オリジナル小説「救われた魂、消えた悪魔」

※やや残酷な描写あり

アンデット・クロンが見せた者…それはラクト、ガーリルの母エメラであった。

65年前のあの時、殺された後に臓器を貪り食われ、残った肉体と魂を毒牙で操っていたのだ…。

いつか…自分を封じ込めようとした忌まわしきミラージュアイランドの一族達をその手で滅ぼし島を血で紅く染め上げるまで…。

しかし65年前と同じ様に、今度は子の代が倒すべく立ち向かっていく…。

今、戦いが終決しようとしていた!

 

~救われた魂、消えた悪魔~

 

~回想~

ガーリル『父上、母上、どこ行くの?』

ガルーダ『…大事な用事ができたんだ。大丈夫、すぐに戻ってくるから待っていなさい。』

エメラ『お父様の約束を破っちゃ駄目よ。ガーラスを困らせない様にね。」

ガーリル『…はーい母上。』

~封印の時~

ガーリル『あ…あぁ…!』

アンデット・クロン『こんな所に子供が…ククク、今ここで喰らうとしよう!

エメラ『ガーリルっ…!』

ガーリル『母上…母上ーっ!!』

~回想終~

ブルース達はもう一度、剣を掲げ、祈った。

もう二度とこの様な悲劇が起きない様に、彷徨う魂達を、エメラを救う為に。

すると剣は…先程より強く、暖かい光りを放ち、剣の形になった。

アンデット・クロン『クッ…その程度の力で…我を押さえきれると思うな!!

エメラ「みんな…護りたい存在がいるともっと強い力を発揮できるのよ!」

アンデット・クロン『グワァ…何と強い力…だ、出せぇぇぇ!!

エメラ「もう逃がさないわ…!お前はここで滅びるのよ…!」

そう言うとエメラは巨大な光の剣を見て、目を閉じた。

光の剣は眩い光を放ちながらエメラの方へ向かっていく…。

アンデット・クロン『墓を暴き…死人を喰らい…自らの体を血で染め上げてきたというのに…もう楽しみは終わって…しま…う、のか…!忌まわしきミラージュアイランドの一族共っ!我に二度刃向かうとは!!おのれ…おのれぇっ!!グ…グルルルルル…!!

光はエメラを貫き、包み込んだ。すると…!光の中から姿を現したのは…巨大な骨ワニ!体は紅い血で染まり…骨から大量の血が流れている…それは今まで犠牲になった者達の血、皆の嘆きなのだ。これがアンデット・クロンの正体である。

ガーリル「それが…貴様の正体なのか…。」

ブルース達が見つめる中、光は更に強くなり、アンデット・クロンを完全に包み込んだ。

アンデット・クロン『グワアアアアアアアッ!!

叫び声と共に光りは消え、そこに倒れていたのは…エメラ。ラクトとガーリルが駆け寄り抱き上げると…エメラはゆっくりと目を開けた。

エメラ「ラクト…ガーリル…みんなよく頑張ったわ。アンデット・クロンは滅び…もう二度と現れる事は無いわ…犠牲者が増える事も…無くなった。」

ラクト「母上のおかげだよ…ありがとう。」

エメラ「良かった…。」

ガーリル「母上…65年前のあの時、俺があそこに行かなければとずっと自分を責めていた…。本当に…ごめんなさい。ごめんなさい母上…っ!」

エメラ「ガーリル、貴方は何にも悪くないわ。それどころかアンデット・クロンを倒して、たくさんの人を救ったのよ。貴方達は私の誇り。いつまで経ってもかけがえの無い大事な息子よ。」

ガーリル「母上…。」

エメラ「本当は…もっとたくさん一緒に居て、たくさん思い出を作って…ラクトとガーリルが成長していくのを見届けたかった…。それなのにまだ幼かった貴方達を残してこんな事になってしまって…本当にごめんなさい。」

ラクト「母上…謝らないでくれ。どうかしっかり…!」

エメラ「ラクト…顔つきは私似だけど…その姿、貴方の父ヴァルツによく似ているわ…貴方は私がガルーダと結婚する前に授かった子…私は必ず産むと決めて…ガルーダも優しく頷いてくれた…あの時の…事が昨日の様に思い出されるわ…。」

ラクト「私は…母上がガルーダ王と結婚した後にできた子では無かったのか…!?」

ガーリル「どういう事だ兄上?」

ラクト「私は…詳しい事をよく知らなかった故、母上がガルーダ王と結婚した後に父上と関係を持ち出来た子なのだとばかり思っていた…だからずっと…後ろめたかったんだ。母上やガーリルがその事で辛い思いをしているのではと…。」

エメラ「そんな事は無いわ…貴方がお腹にいると分かった時どんなに嬉しかった事か…何があろうとも、私が貴方を産む決意は変わらなかった…大切な…私の子供…自分の胸に抱きたいと思うもの。」

ラクト「母上…産んでくれて…ありがとう…!」

そう言ったラクトの目からは涙がこぼれ落ち、エメラは優しく微笑みながら彼の涙を拭った。

エメラ「ガーリル…貴方はガルーダに瓜二つね…。貴方を授かった時も本当に嬉しかったわ。ガルーダは勿論の事、ラクトも凄く喜んだのよ。兄弟ができるんだって。」

ガーリル「母上…俺は母上の息子で幸せだよ…。」

エメラ「ありがとうガーリル…私も幸せよ。…もうそろそろ行かなければいけないみたい……忘れないで、姿は見えなくても…私達はずっと見守っている…ラクト…ガーリル…私の大事な2人の息子…愛しているわ…。」

最後の力を振り絞って、エメラはラクトとガーリルを抱きしめると…体が透けて…消えてしまった。

すると暖かい光が現れ、天へ向かって昇っていった。

ラクト「母上…母上…っ!」

ガーリル「母上…どうか…今度こそ安らかに…!」

見届けていたラクトとガーリルの頬を伝って大粒の涙がこぼれ落ちた。

スノウ「…帰ろう。みんなが待っている。」

ラクト「そうだな。」

一行は来た道を戻り、島を出た直後にアンデット・アイランドに変化が…!

暖かい光に包まれ、消えたのだ。

そして…その光は次々と天へ昇っていく…。

ラクト「この光は…。」

ガーリル「母上と同じく今まで囚われていた者達の魂…。」

マリン「エメラ様と同じく…魂を救われた人々が昇っていくのね…。」

スノウ「ようやく自由になれたんだな…。」

ブルース「これでもう二度とこの島が現れる事は無い、犠牲になった者達の魂が彷徨う事も…。全て…全て終わったんだ…ようやく…平和に。」

こうして…長い戦いは終決した。

~To be continued…~