小説「緑髪の少年(再会編)」最終話~取り戻したもの~

自分達の運命、父親の判明…タキと再び恋人関係に…

ここのところ様々な変化が起こったが、それら全てはとても嬉しい変化で…まめみ達は幸せを感じていた。

そしてこの日、まめみはタキと共にナワバリバトルへ。

2人は同じチームだが、今日のまめみはどこか胸騒ぎに近い不安を感じていた…。

タキ「まめみ?」

まめみ「……あ、何…タキ君?」

タキ「…大丈夫?顔色が悪いし、すごく不安そう…。」

まめみ「ううん、大丈夫だよ。さ、行こう!」

タキ「あっ、まめみ!」

本当は大丈夫なはずがない。

つきまとう不安を拭いきれないまめみは、その不安を抱えたまま試合を続けた。

…場所はモンガラキャンプ場。

そして…彼女の不安は的中する。

まめみ「あっ…!」

周りには敵が2人…しかも運悪くすぐ近くに味方がいる様子はない。

何とか1人は倒せたが、もう1人がしつこく追ってくる!

まめみは逃げたが相手は諦めない。

逃げ続けたまめみが追い詰められたのは…金網の足場があるあの場所…。

かつて…プラベの後にタキと夕日を見て…

恋人になってから…記憶を失ったらという話をしたあの思い出の場所…。

じりじりと近寄る敵に、まめみは覚悟を決めて立ち向かった!

何とか倒すことには成功したが…まめみはバランスを崩して湖の方へ落ちていく…。

タキ「まめみ!」

まめみ「タキ君…!」

追いかけられていくまめみを遠くから見つけたタキは、危険をかえりみずに単身助けに向かってきていたのだ。

落ちていくまめみを…持っていたバレルスピナーを置いて飛びつき、まめみを頭からしっかりと抱きしめた!

そして……2人は……

ボチャン!!

湖の中に落ちて行った。

ゴボ…ゴポ…

2人はインクリング族、当然泳げるはずはなく…水の中で…少しずつ溶けていく…。

苦しさの中…タキは目を少し開けてまめみを見た…。

まめみは既に気を失っていて…桃色のインクが水に少しずつ溶けていく…。

その時…まめみの首元に揺らめくクローバーのペンダントが目に入ってきて…

…タキの頭の中に…不思議な感覚が巡った。

タキ『特別な力…?2人は嫌がらないの?』

まめお『どうしてだよ。何も嫌がる理由なんてないだろ。』

まめみ『そうだよ!………あたし達も似た様な経験してるし…。』

…………

タキ『あっ…ごめんね2人共…でも、まめお君とまめみちゃんのやりとりを見てたら何だか微笑ましくて…心が暖かくなって笑っちゃったんだ。』

………これ……は……?

まめみ『ダメ…タキ君…その先は…言わないで…!』

タキ『違うんだ…僕は…!』

…まめみと…こんな会話…した事は……

タキ『うぅ…よっちゃん…嫌じゃ…無いの…?』

よっちゃん『何を言ってるの、嫌な訳無いでしょう…何も遠慮しないで出しちゃいなさい。』

まめみ『酷い熱だよ、すぐにお店へ!』

まめお『俺がおぶっていく!』

…………………

まめみ『元気になったら、また一緒にナワバリやろうね。』

まめお『俺達ずっと待ってるから…しっかり治せよ、タキ。』

…………………?

僕は…前にこんな会話を…した…?

スルメさん『それは、タキがみんなにとって大切で、守ってあげたい存在だからやで。』

よっちゃん『あら、昨日3人で買ったフクなのかしら?』

タキ『うん、そうだよ!昨日まめお君、まめみちゃんと3人で同じフクを買ったんだ!』

F-190……まめおとまめみも確か……同じ事を言って…た…。

ゴボォ…!

体も溶け始め…意識は遠のいていくが…

その『映像』は流れ続ける…

まめみ『まめみ「いや…あ…ひっく…ひっく…やめてぇ…!」』

タキ『まめみちゃんは綺麗だよ、汚れてなんかいない!』

まめみ『タキ…君…!』

タキ『………この気持ちは抑えられないし諦めて身を引く事も出来ない、相手がまめお君でも僕の気持ちは変わらないよ。』

まめお『…本気なんだな?お前は本気なんだなタキ!?』

タキ『…本気だよ、僕は最初から本気で言ってるよ。』

…まめおと…こんな言い争いをした…事…は……

………………………!

…いや………僕はまめおとプラベで勝負を…

まめお『まめみを任せたぞ、タキ。』

タキ『まめお君……うん、任せて。』

まめおから…まめみを託…されて…

タキ『…例え記憶を失っても…ずっと大好きだよ、まめみちゃん。』

まめみ『あたしもずっと大好きだよ、タキ君。』

………僕は…まめみと………

………………!!

まめ…み…ちゃん…!!

………………。

…そうだ…あの時…僕は 車に……!

………………。

コポ……トプン……

数秒後にリスポーン地点へ戻った2人だが…

タキ「…行くよ、まめみ。」

まめみ「うん…。」

どうして…?

一瞬だけタキ君の目の色が…黄色に見えた気がした…

その後…試合は勝利に終わり、2人はロビーから出てきた。

まめみ「お疲れ様、タキ君。……さっきは…ありがとう。」

タキ「…どういたしまして。」

まめみ「……………。」

さっきの事がまだ引っかかって、俯いたまま少しドキドキしているまめみ。

すると…タキが口を開いた。

タキ「……僕がかつて、ハイドラントで戦う姿を見て…君もハイドラントを相棒に選んだんだよね?」

まめみ「……………!!」

驚いて目を見開くまめみ。タキは更に話を続けた。

「僕が風邪を引いても…嫌な顔一つせず助けてくれたね。」

まめみ「……タキ……君………!」

そっと顔を上げてタキの顔を見ると…

その瞳はターコイズブルーのままだが…

表情はあの頃と同じ様に優しく、その口元は優しく笑っていて…

タキ「僕は前にこんな事を言ったね、まめみ。『…記憶を失っても…ずっと大好きだよ…まめみちゃん。』と。」

まめみ「……っ……!タキ君……記憶…を…思い出したの……!?」

タキ「うん、全部思い出したよ、記憶を失ってからの事も覚えてる。…全部繋がった…記憶を失ってからもずっと、傍にいてくれた…約束を守ってくれてたんだね、まめみ。」

まめみ「あ…あぁ…タキ…君…ポ…ナ…く…っ…ひっ…く…ひっく…!!」

タキ「大好きだまめみ、これからもずっと一緒にいようね。」

そう言うと、タキはまめみを優しく抱きしめた。

まめみ「タキ君…うん…うん…ずっと…一緒だよ…!」

桃色の瞳からは大粒の涙が流れ続けて…タキの着ているF-190に消えていき、まめみも彼の背中に手を回して抱きしめた。

それから2人はスルメさんのお店に行き…記憶が戻った事を話した。

みんな喜び、タキもまた、目の色はターコイズブルーのまま変わらないが…あの頃の様な笑顔を見せていた。

それからしばらくして…。

タキ「まめみ、行くよー。」

まめみ「はーい!」

記憶を取り戻したタキだが…戻らなかったのは彼女の呼び方と…目の色の変化。

しかしその関係は変わらず、より深くお互いを想い合うようになった。

一方でまめおとスーは…

スー「だからここはあたしがテスラで足止めするから、あんたは黙って先に行きなさいって言ったでしょ!」

まめお「お前が向こう見ずですぐ敵にやられっから、俺がフォローしたんだろうが!」

スー「全く素直じゃないわね!たまには感謝の言葉一つでも言ってみなさいよ!」

まめお「それは俺が言いてぇよ!お前が心配だから守ってやりたいんだよ!!」

スー「………!…な…何言ってるのよ馬鹿!!」

バチーン!!

まめお「痛ってぇ!!何すんだよスー!!」

スー「それはこっちのセリフよ!いきなり何言ってんのよ…!」

まめお「そ…それは………!」

そう言って、2人共頬を真っ赤に染めていた…。

この2人が素直になれる日も近いのかな…?

そうとは知らずに楽しそうにしているタキとまめみ。

彼女の首元には…三つ葉になったクローバーのペンダントが陽の光でキラッと輝いた。

同じ頃、まめみ達の家…

彼女の部屋の机に置かれた欠けたクローバーの葉が、陽の光を浴びて輝いていた。

その光は様々に光り…

まるで2人の色を表すかの様に黄緑色と桃色に輝いていた。

緑髪の少年(再会編)~Fin~

海賊ダイルです。小説を読んで頂いた皆様、本当にありがとうございます!

小説「緑髪の少年(再会編)」はこれにて完結しました。

タキの記憶が失われた状態から始まった再会編…タキは全て失った状態、対してまめみ達は全て覚えている…それぞれの感情を現すのが最初は大変でした。

ですが、まめみ達はタキをずっと大切に思い支え続け、新たな仲間も増え…そして記憶を失くしたままのタキも…再びまめみに惹かれていきました。

そして2人は再び結ばれ…その後タキも記憶が戻りました。

『幼き記憶とダイオウイカ』編からまめみ達の物語が始まり、『出会い編』からタキが登場し始まったこの物語…1年近く続き完結しましたが……………実はまだまだ続きます!

次の舞台は……2年後の世界!成長したまめみとタキを中心に、彼らの新たな物語は始まります。

スプラ2が発売されてからになりますが…また是非、小説を読んで頂ければ幸いです。

それでは、2年後の世界でまたお会いしましょう!

2017/6/14   海賊ダイル