小説「緑風と桃花は愛を紡ぐ(共存編)」~迷子はシャケの子~

あれからまめみ達は気が向いた時にバイトに行く日々を送っていた。

この日、まめみはポナと2人へバイトに。

しかし人がなかなか集まらず、2人で行くのが続いた…。

ポナ「これは2人ではキツいね…。」

まめみ「そうだね…。」

クマサン『こういう日もあるさ、そんなに気を落とさないでくれたまえ。』

まめみ「クマサン、ごめんなさい…。」

クマサン『君達に何かあっては大変だからね…これだけでも金イクラを集めてくれたんだから十分だよ、船を出すから戻っておいで。』

2人は迎えの船が近づいてくるのを待っていた

しかし…その途中でまめみは足下に小さな子ジャケが横たわっている事に気づいた。

ポナ「まめみ、どうしたの?」

まめみ「子供のシャケが足下に…。」

ポナ「離れてまめみ!」

そう言ってブキを構えたポナだが、子ジャケの様子がおかしい

生まれてまだ経っていないのか、まだイクラの皮が残っていて…左ヒレには大きな傷がある

鳴き声も弱々しく、目も虚ろで攻撃してくる様子は無い。

まめみ「この子、酷く弱ってる…。」

そう言うとまめみは優しく抱き上げた。

ポナ「まめみ、弱ってるとはいえ…。」

まめみ「でも…こんなに弱ってるのに見過ごせないよ…。」

子ジャケ「キュ…。」

まめみ「…しばらくここで我慢してて。」

そう言うとまめみは作業着のシャツの首元を引っ張り、自分の胸に子ジャケをそっと隠した。

ポナ「まめみ…さすがにマズいよ…。」

まめみ「とりあえず手当して大丈夫そうならそっと海に帰すよ、だからお願いポナ君…。」

ポナ「…分かった、その代わり俺の傍を離れないでね。」

まめみ「うん、ありがとう。」

2人は迎えの船に乗り着替えた後、クマサンにバレない様に子ジャケを隠しながら外へ出た。

その後ポナと共にまめみの家に連れて帰り、子ジャケをお風呂場の洗面器の中に入れた。

子ジャケ「キュ…。」

まめみ「傷の手当てをしないと。」

そう言うと消毒液とガーゼを持ってきて、ヒレの傷に当てた。

子ジャケ「キュ…キュウゥ…!」

ビシャッ…ビシャッ!

ポナ「くっ…大人しくしててくれ…!」

子ジャケは痛みのあまりに暴れている…ポナはそれを必死に押さえ、まめみは消毒を続けた。

まめみ「ごめんね、もう少しだけ我慢して…。」

子ジャケ「キュ…。」

まめみ「うん、これで大丈夫。」

ポナ「ふぅ…。」

まめみ「ありがとうポナ君。」

子ジャケ「キュ…キュ…。」

まめみ「さっきよりは少しだけ元気になったね、それじゃあ海に…」

ギュルル…

ポナ「…まめみのお腹?」

まめみ「ち、違うよ!ポナ君じゃないの?」

ポナ「俺じゃ無いよ。」

まめみ「それじゃあ…?」

グ~ギュルル…

子ジャケ「キュル…。」

まめみ「貴方のお腹が鳴ったのね。」

ポナ「でも何を食べるんだろう?」

まめみ「確かに……とりあえず卵焼きでも出してみようか?」

何を食べるのかさっぱり分からないが…とりあえず卵焼きを作って差し出してみた。

子ジャケ「…キュ…。」

ポナ「やっぱり食べないのかな…。」

まめみ「どうしよう…。」

2人が困っていると…

子ジャケ「…キュ…。」

はむっ…子ジャケは卵焼きにそっとかじり付いた

まめみ「あっ…!」

子ジャケ「………キュ…キュー!キュッキュッ!」

ポナ「食べた!」

卵焼きをもぐもぐと食べる子ジャケはとても嬉しそうで…夢中で頬張るその姿に、まめみとポナの2人も嬉しそうに笑った。

まめみ「よかった、たくさん食べてね。」

子ジャケ「キュッ…キュッ…!」

ポナ「あははっ、可愛いなぁ。」

2人が保護した子ジャケは卵焼きがすっかり気に入ったようで、全て平らげた後は安心しきった表情でぐっすりと眠ってしまったのだった。

一方ここはドン・ブラコ…

1匹のオオモノシャケが、子ジャケの倒れていた周辺を見渡していた

オオモノシャケ「………っ…………!」

そのオオモノシャケ…ヘビは赤い瞳をギラつかせ、マスクの中でギリ…と歯を食い縛りそのまま海の中へ姿を消した…。

To be continued…