…新たなヒーロー4号…まめお君、まめみちゃん!」

優しい風が吹く中…ホタルは2人の後ろ姿を真っ直ぐ見据え、2人の帰還を待つのと同時に、サポートをする為の準備を進めるのであった。

To be continued…