小説「巡る虹色四季模様(日常編)」~今も残る微かな記憶~

ツミ「まめみ、どうして私なんかの為に…。」

まめみ「なんかじゃないよ、ツミちゃんの為だもの。」

そう言って優しく笑うまめみに、ツミの心はふんわりと包み込まれる様な温かさに包まれた

しばらくしてアロワナモールへ到着し…

ツミ「私に合う服が…あるのだろうか…。」

まめみ「うん、絶対にあるよ。」

ツミ「ありがとう…まめみ。」

まめみ「どういたしまして。あ、ツミちゃんどういう格好をしたいとかあるかな?」

ツミ「私は…普段はこんな口調だが…可愛いのは好きだ…。」

そう言って頬を赤らめて恥ずかしそうにするツミに、まめみは優しく笑った。

まめみ「分かった、それじゃあ女の子らしいファッションを探そうね。」

2人で色んなお店を回りながらイメージに合うファッションを選び、しばらくして気に入った服があったので試着をしてみると…

ツミ「ど…どうだ?」

まめみ「うん、すごく似合ってるよ!」

ツミ「そ、そうか…?ありがとう…。」

そう言ってまた恥ずかしそうにしつつ、その口元は僅かに笑みを浮かべていた。

同じ頃、残されたタキとツネは近くの椅子に座りながら2人を待っていた。

タキ「何でよりによってツネと2人きりにならないといけないんだ…。」

ツネ「それは僕が言いたいよ、こんなにも嫌に思える時間があるとはね…それに、相変わらずまめみの事を厭らしい目で見てたし。」

タキ「俺がそんな目でまめみを見るわけないだろ、ツネこそ…まめみを厭らしい目で見てマスク越しにニヤニヤしてたんじゃないの?」

ツネ「僕は君と違って残念な性格をしてないからね、まめみを見てたのは間違いないけど…それはあの明るくて可愛い笑顔だよ。」

タキ「俺だってまめみの天使の様な笑顔や可愛い仕草を見てたさ。」

ツネ「僕は他にもまめみのファッションや綺麗な脚を見ていたよ。」

タキ「俺の方がまめみをよく知ってるから言える…あの笑顔はまめみにしか出来ないし、ペンダントだって彼女だから似合うんだ。」

ツネ「残念な性格の君に言われるのはより一層腹が立つね、それに君の場合はまめみのペンダントを見つつ胸も見てるんだろう?」

タキ「見てないよ、ツネこそまめみの脚やお尻を見て厭らしい妄想してるんじゃないの?」

ツネ「僕がそんな事をするとでも?何度でも言ってあげるよ、君みたいに下心がある残念な性格では無いんだ。」

タキ「だから俺は見てない!」

マスク越しにニヤニヤしながらタキを煽り倒すツネに対して、たぉはまた挑発に乗ってしまいムキになって突っかかっていくのだった…。

一方…お買い物を終えた2人はタキとツネの所へと向かっていた。

ツミ「よかったのか、まめみ?私の服装なんだから自分で払えるんだが…。」

まめみ「いいの、せっかく仲良くなれたんだからプレゼントさせて。」

ツミ「ありがとう…まめみ。」

まめみ「どういたしまして。」

ツミの新しい服装はキングフリップメッシュにシャツノゾキピンク、エンペーサーcaoという女の子らしくも甘過ぎないコーデで、ボーイッシュなツミにとてもよく似合っている。

そう言って嬉しそうに笑うまめみに、ツミもまたクスッと笑った

地下に居た頃や深海に連れ去られる前までの孤独感はどこへやら…今まで経験の無い温かな感情がツミを包み込み、その心はどこか安心感に近い穏やかさを持つのだった。

しばらく歩いて漸く2人の元へ来たが…

ツネ「やっぱりああ言いつつも、まめみの事を厭らしい目で見てたじゃないか…ヒーローの癖に本当に残念な性格だな。」

タキ「そうやって散々言ってきたツネだって結局まめみの事を厭らしい目で見てたじゃん、もう少し自分を理解した方がいいんじゃない?」

ツネ「それは君も同じだろう?否定的な事ばかり言ってた割には、まめみの体をジロジロ見てたじゃないか。」

タキ「ツネだってまめみの胸やお尻を見て興奮してただろ。」

ツネ「君はまめみの首筋を見ながらドキドキして、胸が揺れる度にムラムラしてたんだろう!」

タキ「はぁ!?それならツネだって、まめみのくびれを見ながらマスク越しにニヤニヤしてるんだろ!」

ツネ「僕は君と違うから…」

まめみ「2人…共…!」

2人「…え?」

ビキビキしつつ残念な言い争いをしていた2人の元に聞こえてきた可愛らしい声の方を向くと、そこには頬を赤らめてプルプルするまめみとやや冷めた表情のツミが立っていた…

タキ「ま、まめみ…どうしてここに!?」

ツネ「買い物は…終わったのかな?」

まめみ「終わって戻ってきたら、2人が言い争いしてたの…。」

ツミ「…あんた達の争う内容があまりにも残念過ぎて…。」

まめみ「…………………。」

タキ「ま、まめみ違うんだ…これには訳が…!」

まめみ「タキ…君…ツっくん…!!」

ズゴゴゴゴゴ…滅多に本気で怒らないまめみだが、そこにはどす黒いオーラを纏っている(気がする)彼女が立っていて…

2人は青ざめた表情で震え上がった

ツネ「ま…まめみ…!」

タキ「まめみ落ち着いて…!」

まめみ「タキ君とツっくんの…エッチぃーーーーー!!」

2人「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁ!!」

そう言うと、まめみはパブロを取り出して振り回し、2人を制裁したのだった…。

その後まめみは何とか機嫌が直り、ツミと別れてまめおの元へ着いたが…

まめお「お、おい…。」

スー「タキもツネも…どうしたの、その姿!?」

ツネ「…………………。」

タキ「い、いやちょっとね…気にしないで…。」

制裁によってボロボロになった2人の姿がそこにあるのだった。

スーと別れ、まめおも加わり4人で歩き出して少し歩くと…ツミが夕焼けを見ていた。

まめみ「ツミちゃん。」

ツミ「まめみ。」

まめみ「どうかしたのかな、何だか悲しそう…。」

夕陽を見るツミの赤い瞳はどこか寂しげで、まめみは心配していた…

ツミ「…思い出していたんだ、ある人の事を…。」

まめみ「ある人…?」

まめお「どんな奴なんだ?」

ツミ「私が深海に引きずり込まれて行く時…助けようと手を差し伸べてくれた人がいた…。」

まめみ「えっ…?」

ツミ「もう既に体は飲み込まれていて手を伸ばす事も叶わなかったが…私の名前を呼びながら助けようとしてくれていた…けど、その人の名前も分からなければ記憶も曖昧で…。」

まめみ「そうだったのね…。」

タキ「部分的でも、何か特徴とかは覚えてないのかな?」

ツミ「ぼんやりとした記憶しかないが…紫の瞳…男性だった事しか分からない…。」

まめみ「ツっくん、心当たりは…?」

ツネ「難しいね…紫の瞳の男はたくさん居るから、もう少し特徴が分かれば探しやすいけど…。」

ツミ「すまない…これしか覚えていないんだ…。」

ツネ「そうか…。」

まめお「もしかしたら、時間が経てばまた思い出すかもな。」

まめみ「うん、そうだね。」

ツミ「そうだといいんだが…。」

まめみ「(ツミちゃん…。)」

そう言いながら再び夕陽を眺めるツミの赤い瞳は、儚げに少し揺れていた。

帰り際…

まめみ「ツミちゃん。」

ツミ「どうした?」

まめみ「これ…あたしの電話番号とイカラインのIDだよ、もしよかったら交換して欲しいな。」

ツミ「……………!」

あぁ…まただ…

この温かい気持ち…まめみ、あんたには人の心を動かす何かがあるんだな…。

まめみ「ダメ…かな…。」

そう言って恥ずかしそうに頬を赤らめて俯いてしまうまめみだったが…

ツミ「いや、そんな事は無い…ただ…こういうのは初めてだったから驚いてしまってな…滅多にやり取り出来ないかもしれないが…それでも良ければ交換しよう。」

そう言うとツミは自身のタコスマホを取り出して、自身の電話番号、イカラインのIDをまめみと交換をした。

まめみ「ありがとうツミちゃん…!」

嬉しそうに笑うまめみにツミの表情も自然と穏やかになり、その口角も僅かだが優しく笑みを浮かべていた。

その後ツミ達と別れ、まめお、タキと共に家に戻ったまめみ…

すると、夜にイカラインの通知音が鳴り…見るとツミからだった。

ツミ『今日は本当にありがとう、まめみ。…夕方の件…あれから1つ思い出した事があるんだ、その人は…黄色い髪だった…。』

まめみ『どういたしまして、一緒に選べて楽しかったよ。黄色い…髪…?』

ツミ『あぁ…黄色い髪に紫の瞳の男性だった…。…こんな話をしてしまってすまない、それじゃあまた。』

そう言って会話は終わってしまい、まめみは少しふぅ…とため息を吐きつつ天井を見た。

しかし…天井を見ている内に…まめみの脳内である人物の姿が浮かんだ。

まめみ「…もしかして…!」

タキ「まめみ、どうかしたの?」

まめお「晩飯まだ足りなかったか?」

まめみ「違うよ!ツミちゃんの探してる人、分かったかもしれない!」

タキ「えっ!?」

まめお「本当か!?」

まめみ「確信は無いけど、とにかくツっくんに連絡を…。」

そう言うと、まめみはツネに電話をかけた。

プルルルル…

ざくろ『もしもし、まめみ?』

まめみ「ざくろちゃん、ツっくんは居る?」

ざくろ『うん、今リビングでストレッチしてるよ。ちょっと待っててね。』

最初は全くイカの言葉を話せなかったざくろだが…今ではすっかり流暢に話せる様になり、詰まる事も無くなった。

少しして…

ツネ『もしもし、まめみ。』

まめみ「ツっくん、ツミちゃんからさっきメッセージが来て…あたし、探してる人が誰か分かったかもしれないの。」

ツネ『ツミが他に何か思い出したのかい?』

まめみ「うん、黄色い髪だったって言ってて…もしかしたらツミちゃんが捜してるのって、エンさんの事じゃないかな。」

ツネ『エン…確かに彼なら特徴が全て一致してるね。それにあの時にナンタイ山にも行っていたはず…ありがとうまめみ、僕からもエンに聞いてみるよ。』

まめみ「うん、分かった…ありがとうツっくん。」

そう言ってまめみは電話を切り、タキとまめおの方を向いた。

タキ「ツミの捜し人は…エンの事だったの?」

まめみ「可能性はあると思う、ツっくんからも聞いてみてくれるって。」

まめお「そうか、これで上手く繋がればいいんだけどな。」

まめみ「うん、そうだね。」

3人はそう話しつつ、解決を願うのだった。

To be continued…