小説「巡る虹色四季模様(日常編)」最終話~届かぬ想い~

ルイは大事な用事でしばらく会えない事を伝えた。

アミ『そうなんだね…でも大丈夫、ルイは必ずまた戻ってきてくれるって信じてるから。』

ルイ「ありがとうアミ…あのね、その用事が終わったら…僕アミへの贈り物と伝えたい事があるんだ。」

アミ『ふふっ、何だろう…楽しみにしてるね。…ゴホッ…ゲホッ…!』

ルイ「うん、待っててね…それと無理しないでゆっくり休んでね。」

アミ『ありがとうルイ、そして…行ってらっしゃい。』

ルイ「どういたしまして、行ってきます。」

そう言って電話は終わり、ルイは一度地下へ戻って休暇を取ると…準備を整えて深海メトロの中央駅へと向かった。

ロッカーへ向かうと、ツミの話していた通り光っている場所があって…そこはかつて固く閉じられていたNo.3のロッカーだった。

ルイが目を閉じて念じると光が彼を包み込み…再び目を開けた時に目の前に居たのは…ヒーロー3号であるタキの姿だった。

タキ『………………。』

目の前の彼は自身の心が作り出した存在…オーラだけで強い相手だというのが伝わってきて、肌がピリピリする…!

ルイ「僕は貴方を越えて行く!」

そう言うとルイはオクタシューターを手に地を蹴って駆け出すのだった。

『心の中の3号』

それはルイ自身の心の中で作り出されたヒーロー3号の姿であり、あの時に戦った強さをさらに上回るもので…

隙という物は無いに等しく、ボム転がし等の小細工は一切通用しない…逃げる場所も隠れる場所もほぼ無く、片時も気が抜けない相手だ

ルイは何度もやられてはロッカーの外へと追い出された…その度に起き上がっては再び激戦へと身を投じ続けた。

数日後…地上では反省期間を終えたタキとツネが、まめみと再会していた。

タキ「まめみ…本当にごめんね…。」

ツネ「僕も…本当にごめん…。」

まめみ「2人共、ちゃんと約束を守ってくれたんだね…嬉しい。」

そう話すまめみは穏やかな笑顔で、2人は安心した。

タキ「許してくれるの…まめみ…?」

まめみ「うん、もう怒って無いよ、はいツっくん…甘いの食べたかったでしょう?みんなで分けて食べようね。」

そう言ってまめみは冷蔵庫から手作りのケーキを出してきて…2人の表情はパアッと明るくなった。

その後まめおもナワバリから帰ってきて、4人でケーキを食べながら幸せな時間を過ごしたのだった。

同じ頃…心の中の3号との戦いを続けていたルイは、数日に及ぶ激闘と挑戦の果てに…ついに倒す事が出来た!

ルイ「はぁ…はぁ…や…やった…ついに…乗り越えたっ…!」

ボロボロになったルイはその場にペタンと座り込み…暖かい光が彼を包み込んで、気が付くと傷だらけだった体や疲労はすっかり消えていて…ロッカーの中には周りの暗さを照らすかの様に、眩い金色の光を放つ髪飾り…「金の爪楊枝」があった。

これが、試練を乗り越えた証…

この髪飾りと共に僕はアミに気持ちを伝える…アミ、どんな顔をするのかな

気持ちを伝えた後に試合も見せてあげよう、そう思ってプライムベッチューを手に取り駅へ向かった

嬉しさで胸がいっぱいになるルイは、早まる気持ちを抑えつつまずは地下へ戻って私服に着替え…電車を乗り継いでアミの元へ向かった。

見慣れた駅の改札を慣れた手つきで通り過ぎ、彼女の家に近付く程に胸の鼓動は速く頬は熱を帯びて足も弾む

太陽に向かってかざした髪飾りは光に反射して、まるで星の様に金色に光り輝いていて…その輝きと同じくらいにルイの瞳もキラキラと輝き、口元は笑みを浮かべていた。

しばらく歩いて、アミの家の前に着いてインターホンを鳴らしたが…いつまで経っても反応は無く、出てくる気配は無い

もう一度鳴らすもやはり反応は無く、ドアノブも回してみたが固く閉ざされていて…

出かけているのかな?そう思ったルイはしばらく扉の前で座って待ちながら青空を眺めていた。

2時間後…

あんなに晴れていた空は灰色の雲に覆われ始めて、心もどこか不安になってくる…

アミ、どこに居るんだろう…もし1人で居るのなら迎えに行った方がいいな…そう思ったルイはタコスマホを取り出して電話をかけたが、彼の耳を疑う返事が返って来た

「おかけになった番号は、現在使われておりません」

ドクン…ドクン…

嫌な意味で鼓動が速くなり、不安は大きくなる…

アミに何かあったんだ…それだけは確信した、しかし何があったのか…彼女がどこに居るのか、それだけは分からない…

なす術も無くその場に立ち尽くすルイ…

すると、通りすがりのイカボーイが声をかけてきた。

イカボーイ「あれ、君…ここの家の人の知り合いかい?」

ルイ「え…あ、はい…あの、彼女は…どこに…。」

イカボーイ「え、君は知らなかったのかな?ここの人は昨日…」

ルイ「………………!?」

その後にイカボーイの口から出てきた言葉に、ルイは電撃の様な衝撃を受けて頭が真っ白になり言葉を失った。

アミは、ルイが金の爪楊枝を手に入れる前日…彼女自身の18歳の誕生日に息を引き取っていた

生まれつき体が弱かったアミはいつ容体が急変して命を落としてもおかしくなかった、それを自覚していたからこそ彼女は命尽きるその時まで、その目で色々な景色を映していた…そしてルイに出会い、さらに充実した日々を過ごした

ルイの元に連絡が来なかったのは、深海メトロに居た為に電波が届かなかったのだ。

話を終えてイカボーイが立ち去っても、ルイは、そこから動かなった…動けなかった。

ポツ…ポツ…サアァァァー

雨が降り出し、それと同時にルイの頭の中や心に「事実」が染みていく様に認識されていって…

彼の目からは大粒の涙が零れ落ち、その力が抜けた手からは髪飾りがスルリと落ちて…

カシャンッ…地面に落ちて鈍い輝きを放った。

巡る虹色四季模様(日常編)~Fin~

海賊ダイルです。小説を読んで頂いた皆様、本当にありがとうございます!

小説「巡る虹色四季模様(日常編)」はこれにて完結しました。

地上での新たな生活を始めたざくろ達、慣れないイカの言葉を一生懸命覚えたり分担の大切さ、人を思いやる温もり、まめみの力の制御…それぞれの視点に合わせて大きく成長していく物語になったと思います。

ルイの初恋、しかし彼女は既に…お話は新章という形で続いていきます。

来年から始まる新章は「絶望偏」

章のタイトルからして不穏な雰囲気ですが、この絶望期を苦しみながらも乗り越えていく様子を暖かく見守って頂けると幸いです。

そしてこの絶望偏から、新しいキャラも登場しますのでお楽しみに!

それでは次のお話でお会いしましょう!

ここまで読んで頂きありがとうございました!

2020/12/31 海賊ダイル