小説「巡る虹色四季模様(希望編)」最終話~救われた命~

ルイの迷いが晴れぬまま、アイカは手術の日を迎えた。

まめみ「アイカちゃん、いよいよ今日のお昼だね。」

スー「完治すれば、またあたし達とナワバリも出来るし…何より本人が楽になるもんね。」

まめみ「うん。」

タキ「手術まであと2時間、俺達も落ち着かない…。」

まめお「俺達に出来るのは、アイカの手術が成功する事だけだもんな…。」

まめみ「アイカちゃんは絶対成功するよ、そう信じてる。」

タキ「まめみ…うん、そうだね。」

まめお「アイカが帰ってきたらお祝いパーティー開こうぜ。」

スー「いいわね、スルメさん達のお店で盛大に祝いましょう。」

4人がそう話す一方で、ルイはナワバリバトルに没頭していて…

あっという間に時間は過ぎ、手術予定の時刻を迎えていて…ルイがロビーから出てくると、そこにはシキの姿が…

シキ「ルイ!」

ルイ「シキ…?」

シキ「アイカちゃんには会った?」

ルイ「えっ……いや…会ってない…。」

シキ「何で…だってルイはアイカちゃんが手術を受ける隠れ里の出身なんでしょ…?どうして会ってあげないの!?」

ルイ「…僕が好きだった人みたいに…アイカを失うのが怖いんだ……だから…」

シキ「ルイの意気地無し!!」

ルイ「え…えぇ!?」

彼の言葉を遮って怒るシキに、ルイは驚いてしまった…

シキ「アイカちゃんは、ルイの事をずっと…ルイだってそうでしょ…?」

ルイ「シキ…僕は……」

シキ「あたし…アイカちゃんが大好きだよ…それにルイの事も大好き…まめみちゃん達もみんな大好きで大事な友達なの……それにずっとアイカちゃんとルイを見てて気づいてた…お互いに大好きなんだって。」

ルイ「シキ…!」

シキ「ルイの好きな人が死んじゃったのは知ってるよ…でもそれで自分の気持ちに蓋をして、アイカちゃんを突き放しちゃうの…?そんなの…その人も悲しんじゃうよ…。」

ルイ「…………!!」

そうだ…僕はずっと逃げていたんだ…アミの事を気にするばかりにアイカへの気持ちを押さえ込んで…

シキ「ルイ…!」

ルイ「…アイカの所へ行ってくる!ありがとうシキ!」

そう言うと、ルイは一目散に走って行き…

シキ「どういたしまして、頑張ってね。」

そう話すシキの表情は穏やかで、走って行くルイを見ていた。

一方で、アイカは手術を受ける前の準備をしていた

ツネ「不安が大きいと思う…けど、必ず上手くいくよ。」

ざくろ「次に目が覚めた時には、もう苦しくならないからね。」

エン「強い麻酔を打つので意識が朦朧としますが、じきに眠りにつくので大丈夫ですよ。」

アイカ「みんなありがとう…お願いします。」

ツネとざくろが退室し、エンがアイカに麻酔を打った。

彼の言う通り、じきに意識は朦朧としてきて…分かっていても不安が大きくなってきて…

すると…手に温かい感覚が伝わり、虚ろな赤い瞳をゆっくりと向けると、そこにはルイの姿があった。

エン「ルイ…!」

ルイ「ごめんエン…少しだけ、アイカと2人きりにして…。」

エン「分かりました。」

彼の意思を察したエンは退室し、アイカの手を強く握ったまま…ルイは口を開いた。

ルイ「死なないで、アイカ…!」

白い瞳からは涙が溢れていて…

アイカ「ルイ…く……ん……。」

一生懸命に声を絞り出して名前を呼ぶアイカに、ルイは泣いたまま言葉を続けた

ルイ「……僕は…いや……俺はもう、大切な人をこれ以上失いたくないっ…!!俺がアイカを守る…ずっと守るから…だから…だから生きて…アイカっ!!」

アイカ「………!!」

赤い瞳からは大粒の涙が溢れ…弱々しくもルイの手を握ったアイカはそのまま深い眠りにつき…

エン「時間です、ルイ。」

ルイ「分かった…アイカ、ずっと待ってるからね。」

入ってきたエンと共に、医師達にアイカを託し退室したルイ

そのままアイカは手術室へ運ばれ…手術中のランプが点灯して…

ツネ達は手術室の前で、まめみ達は地上でアイカの無事を願った

そして5時間後…

スッ…手術中のランプが消え、扉が開いた。

エンが医師と話をして戻ってきて…

ルイ『アイカは…アイカはどうなったの!?』

エン『大丈夫、成功しましたよ。』

ツネ『よかった…アイカ…!』

ざくろ『これで後は回復するのを待つだけだね。』

カラカラ…少しして眠ったままのアイカが出てきて…そのまま個室へ運ばれた。

付き添いはルイに任せ、ツネ達は報告の為に地上へ向かい…

夜…アイカが目を覚まし、酸素マスクを着けたまま赤い瞳がルイへ向けられた

ルイ「アイカ。」

アイカ「ルイ…君…。」

ルイ「頑張ったねアイカ…成功したよ。」

アイカ「よかっ…た……ルイ君…私…夢を見てた…。」

ルイ「夢?」

アイカ「真っ白な世界で…1人だけで居て…そしたら…黄色い髪と瞳の…女の子が居たの…。」

ルイ「黄色の髪と瞳…!」

アイカ「アミ…さんっていう人だった…私を生かしてくれた…ルイを守って…共に生きて…って…言ってくれた…。」

ルイ「アミ…!!」

アイカ「ルイ君…あったかい…私…また…眠く……」

そう言うと、アイカは再び眠りについて…ルイの頬を伝って涙が零れ落ち…アイカの手をギュッと握った。

ルイ「…おやすみ、アイカ。」

酸素マスク越しに穏やかな表情で、規則正しい寝息を立てるアイカの頭を優しく撫で…ルイは静かに瞳を閉じた。

アミ…君がアイカを助けてくれたんだね

ありがとう…アミ…

俺は…自分の気持ちに正直に向き合うよ

アイカ…君が好きだ

巡る虹色四季模様(希望編)~Fin~

海賊ダイルです。小説を読んで頂いた皆様、本当にありがとうございます!

小説「巡る虹色四季模様(希望編)」はこれにて完結しました。

ツネとざくろが結ばれ、シキやアイカと交流するルイ自身にも変化が起きた今回の章、シャケ達の方も大きな問題が起きましたが、ひとまずザンナとジェレラが無事に結ばれて番となりました。

そしてツミのエンに対する気持ちにも大きな変化が…そしてタコワサから語られて真実を知ったツネ、ポラリスに残されたジェレラの叔父ルゴスやシャケ同士の確執…まだまだ解決していない問題や謎もありますが、それらは次回から始まる「完結編」にて明らかになります。

それでは次のお話でお会いしましょう!

ここまで読んで頂きありがとうございました!

2021/12/31 海賊ダイル