小説「巡る虹色四季模様(日常編)」~分担の大切さ~

地上での初めてのお買い物から数日経ったある日の事…

ツネ『ざくろ。』

ざくろ『どうしたの、ツネ?』

ツネ『僕は君の為に部屋も家具も用意した。なのに…どうして僕のベッドに潜り込んで寝てるんだ!?』

ざくろ『だって安心するもん。』

ツネ『タコのぬいぐるみクッションも買ってあげただろう…。』

ざくろ『それだけじゃ落ち着かない。』

ツネ『それだけじゃない、ご飯食べ終えたら食器を洗わないし洗濯物も僕に任せっきりだし…居候する以上は家事も分担してやってもらわないと困る…。』

ざくろ『ツネ、あたしまめみに会いたい!』

ツネ『僕の話を聞け!』

ざくろ『ツネのお説教は将軍みたいに長いから嫌、行ってきまーす!』

ツネ『あ、待て…ざくろ!!』

そう言ってツネが呼び止めたが、既にざくろは靴を履いて出て行ってしまい…

自分のベッドに脱ぎ捨てられたざくろのパジャマを見て、ツネは深い溜め息を吐くのだった…。

そんな事も知らずにざくろはまめみ達の家へ向かい…

ピンポーン!インターホンを鳴らせばガチャッと鍵と扉が開いて…

まめみ「ざくろちゃん、こんにちは!」

ざくろ「まめみ、あそぼ!」

まめみ「ふふっ、とりあえず上がって。」

突然来たにも関わらず、まめみは優しい笑みで家の中へ迎え入れてくれて…リビングに行くとまめおがパーマネント・パブロの手入れをしていた。

まめお「お、ざくろ!」

ざくろ「まめお、何してるの?」

まめお「ブキの手入れをしてるんだ、筆の部分とかは特に気をつけてやらないといけないからな。」

パーマネント・パブロ「(あ、その部分がちょっと引っかかってるんだ…そこをお願い。)」

まめお「ここだな、櫛でよく梳かして…これでどうだ?」

パーマネント・パブロ「(スッキリしたしこれで大丈夫だ、ありがとうまめお。)」

まめお「どういたしまして、それじゃあ今日も頼むぜ!」

パーマネント・パブロ「(任せて!)」

ざくろ「まめお、すごい…ブキとお話してる。」

まめお「俺とまめみはこうやって会話出来るからな。」

ざくろ「ツネもその力、あた…ら話せたかな。」

まめみ「そっか…ツっくんはその力は受け継がなかったって言ってたもんね…。」

ざくろ「うん、ツネ…子供…頃に…気にしてた。」

まめみ「ツっくん…。」

まめお「俺達が会話出来る事でつらい思いをしたけど…ツネも自分がその力を持たない事に悩んで苦しんでたんだな…。」

ざくろ「2人共、今度…ツネのブキ…聞かせて。」

まめみ「ツっくんのクアッドホッパーブラックの声を聞かせればいいのかな?」

ざくろ「うん、ツネ…きっとよろ…こ…ぶ。」

まめみ「うん、もちろんいいよ。」

まめお「俺達で良ければいつでも大歓迎だぜ。」

ざくろ「ありがとう!」

まめみ「ふふっ、どういたしまして。」

まめお「そんじゃ、俺ナワバリ行ってくる。」

まめみ「うん、気をつけてね。」

まめお「ありがとな、まめみも無理すんなよ。」

まめみ「ありがとう、行ってらっしゃい!」

ざくろ「行て…らっしゃい!」

まめお「おう、行ってきます!」

嬉しそうにニカッと笑うと、まめおはナワバリへ出かけて行った。

ざくろ「それじゃまめみ、あそぼ。」

そう言ったざくろだが…

まめみ「ちょっとだけ待っててね、先に家事を済ませなきゃ。」

そう言うとまめみは洗面所へ向かって洗濯物を洗濯機に入れ始めた。

ざくろ「うん、待ってる。」

そう言ってざくろはソファに座って、まめみが読んでいる雑誌を読み始めた。

地下に居た頃には無かったイカの雑誌は魅力的で、ざくろは夢中になって読んでいて…30分程して洗濯が終わり、まめみが外に出て干し終えて戻って来た頃にざくろは雑誌を読み終えた。

まめみ「ふぅ…次は掃除機かけないと。」

ざくろ「え~あそぼ…よ!」

まめみ「ごめんねざくろちゃん、これが終わったらアイス食べに行こう?」

ざくろ「うん、分かった…。」

退屈していたざくろだが、素直にまめみの言う事を聞いて待つのだった。

その後…掃除機をかけ終えたまめみは準備をして、ざくろと一緒に街に出てアイスを食べたりショッピングをして過ごし…

お昼にスルメさんのお店へ向かった。

しかし、お店に入ろうとした時にざくろがまめみの服の裾をくいっと引っ張った。

まめみ「ざくろちゃん、どうかした?」

ざくろ「あたし…タコ…大丈夫かな…。」

まめみ「大丈夫だと思うよ、地上のイカ達はみんなちょっと変わった髪型のイカだと思ってるみたいだし…でも不安なら、裏口から入ろうか?」

ざくろ「裏口…?」

まめみ「このお店まめおとあたしのお父さん達が経営してるの、だから大丈夫だよ。」

ざくろ「それなら、あたしも安心…。」

ホッとしたところで、2人は裏口からお店へ…すると、ナワバリを終えてお店の手伝いをしていたまめおと会った。

まめお「あれ、まめみにざくろ…2人共どうした?」

まめみ「ざくろちゃん、表からだと不安だったみたいで…。」

まめお「そうだったのか…部屋も店の中じゃなくて奥の部屋にするか?」

まめみ「うん、それでお願い。」

まめお「分かった、スルメさんとよっちゃんにもそう伝えとく。」

まめみ「ありがとう。ざくろちゃん、こっちだよ。」

ざくろ「うん、ありがとう。」

まめみがざくろを連れて奥の部屋へ行き…まめおは事情を話して料理を作ってもらった。

待っている間、ざくろは少し落ち着かない様子で辺りをキョロキョロしていて…

まめみ「この部屋が珍しいかな?」

ざくろ「うん、でも…どちかと言うと…懐かし…。」

まめみ「懐かしい?」

ざくろ「ここ…和の雰囲気…あたし達の場所…似てる…。」

まめみ「そっか…オクタリアンの世界って和風がメインなんだっけ。」

ざくろ「うん。」

まめみ「あたし達のお母さんも、よく和食を作ってくれたり着物を着てたから…その文化が影響してたのかもだね。」

ざくろ「ツネのお母さん…いつも着物…着てた。」

まめみ「ツっくんのお母さんも?」

ざくろ「うん、優し…て…あたし達の事も…かわいがて…くれた。」

まめみ「そうなんだ、優しい人だったんだね。」

ざくろ「うん、あたしもエンも…大好き…だった。」

そんな話をしていると…扉が開いてまめおが入ってきた。

まめお「出来たから持ってきたぜ。」

2人「ありがとう。」

まめお「俺も昼休憩に入ったから、一緒に食っていいか?」

まめみ「うん、いいよ。」

ざくろ「美味…しそ。」

すると…今度はよっちゃんが入ってきた。

よっちゃん「卵焼きも作ったから持ってきたわ…あら、タコちゃんが来るなんて珍しいわね~!」

ざくろ「!?」

まめみ「えぇ…!?」

まめお「よっちゃん…今タコって…!?」

よっちゃん「えぇ、それがどうかしたのかしら?」

まめみ「ど…どうしてタコを知ってるの!?」

よっちゃん「最近は知らない子が多いみたいだけど、私とスルメさんが昔ショッツル鉱山に出稼ぎに出てた頃に、タコが何人か居たの。懐かしいわね~元気にしてるかしら。」

まめお「そうだったのか…。」

よっちゃん「最近スクエアの方ではまた見かける事が増えてきたみたいだけど、この辺では見なかったから…驚かせちゃってごめんね。」

ざくろ「いえ…大丈夫…です…。」

よっちゃん「そんな遠慮しないで、気軽に接してちょうだい。」

そう言って優しく笑うよっちゃんに、ざくろも緊張が解れて少しながらも優しく笑った。

まめみ「遅れちゃったけど紹介するね。この人はよっちゃん、あたしのお父さんだよ。よっちゃん、この子はざくろちゃん…ツっくんの幼馴染みなの。」

ざくろ「ざくろです…よろ…しく。」

よっちゃん「あら、ざくちゃんはツネ君の幼馴染みだったのね。2人共、いつでもお店にいらっしゃい。」

ざくろ「ありがと…よっちゃん。」

まだ少し片言なざくろだが、よっちゃんは優しく笑ってざくろの頭を撫でた。

その後は3人で食事をしながら会話も弾み、楽しい一時を過ごした。

お昼を食べ終えて家に戻ると、まめみは休む間もなく洗濯物を取り込んで畳み始め…ざくろはその様子を見ていた。

まめみ「お洗濯畳み終えたら、今夜のメニュー考えなくちゃ。」

そんな話をしなが洗濯物を畳むまめみに、ざくろは彼女をじっと見ながら口を開いた。

ざくろ「まめみ…どして遊び我慢して…まで…やるの?」

まめみ「まめおが居るし…それに、家族だからかな。」

ざくろ「家族…だから?」

まめみ「まめおが洗い物をしてくれたし、お風呂も洗って行ってくれた…だからあたしはお洗濯をして部屋をお掃除して、ご飯を作るの。」

ざくろ「2人で…分け…ての?」

まめみ「うん、2人で分担して…出来る時にお互いに出来る事をするんだよ。」

ざくろ「そうなんだ…。」

まめみとまめおは偉いなぁ…それなのにあたしは…ツネに全部任せっきりだった…

朝もツネがそのお話してたのに…自分の気持ちを優先しちゃってた…。

まめみ「ふぅ、後もう少し…。」

ざくろ「…あたしも手伝う。」

そう言うと、ざくろは手に取って畳み始めた。

まめみ「ざくろちゃん、ありがとう。」

優しく笑い合う2人…その後はあっという間に終わり、その後ざくろは帰り道にまめみと食べたアイス屋へ寄ってアイスケーキを買った。

家に到着してそっと扉を開けて入りリビングを覗き込むと、ツネが座ってタオルを畳んでいて…ざくろは後ろからツネに抱きつき、彼の背中に顔を埋め…

ツネ『…遅かったね。』

ざくろ『…ツネ…ごめんなさい…。』

そう言うと、ざくろはツネにそっとアイスケーキの入った箱を差し出した。

ツネ『これは…。』

ざくろ『あたし、これからはちゃんと洗い物とかもする…ツネと分担する、だから…ここに居させて…。』

今にも泣きそうな顔のざくろにツネは黄色の瞳を丸くして驚いた顔をしたが、すぐに僅かばかりの笑みを浮かべてざくろの頭を少し強めに撫でた。

ツネ『やっと僕の苦労が少しは分かってくれたみたいだね。これからは頼むよ、ざくろ。』

ざくろ『ツネ…うん!』

満面の笑みで返事をしたざくろは、ツネと共にタオルを畳み…その後は晩ごはんを一緒に作って食べたのだった。

To be continued…