エン『ふぅ…。』
この日、エンは研究室で新しいポイズンミストの研究をしていた。
たくさんの書物を読み、液体の調合をしながら研究を進めるエンだったが…ふと紫の液体が目にとまった時、タコスマホを取り出してある少女の写真を眺めた
紫の髪に赤い瞳…
戦闘部隊に所属するタコゾネスである彼女の動きは、まるで神話で読んだ「海神」の様で…
見かける度に見惚れていて…一度も話した事は無いが、いつしか自分の心は彼女に惹かれていた
地面に吸い込まれていく様に沈んでいく彼女を助けようと伸ばした手を彼女は取ろうとしていたが、既に体は飲み込まれていてそれが叶わず…
自分を見つめる赤い瞳は今でも脳裏に焼き付いていて離れない
無事を知って安堵はしたが、今も彼女には会えていない…
エンの紫の瞳は写真の少女…ツミの赤い瞳を映していて、少し寂しげな表情をしていた。
ある日の事…ツネがお菓子の小箱を持ってまめみ達の家にやってきた。
まめみ「あ、ツっくんいらっしゃい。」
ツネ「お菓子持ってきたんだ、一緒に食べよう?」
まめみ「ありがとう、上がって。」
ツネ「どういたしまして、それじゃあお邪魔するね。」
家に上がって手洗いを済ませてからリビングへ向かい、テーブルに座ってお菓子の箱をじっと見つめるまめみに優しく微笑みつつもツネが箱を開けると…
そこには大きなシューアイスがいくつか入っていた。
ツネ「オクタリアンのお店で出た新作だよ。」
まめみ「すごーい!ふわっふわで美味しそう!」
ツネ「大きいから切って食べようね。」
まめみ「うん、今ナイフとフォーク持ってくるね。」
そう言ってまめみは準備をして、ツネはそれらを受け取ると器用に切り始めた。
サクッ…トロッ…少し溶けかけのアイスがまた美味しそうで、2人の食欲をそそる
ツネ「どれ、こんな物かな?それじゃあまめみ、あーんして。」
そう言うとツネは大きなシューアイスをフォークで刺してまめみの口元へ持っていった。
まめみ「ふふっ、頂きます。」
嬉しそうなまめみは手を合わせると、小さな口を最大限に開けて食べようとした…
同じ頃、タキもまたアイスケーキの小箱を手にまめみの家まで来ていた。
タキ「そっと入ってびっくりさせちゃおう。」
ちょっとした悪戯心を胸に、タキは合鍵でそっと開けて入ったが…
まめみ「んっ…んうぅ…!」
タキ「(まめみ?…あれ、ツネの靴もある…遊びに来てるのか。)」
玄関を見てツネが居る事を確認しつつも、タキはリビングへと向かったが…
まめみ「んっ…はぁ…あん…ツっくん…!」
ツネ「これだとキツイ?」
タキ「(えっ…!?)」
何やらまめみの悩ましい声と、ツネの意味深な言葉が聞こえてくる…タキはそっと扉に耳を当てて聞いていたが…
まめみ「はぁ…あぁん…こんなおっきいの…入らないよぉ…!」
ツネ「ごめん、それじゃあこれならどうかな?」
まめみ「ん…美味しい…!」
ツネ「よかった、ん…本当だ、甘くて美味しいね。」
タキ「(つ、ツネ…こんな真っ昼間からまめみを!!)」
まめみ「うん、どんどんイっちゃう。」
この瞬間、タキの中でプツンと何かが切れる音がして…
タキ「ツネえぇぇぇぇーーー昼間からまめみに何をしてるんだーーーー!!」
怒ったタキはリビングのドアを乱暴に開けて入ってきたが…
ツネ「ん?」
まめみ「タキ君、どうしたの?」
タキ「…………えっ…?」
目の前に映った光景…それはツネがまめみにシューアイスを小さく切って食べさせている所であった。
突然怒りながら入って来たタキに対して、驚いて桃色の瞳を丸くするまめみと冷めた黄色の瞳を向けるツネ…
タキは自分の早とちりに一気に顔に熱が集まる感覚がして…
まめみ「な、何かあったのかな…?」
心配するまめみを見て、タキは自分がした勘違いに対して恥ずかしさと同時に強い罪悪感も覚えたが…
タキ「い、いや…大丈夫…それよりもこれ、まめみに買って来たんだ。」
まめみ「わぁ、アイスケーキ!ありがとうタキ君!」
自分の買ってきたアイスケーキの箱を手渡すと、満面の笑みで喜ぶ彼女がいて…それが今の彼にとっては唯一の救いだった。
ツネ「まめみ、アイスコーヒーあるかな?」
まめみ「あるよ、すぐに準備するね。」
そう言うとまめみは台所へ向かい…
手洗いを済ませたタキが椅子に座ると、ツネは相変わらず冷めた視線のまま口を開いて…
ツネ「さっき、何を想像してたの?」
タキ「何って…それは…その…。」
しどろもどろになってしまうタキに対してツネは少し意地悪な笑みを浮かべ、さらに追及した。
ツネ「僕達が何か如何わしい事をしてると思ったんだろう?」
タキ「ぐっ…!」
図星を突かれて言葉が出ないタキに対し、ツネは優越感に浸りながら満足そうな笑みを浮かべて…
ツネ「まぁ、まめみが可愛い声出してたからね…勘違いするのも無理ないと思うよ。…実際ちょっと興奮したし。」
タキ「…ツネえぇぇっ!」
ツネ「お怒りかい?」
まめみ「ちょっ…ちょっと止めてよ2人共っ!」
怒ったタキはツネに突っかかり、ツネはそれを余裕の笑みで煽り倒し…いつもの口喧嘩を始めた2人をまめみが慌てて止めに入って…いつもと変わらぬ日常がそこにあった。
その後、食べ終えた3人はまめおを迎えにスルメさんのお店へと向かっていた。
タキ「まめお、今日もお店の手伝い?」
まめみ「ううん、今日はスーちゃんとデートだよ。」
タキ「ふふっ、楽しめてるといいね。」
まめみ「また喧嘩してるかもだけどね、きっと楽しめたと思うよ。」
そんな話をしつつ歩いていたが…
ツネ「あれ、あそこに居るのはツミじゃないか。」
タキ「本当だ、何してるんだろう?」
3人が歩いていくと、そこには特に何もする事無く立っているツミが居て…
まめみ「ツミちゃん、こんにちは!」
そう言ってまめみが声をかけるとツミはゆっくりと振り返ったが、その格好はどこか独特で…
ツミ「…どうかしたのか?」
タキ「いや、その…独特なファッションだね…。」
ツネ「(さすがにこれは…。)」
ツミ「…私なりにオシャレというものをしてみたつもりなんだが…。」
まめみ「そうなんだね…。」
被っているエゾッコフリッパーは、流行に少し疎いツミなりのオシャレな格好らしいが…あまりにも独特なファッションに3人は言葉を失ってしまった。
ツミ「…やっぱりおかしかったか…。」
サングラスで表情こそ分かりづらいものの声音は少し落ち込んでいる様子で、それを見たまめみがツミの手を取って…
まめみ「ツミちゃん、あたしと来て!」
ツミ「なっ…ま、まめみ!?」
タキ「まめみ、どこへ行くの!?」
まめみ「アロワナモールに行ってくる、ちょっと待ってて!」
そう言い残してまめみはツミを連れて行ってしまい、残されたタキとツネはお互いの顔を見て「どうしてコイツと2人きりに…」と思いながら深いため息を吐いたのだった…。
To be continued…