※やや残酷な描写あり
遂にアンデッド・アイランドへと足を踏み入れたブルース達。
しかし…彼らが目にしたのは、奴の毒牙にかかり下僕として彷徨い続けるワニ達の姿であった。
更に強い決意を胸に歩き続ける一行であったが、ラクト、ガーリル兄弟にとって、あまりにも残酷すぎる光景が待っているのだった…。
~毒牙にかかった母~
彷徨い続けるゾンビ化したワニ達に時折行く手を阻まれたものの、ようやく奥へと辿り着いた一行。
そこで目にしたのは…骨ワニ達が積み重なって出来た山…その頂に黒い影が…。
そこからふわりと降りてきたアンデット・クロンは、不気味に光る赤い目をブルース達へ向けていた…。
ブルース「もう逃がさんぞ、今度こそ覚悟しろ!」
しかし、アンデット・クロンは不敵な笑みを浮かべてこちらを見ていて…ラクトとガーリルは先程より強い気配に表情が強張っていた…。
アンデット・クロン『…何となく気付いているのだろう?ネグロ一族の王にダーク一族の王よ。そうだ、これがお前達2人に用意した最高のプレゼントだ!さぁ来い、我が忠実なる下僕、エメラ!』
次の瞬間、アンデット・クロンの後ろから1人の女性が姿を現した。
黒髪にエメラルドグリーンの瞳…
そう、この女性はラクトとガーリルの母エメラ!
ラクト「そ…そんな…どうしてここに…!?」
ガーリル「母…上…!!」
アンデット・クロン『65年前…あの時我を封印しようとした時、ダーク一族の先王ガルーダの傍にいたのがこの女だ。女はいいぞ、男よりも喰らいがいがある…滑らかな肌、柔らかい肉、全てにおいて美味い。そして…実に良い声を出す。あの時の快楽は今でも覚えている…絶望に染まるあの声がな!フフフ…フハハハハハッ!』
スノウ「何て事を…!」
ラクトとガーリルはその場に立ち尽くすことしか出来ず、その瞳は…表情は絶望に染まっていた…。
ガーリル「母上…俺だよ…ガーリルだよ…。」
エメラ「……。」
ガーリル「は…はは…何の冗談だよ…幻覚だろ?母上があんな外道の下僕になんかなる訳無いよな……なぁ…そうだろう!?答えてくれ母上ぇ!!」
ラクト「ガーリル落ち着け!」
ガーリル「兄上…母上が、母上がぁぁああ!!」
ラクト「…どうして…どうして母上をこんな目に!!」
崩れ落ちたガーリルを支えつつも、自身も絶望で足下がふらついているラクト。
非情にも、夢でも幻でも無い…目の前の光景は現実…アンデット・クロンの毒牙にかかった母エメラの変わり果てた姿で…瞳に輝きはなく、肌も死人の如く白い…。
彼女の目が捕らえる者は…我が子。しかし何も感じない…何も分からないのだ…。
アンデット・クロン『あの時、木の陰から覗いていた子供…自らも瀕死の傷を負っていながらお前を庇い倒れた。…その意志の強さに我は惹かれた。我が下僕としてふさわしい、とな。』
ラクト「この…この…この悪魔アァッ!!」
ブルース「ラクト待て!」
怒りに任せてラクトは剣を片手にアンデット・クロンへと突っ込んでいったが実体の無い奴にとっては何でも無く、ラクトがすり抜けるだけであった…。
アンデット・クロン『フン、まだ分かっていないようだな。我は実体を持たぬ…倒す事など叶わぬのだ。さぁ、お前達も我の手先となれ!』
スノウ「奴を倒すには、今あれをやるしかない!」
ラクト「…我が母をこの様な目に遭わせた事…絶対に許さん!」
ガーリル「母上…!」
マリン「彷徨い続ける皆の魂を救う為にも…!」
ブルース「もう二度と貴様を野放しになどさせない!いくぞ!」
一行は剣を天へと掲げ、気を集中させた。すると…剣が光り出した!
アンデット・クロン『くっ…この光りは!セイレーン・ケイヴの時と同じ…!体が焼ける!グワァァァァ――――――ッ!!』
そう、スノウはセイレーン・ケイヴで襲撃を受けた時、アンデット・クロンが牙から発せられる光りを嫌っていたことを覚えていたのだ。弱点は…牙から発せられる光だと!
そして…力を使い切ったブルース達は立っているのも辛く、その場に座り込んだ…。
マリン「はぁ…はぁ…!」
しかし!光りが消えた先にいたのは…エメラに乗り移ったアンデット・クロンの姿!
アンデット・クロン『フフフ…この女の中に入り込んだお陰で免れたぞ。…我を本気にさせてしまった様だな…今お前達は反動で動けない、今我が喰らってやろう…この毒牙でなっ!』
ラクト「…結局全部無駄足だったのか…?誰もこの悪魔を止める事は出来ないのか?」
ガーリル「…くそっ…!」
アンデット・クロン『まずはお前からだ!今まで我に刃向かった事を後悔するが良い!』
乗り移られたエメラがガーリルの髪を鷲掴みにして首筋に毒牙を突き立てようとした時!
いつまで立っても何も起きない。不思議に思ったブルース達が目を開けると…?
エメラの瞳から涙が流れていた…。
ガーリル「母上…?」
アンデット・クロン『馬鹿な…まだ魂が支配されていなかったというのか!?』
鷲掴みにされていたガーリルの髪を放し、解放されたガーリルは地面に落ちた。
ゆっくりと体を起こすと、エメラが苦しそうに唸っていた。
エメラ「くっ…お前などのいいなりには…ならないわ!私の息子に…手出し…させない!」
ラクト「母上!」
エメラ「…ラクト、ガーリル…大きくなったわね…私は嬉しいわ…うぅっ!」
アンデット・クロン『おのれ、戯けた真似を…我を封じ込めようなどと…!』
エメラ「今…奴を私の体の中に閉じ込めてるわ…!私の体を貫いて!」
ラクト「なっ…そんな事出来るわけ無いだろう!?」
ガーリル「せっかくまた会えたのに…!」
エメラ「私は既に滅んでいるわ…今あるのは彷徨い続ける魂とゾンビと化した肉体のみ…。このまま私を貫けば、アンデット・クロンは滅びるわ、永遠に…。だから…お願いよ…この母の最後の願いを聞き届けて…!」
ラクト「…いくぞ。」
ガーリル「何言ってるんだ兄上…出来る訳…」
ラクト「母上の願いだ…私達が叶えなくてどうする?…母上を救うんだ、この悪魔から。」
ガーリル「…くっ、母上…!」
ラクト「ブルース、マリン、スノウ、もう一度頼む!奴を永遠に葬る為に、母上の為に!」
痛む体を無理矢理起こし剣を手に強い決意の元、ブルース達は再び立ち上がった。
~To be continued…~