小説「巡る虹色四季模様(希望編)」~鈍すぎた気持ち~

ツネは家に戻って朝食を済ませた後に、準備をして地下へ戻った

タコワサ『戻ったかツネ。』

ツネ『ただいま、お爺様。』

タコワサ『ん、ざくろは一緒では無いのか?』

ツネ『…体調が優れないからしばらく休むってさ。』

タコワサ『そうか…まぁ季節の変化もあって体調も崩しやすいだろうからな。』

ツネ『……………。』

タコワサ『どうしたツネ、お前も具合が悪いのか?』

そう言ってツネにタコ足を伸ばしたタコワサだったが…

ツネ『…大丈夫、訓練に遅れるからごめん…お爺様。』

やんわりとタコ足を払い、ツネは自室へ戻って行ってしまい…

タコワサ『(ざくろと何かあったのだな…ツネの方から言うまで待つとするか。)』

心配しつつも、タコワサはそっと見守る事にしたのだった。

一方、戦闘着に着替えて部下達に指示をしつつ訓練を始めたツネだったが…

ツネ『……………。』

喧嘩をした時のざくろの表情、唇の感触…声…全てが脳裏に強く残っていて…

ルイ『ツネ隊長!!』

ツネ『!?』

訓練用のタコ足の攻撃に気づかず、ギリギリの所でルイがツネを抱えて避けたので無事だった…

ルイ『危なかった…大丈夫ですか?』

ツネ『大丈夫…すまないルイ…。』

ルイ『調子が悪いんですか?ぼーっとしてたし顔色も良くないですよ…。』

ツネ『いや…大丈夫だ…。』

そう言ってルイから離れて立ち上がり、歩き出したツネだがフラフラしていて…

ルイ『ちょっと離れます!』

ツネ『なっ…ルイ!?』

突然ルイが訓練場から出て行き、程無くしてエンを連れてきて…

エン『話はルイから聞きました。一旦休憩して下さい、ツネ。』

ツネ『エン…。』

隊長命令で休憩に入り、ルイに部下達を任せてツネはエンと共に休憩室へ向かったが…

エン『ツネ…アイスコーヒーが零れていますよ。』

ツネ『えっ…あっ…ごめん…。』

ぼーっとしたまま小さなティーポットに入ったアイスコーヒーを手に持ったコップに注いでいたツネ、その結果とうに溢れてしまい、シンクの中でドボドボとアイスコーヒーが流れて行ってしまった…

エン『一体どうしたんですか…貴方がそんなにぼーっとするなんて珍しいですね。』

改めて注ぎ直してアイスコーヒーを持ってきたツネと、彼が持って来てくれた自分の分を飲みながら、エンは言った

ツネ『………エン…。』

ぼーっとしていたツネだったが真剣な表情になり、エンの紫の瞳を真っ直ぐ見ながら彼の名前を口にして…

エン『…何かあったんですか?』

只事では無い…そう察したエンも真剣な表情でツネに問いかけたが…彼の口から返ってきたのは思いがけぬ言葉だった。

ツネ『…ざくろは、僕の事を兄としてでは無くて…1人の男として見ていると思うかい…?』

エン『えっ?』

ツネ『…本気で悩んでいるんだ…。』

エン『ツネ、貴方…。』

ツネ『…エン…。』

エン『……………。』

ツネ『…信じられない物を見る顔をするなよ。』

エン『すみません、ですが貴方があまりにも鈍すぎて…。』

ツネ『なっ…!?』

エン『寧ろどうして今まで気づかなかったんですか…。』

ツネ『…ざくろは明らかな好意を僕に向けていたと…?』

エン『あんなに分かりやすい子はいないと思いますよ。』

ツネ『そ…そうなのか…。』

すると、休憩室に部下のタコゾネス達が入ってきて…

タコゾネス1『あ、隊長…具合は大丈夫ですか?』

タコゾネス2『ざくろが居なくて集中出来てなかったりしてー?』

ツネ『なっ…!!』

タコゾネス3『あれ、隊長赤くなってる…もしかして本当にざくろの事で…?』

ツネ『………ゴホンッ!君達は…その…ざくろの好きな人を知っていたりするのかい…?』

タコゾネス1『え…知ってますけど?』

ツネ『えっ!?』

タコゾネス2『流石に気づきますよー!』

タコゾネス3『気づかない方が逆に凄いです。』

ツネ『そ…そうなのか…!?』

タコゾネス1『もう…隊長は鈍すぎです。』

タコゾネス2『ざくろ可哀想ー!』

タコゾネス『隊長、乙女心が全く分かって無いです。』

エン『彼女達の言う通りですね。』

ツネ『ぐっ…!!』

タコゾネス達『隊長酷ーい、キモーい!』

ツネ『なっ…キモいは無いだろう!いいからさっさと訓練に戻れ、でないとメニューを増やすぞ!』

タコゾネス2『隊長のパワハラーー!』

頬を真っ赤にして怒るツネに、タコゾネス達は悪態を吐きつつ戻って行き…

ツネ『……………。』

エン『ツネ、彼女達に八つ当たりするのは良くないですよ。』

ツネ『ぐうぅ…僕の味方は居ないのか…!?』

そう言って頬を真っ赤にしながら呟いたツネに、エンはふぅ…とため息を吐いた後に口を開いた

エン『真面目な話、ざくろはずっとツネを想っていました…ですが、貴方のまめみさんへの想いを知っていたからそれを隠し続けていたんですよ。』

ツネ『…そう…なのか……。』

エン『私からこれ以上は深入りしませんが…お互いの為にも今はゆっくり考える時間が必要かと。』

ツネ『まめみからも同じ事を言われたよ…。』

エン『まめみさんからも?』

ツネ『…ざくろがまめみの家に居るんだ…そしてそう言われた…。』

エン『そうでしたか…とにかくツネ、これは貴方とざくろの2人の問題です…今は気持ちを整理させた方がいいですよ。』

ツネ『…そうだね、君の言う通りだ…エン。』

コップのアイスコーヒーに移る自分の顔を見つめながら、ツネは「自分の気持ちにきちんと向き合う」決意をしたのだった。

To be continued…