小説「巡る虹色四季模様(絶望編)」~淡い恋心~

偵察を終えたツネとざくろはハイカラスクエアを後にして、家に向かっていた。

ざくろ「あれからも気づかれないように観察してたけど、特に変わった様子は無かったね。」

ツネ「表向きはあんな感じなのかも…とはいえまだあの雪色髪のガール「アイカ」の疑いが晴れた訳では無い、引き続き調査をする必要があるね。」

ざくろ「うん。」

そんな話をしながら歩いていると、お気に入りのアイスケーキのお店が目に入った。

ツネ「あ、ざくろアイスケーキ食べる?」

ざくろ「食べる!」

ツネ「決まりだね、買ってくるからちょっと待ってて。」

ざくろ「分かった。」

そう言ってツネはお店の中へ入っていき、ざくろはお店の外…少し離れた場所で立って待つ事に…

今夜は何にしようかな…

プッチン、家でちゃんとお留守番出来てるかな…

色々な事を考えているざくろの前に大きな影が…

ツネが戻ってきたと思い顔を上げたざくろだが、そこに居たのはチャラチャラしたイカボーイ2人で…

ボーイ1「可愛いね~1人?」

ボーイ2「俺達これからゲーセン行くんだけど、一緒に遊ばない?」

ニヤニヤと厭らしい目つきと笑みでざくろを舐め回す様に見ている2人に、ざくろは少し眉を潜めて明らかな嫌悪感を示した…。

ざくろ「あたし、ここで人を待ってるの…。」

ボーイ1「え~こんな可愛い子を待たせちゃうなんて罪深いなぁ。」

ボーイ2「そんな奴なんかほっといてさ、俺達と一緒に行こうよ。」

そう言ってボーイ2がざくろに近づき、素早く腰に手を回して抱き寄せた!

ざくろ「っ…やめてよ!」

ボーイ2「ぐっ…!」

ざくろは思わず護身術を使ってしまい、その隙に離れたが…

ボーイ1「強いね~でもあんまり困らせちゃうと、ちょっと痛い目に遭わせちゃうよ?」

そう言ってボーイがざくろの手首を掴んだその時!

ツネ「その手を離せ。」

ざくろ「ツネ!」

声のする方を向くと…そこにはアイスケーキの箱を持ちながら、明らかに不機嫌な様子のツネが居た。

ボーイ1「何だお前は、邪魔すんじゃねーよ。」

ツネ「その手を離せと言っている。」

ボーイ2「生意気だな…まずはお前から分からせてやるよ!」

そう言ってざくろから手を離したボーイ1は、相方と共にツネに殴りかかったが…

ツネ「……ふぅ…仕方無いね。」

アイスケーキの箱を思いっきり真上に投げると…

しなやかに、舞うように華麗にボーイ2人の攻撃をかわして急所を突き…

ボーイ1「ぐふっ…!」

ボーイ2「こいつ…何…を…!」

そう言い残す2人をツネは冷たく見下しながら、落ちてきたアイスケーキの箱を優しくキャッチした。

ツネ「ざくろは僕の彼女だ。」

ざくろ「ツネ…!」

そう言ってざくろを抱き寄せたツネに、ざくろは頬を真っ赤にしてドキドキしていて…

ツネ「待たせてごめん、帰るよ。」

ざくろ「う…うん…。」

2人は再び歩き出したが…

ざくろはずっと頬を真っ赤に染めたままでドキドキは収まらなくて…

一方のツネも、内心はざくろにナンパをしていた男達に激しい嫉妬を覚えた自身の気持ちにモヤモヤしていた…。

次の日…

台所でツネが朝ご飯を作っていると、ざくろが起きてきたが…

ツネ「おはようざくろ。」

ざくろ「おは…よう…。」

ツネ「…ざくろ?」

ざくろ「な…に…?」

火を止めて歩いてきたツネは、そのままざくろのおでこに手を当てた

ツネ「酷い熱だ…すぐに戻って横になろう。」

ざくろ「だいじょぶ…だよ…あた…し…」

ぐらっ…

ツネ「ざくろ!!」

そのまま気を失って倒れたざくろをツネが受け止め、抱き上げて寝室へ連れて行った。

それからエンに連絡して診て貰うと…

エン「ストレスによる発熱ですね…だいぶ無理をしていたんでしょう。」

ツネ「ストレス?でもざくろ自身に変わった様子は…。」

エン「本人が自覚していたかは定かではありませんが、まずはこの地上…慣れない環境で暮らしていた事、最初の頃イカの言葉も上手く話せなかったのも彼女なりにどこかでストレスに感じていたのかもしれませんね…。」

ツネ「そうだったのか…そうとは知らずに無茶を…。」

エン「地上の生活にも慣れて言葉も覚えたし、まめみさん達と一緒に過ごす楽しさの疲れも一気に出たんでしょうね。段々と夏の終わりから秋に入り始めてるこの季節の変わり目も影響したんでしょう。」

ツネ「僕はどうすれば…。」

エン「熱が下がるまで安静にしていれば大丈夫ですよ、今はゆっくりと休ませてあげて下さい。」

ツネ「分かった、ありがとうエン。」

エン「どういたしまして、それでは私は約束があるのでこれで…。」

ツネ「約束…任務でも頼まれたのかい?」

エン「いえ、ツミさんの練習相手をお願いされているんです。」

ツネ「そういう事か…それならすぐに戻ってあげないとね。」

エン「はい、それでは。」

どこか嬉しそうに話すエンに、ツネも穏やかな気持ちになり…彼を見送ると眠っているざくろの元へ行って頭を優しく撫でた。

ツネ「しばらくはお粥だね…後は栄養のつく物を作ってあげないと。」

そう呟くと、ツネは再び台所へ戻っていった。

数時間後…

ざくろ「んっ…。」

ツネ「気がついたかい?」

ざくろ「ツネ…あたし…」

ツネ「熱で朦朧としてて、そのまま倒れちゃったんだよ。」

ざくろ「そっか…ごめん…。」

ツネ「大丈夫、僕こそごめんよざくろ…気がつかなくて…。」

ざくろ「えっ…?」

ツネ「エンに連絡して診て貰ったんだ、慣れない環境や上手く話せなかったストレス、最近の疲れや季節の変わり目の影響もあって熱が出たんだろうって言ってたよ。」

ざくろ「ストレス…自分では全然そんな自覚は…でも…やっとここでの生活にも慣れてきて…イカの言葉が話せるようになってまめみ達ともたくさんお話し出来て楽しくて…ちょっと無理し過ぎてたかも…。」

ツネ「エンから熱が下がるまでは安静にって言われたよ、何も心配せずゆっくり休んで欲しい。」

そう言って優しく頭を撫でてくれるツネに、ざくろはとても安心した。

ざくろ「ありがとう…ツネの手…冷たくて気持ちよくて…安心…する…。」

ツネ「よかった…お粥あるけど食べれそう?」

ざくろ「うん…食べたい…。」

ツネ「分かった、持ってくるからちょっと待っててね。」

もう一度優しく撫でると、ツネは立ち上がってお粥を取りに行き…

ざくろは開けられた窓から入ってくる心地良い風と、太陽の優しい光を浴びながらゆっくり呼吸をした。

一方ツネは…台所で少しウロウロしていて…

脳裏ではさっきのざくろの様子が頭から離れない…

熱で真っ赤に染まる頬…みずみずしい唇…潤んだ赤い瞳…

汗ばんだ体には着ている薄着のパジャマが張り付いていて…彼女の体つきがくっきりしていて…

下着もパンツ以外着けていない事も分かってしまって…

下半身に熱が集まり始めているのも感じていて…

自分は「まめみが好き」なのに…

どうしてざくろをこんなにも「意識して」しまうのか…

ツネの戸惑いを秘めた黄色い瞳とは裏腹に、その頬はしばらく熱を帯びたままだった。

To be continued…