小説「巡る虹色四季模様(希望編)」~見守る存在~

エンが開いたパソコンには、まめみの体内にあるシンクロ時のエネルギーが表示されていた。

フー「これは…?」

エン「まめみさんはブキとのシンクロ時に精神力を強く消耗してしまいますよね、なので彼女の身に付けているペンダントに小さな制御装置を埋め込ませました。」

ペコ「制御装置…それがあれば、まめみは倒れないの?」

エン「仰る通りです、シンクロ発動時にはこの装置で精神の消耗を大きく抑える事が出来ます。」

まめみ「髪は黄色に変化するけど、少しだけ息が上がるくらいで気を失う事は無くなったよ。」

スー「すごいわね、それに一見するとそんな装置はどこにも見えないし…。」

まめみにペンダントを外して見せて貰ったスー達は、その技術力にただただ驚いていた。

タコワサ「我々タコの種族は隠れ里で独自の技術を発展させ、日々進歩しているのだ。」

よっちゃん「タコの子達が勤勉家なのは知っていたけど、すごいわね…でもまめみちゃんが昔と変わらずナワバリが出来るの様になったのは本当によかった…エン君、ありがとう。」

そう言って、よっちゃんはエンに深々と頭を下げた。

エン「礼には及びませんよ、私の方こそまめみさんにいつも良くして頂いて…ありがとうございます。」

そう話すエンは優しい笑みを浮かべていて、まめみもよっちゃんも優しく笑った。

ざくろ「(ツネ…段々時間が…。)」

ツネ「(そうだね…お爺様。)」

タコワサ「(分かった。)では、ワシ達はこれで…。」

よっちゃん「あら、お帰りになるんですか?」

スルメさん「もっとゆっくりしていってええんやけど…何なら食事でも…」

タコワサ「大変ありがたいが、里の者が心配するのでな…また別の機会にでも。」

よっちゃん「そうですか…あ、それならせめてこれをお土産にどうぞ。」

そう言うとよっちゃんは奥の厨房へ行き、少しすると大きな包みを持ってきてタコワサに渡した。

タコワサ「これは…?」

よっちゃん「お店の人気メニューを詰め合わせたんです、是非皆さんで食べて下さいね。」

タコワサ「おぉ、ありがとうございます…それでは失礼しますぞ。」

まめみ「あたし達が途中まで送っていくね。」

フー「気をつけて行くんだぞ。」

まめみ「ありがとうフーさん。」

お店を後にしたまめみ達は、タコツボキャニオンまで送って行ったが…

タコワサ「まめみ、それに小僧。」

まめみ「えっ…?」

まめお「何で俺だけ小僧なんだよ、俺にはまめおって名前があるんだ!」

タコワサ「面倒な奴だな…改めてまめみにまめお、お前達に話がある。」

まめみ「あたし達に話…?」

まめお「何だよ?」

タコワサ「お前達の母親が父親達の元から去った理由だが…恐らく短命の事を知られたく無かったのだろう。」

まめみ「そっか…別れも辛くなるもんね…。」

まめお「母さん達なりに考えてたんだろうな…。」

タコワサ「それと、今のお前達は家があると思うが…それはワシがツネの母であるユキネに頼んで用意した物だ。」

まめみ「えっ!?」

まめお「タコワサが用意した物!?」

タキ「ツネ、そうなのか!?」

ツネ「僕も今知ったよ…どういう事なんだお爺様…!?」

突然の事実に驚きを隠せない4人だが、タコワサは話を続けた

タコワサ「ナデシコもさくらも着の身着のままで飛び出して行ったからな…地上での暮らしに戸惑う事も多いだろうと思って、最初はアタリメの目を盗んで部下を送り込み、こっそり様子を見させていたのだ。家こそあったが、やはり黒髪の事で不便していたのと…何よりお前達がその力で苛められていたのが目に余ってな…ユキネもずっと2人の事を心配していたのもあって、彼女の手助けを受けながらあの家の手配等をしたのだ。」

まめみ「まさか…あの巨大な水路は…?」

タコワサ「あれは偶然の産物だが…どうかしたのか?」

まめみ「あ…ううん、何でも無い。」

タコワサ「おかしな事を…まあ良い、とにかくお前達を守る一心でやった事だ。その後はアタリメの監視も一層強くなったから部下を送り込む事も出来ず、大きくなったお前達がナデシコとさくらの子だと気づくのが遅れたがな。」

まめみ「そうだったんだ…その……ありがとう。」

タコワサ「ヒーローという立場上は対立してしまうが、それ以外ならワシはいつでもお前達の助けになろう。それじゃあ帰るぞ。」

そう言うと、タコワサはリモコンを取り出してUFOを呼び出した

ツネ「僕達も一旦戻るよ。」

ざくろ「またね。」

エン「失礼します。」

まめお「気をつけてな。」

まめみ「ありがとう、みんな。」

穏やかな笑みを浮かべると、タコワサ達は帰って行き…

タキ「俺達も帰ろう。」

まめみ「うん。」

まめお「そうだな。」

優しく差し出されてタキの手を取り、まめみはまめおと共に地上へと戻って行った。

ウト族の事を打ち明けて母親達の事を知れた2人は、とても穏やかな気持ちで安心して眠りについたのだった。

別の日…

この日はアイカを連れてタキとまめおと共にまめみはモグモグに乗り、とぐろ達の居るシャケト場へと遊びに来た。

とぐろ「お、来たなまめみ。」

まめみ「こんにちは、とぐろさん。」

とぐろ「まめおにタキもよく来てくれたな、ゆっくりしていってくれ。」

まめお「ありがとな。」

タキ「そうさせて貰うよ。」

とぐろ「お前さんがまめみの言ってたアイカだな?あっしはとぐろ、いつでも歓迎するぜ。」

アイカ「こ、こんにちは…アイカです。こちらこそよろしくお願いします…!」

とぐろ「そう緊張するな、お前さんが良ければ砕けた話し方でいいからな。」

シャケとの交流は望んだものの、緊張しているアイカにとぐろは優しく笑って背中を撫でてくれて…アイカは安心した。

おシャケさま「おや、いらっしゃい。」

まめみ「おシャケさま、こんにちは。」

おシャケさま「今日はどんな話を聞かせてくれるのかな?」

まめみ「ふふっ、ハイカラスクエアで…」

そう言うとまめみは楽しそうに話して、タキ達もおシャケさま達も耳を傾けて楽しんだ。

その後シャケ子が用意した料理でちょっとしたパーティーをしていたが…

アイカ「ふぅ…。」

少しだけ疲れてしまったアイカはそっと抜けて海沿いの足場…丸い椅子の様な物にそっと腰掛けたが…

???「きゃっ…!」

アイカ「えぇっ!?」

突然、自分の下から声が聞こえてきて…驚いたアイカは立ち上がった

すると…椅子だと思っていた物はそっと持ち上がって…そこからひょこっと顔をだしたのはジェレラ!

ジェレラ「え…と……まめみちゃんのお友達…?」

アイカ「あ…はい、アイカって言います…今日はまめみちゃんに誘われてここに…えっと…貴女は…?」

ジェレラ「わ、私はジェレラ…。」

アイカ「貴女…傘使いなのかな?私も傘使いなの。」

ジェレラ「えぇ…私はコウモリという職種で雨を降らせるのよ。」

アイカ「へぇ…アメフラシみたい。私ハイカラスクエアに越してきたばかりだからまだシャケの事を知らなくて…だから知れて嬉しい。」

ジェレラ「ふふっ…私も嬉しいわ、良ければお互いに気楽に話しましょう…アイカちゃん。」

アイカ「うん、それと…もし良ければアイカでいいよ。」

ジェレラ「ありがとう、私も呼び捨てでいいわ。」

アイカ「ありがとう、よろしくね…ジェレラ。」

ジェレラ「こちらこそよろしくね、アイカ。」

その後、アイカとジェレラは傘について盛り上がり…

夕方まで満喫したまめみ達は再びモグモグに乗って戻って行ったが…

まめみ達が出発して少しして…

ザンナ「戻りました、おシャケさま…。」

テツ「痛て…また派手にやられたぜ…。」

とぐろ「おい、2人共どうしたんだ!?」

シャケ子「大変、すぐに手当を!」

そう言ってシャケ子は大急ぎで救急箱を取りに行き…おシャケさまも2人の元へ歩み寄って口を開いた。

おシャケさま「ザンナもテツもその傷は一体…?」

テツ「あいつらです…仕事終わりに突然奇襲してきて…。」

ザンナ「勝手にこちらの海域に入ってきたと思えば群れを攻撃しだして…俺達が相手をしている隙に逃がせましたが、それでも何百かの群れは…」

おシャケさま「そうか…2人共よく頑張ったね、今は傷を癒やしてゆっくり休むのだよ。」

ザンナ「勿体無いお言葉…。」

テツ「ありがとうございます…。」

シャケ子「持ってきたわ、すぐに手当するわね!ジェレラはザンナさんをお願い。」

ジェレラ「分かったわ。」

テツ「痛ててててて!シャケ子ちゃん、そこはもう少し優しく頼むぜ…痛ぇよ…!」

シャケ子「これでも最大限に優しく消毒してますよ!」

テツ「ぎゃーーーー!!」

悲鳴を上げるテツをよそに、ジェレラは手際よくザンナの傷を手当てをしていくが…

ザンナ「すまんな、ジェレラ。」

ジェレラ「いえ…。」

手当をしながらふと上を見上げると、そこには海を見つめるザンナの赤く光る鋭い瞳があって…逞しく鍛え上げられた体を見つめていると…

ザンナ「ん、どうかしたか?」

ジェレラ「あ…いえ、大丈夫です…!」

ハッとして視線を元に戻したジェレラだが、その頬は赤く染まっていて…他のシャケと違う澄んだ青い瞳は夕陽を受けて美しく輝いていて…ザンナはその瞳に少しの間魅入ってしまったが、ハッとして口を開いた。

ザンナ「初夏に…あの謎の異常気象で氷が迫っていた時、お前は俺達と一緒に一生懸命氷を防いでいてくれたな…遅くなってしまったが礼を言わせてくれ、ありがとう…よく頑張ってくれた。」

ジェレラ「そんな…私は何も……」

ザンナ「お前の行動は群れの仲間を守ったんだ、もっと自信を持っていい…俺はお前の力を評価しているぞ。」

ジェレラ「あ、ありがとうございます…ザンナ隊長。」

そう話すジェレラは相変わらず頬を真っ赤に染めているが笑みを浮かべていて…ザンナもつられて穏やかな笑みを浮かべたのと同時に…鼓動が少しだけ早くなるのも感じていた。

To be continued…