次の日…ペコが目を覚ますと…目の前にフーが眠っていた。

ペコ「(どうしてフーが…？でも…安心する…。)」

眠っているフーの頬を優しく撫でて彼を起こさないようにそっと起き上がると…ペコは日記を読み始め、自分がフーを引き留めて家に泊めた事も知った。

相変わらず記憶が繋がらないが…

胸は昨日と同じくドキドキしていた…

その後、朝ご飯の準備を始め…漂ってくる良い匂いにフーも気づいて目を覚ました。

フー「ん…おはようペコ…。」

ペコ「おはよう、フー。ご飯出来てるから食べましょう。」

フー「ありがとうな、お…美味そうだ。」

相変わらず美味しい食事で会話も弾み、食べ終えて少し休憩すると…フーはペコと共に練習に向かった。

この日、フーはいつも以上に集中していた。

実はフー、警察官になる為の試験を2日後に控えているのだ。

ハイカラシティで警察官になる為の条件は2つ。

1つはウデマエがS+である事。

そして…シューターによる実技試験での結果。

フーはウデマエはクリアしているものの…問題はシューターの腕。

3Kスコープの腕はずば抜けているが…彼の弱点はそれ以外のブキが扱えない事。

特にシューターは苦手で、ここまで慣れるのに1年以上かかってしまった。

最近は全ての的を壊せる様になり、誰もが彼の成長ぶりに驚いていたが…本人はまだまだ未熟だと言い練習を重ねていた。

フーは強い思いと同時に不安もあった。

もし採用されなかったら…

その夢を絶たれてしまったら…そう思うと心は不安になり、エイムはずれてしまいそうになる。

そしてペコは、そんなフーの気持ちを感じ取った。

ペコ「…フー…少しだけ休憩しましょう。」

フー「ペコ…だが…だが俺は…。」

ペコ「お願い…少しだけ…！」

そう言うとペコはフーにぎゅっと抱きついた。

フー「ペコ…！」

ペコ「フー…実技試験が不安なんでしょう…？」

フー「……！」

ペコ「不安に押しつぶされそうなのよね…？」

フー「…あぁ…不安でたまらない…。もし試験に落ちたら…夢を絶たれたらと思うと……っ……！」

ペコ「フー…自分自身を信じてあげて。貴方は自分で思ってる以上に、とても腕を上げているわ。」

フー「…ペコ…！」

ペコ「…絶対に警察官になるんでしょう…？その強い思いと…今までの練習は、決して無駄にならないわ。」

フー「……っ……！」

ペコ「だから大丈夫よ…自信を持って。」

そう言いながら自分の背中を撫でてくれるペコに、フーは大きな安らぎを得た。

あぁ…暖かい…

ペコは…いつも俺の事を見守っていてくれた…

だから…だから俺は頑張れた…

……………………

諦めない…諦めてなるものか…！

俺は…俺は必ず警察官になる！

そして…その時は…

ペコ…お前に……

フーはだらんと垂れていた腕をペコの背中に回し、強く抱きしめた。

～夕方～

タキ「まめみは夜に来るから、ちょっとだけ姉さんのところに寄っていこう。」

最近会えていないのもあり、タキは久々に姉のペコに会えるのを楽しみにしながら足を速めた。

そして…ペコの家の近くに来たが…

フー「それじゃあな、ペコ。…また明日に。」

ペコ「えぇ…また明日ね、フー。」

タキ「……………。」

姉さん…何だか嬉しそう…

心の中にモヤモヤしたものが渦巻く中…タキはフーが去った後に彼女の家に向かった。

ペコ「あら、タキいらっしゃい。」

タキ「…お邪魔します。」

ペコ「今、飲み物用意するから待っててね。」

そう言うとペコは台所へ向かい、タキはリビングで座って待っていたが…その表情は少し険しかった。

タキ「……………。」

ペコ「お待たせ。」

タキ「ありがとう。…姉さん、さっきフーと一緒にいたよね…どこかに行ってたの？」

ペコ「あら、見てたのね。私…毎日お弁当を作って、フーの練習を見に行ってるの。」

タキ「お弁当…。」

前にスーが言っていた話と同じ…

タキは先程よりもモヤモヤが強くなった。

ペコ「フーは2日後に警察官の試験を控えてるの。だから今日もずっと見てて…励ましたりしたのよ。」

そう話すペコの表情は、どことなく嬉しそうで…その頬はほんのり赤く染まっていて…タキは益々、機嫌が悪くなった。

タキ「…姉さん、何だか嬉しそう。」

ペコ「あら…そうかしら？」

タキ「……弟の俺にも見せなかった表情…たくさんしてる…。」

ペコ「タキ…どうして怒ってるの…？」

以前の様に感情によって目の色が変わる事は無いものの、ペコはタキの姉なだけあって、彼の感情がすぐに読み取れるのだ。

タキ「だって姉さんフーの話ばかり…すごく嬉しそう……俺の姉さんなのに！」

ペコは驚いて茶色の瞳を見開いたが、その後声を出して笑い始めた。

ペコ「うふふっ…タキったら、ヤキモチ妬いてるの？」

タキ「なっ…お…俺は…」

ペコ「…タキ、私はいつまでもずっと…タキのお姉さんよ。私にとってずっと変わらない大切な可愛い弟なの。」

タキ「姉さん……！」

ペコ「…フーに取られたと思ったのかしら？ふふっ…そんなわけないじゃない…。いらっしゃいタキ。」

そう言うとペコはタキを抱き寄せ、膝枕をした。

タキ「ね…姉さん……！」

ペコ「タキったら…大きくなっても寂しがり屋で甘えんぼさんなところは変わらないわね。」

タキ「だって…。」

ペコ「ふふっ、いいのよ。…大好きよタキ、私の大切な弟…。」

タキ「ありがとう姉さん…俺も大好きだよ。」

ペコは優しく笑ってタキの頭を撫で…タキも嬉しそうに笑うのだった。

そして…夜になるとペコはタキを笑顔で送り出し、日記を書く為に筆を取った。

To be continued…