次の日…
タキ「んっ…。」
むにゅっ…
目が覚めたタキの手や顔には柔らかい感触…そこにはまめみのたわわな胸の膨らみがあった。
まめみ「すぅ…すぅ…。」
タキ「(う…わぁ…すっごい至福…。)」
規則正しい寝息を立てて眠っているまめみ…普段は自分の腕の中で眠るまめみだが、今は自分が彼女の腕の中…
眠っているまめみはいつもと同じく温かくていい匂いがして…タキは嬉しさと安心感に包まれつつ、彼女の胸を小さな手で優しくぎゅっぎゅっと揉みながら顔をうずめてすりすりすると、もぞもぞしながらまめみが目を覚まし…
まめみ「んっ…。」
タキ「おはよう、まめみ。」
まめみ「おはよう、タキ君。」
まだ眠そうにしつつもまめみは優しく笑ってタキを抱きしめ、幸せの一時を過ごした。
その後起きて着替えて部屋から出ると、既に起きて着替えたツネがリビングのソファに座ってテレビを見ていた
ツネ「おはよう、まめみ。」
まめみ「おはよう、ツっくん。」
タキ「おれにはあいさつないのかよ。」
ツネ「きみにするあいさつはないよ。」
そう言ってお互いに睨み合う2人だが、小さな子供なのでただのじゃれあいにしか見えず…
まめみ「ほら、喧嘩しないの…さて、朝ご飯にしなきゃね。」
そう言ってまめみは朝ご飯を準備して、3人で食べた。
その後、朝ご飯を食べ終えるとまめみは何やら準備を始めた…
タキ「まめみ、どうかしたの?」
まめみ「あ、言ってなかったね…実は今日、とぐろさんが来る約束の日なの。」
ツネ「とぐろさん…?」
まめみ「うん、仲良しのオオモノシャケだよ。」
ツネ「そういえば…まえにおじいさまのとりひきでシャケトばへいったときに、シャケのおさのそばにおおきなヘビがいたな…たしかとぐろってよばれてた、かれがそうか…。」
タキ「でもだいじょうぶかな…おれたちのすがたをみてびっくりしちゃいそう…。」
まめみ「でも事情を伝えればきっと大丈夫だよ。」
ツネ「そうだといいんだけど…。」
本当に大丈夫なのか?不安を拭いきれない2人であったが、まめみの楽しみにしている様子を見ると自然とその不安も和らいでいった。
しばらくして…
コンコン…いつもの様に外からガラス戸を優しく叩く音が聞こえて、まめみが開けると…
まめみ「いらっしゃい、とぐろさん!」
とぐろ「お邪魔するぜ、今日はシャケ子とドスコイまるも一緒だ。」
シャケ子「こんにちは、まめみちゃん!」
ドスコイまる「キュッキュッ!」
まめみ「シャケ子さん!ドスコイまる~!」
嬉しそうにシャケ子と抱き合うまめみ、ドスコイまるも抱っこされてとても嬉しそうに喜んでいる中…とぐろは匂いでタキとツネがいる事に気づいた。
とぐろ「ん、タキとあの孫…ツネが来ているのか。」
まめみ「うん、来てるというか…一時的に同居というか…。」
シャケ子「同居?」
とぐろ「おいおいどういう事だ?」
まめみ「詳しくは中で…とにかく上がって。」
一体どういう事なのか…?不思議に思うとぐろとシャケ子はドスコイまるを連れて上がった。
すると…
タキ「や…やぁ…とぐろさん…シャケ子さん…ドスコイまる…。」
ツネ「……………。」
とぐろ「こ…これは一体!?」
シャケ子「ど…どうしちゃったのタキ君!?それに隣の男の子は、確かあの方のお孫さんの…?」
まめみ「実は…」
タキがドスコイまるのシャボン玉遊びを相手している間、まめみは大まかに説明をした。
ヒーローである事を知られてはいけない故に語れない部分も多いが…それでもとぐろとシャケ子は理解を示してくれた。
とぐろ「まめみがタコワサ殿を知っているのなら話は早いが、それにしてもさすがオクタリアン…技術が進んでいるな。」
シャケ子「でも数日で元に戻れるならよかったわね、ずっとこのままだったら大変だもの。」
ツネ「まさかあなたがたとこんなかたちであうことになるとはね…えんってふしぎだね…なにがおこるかわからない。」
まめみ「うん、そうだねツっくん。」
とぐろ「一時はお前さん達との間で色々あったみたいだが、今は落ち着いてるみたいだし安心した。ツネ、お前さんがあっしらと交流する気持ちがあるんなら…いつでも歓迎するぜ。」
ツネ「…まめみいがいにはきょうみがない…でも…まめみがみているあたらしいせかいをみていくのもわるくない…こんどはプライベートでいっしょにほうもんさせてもらうよ。」
素直ではないツネだが、それでも最近は少しずつ年相応な顔も見せるようになってきた…まめみ達はそんなツネの様子に優しく笑うのだった。
夕方…とぐろ達が帰ったあと、まめみは2人と一緒に晩ごはんのカレーを作った。
タキ「カレーおいしい!」
ツネ「ん…もしかしてまめみ、チョコをいれた?」
まめみ「あ、気づいたんだね。普段は入れないんだけど、2人にはちょっと辛いかなって思って。」
こんな大変な状況でも変わらず些細な気遣いをしてくれるまめみに、2人は心から感謝していた。
その後…お風呂に入り歯を磨いた2人。
タキ「ふあぁ…きょうはもうねるよ…おやすみ…。」
まめみ「おやすみ、タキ君。」
ツネ「…………………。」
タキは自分の部屋へ行って眠ってしまったが…何やらツネの様子がおかしい…。
まめみ「ツっくん、どうしたの?」
ツネ「…いや、だいじょうぶ…。」
まめみ「でも顔色が悪いよ…。」
ツネ「…ほんとうにだいじょうぶ…おやすみ…まめみ…。」
まめみ「あっ、ツっくん…!」
そう言うとツネは走ってまめみの部屋に行ってしまった
まめみは心配だったが、ツネが大丈夫と言ったのでひとまずまめおの部屋に向かい、ベッドに入って横になった。
一方ツネは、まめみのベッドで布団を被りつつも酷く怯えた様子で…
ツネ「………っ………!」
実はツネ、不定期で酷く情緒不安定になり眠れない時があるのだ…その為エン特製のツネ専用に調合された睡眠薬を飲んで寝るのだが、まさかこんな事になるとは思っていなかった2日前…薬は自宅に置いたままでいたので今は手元に無い…。
沸き上がる不安を抑えようと目をぎゅっと瞑ったが、それでも不安は治まらなくて……
彼の不安は、早くして両親を亡くしたトラウマも関係している…
特にウト族の母の死は、まだ8歳だった幼いツネにとっては大きな心の傷となり…ある日突然エンやざくろ、タコワサを…自分の大切な存在を失うのでは…という恐怖と言う名の不安を引き起こす原因にもなっていた。
ドクン…ドクン…鼓動が速く息は苦しい…
嫌だ…怖い…!ツネの体はガタガタと震え、恐怖でぎゅっと目を瞑り、歯を食い縛ってうずくまった…。
すると…
ガチャ…パタン…扉が開いて閉まる音が聞こえて…
ふわっ…温かい感覚が掛け布団越しに伝わってくる…
まめみ「ツっくん。」
その温かさの主はまめみ…さっきのツネの様子が気がかりで眠れずに来たのだ。
ツネ「まめ…み…!」
まめみ「ツっくん…無理をしないで…いくらでも甘えていいんだよ。」
ツネ「まめみ…まめみ…ぃ…っ…!」
普段は落ち着いていてあまり動じないツネだが、今の彼は酷く青ざめた顔をしていて…その黄色い瞳からは大粒の涙が止めどなく溢れ、痛いくらいぎゅっと強くしがみついていて…まめみは何も言わず、ツネを優しく抱きしめて頭を撫でた。
まめみ「よしよし…何かあったのかな。」
ツネ「…くすり…ない…んだ…。」
まめみ「薬…何の薬…?」
ツネ「…つよい…すいみんやく…。」
まめみ「強い睡眠薬…あたしが記憶を変えられてた時に飲ませてもらったあの睡眠薬の事?」
ツネ「…うん…。」
まめみ「ツっくん…どうしてあんな強い睡眠薬を…?」
ツネ「……むかしのことが…げんいんなんだ…。」
そう言うと…ツネはゆっくりと話し始めた…
母親の死によるショック…それ故に大事な人をいつ失うんじゃ無いかという恐怖…まめみはツネを抱きしめて背中を撫でたまま、真剣な表情で聞いていた…。
まめみ「そうだったのね…大事な人を亡くすショック、あたしもまめおも分かるよ。あたし達もお母さんを亡くした時はすごくショックだった…いっぱい泣いて悲しんで…どうやって生きていこうって毎日が不安だった……でもスルメさんとよっちゃんに出会って助けられて今がある。よっちゃん…あたしのお父さんは、あたしが不安になるといつもこうやってお話を聞いてずっと抱きしめて背中を撫でてくれてた…だからあたしもツっくんのお話を聞いて、少しでも力になりたかったの。」
ツネ「まめみ…。」
まめみ「大丈夫、あたしはここにいる…タコワサもツっくんの大切な仲間達も絶対にツっくんの傍を離れたりしないよ。だから信じて、つらい時は1人で抱えないであたし達を頼って。」
あぁ…温かい…
昔から変わらない…君の優しさ…ううん…昔よりさらに温かさは増して…僕を包み込んでくれる…
お爺様やエン…ざくろとはまた違う安心感の温もり…
ツネ「ありがとう…まめみ…。」
そう言ってまめみにさらに密着して抱きしめるツネの頬を伝って涙が零れ落ち…まめみのパジャマに消えていった…。
To be continued…