小説「巡る虹色四季模様(完結編)」~ファイナルフェスは不穏な予感~

いつもの様に穏やかな日々を過ごすまめみ達だったが…

ヒメ「こんちゃーっ、ハイカラニュースの時間だよ!」

イイダ「今日もハイカラスクエアの片隅から、テンタクルズがお届けしますね。」

まめみ「あ、ハイカラニュースが始まった。」

タキ「ステージ発表の時間じゃ無い…って事はもしかして?」

ヒメ「近い内にフェスが始まるよー!」

イイダ「テンション上がりますね、機材のメンテしなくっちゃ!」

まめみ「フェス、もうそんな時期が来たんだね!」

タキ「盛り上がるね、今回は何かな?」

ヒメ「それじゃあ発表するよ、今回のお題は…ついにファイナル!どっちの世界を臨む?混沌vs秩序!!」

イイダ「きゃー!ワイルドワイドに上がって行きましょ~!!

まめみ「ファイナルフェス…!?」

タキ「今回が最後って事?それにこのお題は…!?」

驚きが隠せない2人だが、ニュースは続いていき…

ヒメ「対決は…何が起こるか分からない、だからこそ面白れーだろ!「混沌」と!」

イイダ「その安心感に美しさすら感じる…規則正しく順序良く!な「秩序」になります!」

ヒメ「カミ様も、最後のフェスにイカしたお題持ってくるじゃねーか!」

そんな風に盛り上がっていたが、この後のイイダの発言は驚くべき内容であった…

イイダ「そうですね、でも混沌とした世界を臨むなんてあり得ないですよね~。」

ヒメ「は?カオスな世界の方が、次から次に何が起こるか分からなくてワクワクするし面白れーだろ!」

イイダ「何言ってるんですセンパイ、バランスの取れた世界の方が安心して次に進めるじゃないですか。」

この瞬間から、2人の雰囲気は一気に変わり出して…

ヒメ「待てよ、ウチら「テンタクルズ」なんだぜ?そこを分かって言ってんのかイイダ!?昔の単色で色気無ぇシーンをカラフルに塗り替えてやろうぜ!って言ったの忘れたのかよ!」

イイダ「待つのはセンパイの方ですよ!組む時にワタシに言ってくれたじゃ無いですか、アタシとイイダのカラーは単色だと濃すぎるけど、2つが合わされば最高の無敵カラーだって!」

ヒメ「もちろん覚えてるぜ、忘れる訳ねーだろ!」

イイダ「ワタシにとってはテンタクルズが世界の全てなんですから嬉しかった…それなのに…。」

ヒメ「そこまで大げさな話じゃねーだろ…それにイカした仲間にも出会えたじゃねぇか。DJ仲間も出来たしハチやジジィにも会えたのに、イイダの世界にそいつらは居ねーのかよ?」

イイダ「そんな事ありません…でも、混沌の世界だとそういう出会いもバラバラになってしまいそうで…ワタシはそれが嫌です!」

ヒメ「すぐ重たい方に考えるんじゃねーよ!」

イイダ「何でも変えちゃいけない訳じゃありません、でもバランスの取れた物を大事にして、安心できる場所を1つずつ作って守って行きたいんです…。」

ヒメ「それはアタシも同じだよ、全部ぶっ壊せって言ってるんじゃない…でも何も無い世界なんて退屈なんだよ。予想外の事が起きればワクワクするし、アタシは退屈しない世界が好みなんだよ。」

イイダ「そんな…テンタクルズがそうなっちゃうかも…ワタシは絶対嫌です!」

ヒメ「そうなっちゃうかもって…イイダお前は………あーーーもうヤメヤメ!こうなったらフェスで決めようぜ!負けた方は勝った方の世界を受け入れる、これでどうだ!?」

イイダ「ちょっと待って下さい…センパイが勝ったらどんな世界を臨むんですか!?」

ヒメ「知らねーよ、ただアタシは「ずっとこのまま」なんて世界は要らねーからな。」

イイダ「……それ…本気で言ってるんですか…?」

ヒメ「当たり前だろ!今回は3日間ぶっ続けでやるんだから、イイダも考えとけよ!」

イイダ「…分かりました、そこまで言うのなら…ワタシのも自分が望む世界をじっくり考えておきます。」

ヒメ「みんなの投票と参加、待ってるぜーしっかり準備しとけよ!」

その後はいつものステージ告知等が続き、ニュースは終わった…。

ハイカラスクエアの広場に居た者達は皆ざわつき、何やら只事では無いテンタクルズの雰囲気に驚いていた…。

まめみ「タキ君…。」

タキ「…今回はただのフェスだけじゃ終わらなそうだね。」

まめみ「うん…。」

タキ「まめみ、今日はもうハイカラシティに帰って、家で俺とのんびり過ごそう?」

まめみ「うん…そうだね。」

不安な表情のまめみを抱きしめ、タキは彼女の手を取って駅へと向かうのだった…。

同じ頃…フーとペコは、結婚式の日を決めて式場との最初の打ち合わせを終え、ハイカラスクエアの街を歩いていた。

フー「とても良い雰囲気の場所で良かった、ペコのドレス姿も楽しみだ。」

ペコ「あり…がとう…。」

フー「ペコ…?」

ペコ「ふぅ…うっ…。」

フー「どうした、具合が悪いのか!?」

ペコ「式場を出て…歩いていたら…急に…。」

フー「今は動かない方がいい、そこのベンチで休もう。」

ペコ「えぇ…。」

2人はゆっくりと歩き、ベンチに腰掛けた。

フー「それにしても、一体何が起きたんだ…。」

心配しながらハンカチでペコのおでこの汗を拭うフーに、ペコはまだ苦しそうにしながらも口を開いた。

ペコ「何か止められない「強大なもの」がやってくる様な…何とも言えない強い胸騒ぎを感じる…!」

フー「止められない何か…それは一体…!?」

ペコ「私にも分からない…でも…確かにそう思うの…!」

すると、大きなビルに掛けられたモニターに速報ニュースが映し出され…そこには先程まめみ達が見たテンタクルズのやり取りとファイナルフェスについて流れていた…。

いつもの2人の雰囲気とは明らかに違い、敵対した様に険しい表情を浮かべているテンタクルズは観ている者達にも緊張が走る…

そしてニュースが終わると、ざわつきと共に人々は再び歩き出して…

フー「ペコ、もしかしてお前が感じていた「強大な何か」とは…?」

ペコ「この事で間違い無さそうね…。」

ニュースの終わりと共に和らいだ自身の苦しさを感じつつ、ペコはフーと顔を見合わせてそう答えた。

このファイナルフェスで待ち受ける未来は一体何なんだ…湧き上がる不安を抑えつつ、フーはペコを抱きしめた。

To be continued…