キングテレサとルナテレの間に生まれた双子「エステレ」と「ミアテレ」。
あれから双子はすくすくと成長し、毎日オドロ~宮殿を飛び回っては遊び、少し大きくなったテレポンもテレゾウに勉強を教わり、テレノシンからは居合い切りを学び始めていた。
そしてこの日…ちょっとした「大騒動」が起こるのであった。
~夜~
キングテレサ「……ん~…ルナテレぇ…愛してるぞ…。」
寝言を言いながら、青い舌をだらんと垂らして気持ちよさそうに寝ているキングテレサ。
妻のルナテレはとっくに起きて、ご飯の準備をしていた。
そして…。
…………………。
ふわふわふわ………!
エステレ「パパー!!」
ミアテレ「おきてー!!」
扉をすり抜けて勢いよく入ってきたのはエステレとミアテレ。
キングテレサ「……ん~………。」
声で反応したものの、起きる気配は全くない。
エステレ「パパぁ~!」
ミアテレ「おきてってば!」
ドスッ!!
キングテレサ「ぐふぅっ!!」
双子達は満面の笑顔でキングテレサのお腹に勢いよくダイブした!
エステレ「おきて~!」
ミアテレ「パ~パ~!」
ドスッ!ドスッ!双子達は交互にキングテレサのお腹にダイブしている。
キングテレサ「ぐふっ…や…やめ…!エステレ…ミアテレ…!」
エステレ「おきる?」
キングテレサ「お…起きる…起きるからっ…!」
ミアテレ「ほんと?」
キングテレサ「本当だ!だからやめてくれぇ…!」
2人「わーい!パパおきたー!」
キングテレサ「はぁ…はぁ…!!」
彼が起きた事で漸くダイブするのを止めて喜ぶ双子達。
一方キングテレサにとっては、最悪の目覚めになったようだ…。
すると、ルナテレが部屋に入ってきた。
ルナテレ「おはようございます、キングテレサ様。」
キングテレサ「…おは…よう…ルナテレ…!」
エステレ「ママー!パパおこしたよー!」
ミアテレ「パパすごくうれしそうだよー!」
キングテレサ「…………………。」
…どう見てもげんなりした顔にしか見えないのだが…。
ルナテレ「ど、どうやって起こしたのかしら…?」
エステレ「えっとねーおなかにだいぶしたの!」
ミアテレ「そしたらおきたの!」
キングテレサ「………………。」
彼の赤い瞳はジト目でルナテレを見ている…。
ルナテレ「…あ…ありがとう…エステレ、ミアテレ…。ご飯出来てるから…手を洗っていらっしゃい…。」
エステレ「はーい!…あ、そのまえにおしっこいってくるー!」
ミアテレ「やだ~エステレったらー!」
そんな事を言いながら2人はふわふわと扉をすり抜けて行ってしまった…。
キングテレサ「……………。」
ルナテレ「き…キングテレサ様…。」
キングテレサ「……お前があんな風に起こす様に言ったのか…?」
ルナテレ「…そんな事は…。」
キングテレサ「…だよな……はぁ……。」
ルナテレ「お…お疲れ様です…。」
キングテレサ「…癒やしてくれルナテレ。」
ルナテレ「きゃあ…!」
ドサッ!ルナテレをベッドに押し倒して…
その後はしばらく甘い2人だけの愛の時間…。
食事を済ませ、キングテレサは書類に目を通す為に仕事へ。
ルナテレはおやつのケーキ作りの準備、
テレポンもテレゾウと共に勉強をしている為、エステレとミアテレは2人で遊んでいた。
しかし…エステレは突然こんな事を言い出した。
エステレ「ねぇ、ミアテレ。」
ミアテレ「なぁに、エステレ?」
エステレ「パパのかぶってるおうかん、かっこいいよね!」
ミアテレ「うん!」
キングテレサの王冠…金に輝くの冠の上に魔力を宿した紫の宝石を乗せていて…その姿はキングと呼ぶにふさわしい。
そんなキングテレサを父に持つエステレは、いつも憧れていた。
いずれは父の跡を継いでテレサ達を束ねる王となるエステレ。
しかしエステレはまだ幼い為、そんな事は理解しておらず…
父の「王冠」に興味を抱いていた。
エステレ「ぼく、あれかぶってみたい!」
ミアテレ「えぇ…だめよエステレ!あれはパパのだし…それに…おおきくてエステレにはかぶれないよ。」
エステレ「でもかぶってみたいの!こんや、パパがねたらこっそりかりちゃおうよ!」
ミアテレ「えぇ…そんな…エステレ…!」
エステレ「ぼくもおうかんをかぶるぞー!!」
戸惑うミアテレをよそに大はしゃぎのエステレ。
しかし…この行動が後に大騒ぎとなるのだった…。
~夜~
キングテレサとルナテレがぐっすりと眠る中…。
ミアテレ「エステレ…やっぱりやめようよぉ…。」
エステレ「だいじょうぶだって。」
ミアテレ「パパにみつかったらおこられちゃう…。」
エステレ「だいじょうぶだよ!すぐにかえせばいいんだから。」
ミアテレの制止も聞かず、エステレはキングテレサの部屋へ…。
そして…ぐっすりと眠るキングテレサの傍に置かれた王冠を見つけた!
ミアテレ「エステレ…。」
エステレ「しー!パパがおきちゃうよ!」
ミアテレ「………。」
月明かりが照らす薄暗い部屋の中、怪しく光る宝石を乗せた王冠。
エステレはそれをそっと持ち上げた。
王冠は意外と軽く、エステレでも簡単に持てた。
エステレ「うわぁ…すごい…!」
ミアテレ「キラキラしてる…!」
エステレ「みんなにもみせようよー!」
ミアテレ「えぇ…!?ダメだよエステレ…」
エステレ「だいじょうぶ!パパとママ、テレゾウにみつからなければいいんだから!」
そう言うとエステレは、王冠を持って部屋の外へ出てしまった!
ミアテレ「あっ…まってよエステレ…!」
続けてミアテレも部屋を出たが…。
エステレ「わーい!」
大喜びしながらふわふわ飛んでいるエステレ。
しかし…王冠…の上に乗っている宝石の様子がおかしい。
妖しく光り…強さが増しているのだ……。
ミアテレ「ねぇ…エステレ…もどそうよ…なんかへんだよ…!」
エステレ「へん?へんってなにが…?」
その時!!
ゴゴゴゴゴゴゴゴ…!!
王冠の上の宝石が強く光り出して…
周りは強い地響きが…!!
ミアテレ「あぁぁ…!!」
エステレ「な…なにこれ…!!」
ミアテレ「きっとおうかんのせいだよ…!」
エステレ「た…たいへん…もどさなきゃ…!」
そう言って戻しに行こうとしたエステレだが…。
ビシャーーーーン!!
突然、紫の雷が壁を直撃した!!
テレノシン「な…何でござる!?」
テレミラ「地震!?」
テレサ達は大慌てで部屋から出てくると…!
エステレ「うわあぁぁん!とめてーーー!!」
ミアテレ「ど…どうしよう…!!」
そこには魔力が暴走した王冠を持って慌てるエステレと、オロオロするミアテレの姿が!
テレゾウ「エステレ様、ミアテレ様!」
エステレ「と…とまらないよーーー!!」
ミアテレ「どうしたらいいのー!」
その頃…
ルナテレ「キングテレサ様!キングテレサ様!」
キングテレサ「んん…何だルナテレ…もう一度俺様とヤるか…?」
ルナテレ「もう…破廉恥です!」
バチン!
キングテレサ「痛ってえぇぇ!」
恥ずかしがるルナテレのビンタ(無自覚)によって、キングテレサは夜中にも関わらず、再び最悪の目覚めを迎えた…。
ルナテレ「さっき、凄い音が聞こえたんです!」
キングテレサ「凄い音…?」
ルナテレ「地響きの様な音がして…目が覚めたらキングテレサ様の王冠が…!」
キングテレサ「何…!?」
驚いて飛び起きたキングテレサが見ると、置いてあったはずの場所に王冠が無い!
嫌な予感がしたキングテレサは、ルナテレと共に部屋を飛び出した。
一方その頃…。
エステレ「うわあぁぁぁん…どうしたらいいのーー!!」
泣き叫ぶエステレ、王冠はエステレを振り回す様に暴走し、紫の雷が辺りに飛び交う…。
テレッツ「テレゾウさん…!」
テレゾウ「…エステレ様は幼いといえども、キングテレサ様のご子息。あのお方の莫大なる魔力の継承者じゃ…。恐らく王冠は、エステレ様の秘めた魔力に反応して、更に増幅しておるのじゃろう…!」
ミアテレ「テレゾウ…エステレを…おにいちゃんをとめて…!」
泣きながら懇願するミアテレだが…テレゾウも困り果てた様子で口を開いた。
テレゾウ「ミアテレ様…そうしたいのは山々じゃが…ワシにもどうする事も出来ませぬ…。それこそ…父上であるキングテレサ様くらいしか止められないでしょう…。」
ミアテレ「そ…そんな…!」
その時!
ビシャーン!!
魔力が暴発!それはいつも以上に強力な紫の雷となり…
テレルーパ「ぎゃーーーーー!!」
たまたま近くにいたテレルーパに直撃した…。
ミアテレ「あぁ…テレルーパ!」
テレルーパ「な…何でいつも俺ばかりこんな目に……ぐふっ!」
そう言うと黒焦げになったテレルーパは、その場にガクリと倒れた。
エステレ「わーー!!」
ビシャーーーーン!!
また強力な雷が発生し…今度はミアテレ達の所へ!
テレゾウ「ミアテレ様!」
ミアテレ「きゃああああ!!」
エステレ「やめてーーー!!」
テレゾウがミアテレを庇い、エステレがそう叫んだ直後!
パリッ…
……ピリピリ……
ポシュン…
雷は段々小さくなり…紫の煙と共に消えてしまった。
そして…後ろから聞こえてきたのは…。
キングテレサ「…間に合った様だな。」
エステレ「あっ…!」
ミアテレ「パパ…ママ…!」
テレゾウ「キングテレサ様…!ルナテレ…!」
そこにはキングテレサとルナテレの姿が…。
その後、王冠はキングテレサの元へ返され、エステレとミアテレはキングテレサの部屋へ…。
ルナテレは3人に温かい飲み物を用意する為に席を外した。
キングテレサ「……………。」
エステレ「…………。」
ミアテレ「…………。」
キングテレサ「……どうして王冠を持ち出したんだ?」
その声は明らかに怒っていて…エステレとミアテレは小さな体をビクッ!と震わせた。
エステレ「…パパのおうかん…かっこよくて…ぼくもかぶってみたかったの…。ごめんなさい…。」
ミアテレ「ごめんなさい…パパ…。」
キングテレサ「…これはただの王冠じゃねぇ。莫大な魔力を秘めている。いくら俺様の子供だとしても…まだ扱えるモンじゃねぇ。」
エステレ「…はい…。」
ミアテレ「……………。」
キングテレサ「……この…この………!!」
怒りで青筋を立てながらもの凄く怒っているキングテレサ。
この後思いっきり怒ろうとした瞬間!!
エステレ「パパぁ…ひっく…ひっく…ごめ…なさい…!」
キングテレサ「……………!!」
ミアテレ「わたしたち…ひっく…わるいこで…ひっく…ごめんなさい…!」
2人は大粒の涙を流して泣いていて…。
小さな体は震えていて…頬を真っ赤に染めているエステレの青い瞳とミアテレのピンクの瞳からは涙が溢れ続けて…。
キングテレサの脳内では…ルナテレの姿が思い出された。
このオーラ…まさか…ルナテレに似たのか…!?
くっ…俺様…これには弱いんだ…!
よりによって…こんな所でルナテレの遺伝子が現れるとは…!
葛藤するキングテレサ…。
悩み続けた末に…。
大きな手をスッと2人の前に出して…
ビクッ!2人は体を震わせて、目をギュッと瞑ったが…
ポンッ。
その手は優しく2人の頭に乗せられただけだった。
キングテレサ「……怪我をしなくてよかった…。お前達に何かあったらパパは…。」
そう言って、2人をぎゅっと…優しく抱きしめた。
エステレ「パパ…パパぁ…!」
ミアテレ「こわかったよぉ…!」
大泣きしてキングテレサにしがみつく2人。
キングテレサ「…もう、しないんだぞ?」
エステレ「ぐすっ…はい…!」
ミアテレ「やくそくする…!」
キングテレサ「よし、それでこそ俺様とルナテレの子だ!」
そう言うとキングテレサは、2人を抱き上げて落ち着かせ始めた。
しばらくして…
ルナテレ「お待たせしました…あら…?」
キングテレサ「今、寝た所だ。」
ベッドを見ると、泣き疲れたエステレとミアテレがぐっすりと眠っていた。
ルナテレ「お疲れ様でした。」
キングテレサ「…お前にそっくりだな…。」
ルナテレ「え?」
キングテレサ「いや、何でもない。寝るぞルナテレ。」
ルナテレ「ふふっ、はい…キングテレサ様。」
そう言うとキングテレサとルナテレは双子達を挟んで眠りについた。
こうして…王冠騒動は幕を閉じたのである。
…………あれ?誰か忘れているような……?
テレルーパ「…誰か…助けて…。」
結局、黒焦げのテレルーパが助けられたのは…翌日の事だった。