小説「Aiming for the ground Octo」最終話~戻った平穏~

テンタクルズやツミ達と別れ、ツネもざくろと共に地下へ戻った…後はタキとまめみが帰るだけだったが…

タキ「え…まだ1週間のパトロールが残ってる!?」

アタリメ「すまん3号…しかしパトロールもヒーローの役目、明日からまた頼むぞい…。」

タキ「うぅ…そんな…。」

まめみ「…あたしは大丈夫、帰りを待ってるよ。」

タキ「まめみ…ごめんね…。」

気丈に振る舞うまめみにタキは謝罪の言葉を口にすると…彼女を強く抱きしめ、おでこにキスをした後に項垂れつつも一足先にタコツボキャニオンへ向かった。

まめみ「…………………。」

アタリメ「まめみちゃん、ちょっといいかの?」

寂しそうにしつつまめみが帰ろうとすると、アタリメ司令が呼び止めた。

まめみ「アタリメさん、どうかしましたか…?」

不思議に思うまめみだったが、アタリメ司令は優しく笑ってまめみにある提案をした。

翌日…早朝からタキはパトロールの準備をしていた

アタリメ「さて、そろそろかの。」

タキ「…はい…。」

落ち込んでいるタキだったが、いつまでもそうしてる訳にはいかない…深呼吸をして気持ちを切り替えたその時!

まめみ「おはよう!」

タキ「まめみ!?」

後ろからまめみの声が聞こえて…驚いて振り返ったタキは更に驚いた顔をした。

目の前の彼女はヒーローレシーバー、ヒーローフーディー、タコゾネスブーツネオに身を包んだヒーロー4号の姿だったのだ。

まめみ「New!カラストンビ隊ヒーロー4号、参りました!」

タキ「まめみ、どうして…!?」

敬礼をするまめみに対して驚きを隠せないタキだったが…

アタリメ「ワシが頼んだんじゃよ、2人共あまりにもつらそうだったからの…まめみちゃんに来てもらえれば、2人で任務をこなしつつ一緒にいられるじゃろ。」

タキ「アタリメ司令…!」

まめみ「まだまだヒーローとしては未熟だけど…一生懸命頑張るからよろしくね。」

タキ「ありがとう…こちらこそよろしくね、まめみ。」

そう話すタキの表情は先程とは違い、とても嬉しそうなのだった。

昼間はタキに色々と教わりつつパトロールをしながら迎えた夜…

アタリメ司令も休憩小屋の別の部屋で休み、タキとまめみは同じ部屋で休んでいた

まめみ「すぅ…すぅ…。」

ぐっすりと眠るまめみだが、タキは一緒にパトロール出来る嬉しさと同時に、1週間振りの再会もあって欲情もしてしまい…

タキ「はぁ…まめ…み……。」

しかし自分は彼女と共にパトロール中の身、今は我慢……そう思いつつもタキはまめみに近づいて…後ろからそっと抱きしめ、彼女の首筋に唇を這わせてキスをしたのだった

まめみ「ん…。」

少しもぞもぞして…寝返りを打ち自分の方を向いたものの、まめみは全く起きる気配は無く…

ヒーローフーディーを脱いだ後の無防備な姿…綺麗な首筋…下げられているペンダントの緑のハートを見てタキはターコイズブルーの目を細め、再びまめみにキスをした。

タキ「まめみ、大好きだよ……この世界を、まめみを守れてよかった。」

そう言うとタキはまめみをぎゅっと抱きしめて、彼女の温もりに安心しつつ…じきに眠りについた。

一方、ざくろはタコワサに今までの経緯を全て話していた。

タコワサ『サマーニャ………何という……事だ……。』

エン『……サマーニャ……。』

ツネ『…………………。』

ざくろ『………このオクタシューターは先輩が身投げする直前にあたしに託してくれた物…あたしは……っ………!』

タコスタンプ「ぴっ…ぴぃ!」

赤い瞳から大粒の涙をボロボロと流すざくろに、タコスタンプの赤ちゃんが頬に寄り添い、ツネとエンも寄り添った。

ツネ『お爺様、今はざくろを休ませたい。』

タコワサ『そうだな、ざくろ…よくぞ無事に帰ってきてくれた…今はゆっくり休め…。』

ざくろ『……はい……。』

タコワサ『エン、ざくろを部屋へ。』

エン『分かりました。』

そう言うとエンはざくろを連れて行き…

タコワサ『……ツネ、明日の朝…エンと共に部隊を連れて「ネルス像」へ行き、実験施設の調査及びサマーニャの遺品が無いかを見てきて欲しい。』

ツネ『分かった。』

タコワサ『主であるタルタル総帥とやらが居ないものの、危険を伴う事に変わりは無い…決して無理をせず、必ず帰って来るのだぞ。』

ツネ『ありがとう、お爺様。』

そう言うと2人は強く抱きしめ合った。

翌日…タキとまめみは今日もパトロールへ向かい…

ツネはいつもの戦闘服の上にまめみからプレゼントされたマッチャライトダウンを羽織り、エンと共にオクタリアンの部隊の中でも精鋭の者を率いてネルス像跡へ到着した。

エン『着きましたね。』

ツネ『うん…これより調査を開始する、全員気を引き締めて任務を全うせよ!』

彼がそう言うと、オクタリアン達は敬礼をしてツネに続き実験施設へ入って行った。

施設の中は危険な場所ばかりで、ツネ達は慎重に進んでいたが…

エン『ツネ、危ない!』

ズルッ!ツネが足を滑らせて落ちそうになり、エンが彼の手をしっかりと掴んだ。

ツネ『エン、ありがとう…!』

エン『こんなミス、貴方らしくないですね…行きますよ。』

ツネ『うん。』

そう言うとツネは体を大きく揺らして上がり、エンは勢いよくツネを空中へ放り投げ…ツネは軽い身のこなしで回転してストンと着地した。

エン『さすがツネ、抜群の運動神経です。』

ツネ『普段から鍛えてるからね…さて、任務を再開しよう。』

部下達の拍手を受けつつもツネは身なりを整え、一行は再び進んだ。

その後…施設のとある場所では『デッドフィッシュ』と呼ばれるオクタリアンの資料を見つけ、読んでみると…彼女はかつてDJを目指していたが、より自分の理想の音楽を追い求めて自ら望んで消毒されるという内容も書かれていた。

エン『デッドフィッシュ…この施設では彼女はそう呼ばれていた様ですね…。』

ツネ『自分の理想を追い求める為に自ら消毒を選んだ…僕には理解が出来ない…。』

そして…イブクロ消毒液の近くの部屋では…サマーニャの付けていたタコゾネスサングラスとプロテクターネオの胸当て部分を見つけ…

エン『ツネ、それはサマーニャの…。』

ツネ『サマーニャ…助けられなくてごめん…。』

そう言ってツネはひざまずいてそれらを拾い、その声は震えていた…。

その後もツネ達は施設内でいくつかの資料やサンプルを採り、タコワサの元へと戻ったのだった。

タルタル総帥との戦いから1週間後…タキ達はパトロールを終え、ツネも任務を終えて地上へ戻り平穏な日々が戻って来た。

まめみはタキとデートを楽しみ、ツネはざくろが地上で暮らしたいと言い始めた事に若干困ったが…彼女の強い意思にツネが折れ、結局タコワサを説得して一緒に暮らす事になった。

初夏の風が吹くハイカラスクエア…彼らの物語はまだまだ続いていく。

Aiming for the ground Octo~Fin~

海賊ダイルです。小説を読んで頂いた皆様、本当にありがとうございます!

小説「Aiming for the ground Octo」はこれにて完結しました。

今回の主人公は、イカでは無くタコ!しかもいきなり見知らぬ場所に連れ去られて、様々な危険を乗り越えて地上を目指すというスリル満載のお話でした。

皆様もご存知の通り、オクト・エキスパンションが舞台の今回のお話…そんな中で登場した「3人の主人公」をどう動かすかが最大のテーマでした。

ツミとルイ、ざくろ…3人がどの立ち位置で、どの様ないきさつで深海に連れてこられてストーリーを進めて行くか…そして合流して共に戦うか、何度も確認をしながら進めてきました。

そこで思いついたのが今回の「3ルート」でした。ツミは本来のオクトと同じ立ち位置、ルイは少し違ういきさつで違う場所からスタート、ざくろも別の理由で2人より先に連れてこられ…施設の中で彷徨う内にヒーロー3号であるタキと共に行動…それぞれが別々に動き、つらさを乗り越え力を合わせ…最大の敵であるタルタル総帥を倒して世界を救った…イカとタコ達が混ざり合った新たな世界と未来は彼らによって守られたのです。

ところで今回の小説のタイトルですが…簡単に訳すと「地上を目指して」という意味になります。本編が地上を目指すタコの物語なので、それに合わせて付けたこのタイトルはストレートですが気に入ってます。

さて、平和が戻った世界ですが…お話はまだまだ続きます。

新章からはまめみ達に加えて、新たに地上で暮らす事になったタコのざくろ、そしてツミやルイ達の日常を中心に進める予定です。

地下に残るエンとツミの関係も開かされる日が…そしてさらに新たな人物やシャケの世界でも変化が…?

それは新年から始まる新章を読んでからのお楽しみで。

それでは次のお話でお会いしましょう!

ここまで読んで頂きありがとうございました!

2019/12/31 海賊ダイル