外に出ていたまめおは、気がつくとスルメさんのお店の前に居て…外で掃除をしていたスーが自分に気づいて歩いてきた。
スー「まめお?」
まめお「スー…。」
スー「そんな暗い顔して、あんたらしくないわね…何かあったの?」
心配してまめおの頬を優しく撫でるスーの手は温かくて…彼の心は暖まると同時に青い瞳からは熱く湧き上がる涙の感覚が強くなって…まめおは腕で拭って口を開いた。
まめお「…ちょっといいか?」
スー「うん…いいわよ。」
只事では無さそうな雰囲気を察したスーは、掃除道具を片付けてからまめおと共にハイカラシティの広場にあるベンチに座った
まめお「……………。」
スー「まめお…言いづらい事なら無理に話さなくていい、言えなくてもあたしはあんたを嫌いになったり傍を離れたりしないからね。」
まめお「…ありがとうな。」
そう言うとまめおはスーを強く抱きしめ、スーも優しく笑って抱き返しながら彼の頭を撫でた。
スー「少し落ち着いた?」
まめお「…あぁ…………スー、お前…俺との将来を考えてるか?」
スー「えっ…?そ…そりゃあ考えてるわよ…あたしは知っての通り、幼い頃に兄貴と共に親に捨てられたから…まめおとは幸せで穏やかな家庭を築きたい…子供にはたくさん愛情を注いであげたいって思ってる。」
まめお「っ…!!」
やはり子供を望んでいる……スーの今までの境遇を考えれば、そういう家庭に憧れも持つだろう…
ズキン…まめおの心は痛んだ
スー「どうして急にそんな事を…?」
まめお「…なぁ…もし…俺が子供を授かりにくい体質だったとしたら…お前はどう思う…?」
スー「えっ…?」
まめお「……………。」
突然どうしてそんな事を言うのか…言葉が喉まで出かかっていたスーだが、まめおの真剣な…悲痛な感情さえも伝わってくる表情にその言葉を飲み込んだ
そしてしばらくの沈黙の後、ゆっくりと深呼吸をすると口を開いた。
スー「まめおがもしそうだったとしても、あたしはまめおが好きよ…この気持ちはずっと変わらない。」
まめお「スー…お前…!」
スー「もし子供を授からなかったとしても…まめおと2人で生きて幸せな家庭を築いていけるなら、あたしは幸せよ。」
まめお「スー…ありがとう…大好きだ…ずっとずっと…大好きだ…!!」
そう言うとまめおは再びスーを強く抱きしめ、その声と体は震えていて…スーの服の肩部分には温かい涙が染みてきて…
スー「あたしも大好きよ、まめお。」
自分と同じくらい、スーも抱きしめ返してくれて…
不安で仕方なかったまめおだが、彼女の気持ちを聞けてホッとしたのと同時に、ウト族の事をスーにも…親であるスルメさんやよっちゃんにも打ち明けるべきなのではと思うのだった。
この日は結局スルメさんのお店に泊まり、次の日に家に帰ったまめおは再びツネとざくろにも来てもらい…その事を打ち明けた。
ツネ「…ウト族の事を話す…か…。」
まめみ「あたしもその方がいいと思う…ずっと秘密にしてる訳にもいかないと思うの…。」
ざくろ「でも…あたし達オクタリアンの事はあまり詳しくは…。」
ツネ「…一度お爺様にも話を通してからになるね、とはいえ僕もこれに関しては打ち明けた方がいいとは思う。」
タキ「ツネ…。」
ツネ「スルメさんとよっちゃんはまめおとまめみの父親だし、2人の母親についても何か聞けるかもしれないからね。そうと決まれば善は急げだ、今から地下へ戻ってお爺様に話をしてくるよ。」
ざくろ「あたしも行く。」
ツネ「分かった。」
まめみ「気をつけてね、いいお返事が来るといいけど…。」
ツネ「ありがとうまめみ、お爺様ならきっと分かってくれるよ。」
ざくろ「地上に戻ったら、また連絡するね。」
まめみ「うん。」
こうして、ツネとざくろはまめおの提案をタコワサに伝える為に地下へ戻り…まめみ達は吉報を期待しながら待つ事にするのだった。
しばらくして、ツネとざくろは地下へ到着し…タコワサに話をした。
ツネ『どうかな、お爺様。』
タコワサ『父親が居るのなら話しておいた方が良いだろう、それならワシも一緒に地上へ向かい話をしよう。』
ざくろ『でも将軍は傷のせいでヒトの姿には…。』
ツネ『もしお爺様が誰かに見られたら大変な騒ぎになってしまう…そうなったらタキ達も立場的にまずいかも…。』
タコワサ『心配するでない、方法ならちゃんと考えておる。』
ざくろ『方法…?』
タコワサ『エンをここに呼べ。』
ツネ『そういう事か…今呼んでくるよ。』
状況を察したツネはエンを呼んできて、タコワサは事情を説明した。
エン『そういう事でしたか…とはいえ、将軍をずっとヒトの姿にするのは難しいですね…。』
ざくろ『ずっと…って事は、一時的になら可能なの?』
エン『数時間なら可能だと思います。』
タコワサ『数時間あれば一通りの説明は出来るだろう…頼めるか、エン?』
エン『お任せ下さい。』
ツネ『いつ頃に完成しそう?』
エン『一週間後には出来ますよ。』
ツネ『分かった、それじゃあ一週間後で調整しておくよ。』
エン『その時に私も同行します、まめみさんのシンクロの制御についてもお話をしておいた方がいいでしょう。』
ツネ『そうだね、頼んだよエン。地上へ戻るよざくろ。』
ざくろ『うん。』
無事に話が纏まったツネとざくろは地上へ戻り、まめみに連絡をした。
まめみ「うん…うん、分かった。ありがとうざくろちゃん、ツっくんにもよろしくね。」
ピッ…
タキ「ざくろは何て?」
まめみ「タコワサに相談して、お話をする方向で決まったよ。」
まめお「そうか…よかった。」
まめみ「でね、タコワサも一緒に来るって。」
タキ「えっ!?」
まめお「あんなデカいタコが地上に出てきたら大騒ぎだろ!?」
まめみ「タコワサはあのタコ足の傷のせいでヒトになれないみたい…だから、エンさんにお願いして数時間だけヒト化出来る薬を作って貰える事になったんだって。」
タキ「そういう事か…それなら安心だね。」
まめお「正式なスケジュールは決まったのか?」
まめみ「薬は一週間後に出来るみたいだから、そこで決まったよ。その時にエンさんも同席して、あたしのシンクロの制御についても説明してくれるって言ってた。」
まめお「一週間後か…上手くいく事を願うしかねぇな。」
タキ「まめおとまめみのお母さんについても話が聞けるといいね。」
まめみ「うん。」
一週間後…まめおとまめみの気持ちは不安と緊張に包まれたと同時に、母親達の事が何か分かるかもしれないという僅かな希望に胸が高鳴るのだった。
To be continued…