小説「緑風と桃花は愛を紡ぐ(試練編)」~決戦、そして…~

※暴力表現あり

モンガラキャンプ場へ着きしばらく歩くと、橋の向こう…対岸の足場にツネと彼に抱きかかえられたまめみが居た。

タキ「まめみ!」

ツネ「君を倒すと聞かなくてね…やむを得ず僕の力で眠らせた。」

そう言うと、ツネはまめみを優しく寝かせ…彼女の唇にキスをした。

タキ「……………!」

ツネ「…もうすぐだ…あの男を始末して2人だけの時間が訪れる…少し待っててね…まめみ。」

優しく囁いて彼女の頬を1回撫でると、ツネは立ち上がってクアッドホッパーブラックを手に持ち、振り返ると華麗にクルリと回し構えた。

タキ「俺はこれで行く。」

それを見たタキも戦闘態勢に入り、まめおから託されたブキ…まめみのハイドラントを構えた。

ツネ「それはまめみのハイドラント…僕の愛用ブキの速さに、鈍足のハイドラントで太刀打ち出来るのかい?」

タキ「それは試してみれば分かる。」

ツネ「なるほどね…なら試させてもらうよ。」

タキ「…………………。」

ツネの黄色い瞳とタキのターコイズブルーの瞳は、お互いを捉えて離さない…

ツネ「…全力で潰す。」

両者とも睨み合ったまま、決戦の火蓋が切って落とされた!

タキ「喰らえっ!」

ツネ「何の!」

重いハイドラントを器用に扱い攻撃するタキ

その弾幕を軽い身のこなしでかわして反撃するツネ

2人は互角でなかなか決着が付かず…お互いに疲労の色が見えていた…

それでも2人は戦いをやめなかった…やめるわけにはいかなかった

お互いに信念を抱き…それを貫く為に戦い続けた。

タキ「くっ…!」

ツネ「これで決める!」

そう言ってツネがこちらへ向かってくる…

速さではツネに勝てない…けど…

タキ「これでどうだ!」

ツネが向かってくる距離を計算して…タキはロボットボムを放った!

ツネ「どこに投げている、そんなの僕には当たらないよ。」

しかし!

タキ「かかったな!」

ツネ「!!」

ロボットボムがツネの足下ギリギリで爆発し、インクに足を取られた瞬間!

物陰に隠れてチャージを始め…

タキ「これで…決着をつけるんだ!」

そう言ってツネに攻撃をした!

ツネ「くっ…うっ…!」

しかしツネは脱出し、さらに近づいてくる!

タキ「今だ!」

そう言うとタキは高く飛び上がり…インクを身に纏ってスペシャルのスーパーチャクチをした!

ツネ「ぐっ…うぁぁ…!」

タキ「今のうちに…!」

まめみ「………………。」

タキ「まめみ…。」

スミソインクを飲ませようと、まめみに近づいたその時!

ツネ「…貴…様…きさまぁぁ!!」

タキ「ぐっ…!?」

インクの中から飛び出してきたツネは、そのままタキの胸ぐらを掴み…2人は緩やかな坂から転げ落ちた!

ツネ「この…この…このっ…!」

タキ「ツネ…何をする…やめろ…!」

胸ぐらを掴んだままのツネに対して激しく抵抗するタキ…ふと見ると、ツネの瞳は黄色いままなのにその瞳孔はタコの目になっていた!

ツネ「僕をここまで怒らせるとはね……貴様が…貴様が居なければ…まめみは僕と……!」

そう言うと…ツネはタキの上に馬乗りになり…右手を握りしめて振り上げた…

そして…

バキッ!!タキの左頬を思いきり殴った!

タキ「ぐっ…か…はぁ…!」

ツネ「貴様が…貴様が僕からまめみを…!」

バキッ…!バキッ…!

ツネは何度もタキを殴り、彼の口の中が切れて血の味が口内に広がる…。

タキ「やめ…ろって…言ってんだろ!」

バキッ…!

そう言うとタキはツネを殴り返した!

ツネ「ぐっ…この…!」

殴られた事でツネの口の端が切れ、マスクを赤く染めていく…

タキ「殴られてばかりでいると…思うな…!」

続けてタキは何度も殴り返し…ツネもマスクを外して再び殴り…最終的にはタキがツネの腹を蹴って彼を上からどかした。

ツネ「ぐっ…うっ…ゲホゲホッ…!」

ビシャ…口からグレーのインクを吐き出し、胸の辺りに手を当ててむせるツネ、一方タキも、口内に溜まった血をその場にベッと吐き捨てて…

よろよろしつつも立ち上がり…一歩…また一歩とまめみの元へ歩を進める…

ツネはそれを阻止したかったが…今の彼にはそこまでの力は残されておらず、そのままその場にうつぶせに倒れ込んだ。

タキ「まめみ…。」

まめみ「………………。」

彼女の前に座り、声をかけたがまめみは起きない

この時…タキの脳裏にはある光景が思い出された…

ある日、プラベでナワバリをしていた2人…

タキ『プラベでナワバリは珍しいね。』

まめみ『やりたい事があったからね…タキ君、攻撃しないで待ってて。』

タキ『ん、分かった。』

一体何をするんだろう…不思議に思っていたタキだが…

まめみ『はい、書けた。』

タキ『あっ…。』

足下を見ると…そこにはパブロで大きく描かれたハートが…

まめみ『ふふっ…タキ君、大好きだよ!』

そう言ってパブロを持ちながら、頬を赤く染めて優しく笑うまめみが可愛くて愛おしくて…

タキ『まめみ…ありがとう、俺も大好きだよ。』

そう言って、タキはまめみを抱き寄せて優しくキスをして…

まめみ『ふふっ…。』

その時の嬉しそうなまめみは、タキの好きな笑顔だった。

あの時の様な明るくて暖かい…優しい笑顔をまた見せて…まめみ…

タキ「今…元に戻してあげる…。」

そう言ってF-190のポケットからスミソインクの入った小瓶を1本取り出すと、中では黄緑のスミソインクが揺れていて…タキは蓋を開けてまめみの体を起こし、口にスミソインクを全て含ませた。

しかし…

まめみ「うっ…ゴホッ…う…ぇ……っ……!」

眉間に皺を寄せてまめみの顔は歪み、そのまま口からスミソインクを吐き出してしまった!

タキ「まめみ、どうして…!?」

驚くタキだったが…ツネがゆっくりと上半身を起こして口を開いた…。

ツネ「…馬鹿め…他人のインクが口に入るのはとても気持ち悪い感覚……吐き出すのは当然だろう…。」

タキ「そうか……くそっ…どうすれば……!」

混乱するタキだったが…その時、脳裏にある考えが浮かんだ!

まめみ「う…ぅ…。」

目を覚ましかけてるまめみ…ここで逃したら、もうチャンスは無い…!

タキ「…まめみ、ごめん…でもまめみを救う為なんだ…!」

そう言うと、タキは最後の1本である小瓶の蓋を口で開け自らの口に含んだ…

そしてまめみの口にキスをして、そのままスミソインクを彼女の口に流し込んだ!

まめみ「ぐっ…うっ…ん…んうぅ…っ……!!」

口内に広がるスミソインクを激しく嫌がり暴れるまめみ

タキはそれを抱きしめながら必死に抑え、口を離さずキスをしたままで…

タキ「(まめみ…飲み込んでくれ…お願いだ…!)」

まめみ「ふっ…うぅ…んぅぅ……!!」

タキの胸にぎゅっと爪を立て涙を流して嫌がるまめみを、キスで口を塞いだまま体を強く抱きしめた。

タキ「(まめみ…飲んで元に戻って……俺と…俺と一緒に帰ろう……。)」

まめみ「んっ…うっ…ぅ……!」

タキ「(また一緒にごはん食べて…デートもして…ナワバリもして……ゲームで遊んで…星を見よう…まめみの大好きなチョコケーキいっぱい食べさせてあげる…。)」

大好きだよ…まめみ…

ずっと…ずっと永遠に…まめみだけが大好きだよ…

まめみ「んっ…くっ……!」

ゴクリ…

彼女の喉の音が…ゴクリと飲み込む音が聞こえた

タキはキスをやめて…ゆっくりと口を離した…

すると…!

まめみ「うっ…ぐっ…ゲボッ…ゴボォッ…!」

タキ「まめみ…大丈夫…!?」

ビシャッ…まめみはピンク色のインクを大量に吐いてしまった

タキが抱きかかえたまま背中をさすったが…

ゴボッ…ゲボッ…ビシャッ…ボタボタ…

しばらくインクを吐き続け…一通り吐き終えると再び大人しくなった

まめみ「…………………。」

彼女の顔は穏やかで…でも目は閉じていて…

タキ「まめみ…。」

彼女の頬を優しく撫でて、再び優しく口づけすると…

ピクッ…まめみの唇が動いて…

キスを止めてタキが目を開けると…

まめみ「ん…っ……。」

ゆっくりと…まめみの目が開かれた

その瞳は…赤では無くて…

綺麗な…彼の見慣れていた…

ずっと戻る事を待ち望んでいた…桃色だった。

タキ「まめみ…!」

まめみ「タキ…く…ん…。」

タキ「まめみ…よかったまめみ…!」

そう言うとタキはまめみを強く抱きしめた。

まめみ「あったかい…あたし…自分の意識が無い間も…タキ君の声…ずっと…聞こえてたよ…。」

タキ「俺の声が…?」

まめみ「ずっと…呼び続けてくれて…連れ戻してくれて…ありがとう…タキ君…。」

そう言うと、まめみはタキの背中に優しく手を回して抱きしめた。

ツネ「………………………。」

僕の催眠を破るとは……

…あのスミソインクの力もだけど……

…それだけ…2人の想いは強かったのか…

…………………………。

ツネの黄色の瞳は、タキとまめみをしっかりと見つめていて…

まめみ「タキ君…ごめんなさい…。」

タキ「ううん、俺こそ本当にごめんねまめみ…。」

まめみ「タキ君…大好きよ…もう二度と離れない。」

タキ「俺も大好きだよ、離さない…二度と離さない。」

そう言うとタキは、ワイシャツの胸ポケットからまめみのペンダントを取り出し、彼女の首にかけた。

まめみはペンダントを見て涙を流しつつも優しく笑い…タキもまた、左頬の傷の痛みも忘れて優しく笑った

そして2人は見つめ合い…優しくキスをかわした。

To be continued…