小説「巡る虹色四季模様(日常編)」~新たな使命と結ばれた絆~

エンとツミの再会から数日後…地下にあるオクタリアン達の基地では、ルイに新たな配属命令が出ていた。

タコワサ『お前は男の戦闘部隊の中でも特に優秀な腕を持っている、副隊長のサマーニャを亡くした今…次の副隊長を決めるまではルイ、お前にツネの補佐を頼みたい。』

ルイ『分かりました、誠心誠意ツネ隊長の補佐を…そして将軍をお守りします。』

タコワサ『うむ、頼んだぞルイ。』

ルイ『はっ!』

ビシッと敬礼をすると、ルイは新たな配属先である「将軍護衛部隊」へと向かった。

部屋に入るとツネとざくろ、隊員であるタコゾネス達が待っていて…一斉にルイの方を見た。

ツネ『待っていたよルイ。話はお爺様から聞いている、君が居てくれると心強い…よろしく頼むよ。』

ざくろ『よろしくね、ルイ。』

ルイ『ありがとうございますツネ隊長、ざくろ…よろしくお願いします。』

皆に挨拶を済ませて打ち解けた所で、今日の訓練内容がツネによって読み上げられ…それぞれ練習場所へと向かった。

同じ頃、地上では…

タキ「そっか、ツミが言ってた男性の事はやっぱりエンだったんだね。無事に再会出来てよかった。」

まめみ「あたし達もホッとしたし、エンさんもツミちゃんも嬉しそうだったよ。」

タキ「エンの気持ち、いつかツミに届くといいね。」

まめみ「うん。」

そんな話をしながら、2人はお昼ご飯を食べる為にスルメさんのお店へ向かった。

中へ入ると…

スー「まめみ、タキ!」

まめみ「スーちゃん!」

タキ「あれ…どうしたのスー、その格好?」

スー「ふふっ、どう?」

目の前のスーはショートのゲソを後ろで纏めてポニーテールにしていて、ノースリーブにエプロン姿という涼し気な格好で…その両手には定食セットが乗ったお盆があった。

まめお「スー、出来たから次のも運んでくれー!」

スー「分かった、今行く!ごめん、後でまたゆっくり話そうね。」

そう言うとスーはお客さんの元へ行ってしまい…

まめみ「あたし達も座ろう。」

タキ「うん。」

2人も空いてる席へ座った。

まめみ「スーちゃん、最近お店の看板娘を始めたの。」

タキ「スーが?」

まめみ「まめおがお手伝いしてるから今までも一緒にやってたけど、お料理を運ぶ担当も始めたんだって。」

タキ「ふふっ、何だかスー楽しそう。」

まめみ「うん、それにまめおもよっちゃんのお手伝いでお料理を始めたしね。」

タキ「昔、まめおと2人で間違って塩入れちゃった上に焦がした卵焼きを作ったのが懐かしいなぁ…それが今では普通に美味しく作れる様になったんだからすごいよ。」

まめみ「家では今でもあたしが作るのがほとんどだけど、まめおが作ってくれる時もあるしね。」

タキ「まめおがこないだ作ってくれたサラダ美味しかった、あれまた食べたいな。」

まめみ「あれすごく美味しいよね、あたしからもお願いしておくよ。今度まめおに作り方も教わろうっと。」

タキ「まめみが作れる様になったら…今よりもさらにご飯が美味しくなるね。」

まめみ「ふふっ、タキ君ったら。」

時々お店のお手伝いをしたり、よっちゃんに新しい料理の作り方を教わっているまめみ…本人曰く「お嫁さんになれる頃までにもっとたくさん作れる様になっておきたい」との事で、それを聞いた時のタキの喜び様はとても大きかった。

そんな話をしている内にお店はピークを越え、お客さんが減って落ち着いてきた頃…スーがお水とメモを持ってやって来た。

スー「さっきはごめんね、2人は何にする?」

まめみ「あたしはいつもの煮魚定食がいいなぁ。」

タキ「「スー、とってもよく似合ってるよ。俺は魚フライ定食で。」

まめみ「ありがとうタキ、了解…それじゃあ待っててね。」

そう言うとスーはウィンクをして厨房へ戻り…

何気ない会話をしながら待っていると、まめおとスーが2人の注文した定食を持って来た。

スー「お待たせ、フライ定食よ。」

まめお「ほら、煮魚定食だぜ。お前用にちゃんと卵焼き付けて貰ったからな。」

まめみ「わーい、ありがとう!」

タキ「ありがとう、今日も美味しそう!」

2人「いただきます!」

手を合わせてそう言うと、2人は割り箸を手に取り食べ始めた。

まめみ「ん~美味しい!」

タキ「うん、今日も衣がサクサクで美味しい。」

まめお「今日のフライは俺が揚げたんだ。」

タキ「すごく上手だよまめお、ほんとに美味しいもの。」

まめお「へへっ、ありがとなタキ。」

そう話しながらニカッと笑うまめおは、すごく嬉しそうだ。

まめみ「卵焼きもふわっふわで甘くて最高。」

スー「ふふっ、よっちゃんが今日もたくさん作ったからね。」

すると、奥からスルメさんとよっちゃんも顔を出した。

スルメさん「まめみにタキ、作った漬物が余ったから持って帰るかいな?」

まめみ「うん、持ってく!」

スルメさん「分かった、包んでおくでー!」

タキ「ありがとうスルメさん。」

よっちゃん「卵焼きもストック分を作ったから、持って行って食べてちょうだい。」

まめみ「ありがとうよっちゃん!」

よっちゃん「どういたしまして。あ、この前まめみちゃんが教えてくれたチーズオムレツ…あれを作って試しにお店で出してみたら大好評だったのよ~!」

まめみ「よかった~嬉しい!」

よっちゃん「よければあれ、お店の新しいメニューに追加してもいいかしら?」

まめみ「もちろんいいよ、本当にありがとうよっちゃん。」

よっちゃん「どういたしまして、私こそ本当にありがとうね。」

まめみ「えへへ、どういたしまして。」

そう話すよっちゃんとまめみはとても嬉しそうな笑顔で…見ていたタキ達も自然と笑顔になるのだった。

地上でまめみ達がのんびりと過ごしている中、地下では訓練を終えたツネ達が自室へ戻って思い思いの時間を過ごしていた。

ざくろ『ふぅ…サッパリした。』

プッチン「ぴっ、ぴっ!」

ざくろ『プッチン、訓練中いい子にしてたね。』

プッチン「ぴぃ~。」

そう言って人差し指で優しく撫でると、プッチンは気持ちよさそうにしている

ツネ『お疲れざくろ、プリン食べるかい?』

ざくろ『うん、食べる。』

ツネの部屋で一緒に寛ぐざくろに冷蔵庫からプリンを2つ出し、スプーンを用意してテーブルへ置いて…2人で食べ始めた。

ツネ『それにしても…ルイはさすがだね。』

ざくろ『ルイ程の実力があれば、副隊長を任せてもいいんじゃないの?』

プリンを一口頬ばり、プッチンにも小さくすくって食べさせているざくろを見ながら、ツネは口の中のプリンを飲み込んで口を開いた。

ツネ『確かに実力はあるさ、けど…状況判断や意見をかわすのに性別が違う方がいいだろうとのお爺様の見解だ。僕だけでは気づかなった細かい部分を、サマーニャが気づいてサポートしてくれていた…彼女と同じくらいの実力を持つタコゾネス…ざくろ、将来的には君にそれを頼みたいと思っている。』

ざくろ『えぇっ…あたしに!?』

驚いて赤い瞳を丸くするざくろに対して、ツネの黄色い瞳は微動だにせず真剣な眼差しで…

ツネ『ざくろは確実に実力をつけている…それは幼い頃からずっと見ていた僕とエンがよく知っている。今すぐではないけど、その時が来たら頼めるかい…ざくろ?』

いつも自分をからかったり、すぐ意地悪するツネだが…この時の彼はそれが全くなくて…心の底から自分を信頼し実力を認めてくれている…ざくろはそれを感じ取り、胸の高鳴りと共に喜びが沸き上がった。

ざくろ『…ありがとうツネ、あたし…その時が来たら全力でツネをサポートするよ。サマーニャ先輩が自分の命と引き換えに助けてくれたこの命、先輩の分もあたしは生きて必ずツネの助けになってみせる。』

その赤い瞳には強い決意が籠っていて…ツネの黄色の瞳はそれを真っすぐと見つめながら、口元は優しく笑みを浮かべた。

ツネ『ありがとうざくろ、君が居てくれてよかった。』

そう話すツネの表情はとても穏やかで…エンと自分…タコワサ…一部の限られた人しか見れない彼の素顔がそこにあった。

一方、ルイはシャワーを浴び終えてから部屋を出て廊下を歩いていた。

ルイ『(さすが将軍護衛部隊…戦闘部隊よりもキツイ訓練をしているな…。)』

とはいえ自分も早く慣れて鍛えなければ…そんな事を考えながら歩いていたルイだが…

考え事をしながら歩いていたので、気が付くと普段は立ち寄らない研究部隊のエリアに入ってしまっていた。

早く戻らないと…そう思ったルイだが、ふと視線の先の部屋から見えている光に気が付いた。

淡く光る何かに興味が湧き、ゆっくりと近づいて行くと…

そこには淡い紫の霧を放つ液体が入ったビーカーが置いてあった。

何て綺麗なんだ…薄暗い部屋で光るその液体に見惚れていたルイはそっと手を伸ばしたが…

エン『それに触ってはいけません。』

ビクッ!

背後から突然聞こえた声にルイが驚いて振り返ると、そこには腕を組んで扉に寄り掛かるエンの姿があって…

ルイ『あっ…!』

声が聞こえるまで気配は一切無かった、研究部隊でありながら戦闘技術も秀でている…彼は相当な強者だとルイは感じた。

エン『その液体は新しいポイズンの実験物、触れたら大変な事になりますよ。』

ルイ『えぇっ…!』

驚いたルイはサッと手を引っ込め、それを見たエンはゆっくりと彼の元へ歩いてきた。

エン『おや、貴方は確か…先日まめみさんの相手をしていましたね。』

ルイ『あ…はい、僕はルイっていいます…。』

エン『私はエン…よろしくお願いします、ルイさん。』

ルイ『えっと…よろしく…お願いします。』

エン『どうかしましたか?』

どこか落ち着かない様子のルイに、エンは不思議そうな顔をして訪ねると…

ルイ『あ、いや…その…敬語でこうして話すのが何か慣れなくて…上司とかなら違うんですが…その…。』

しどろもどろになってしまうルイの様子を見て、エンは思わずクスッと笑ってしまい…優しい笑みを浮かべながら口を開いた。

エン『ふふっ…私は基本的に誰に対しても敬語ですからね。ですがルイさん…いや、ルイ…貴方がよければ呼び捨てでもタメ語でもいいですよ。』

ルイ『あ…ありがとう…その…エン…。けど、どうして僕を呼び捨てで…?あ、ダメなんじゃくて…気になって…。』

エン『貴方を見ていると、何だかツネやざくろの様で…要するにルイがまるで弟の様に見えてしまったんですよ。』

ルイ『えっ…えぇーそんな理由!?』

そう言って笑うエンにルイはほんのちょっぴり不満気に頬を膨らませつつも、どこか嬉しそうで…

エン『ふふっ…改めてよろしくお願いします、ルイ。』

ルイ『うん…僕こそよろしくね、エン。』

そう言うと2人は優しく笑い合い、握手を交わしたのだった。

To be continued…