地上でアマナツの家に居候する事になったツミは、地下での任務や予定がない日以外はカフェで皿洗いの手伝いをしたり、べリアの良き遊び相手になっていた
自宅の横にある小さな別宅を借りているので自分の時間も取れるし、必要以上に気を遣う必要も無いのでツミにとっては十分過ぎる程の環境だった。
そんなある日の事、カフェにまめみとスー、ペコがやって来て…
まめみ「あ、ツミちゃん。」
ツミ「まめお達は一緒じゃないのか?」
まめみ「うん、あたし達だけで進めてる話があるからね。」
ツミ「そうなのか…とにかく、ゆっくりしていってくれ。」
そう言うとツミは皿洗いに戻って行き、まめみ達はカフェのテーブルに座って話を始めた。
スー「それじゃあ、まめみはこれをお願い。」
まめみ「うん、任せて。」
ペコ「喜んでもらえるといいわね。」
まめみ「うん。」
楽しそうにガールズトークをする3人の様子を見つつ、ツミは皿洗いをしていたが…その心は不思議と穏やかだった。
その後3人は軽食を済ませてカフェを後にして、ツミも訓練の為に地下へと戻ったのだった。
その日の夜…
まめお「まめみ、作るのはいいけど無理すんなよ。」
まめみ「うん、ありがとう。」
本を見つつ、まめみは針と糸で一生懸命に何かを縫っていたが…
数日後…毎日ほとんど眠らずに縫物をしていたまめみは体調を崩していた…。
まめお「だから無理すんなって言っただろ。」
まめみ「ん…うぅ…。」
まめお「顔色が悪いぞ…大丈夫か?」
まめみ「う…気持ち悪い…。」
そんな会話をしていると、タキが遊びに来た。
タキ「まめみ、一緒にナワバリ行こ…ってどうしたの?」
まめお「悪いタキ、まめみ具合悪くてさ…。」
タキ「酷く顔色が悪いね…一体何が…」
心配したタキが近づいたその時…
まめみ「うぅ…ごめん…!」
そう言うと、まめみは手で口元を抑えてトイレに向かって走っていき…
まめお「まめみ、大丈夫か?」
まめみ「うっ…ごほごほっ…!」
タキ「まめみ…。」
心配してリビングから声をかけたまめおだったが、トイレからは代わりに吐いてしまって咳き込んでいるまめみの声が聞こえてきた…。
しばらくして落ち着いたまめみがトイレから出てきたが…その顔は酷く青ざめていて…
まめお「落ち着いたのか…?」
まめみ「う…ん…吐き気は治まった…。」
タキ「水でも飲む…?」
まめみ「ううん…ごめんね…今はいい…。」
そう言うとまめみはよろよろと歩きながら自分の部屋へ戻り、ベッドに横になって眠ってしまった…。
タキ「俺、今日は帰るよ…力になれなくてごめんね…。」
まめお「いや、大丈夫だ。ごめんなタキ…。」
タキ「ううん、大丈夫…まめみにお大事にって伝えといて。」
まめお「分かった。」
椅子から立ち上がり玄関へ向かうタキだったが、ふとテーブルに赤ちゃんグッズの作り方の本が乗っている事に気がついた。
タキ「(何であんな本が…?)」
不思議に思ったタキだがその時は深く考えず、そのまま靴を履いて帰り…見送ったまめおはまめみの部屋へ行き、りらびっとを抱きながら眠っているまめみの頭を優しく撫でたのだった。
しかし、タキは帰ってきてから「ある事」が頭を過った…
確か妊娠すると、つわりでインクを吐いてしまう事もあるとか…
まめお『悪いタキ、まめみ具合悪くてさ…。』
まめおの言っていた言葉と具合の悪いまめみの様子が思い出されて…
タキ「ま…まさか…まめみ!?」
思い当たる節はある、むしろ思い当たる節しかない…
彼女とは生涯を共に過ごすと誓った、子供が出来てもそれは喜ばしい事で…
そうか、まめみとの間に子供が…自分は父親になるのか…
嬉しさで頬が緩みまくるタキだったが…ハッとした顔になり考え始めた。
まずはプロポーズをしなければ!
それなりのお店に連れて行って…花束と指輪も用意して…プロポーズは何て言おうか…
子供の服とかも準備しないと…男の子かな…それとも女の子…?
あぁ…幸せで溶けそう…!
そんな事を考えるタキの表情は完全に緩み切っていて…頬を赤らめつつニヤニヤしているのだった…。
一方、ツネもまめみの所へ来たものの…具合が悪いと知り心配していた
ツネ「酷く顔色が悪い…まめみ、水分は摂れてる?」
まめみ「ん…さっき漸く水を飲めたよ…。」
まめお「何か食べれそうか?」
まめみ「柔らかいのなら…。」
ツネ「まめお、りんごはあるかい?」
まめお「冷蔵庫にあるぜ。」
ツネ「僕がりんごを磨ってあげる、ちょっと台所を借りるよ。」
そう言って台所へ向かい、りんごを磨り始めたツネ…
少しして磨ったりんごをまめみの元に持っていき、スプーンで口に運んだ。
まめみ「ん、美味しい…。」
ツネ「よかった、無理しないで少しずつ食べていこうね。」
まめみ「うん、ありがとうツっくん…。」
ツネ「どういたしまして。」
優しく笑いながらまめみを撫でるツネの手は温かくて、まめみは安心感に包まれた。そしてツネはそのまま泊まり、まめおと2人で看病したのだった。
数日後…
まめみ「ふぅ…やっと完成した。」
まめお「どれ…おっ、すげぇじゃん!」
まめみ「ふふっ、喜んでくれるかな。」
まめお「きっと喜ぶと思うぜ。」
そんな会話をしつつ、2人は出来上がった赤ちゃん用のお出かけ帽子を見ていた。
一方タキは…
タキ「よし、花束は用意した…指輪は後からになっちゃうけど…とにかくプロポーズして…。」
ツネ「プロポーズ?」
タキ「うあぁぁぁぁぁ!?」
驚いたタキが振り返ると、そこには怪訝な顔をするツネが居て…
ツネ「何て声を出してるんだ。」
タキ「つ…ツネ…どうしてここに…!?」
ツネ「それはこっちが聞きたいね、君こそ何をしてるんだい?」
タキ「お…俺はまめ…」
ここまで言ってタキはハッとした
相手はツネ…もしまめみを妊娠させてしまった、これからプロポーズしに行くなんて知られた日には…何をしでかすか分からない奴なだけに考えただけで恐ろしい…
何とかコイツに知られない内に物事を進めなければ…そう思ったタキだったが…
ツネ「どうせ、まめみの所にでも行こうとしてるんだろう?」
タキ「えっ…あ、いや…まめみが明日、俺の家に来るから花を飾っとこうと思ったんだよ!」
そう言って何とかその場を取り繕うタキだったが冷や汗をダラダラ流していて…ツネの黄色の瞳は鋭く光る…
ツネ「君、何か企んでない?さっきプロポーズがとか聞こえたけど…」
タキ「な、何の事かな…悪いけど俺は用事があるからこれで!」
ツネ「…………………。」
そう言うと、タキは大急ぎで走って家に帰って行き…ツネは険しい表情のまま、まめみに渡そうと思っていた青い薔薇の花を握りしめた。
それから2日後…
まめみはスー、ペコと共にカフェへ行き…アマナツに手作りのプレゼントを渡してきた。
アマナツ「あら、すごいわ…どれも素敵!」
ペコ「私達で作ったんですよ。」
スー「スイがお出かけデビューするって聞いたんで、あたし達で何かお祝いをしようって思って。」
まめみ「喜んでもらえてよかったです。」
アマナツ「えぇ、とっても嬉しいわ…ペコちゃん、スーちゃん、まめみちゃん、本当にありがとう。」
そう言って嬉しそうに笑うアマナツを見て、まめみ達も喜ぶのだった。
そしてそれを見ていたツミも…
ツミ「(3人がこの前話していたのはその事だったのか。)」
口元はうっすら笑みを浮かべていて、心は温かくなった。
その後、軽く食事を済ませてペコ、スーと別れたまめみは家に向かっていたが…
ピロンッ
イカラインの通知音が鳴り、見るとタキからのメッセージが来ていて…
内容は食事のお誘いで、ちょっぴりお高いレストランだった。
まめみ「大変…急いで準備しなきゃ!」
家に帰り、クローゼットを開けてフォーマルな格好に着替え…髪も纏めて髪飾りで止めたら…
ピンポーン!
まめお「まめみ、タキが着いたぞー。」
まめみ「はーい!」
返事をするとまめみは自分の部屋を出て、パタパタとリビングへ向かって走って行った。
To be continued…