小説「巡る虹色四季模様(日常編)」~地上での出会い~

あの騒動から数日後…まめみとタキはシャケト場に遊びに来ていた。

とぐろ「はははははっ!」

テツ「そりゃ災難だったな~タキ!」

タキ「笑わないでよ2人共、まだちょっぴり痛むんだから…。」

とぐろ「悪い悪い…それにしてもタキ、お前さんの勘違いとはいえ心意気は大したもんだ。」

タキ「当然だよ、まめみと共に生きるって誓ったんだから。」

まめみ「タキ君…!」

テツ「へへっ、その強い思いがあれば…これから先に何があってもお前達なら大丈夫だ。」

そんな話をしていると…

ドスコイまる「キュッ!」

まめみ「ドスコイまる?」

シャケ子「あら、ドスコイまるちゃんどうしたの?」

何かの匂いを察知したドスコイまるはまめみの膝から飛び降りて、小さなヒレをパタパタと動かしながら走っていき…

建物の陰からジェレラが彼を抱っこして歩いてきた。

ジェレラ「ドスコイまるちゃん、いきなり走ったら危ないわよ。」

ドスコイまる「キュッ、キュッキュー!」

腕の中で嬉しそうにはしゃぐ姿に、ジェレラも青い瞳を細めて優しく笑った。

シャケ子「あらジェレラ、いらっしゃい!」

テツ「ドスコイまるはジェレラの匂いに反応してたのか。」

まめみ「青い瞳の…シャケ?」

とぐろ「紹介するぜ、彼女はジェレラ…少し前に新しく仲間入りしたコウモリだ。ジェレラ、2人はまめみとタキ…前にあっしが話した交流してるイカ達だ。」

ジェレラ「初めまして、ジェレラです…お話はとぐろ隊長から聞いてます。」

まめみ「あたしはまめみです、よろしくお願いします。」

タキ「タキです、よろしくお願いします。」

とぐろ「お互いにそう固くならず、気楽に話そうぜ。」

ジェレラ「そうですね…改めてよろしくね、まめみちゃん…タキ君。」

まめみ「うん、よろしくねジェレラさん。」

タキ「ジェレラさんは普段も任務に出てるの?」

ジェレラ「えぇ、あまり頻度は高くないけれど…」

そう言ってジェレラのお話に耳を傾けた2人は、シャケト場での穏やかな時間を過ごしたのだった。

一方ルイは、エンを誘って地上で街中を散策していた。

エン「地上は今日も賑やかですね。」

ルイ「エンはいつも暗い地下で研究ばっかりなんだもん、僕がこうして連れ出さないとずっと動かなそうで心配だよ。」

エン「ルイ…気持ちは嬉しいですが、私だって休息も取るしたまには地上にも出ますよ。それにルイにこうして研究の途中で連れ出されるのは何回目ですか…。」

ルイ「その件はごめんって!だから今日はお詫びにエンの好きな本を見に行こうよ。」

エン「本ですか…それなら、ちょうど欲しい本があったのでいいですね。」

ルイ「決まりだね!おすすめの本屋さんがあるんだー!」

そう言いながらルイはエンを連れて本屋へ向かうのだった。

本屋に到着するとエンは早速欲しい本を手に取って読んではカゴに入れ始め、ルイは最近始めたゲームの攻略本を見ていて…

午前中に本屋に入った2人が買い物を終えた時は、既に午後になっていた。

エン「本が手に入って大満足ですが、遅くなってしまいましたね…。」

ルイ「もうお腹ぺこぺこ…エン、あそこで腹ごしらえしようよ。」

エン「ふふっ、分かりました。」

無邪気に笑うルイに対して、エンもつられて優しい笑みを浮かべ…

2人はお店で注文した品を受け取った後、ガーデンベンチに腰掛けて食べ始めた。

ルイ「んー美味しい!」

エン「晴れた青空と心地良い風の下で食べるのも悪くないですね、より一層美味しいです。」

ルイ「うん、そうだね。」

楽しく会話しながら食事をしていると…目の前に車椅子で移動するイカのガールが…

ガール「よい…しょっ…!」

車椅子を動かして小さな段差を越えようと頑張っているが、引っ掛かってしまってなかなか進めない…。

すると…

ボーイ1「おーい、早く行くぞー!」

ボーイ2「待てよー!」

ドンッ!!

前をあまり見ずに走っていたイカのボーイ2人が車椅子にぶつかってそのまま走り去ってしまい…

グラッ…!バランスを崩した車椅子が倒れて…

ガール「っ………!!」

ルイ「危ない!」

ドサッ…

ガタンッ!カラカラカラ…

間一髪の所でルイがガールを受け止めて、車椅子はその場に横倒しになった…。

エン「大丈夫ですか!?」

ルイ「うん、僕は大丈夫…君は?」

ガール「うっ…あ、ありがとう…大丈夫…。」

ルイ「よかった。」

エン「それにしても…気づかなかったとはいえ、ぶつかってそのまま行ってしまうなんて…。」

ルイ「危ないよね。」

ガール「……………。」

ルイ「あ、今戻してあげるね。」

エンが車椅子を元に戻し、彼女を抱き上げたルイが座らせてあげると…頬を赤く染めながら黄色の瞳はじっとルイを見て…

ガール「あり…がとう。」

小さくも、しっかりとした口調でお礼を言うのだった。

ルイ「どういたしまして。どこに行きたいのかな?目的地まで僕が後ろから押してあげるよ。」

そう言って、ルイは車椅子の手掴み部分を握った。

ガール「あ、ありがとう…えっと、行先は…」

彼女が行先を告げると、ルイが押してエンも隣を歩きながら送って行くのだった。

しばらく歩いて駅に着き、一旦エンと別れて電車に乗り、彼女の家の前まで送り届けると…

ガール「ここまで送ってくれて本当にありがとう…えっと…貴方の名前は…。」

ルイ「僕はルイ、一緒にいたのはエンだよ。」

アミ「わたしは…アミ、よろしくね。」

そう言ってニコッと笑う彼女の笑顔に、ルイの心はじんわりと暖かくなり、鼓動が少しだけ速くなった。

ルイ「どういたしまして、アミ…いい名前だね。」

アミ「ありがとう。えっと…後日お礼をしたいから、良ければ連絡先を…。」

ルイ「うん、いいよ。」

そう言ってアミとルイはお互いに連絡先を交換して…

アミ「もう帰らなきゃ…それじゃあまたね、エンさんにもよろしくお伝えしておいて。」

そう言うとアミは車椅子を動かして家に入っていき…

ルイ「うん、分かった…アミ…。」

彼の白い瞳はドアが閉じる瞬間まで、彼女の黄色い髪を見つめていた。

To be continued…