ルイがアミからの手紙を読んでから2週間後…
タコワサ『本当に大丈夫か、ルイ…?』
ツネ『無理だけはしないで欲しい…。』
ルイ『ご心配おかけしましたタコワサ将軍、ツネ隊長…でも大丈夫です。』
タコワサ『それなら良いのだが…エンの判断は…?』
エン『まだぎこちないものの、タコガール相手には話せるので問題は無いと判断しました。』
ツネ『任務が出来るのなら助かる…ぎこちなくてもいい、僕達はいくらでも協力するから時間をかけて癒やしていこう。』
タコワサ『何かあったらすぐに言うのだぞ。』
ルイ『はい、ありがとうございます。』
そう話すルイの白い瞳は、まだ不安定さは覗くもののしっかりしていた。
この日は訓練をして、終わった後にも…
ざくろ『お疲れ様、ルイ。』
ルイ『…あ、あぁ…お疲れ様、ざくろ。』
少しぎこちないながらも、ルイはしっかりと返事をしたのだった。
しかし、それは「タコガール」だから大丈夫なのであって…いざ地上へ向かうとイカガールに対しては避けて歩く様になっていた。
アミと出会った初夏…
辛い別れを経験した真夏…
地下で悲しみと絶望の1ヶ月を過ごす間に…季節は秋に入り始めていた。
そんなある日の事…
~地上~
まめみ「あ、シオカラーズとテンタクルズがコラボして開催するハイカライブ盆踊り、今夜だね。」
タキ「うん、そうだね。それで思い出したんだけど…アタリメ司令がツミに招待されたって言ってたよ。」
まめみ「ツミちゃんに?」
まめお「世話になったお礼とか、そんな感じか?」
タキ「詳しくは俺も知らないけど、100年振りのデスコじゃーって張り切ってたよ。」
まめみ「デスコ?何の事か分かんないけど、アタリメさんも来るならシオカラーズの2人も喜ぶね。」
タキ「そうだね。」
まめお「何を着てくか決めたか?」
まめみ「せっかくだし、お母さん達の浴衣を出そうかなって。」
まめお「お、あれか。確か着流しもあったよな…俺はそれを着るか。」
タキ「へぇ~和服かぁ…ちょっと羨ましいな。」
まめみ「タキ君も着てみる?」
タキ「え、いいの?」
まめみ「何枚かあるから大丈夫だよ、着付けはまめおがしてくれるからね。」
まめお「俺もまめみも母さん達から教わったからバッチリ覚えてるぜ。」
タキ「それならお願いするよ、楽しみだなぁ~!」
そう言って喜ぶタキに、まめみとまめおも嬉しそうに笑うのだった。
そして夜…
まめお「よし、これで大丈夫だ。」
タキ「ありがとうまめお、へぇ~何か不思議な感じ。」
初めて着る着流しにタキは興味津々で、鏡を見ながらターコイズブルーの瞳を輝かせていた
まめお「どういたしまして、よく似合ってるぜ~タキ。」
タキ「えへへ、嬉しい。」
とても嬉しそうなタキに優しく笑うまめお
すると…
まめみ「お待たせ!」
タキ「わぁ…まめみの浴衣、すごく綺麗だね!」
長いゲソを三つ編みの様にしてアップにした髪型と、まめみの母さくらが愛用していた白地に淡い桜模様の浴衣を着ている彼女の姿はとても美しくて…タキは見惚れながらはぁ…と感嘆の溜め息を吐いた。
まめみ「ふふっ、ありがとう。」
3人が盛り上がっていると、ピンポーンとインターホンが鳴り…
ざくろ「迎えに来たよ!」
まめお「お、待ってたぜざくろ。」
タキ「ざくろも浴衣だね、よく似合ってるよ。」
ざくろ「ありがとうタキ!でもツネったら「馬子にも衣装だね」なんていじわる言うんだよ!」
まめみ「ツっくんたら…こんなに似合ってるのにね。」
ざくろ「ほんとツネってば素直じゃないんだから。」
そう言って少し困った様に笑うまめみに、ざくろはちょっぴり頬を膨らませるのだった。
ツネ「素直じゃ無くて悪かったね、ツミも待ってるんだから行くよ。」
ツミ「……………。」
まめみ「あれ、ツミちゃんは浴衣を着ないの?」
ざくろ「せっかく買ったのに?」
ツミ「確かに買ったが…き…気恥ずかしい…。」
まめみ「そんな事言わずに、せっかくだから着ようよ!」
ざくろ「そうだよ~エンだって喜ぶし!」
ツミ「なっ…何でそこでエンの名前が出てくるんだっ!」
そう言って頬を真っ赤に染めるツミの抵抗も虚しく…まめみとざくろによって浴衣姿にされたのだった。
まめお「お、よく似合ってんじゃん。」
ツミ「そ…そうか…?」
タキ「うん、とっても様になってる。」
ツネ「ふふっ、エンの反応が楽しみだな。」
ツミ「ツネ隊長まで…!」
エンの名前を聞いて再び頬を真っ赤にするツミだったが…その口元はうっすらと笑みを浮かべていて…
まめみ「あ、遅れちゃう…行こう!」
こうしてまめみ達は、ハイカラライブ盆踊りが行われる会場…ハイカラスクエアの広場へと向かい、しばらくして広場へ到着すると既にたくさんの人で溢れかえっていた。
アタリメ「おぉ、待っておったぞ8号!今回のお誘い感謝じゃ!」
ツミ「どういたしまして、来て貰えてよかった。」
アタリメ「浴衣とは風流じゃのぅ、よく似合っとるぞ。」
ツミ「そ…そうか…?ありがとう…。」
そう言って頬を赤らめて恥ずかしながらも感謝の言葉を口にしたツミに対して優しく笑うアタリメ司令、そんな事を言ってる間にお祭りが始まり光の中からテンタクルズが姿を現した
アタリメ「光の中から現れたのはテンタクルズ…ヒメ嬢とイイダ嬢じゃな。それにしても最近のメカはすごいのぅ…おぉ、曲が始まったぞい!」
ツミ「これは、フェスのテーマ曲「ウルトラ・カラーパルス」だな。」
アタリメ「ほほぉ、これがそうか!一見デコボコに見えるが、絶妙な相性で噛み合っておるし曲想もイカらしい陽気さにタコらしい厳密さもあって奥深い味わいじゃ!」
そう言って嬉しそうにノリノリで踊るアタリメ指令に、まめみ達も嬉しくなる。
まめお「お、スーから連絡が来た…俺迎えに行ってくるな。」
まめみ「うん、分かった。」
ツネ「そう言えば、エン遅いな…。」
ざくろ「どうしたんだろうね。」
そんな話をしていると…
エン「お待たせしました。」
ざくろ「エン、遅ーい!」
エン「これでも急いだんですよ、この後にムツゴ楼でルイと約束しているのであまり長くはいれませんが…。」
ツミ「…っ……!」
ぱちっ…エンと目があった瞬間、ツミは無意識に頬が赤く染まり、鼓動は早くなった…
エン「つ、ツミ…さん…!」
浴衣に身を包み、紫の髪はアップにされていて…金の爪楊枝をさしたその姿はとても艶やかで美しく…対するエンも頬を赤く染めながら、紫の瞳は浴衣姿のツミに釘付けだ
ツミ「や…やっぱり変だったか…?」
頬を真っ赤にしながら少し俯いてしまったツミだったが、エンから返ってきたのは真逆の言葉で…
エン「いえ、似合ってます…とても綺麗です、ツミさん…!」
そう言って、2人とも頬を真っ赤に染めたままもじもじしてしまうのだった…
テンタクルズが歌い、盛り上がりも最高潮に達した頃…
アタリメ「この曲はフルスロットル・テンタクルじゃな!8号の戦闘中に流れたからよーく覚えておる、それにしても…イイダ嬢は歌唱力も圧巻じゃな、ワシの孫達とはまた一味違って良いのぅ……ん、噂をすれば1号と2号、鮮やかなおべべじゃのう…若い頃のばあさんによく似とるわい。」
まめみ「アオリちゃんとホタルちゃんはお婆ちゃん似なのね。」
タキ「う~ん……想像もつかないなぁ…。」
アタリメ「まめみちゃんも可愛いから、歳を取っても綺麗で可愛いじゃろうな…ほっほ!」
まめみ「えへへ…ありがとうございます。」
タキ「(うんうん、まめみはおばあちゃんになっても魅力的で俺はずっとベタ惚れ間違い無しだよ。)」
ニコニコしながら話すアタリメ司令にまめみは照れつつも嬉しそうに笑い、タキも相づちを打ちつつ心の中で激しく同意するのだった。
すると「あの曲」が流れ、それに合わせて皆が踊り出し…
アタリメ「イヨッ待ってました!聞けば天国、歌えば極楽…皆さんご存じシオカラ節!」
ツミ「…この曲は、自然と体が踊ってしまうな。」
アタリメ「やはりおヌシも踊らずにはおられんようじゃの、ワシらも小さい頃から「元祖正調塩辛節」に合わせて盆踊りしたもんじゃよ……ん、何かいつものと雰囲気が違うかの?」
まめみ「これはシオカラーズの新曲、濃口シオカラ節ですよ。」
アタリメ「ファッ、濃口シオカラ節じゃと?」
タキ「二番の歌詞が増えて節回しも変わってるんですよ、司令。」
アタリメ「おぉ、こりゃ確かに濃口の名に恥じんシオカラ節じゃな!」
喜ぶアタリメ司令、それを見ながら笑顔で楽しむまめみ達…
踊り終えた後にはツミ達と別れてまめお達と合流し、屋台を回りながらお祭りを楽しみ…
まめみ「あ、綿飴がある…美味しそう。」
タキ「俺が買ってあげるよ、どれがいい?」
まめみ「ありがとうタキ君!えっと…」
2人は綿飴を買って仲良く分け合いながら食べて…
スー「焼きそばにお好み焼き、クレープも…!」
まめお「お前ほんと大食らいだなぁ…。」
ペコ「射撃の景品…あれが欲しいわ。」
フー「任せておけ、こんなのは朝飯前だ。」
それぞれ楽しい時間を過ごし…
ざくろ「待ってよツネ~!」
ツネ「仕方無いなぁ。」
カランコロンと下駄を鳴らしながらツネの着流しの袖を掴むざくろに、ツネはゆっくりと足並みを揃え…りんご飴を2人分買って食べ始めた。
ふとざくろの方を見ると…
赤いりんご飴をそっとかじるざくろの唇は艶めかしくて…浴衣から覗く綺麗な首筋は色っぽくて…
いつものポニーテールでは無く、下ろして右側で1つに緩く纏めたその髪型も大人っぽくて…
いつも見ていた可愛い妹の様な「少女」は「1人の美しい女性」になっていて…
ツネ「………っ………!!」
ゴクリ…ツネはざくろの美しさに思わず生唾を飲んで見惚れていて…
ざくろ「ん…あたし、食べ方変だった?」
ツネ「えっ…あ、いや…そうでは無いよ…。」
ハッとして慌てて顔を反らすツネだったが…
ざくろ「…やっぱり似合ってなかったかな…。」
もう一度ざくろの方を見ると、悲しそうに俯いていて…
ツネ「…いや、悪くない…。」
ざくろ「えっ…?」
ツネ「…よく似合ってるよ。」
そう言うとりんご飴を食べ終えて黄色の瞳を反らしたツネだが、その頬は真っ赤に染まっていて…
ざくろ「ありがとう、ツネ。」
そう返したざくろの頬も満面の笑みと共に赤く染まった。
To be continued…