地上で異常気象が起きている頃…タキはざくろと施設内を歩き…大きな実験室に辿り着いた。
タキ「ここは…!?」
ざくろ「タキ…ここ…なに…?」
地上では夜が明け、この場所へ来てから6日…ざくろの集中力と飲み込みの早さは凄まじく、まだ片言ではあるものの少しずつイカの言葉を覚えてきた。
タキ「分からない…いい加減ここの地図か何かを見つけないと…。」
そう言ってタキが近くにあった机に近づいたその時!
ガタッ!!
奥で大きな音がして…タキはすぐにざくろの元へ戻ってヒーローシューターを構えた!
ざくろ「タキ…!」
タキ「ざくろはブキを持ってない、俺の傍を離れないでね。」
ざくろ「うん…。」
カツン…カツン…奥からブーツの足音が聞こえて来る…
緊張が走る2人だったが…奥の暗闇から姿を現したのは…
サマーニャ「………………………。」
ざくろ「!!」
タキ「デラタコゾネス…!」
ざくろ「タキ…だめ…!」
銃口を向けたタキだが、ざくろがそれを止めた。
タキ「ざくろ…どうしたの…?」
ざくろ「このヒト…さまーにゃ…せ…ぱ…あたしのなかま!」
タキ「サマーニャせぱ…先輩かな…?とにかく、ざくろの仲間なんだね。」
ざくろ「うん…あたし…おはなしする…まて…て。」
タキ「うん…分かった…。」
まだ警戒しつつもタキはヒーローシューターを構えた手を下ろし、ざくろはゆっくりと近づいて行った。
サマーニャ「…………………。」
タキ「……………?」
暗闇で見えづらいが…タキはいつもとは違う雰囲気を感じていた…よく見ると肌や髪の色も全然違うし、生気を感じない…
しかしざくろは全く気にせず近づいて話しかけた。
ざくろ『サマーニャ先輩!よかった…無事だったんですね!彼は…タキは敵ではありません、あたし達と一緒に出口をさがしましょう!』
サマーニャ「…………………。」
ざくろ『サマーニャ先輩…?』
サマーニャ「………対象…発見……。」
ざくろ「え…?」
タキ「…ざくろ!!」
サマーニャ「…始末…する!」
そう言うとサマーニャはざくろにオクタシューターの銃口を向けて、引き金を引いた!
ドパパパパッ!!
間一髪の所でタキがざくろの腕を掴んで引き寄せ、彼女は撃たれずに済んだ。
ざくろ「タキ…なんで…!」
タキ「彼女はざくろを狙っている!明らかに様子が変だ!」
サマーニャ「…目の前の敵…始末する…!」
ざくろ『サマーニャ先輩…!?』
タキ「くっ…正気じゃない…!?ざくろ、下がっててくれ!」
ざくろ「で…でも…!」
タキ「早く!」
ざくろ「……っ………!!」
タキの言う通り、ざくろは奥の物陰に避難して…タキはヒーローシューターを構えると、サマーニャとの戦闘を開始した!
ドパパパパパパッ!!
サマーニャ「目の前の敵…我らの敵…!」
オクタシューターの弾幕が容赦なくタキを襲う、しかし彼も素早い身のこなしでかわしつつも反撃していく…
タキ「何故だ…貴女はざくろの先輩なんだろう…どうして彼女を狙う!?」
サマーニャ「倒す…敵は倒す…!」
タキ「くっ…何者かに操られているのか…!?」
ざくろ「(サマーニャ先輩…タキ…!)」
物陰から2人の戦いを見ているざくろ…
サマーニャは将軍護衛部隊の副隊長、故にその実力も折り紙付きで…そんな彼女を相手に互角にやりあえる者など、今までツネやエン以外にいなかった…
タキ…貴方は一体…!?
長期戦となり、タキにも疲労の色が見え始めたが…この時彼はサマーニャの様子に気づいた。
これだけの消耗戦にも関わらず…サマーニャは息を切らしてもいなければ、全く疲れた様子も無いのだ
いくら何でもおかしい…それにやはり生気を感じない…そんな事を思いつつ相手をしていたタキだが…
サマーニャ「隙あり!」
カラカラカラッ…ボンッ!!
タキ「しまった…くっ…!」
隙を突かれてスプラッシュボムを投げられ…その爆風を間一髪でかわしたタキだが、その時にバランスを崩して倒れてしまった!
ざくろ「タキ!」
タキ「うっ…ぐっ…!」
サマーニャ「これで終わりだ。」
カチャ…オクトシューターの銃口が、よろよろと立ち上がったタキを狙い…
タキ「……………!!」
サマーニャ「死ぬがいい。」
そう言って引き金を引こうとしたその時!
ざくろ『先輩、もうやめて下さい!!』
サマーニャ「!?」
タキ「ざくろ!!」
ざくろ『もう…もうやめて先輩…こんなの見たくない…!』
サマーニャ「…………………。」
タキ「ざくろ、どうして…!?」
ざくろ「このヒト…あたしのだいじな…せ…ぱい…だから…!」
サマーニャ「どきなさい。」
ざくろ『嫌!』
サマーニャ「…ならば…ここで一緒に死ぬがいい。」
ざくろ「……………!!」
タキ「ざくろ…やめろ…!」
サマーニャ「覚悟。」
そう言って再び引き金を引こうとするサマーニャに、ざくろは赤い瞳を真っ直ぐ向けてこう言った
ざくろ『サマーニャ先輩…先輩はどんな姿でも…あたしにとってはずっとずっと大切で…憧れの大好きな先輩です…。』
そう言って瞳を閉じたざくろ…
カチッ…引き金の音が聞こえて…
ドパパッ…!
銃口からインクが放たれたが…いつまで経っても何も起きない…
ざくろがそっと目を開けると…目の前のサマーニャがオクタシューターを下ろしていて、床には放たれたインクが…
サマーニャ「あ…あぁ…私…私…は…!」
タキ「……………!?」
ざくろ『先…輩…!?』
サマーニャ『……ざくろ…ざくろ…貴女なのね…無事だったのね…!』
ざくろ『先輩…サマーニャ先輩!』
サマーニャ『ざくろ!』
付けていたタコゾネスサングラスを外したサマーニャの瞳は温かくて…ざくろを強く抱きしめた!
ざくろ『先輩…サマーニャ先輩…!』
サマーニャ『ざくろ…よく無事で…よかったわ…!』
ざくろ『彼が…タキが助けてくれたんです。』
サマーニャ『彼が…!』
タキ「………………?」
そう言ってタキの方を見たサマーニャに、状況が理解出来ないタキはやや困惑した表情だったが…
サマーニャ「…貴方はヒーロー3号ですね…私の後輩を…ざくろを助けてくれた事、感謝します。」
ざくろ「……………!!」
ヒーロー3号…だからタキは強いんだ…ざくろはサマーニャの腕の中でそう思った…。
タキ「いえ…俺は…それよりも貴女はどうしてこんな事を…。」
サマーニャ「私は何者かによって、ざくろとここに連れ去られました…その後、私はこの施設に居る「消毒されたタコ」と呼ばれる者達によって連れ去られて消毒されたのです。」
タキ「消毒…!?」
ざくろ「ど…して…そんな…!」
サマーニャ「ざくろ、貴女もイカの言葉が分かる様になったのね…それなら話は早いわ。ここの施設の者達は我々タコを攫って消毒して自我を奪います、そして…培養液でクローンを複製しているのです。」
タキ「何だって…!?」
ざくろ「!!」
サマーニャ「私は僅かに残っていた自我を取り戻せたお陰で今はこうして話せているけど、こうなった以上…もう元には戻れないわ…。」
タキ「……っ……!」
ざくろ『そんな…嫌…嫌です先輩…一緒に帰りましょう!エンならきっと治してくれます…だから…だから…!』
サマーニャ『ざくろ…貴女は本当に優しい子ね…。』
そういうとサマーニャはざくろを思いっきり抱きしめ…彼女に自分の持っていたオクタシューターを託した。
ざくろ『先輩…!!』
サマーニャ『護身用よ、持って行きなさい。』
ざくろ『先ぱ…』
もう一度サマーニャを説得しようとしたその時!
UFOに乗ったタコスナイパーが現れた!
タキ「!!」
サマーニャ「現れたわね…!」
ざくろ『先輩…!』
サマーニャ「…タキさん、この子を…ざくろを頼みます…彼女は我々の希望…必ず守って下さい…。」
タキ「サマーニャさん…!」
サマーニャ「お前の相手は私よ!」
そう言うと、サマーニャは床を蹴って駆けだし…UFOに飛び乗ってタコスナイパーにしがみついた!
タコスナイパー「ギギ…グググ……!!」
サマーニャ「ざくろ…ありがとう…!」
そう言うと、サマーニャは足にぐっと力を入れて…
タコスナイパーを掴んだまま下に落ちていき……
ボチャンッ…!!消毒液の海に落ちて行った…。
タキ「!!」
ざくろ『せ…んぱ…先輩……サマーニャせんぱぁぁぁぁい!!』
ゴポゴポ…
消毒液の中で先にタコスナイパーが溶けていき…
サマーニャ自身の体も徐々に溶け始めた…
頭の中では走馬燈が流れ…
部隊の隊員であるタコゾネス達…
研究部隊であり…戦闘部隊時代の同期であったエン…
妹の様に可愛くて愛おしかったざくろ…
そして…自分の上司であり…ずっと恋心を抱き続けていた…ツネの姿が浮かんだ…
ツネ隊長…私はずっと…貴方の事を密かにお慕いしておりました…
叶うなら…最後にもう一目だけ…貴方に会いたかった……
ざくろ……どうか生きて……ツネ隊…長と……幸せ……に………
サマーニャの瞳は静かに閉じられ…体は完全に溶けて消えた…。
To be continued…