小説「巡る虹色四季模様(絶望編)」~その瞳に映る人は…~

ツネの看病の甲斐もあり、数日後にはすっかり回復したざくろ

この日はツネがまめみの家に行き、アイカについて話した。

まめみ「あの子の名前はアイカちゃんって言うのね…ロブのお店でお手伝いしてたのも知らなかったし、お話を聞いた感じだと白の悪魔と関係がありそうな雰囲気では無いね。」

ツネ「普段は大人しくても何かがキッカケで豹変するのか、或いは演じているのか…いずれにしろ、もう少し様子を見る必要はありそうだよ。」

まめお「タキ、お前も独自に動いてるんだろ?」

タキ「うん、とはいえ結果はツネと同じ感じだね…周りの人に聞いても、お店での彼女は大人しくて頑張り屋の子っていう印象だったよ。」

まめみ「もしツっくんの言う通り、何かキッカケがあるのなら…いつそれが起きるかも分からないし難しいね…。」

タキ「その事だけど、最近またタチの悪いリスキル勢の話を聞いたよ。」

まめお「リスキル勢が…。」

ツネ「そのリスキル勢が白の悪魔の出現条件になっているのなら、接触するチャンスはありそうだね。」

タキ「誘導するのもありか…。」

まめみ「誘導…どうやってするのタキ君?」

タキ「仮にその白の悪魔がアイカだとする…それなら彼女の前でわざとリスキル勢の話をするんだ。」

ツネ「なるほどね、そうして白の悪魔の出現を促す作戦か…。」

まめお「上手くいくのか?」

タキ「上手くいく保証は無いけど、物は試しかな。」

ツネ「その作戦、僕達も協力させて貰うよ。」

タキ「助かるよ、ツネ。」

まめみ「あたしにも…あたしにも手伝わせて!」

まめお「まめみ…!」

タキ「気持ちは嬉しいよ、でもまめみを危険な目に遭わせる訳には…。」

まめみ「でも2人がリスクを背負って頑張ってるのに、あたしだけ待ってるのは悔しいの…何か力になりたい…!」

ツネ「まめみ…。」

まめお「こいつは一度言い出したら聞かない…何か力になれないかタキ、ツネ。」

タキ「まめお…。」

ツネ「…危険な目に遭わせたくない…けど、安全に協力して貰える方法がある。」

タキ「えっ…?」

ツネ「まめお、君にも協力して貰いたい。」

まめお「分かった、俺に出来る事なら協力するぜ。」

タキ「ツネ、君の言う方法って…?」

ツネ「それは…」

彼の提案した方法、それはまめおとまめみの2人でロブのお店に行き「アイカに聞こえる様にリスキル勢の話をする」というものであった。

タキ「確かにそれなら安全だね。」

ツネ「頼めるかい?」

まめお「任せとけ。」

まめみ「あたしも大丈夫、頑張るよ。」

2人の強い決意を秘めた表情に、タキとツネも笑みを浮かべて頷いた。

その後、4人は準備をしてお店に向かい…

タキとツネが遠くで見守る中、まめおとまめみがロブのお店へ行って注文を済ました後に椅子に座った。

まめお「あれが例のアイカって子か。」

まめみ「やっぱり至って普通の子に見えるけど…。」

そんな話をしていると、アイカが注文の品を持ってきた。

アイカ「お待たせしました、グランドロブサンドとアゲホイップダブルワッフルです。」

まめお「お、ありがとう。」

まめみ「ありがとう、ん~美味しそう!」

アイカ「ごゆっくりどうぞ。」

そう言ってニコッと笑うと、アイカは背を向けてお店に戻り始めたが…

まめお「(今だ!)まめみ、知ってるか?」

まめみ「ん、何を…?」

まめお「最近タチの悪いリスキル勢が現れて、初心者を苛めてるらしいぜ。」

アイカ「……………!」

ピタッ…アイカの足は止まり、そのまま振り返る事無く2人の会話に耳を傾けている…

まめみ「それね…あたしも聞いたよ、これでもかってくらいにしつこく追い回すんでしょ…酷いよね…。」

まめお「そんな奴には出くわしたくねぇな…。」

まめみ「そうだね…。」

そう言いながら2人は食べ始め、会話を聞いていたアイカも再び歩き出してロブのお店へ消えて行った…

そして、それを遠くから見ていたタキとツネは…

タキ「まめおとまめみが例の話を始めた途端に様子が変わったね。」

ツネ「明らかに会話を聞いていた…そして、体が僅かに震えていた。」

タキ「震えていた?」

ツネ「本当に僅かだけどね…トラウマ的なものがある故の恐怖か、或いは怒りで震えているのか…いずれにしろ、近い内に何かしらの動きはあるだろう。」

タキ「ここらが最大のチャンスか…。」

そう話しながら、2人の瞳は強い決意を秘めていた。

しかし、そこから数日…

タキとツネが張ってはいるものの、白の悪魔の動きは全く無く…

それどころか人々の噂からもいつの間にか消えていた…

ツネ「どういう事だ、白の悪魔は彼女では無いというのか…!?」

タキ「明らかに反応はしていたのに…。」

まめお「まだ様子を見ているのかもしれない…それに一時噂になったから、慎重になってる可能性もあるのかもな…。」

まめみ「もし…もしそうなら…白の悪魔と呼ばれる行動自体をそのまま止めていてくれるといいけど…。」

4人がハイカラスクエアのベンチに座って話をしていたその時…

ロブのお店にルイがやって来た。

タキ「ルイ…もう平気になったの?」

ツネ「タコガールには少しぎこちなさはあるけど何とか…けどイカガールに対してだけは…。」

まめお「あんな事あったんだからな…。」

まめみ「ルイ君…。」

心配する様子で遠くから見ていた4人だが…

ルイ「……………。」

注文をしていつもの席に座ったルイ

相変わらずイカガールは苦手なのに、目は自然とアイカを追ってしまって…

どうしても分からないこのモヤモヤした気分を変えようと、ルイはボディッバッグから携帯ゲーム機を取り出して遊び始めた。

しばらくして…

アイカ「お待たせしました、アゲホイップです…いつも通り、ここに置いていきますね。」

ルイ「う…うん…。」

そう言ってアイカが離れた場所にそっと置いて立ち去ろうとしたが…とあるゲーム音に気がついた。

アイカ「…それって…もしかして…魔法クラクエ3…?」

控えめに言ったアイカの言葉に…ルイは白い瞳を見開き、思わず顔を上げた!

ルイ「え、君これを知ってるの…!?」

アイカ「う…うん…。」

ルイ「…あっ……ごめん…。」

アイカ「わ…私こそ…ごめんなさい…。」

一瞬だけ目を合わせたルイだが、すぐに我に返って俯いてしまった…しかし再び口を開いて…

ルイ「…すごい昔のマイナーゲーム…知ってる人がいる方が珍しいくらいなのに…どうして…?」

アイカ「わ…私…ゲームが大好きで…昔のから最近のまで…幅広く遊んでるの…。」

ルイ「そうなんだね…驚いたよ、でも…知ってる人がいてすごく嬉しい…ねぇ君…ううん…アイカはどこまでクリアしたの?僕もう4週目なんだけど…。」

アイカ「私もそこまで遊んだよ…アイテムも全部コンプリートしたし…裏ボスも…。」

ルイ「僕と同じだ、本当にやり込んでるんだね…!」

他のお客さんが居なかったのもあり、2人はお互いにあまり顔を上げないものの…とても楽しく語り合った。

そして、その様子を見ていた4人は…

まめお「イカのガール相手に話してる…。」

まめみ「目は合わせてないけど…でも、お互いに楽しそう。」

タキ「ツネ…ルイのあんな様子は…?」

ツネ「あの件があって以来は初めてだ…まさかあんなに打ち解けているなんて…。」

驚きを隠せない様子で、4人はしばらくルイとアイカを見ているのだった。

その後、スルメさんのお店へ手伝いに行くまめおと別れ、3人はまめみの家に向かいゲーム等をして過ごしたが…

タキ「あっ、またやったな!」

ツネ「これも作戦だろう?」

タキ「ちくしょー卑怯だぞ!」

ツネ「何とでも言いなよ。」

まめみ「(ふふっ、2人共いい勝負だね。)」

喧嘩しつつも夢中でゲームを遊ぶ2人に、まめみは優しく笑いつつ見守り…

夕方、いつの間にか寝落ちしていた2人…ふとタキが目を覚ますと、まめみの姿が無くて…

どこに行ったんだろう…そう思って捜すと、まめみは庭で夕陽が沈む海を眺めていた。

タキ「まめみ…。」

夕陽に照らされる彼女は綺麗で美しく…タキは見惚れて目を細めた

するとまめみが気がついて…

まめみ「あ、起きたんだね。」

タキ「うん。」

まめみ「綺麗だね、夕陽…時々こうやって見てるの。」

タキ「まめみの方が綺麗だよ。」

そう言って、タキはまめみをぎゅっと抱きしめた。

まめみ「ふふっ、ありがとう…でも急にどうしたの?」

タキ「夕陽を見てたまめみを見てて…見惚れてたのと同時に、まめみをずっとずっと守り続けたいって気持ちが強くなったんだ。」

まめみ「ありがとうタキ君、嬉しい。」

そう言って嬉しそうにはにかむまめみにタキも優しく笑い…

タキ「まめみ、大好きだよ。」

そう言って、夕陽をバックに2人は抱きしめ合いながらキスをした

しかし、その様子をリビングのカーテンの陰から見ていたのは…

ツネ「…………………。」

伏せられた彼の黄色い瞳は少し寂しげで…両手をギュッと握りしめるのだった…。

To be continued…