小説「巡る虹色四季模様(完結編)」~幸せを運んで~

ファイナルフェスも終わり、シキも旅立って平穏な日々が続き…

春の暖かさが出始めたある日の事

まめみ「はい、これで大丈夫。」

タキ「ありがとう、まめみ。」

まめみ「どういたしまして。」

まめお「準備出来たか?」

まめみ「うん、今ちょうど出来たところ。」

まめお「よし、それじゃあ行くぞ。」

この日はフーとペコの結婚式、3人は準備を終えて式場へと向かった。

同じ頃…

ペコ「………やだ…ちょっとうたた寝しちゃった…。」

準備を終えたペコは控え室のソファで少しだけうたた寝してしまい、慌てて立ち上がってドレスを整えた。

そして、何気なく自分の手帳を開いて日記を読むと…

フー『明日、俺達は夫婦になるんだな。』

ペコ『そうね…まだ夢みたい。』

フー『夢じゃ無い、ずっと一緒に生きていくんだ…愛してるぞ、ペコ。』

ペコ「…………………!!」

頭の中に流れてくるたくさんの記憶…この感覚は今まで感じた事の無い…!!

ペコ自身にとある異変が起きた事を知る由も無く、皆が集まり…

リーーーンゴーーーーン!!

無事に結婚式が行われ、まめみ達が盛大にお祝いをした。

まめみ「フーさん、ペコちゃんおめでとう!」

タキ「姉さん、フーと幸せに!」

まめお「ずっと仲良くな!」

スー「素敵な家庭を築いてね!」

フー「ありがとうな!」

ペコ「みんな、ありがとう!」

その後はスルメさん達のお店でパーティーを行っていたが、ペコがお店の裏の空き地にフーを連れ出した。

ペコ「ここ、覚えてる?」

フー「あぁ、もちろん覚えてるさ…ペコに告白をした場所だからな。」

ペコ「ねぇフー、私すごく幸せよ…貴方と夫婦になれた事も…今こうして、しっかりと記憶がある事も。」

フー「えっ、記憶があるって…ペコ……!?」

ペコは一度眠ると記憶がリセットされてしまう故、毎日手帳に日記を書いてそれを読みながらでしか記憶を繋ぎ止めていられない…それなのに、彼女は今はっきりと「記憶がある事も」と言った…という事は…!!

ペコ「えぇ、日記を見なくても記憶があるの。」

フー「ペコ、一体いつから!?」

驚いたフーは緑の瞳を見開き、ペコの肩を優しくもしっかり掴んで聞くと、ペコは穏やかな笑顔で答えた。

ペコ「式場でうたた寝しちゃって…目が覚めてから自分の日記を読んでいたら、突然今までの記憶が流れ込んでくる様な不思議な感覚に襲われて、治まったらこうして記憶があったの。」

フー「そんな事が…!一体何が原因で?」

ペコ「はっきりした理由は分からないけど…もしかしたら今まで生きてきた中で、一番の幸せを感じた瞬間だったからかもしれないわね。」

フー「そうか…この幸せが、ペコの記憶を繋いでくれたんだな。」

ペコ「嬉しいわ、何もかもが覚えていられる…とても幸せよ。」

フー「俺も幸せだ…改めて、愛しているよペコ。」

ペコ「私も愛してるわ、フー。」

そう言うと2人は抱き合い…木漏れ日の差す中で、暖かい口づけを交わした。

その後ペコから報告を受けたまめみ達も喜び、パーティーはますます盛り上がるのだった。

夜…家に帰ってきたまめみと泊まる事にしたタキがリビングで寛いでいると、まめおが来た。

まめお「なぁ、ちょっといいか?」

まめみ「うん、いいよ。」

タキ「どうしたの、まめお?」

2人が不思議そうな顔をしていると、まめおは深呼吸して口を開いた。

まめお「実はな………俺、スーと結婚するんだ。」

タキ「えっ!?」

まめみ「いつ結婚するの!?」

まめお「いつかはまだ決めてない、けど婚約はした。」

まめみ「そうなんだね。」

タキ「という事は、まめおは家を…?」

まめお「あぁ、一旦スルメさんの店に引っ越して…近くに家を持とうと思ってんだ。」

まめみ「そっか……すごく寂しくなっちゃう…でもスーちゃんが家族になるんだもん、嬉しさの方が大きいよ。」

まめおの結婚、それは即ち彼がこの家を出て行く事を意味していて…しかしまめみは寂しがりつつも心から祝福するのだった。

まめお「ちゃんと引っ越すのは春になってからだけど、あと1ヶ月くらいだな。」

タキ「そっか…ならそれまで、まめみとの時間を大切にしないとね。」

まめお「あぁ。」

残された時間でたくさん思い出を作ろう…そう決意したまめおとまめみ

一方の地下では、翌日タコワサとツネ達によるお茶会が開かれていた

お茶会と言っても身内だけでやるもので、和風庭園で着物を着てお茶を嗜むというものである。

いつもはツネ、ざくろ、エンだけであったが…今回はツミ、ルイ、アイカも招待された

ツミ『私達まで…本当によかったのか?』

エン『もちろんですよ、それに…着物姿も綺麗です、ツミ。』

ツミ『え、エン…!』

頬を真っ赤にするツミだったが、口元は笑っていて…エンも優しい笑みを浮かべている

一方のアイカも、祖母の形見である着物を着て参加しており…結い上げた髪と赤い口紅を塗ったその姿にルイも見惚れてしまう

タコワサ『よく似合っているぞ、アイカ。』

アイカ『あり…がと…タコワサおじ…い…さま。』

まだ片言なタコの言葉だが、一生懸命話すアイカの姿にタコワサはニコニコしながら彼女の頭を撫でていて…大変ご機嫌な様子だ。

ざくろ『お待たせ、お茶の用意が出来たよ。』

ツネ『茶菓子も準備出来たから、いつでも大丈夫。』

タコワサ『おぉ、そうか…では始めるとしよう。』

こうしてお茶会が始まったが…

タコワサ『うむ…よい香りの茶だ。』

ざくろ『ん、このお茶菓子も美味しい!』

ツネ『また新作が出たんだ、ここのお菓子は本当に安定だね。』

ツミ『綺麗な菊の花だな、ここまで細かく洗練された形を作るのは、とても大変だろう。』

エン『この道50年の職人の方が作ってるんですよ、今度ツミも一緒に見学しに行きませんか?』

ツミ『面白そうだな、是非お願いしたい。』

エン『分かりました、手配しておきますね。』

ルイ『……………!!』

アイカ『ルイ君…どうしたの?』

青ざめた顔でプルプルしているルイに気づいたアイカは、皆に気づかれぬ様にそっと声をかけたが…

ルイ『あ…ああ足が………!!』

どうやらルイは、慣れない正座に足が痺れてしまった様だ…。

アイカ『大変!足を崩…ても良い様に…お爺様に…お願…して…』

ルイ『いや…大丈夫…!!』

アイカ『でもルイ君…!』

ルイ『本当に大丈夫ぅ…!!』

アイカの前で情けない姿を見せたくない…ルイは必死に足の痺れと戦っていたが、しばらくして…

ツネ『ちょっとトイレ行ってくるよ。』

トイレの為にツネが部屋を出て行った直後!

ルイ『うっ…うあぁぁぁぁ!!』

バターーン!!

とうとう我慢出来なくなったルイは、そのまま倒れてビクビクとしてしまった…

To be continued…