アイカ『ルイ君!』
タコワサ『何事だ!?』
ざくろ『え、どうしたの!?』
エン『苦しいんですか!?』
驚いたエンがルイに触ると…
ビリビリビリ!!
ルイ『ぎょわぁぁぁぁーーー!!』
さらに痺れが強まってしまい、ルイは叫び声を上げた…
ツミ『る、ルイ…ものすごい声になってるぞ…。』
驚くタコワサ達だったが…
アイカ『ルイ君…足…痺…るの…!』
ざくろ『あ、正座してて足が痺れちゃったのね。』
エン『そういう事でしたか。』
タコワサ『無理をせずとも、楽な体制で良いのだぞ。』
ルイ『は…いぃ…。』
我慢していた分、足の痺れはしばらく治まらず…その後何も知らないツネが戻って来て、タコワサに頭を撫で回されつつも事情を知ってルイに同情したのだった。
夕方…
ルイがゆっくりと目を開けると、そこにはアイカの顔が…
アイカ「あ、目が覚めた?」
ルイ「んっ…アイカ…?」
辺りを見渡すと、自分達以外は誰も居なくて…それ故なのか、アイカはイカの言葉を話していた。
アイカ「ルイ君、休んでる内にに眠っちゃったの…みんな心配してたよ。」
ルイ「そっか…後でみんなに謝らないとなぁ……ってもう夕方か…送ってくよ。」
アイカ「ありがとう。」
私服に着替えた後に、アイカを連れて地上へ出たルイ…しばらく2人で歩いていると、ふわっと1枚の花びらが舞ってきた。
ルイ「あ、桜の花びらだ。」
アイカ「本当だ………あ、ルイ君あれ見て!」
そう言ってアイカの指差した方を見ると、そこには大きな桜の木が満開の花を咲かせていた。
ルイ「すごい…まだ春本番じゃないのに、こんなに…!」
アイカ「咲くのが早い品種なんだね、すごく大きくて綺麗!」
白い瞳と赤い瞳をキラキラさせながら夕桜を見上げる2人…すると、アイカが桜の木の下に走って行ってはしゃぎ始めた。
ルイ「アイカ、着物であんまりはしゃぐと危な…………」
そこまで言いかけて、ルイは息を飲んだ
アイカ「見てルイ君、すごく綺麗!」
花ごと落ちてしまった桜を見つけて拾い上げ、それを見せてくれたのだが…ルイにとっては夕桜の中ではしゃぐ着物姿のアイカがとても綺麗で可愛くて…
ぎゅっと手を握りしめると、ゆっくりとアイカの元へ歩いて行き…口を開いた。
ルイ「アイカ。」
アイカ「ルイ君、どうしたの?」
不思議そうに自分の顔を見上げるアイカの赤い瞳をじっと見つめて、ルイは再び口を開いた。
ルイ「俺、アイカが好きだ。」
アイカ「ルイ君…!」
ルイ「アイカの事をずっと守りたい…ずっと傍で共に過ごして生きて行きたいんだ。」
アイカ「でも…ルイ君はアミさんを……」
ルイ「君がその傷を癒やしてくれた…決してアミの代わりなんて思ってない、アイカ自身が大好きなんだ。」
アイカ「ルイ…君…!!」
赤い瞳からポロポロと涙を流すアイカ…ルイは彼女の涙を優しく拭い、彼女の顔を真っ直ぐ見て言葉を続けた。
ルイ「アイカの返事、聞かせてくれる?」
アイカ「ルイ君…私も…私も好き…大好き!」
ルイ「よかった…大好きだよアイカ、ずっと守るからね!」
そう言うとルイはアイカを抱き上げて、ゆっくりと下ろした後に…
2人は目を閉じて…そっと、優しく甘いキスをした。
そして、その様子を少し離れた建物の陰からそっと聞いていたのは…
ツネ「……………。」
ざくろ「いいの、ツネ?」
ツネ「アイカを大事にしてくれるという強い想いを、毎日僕の元へ手合わせにくる様子から感じていた。本当なら僕から1本取ってから…と言いたい所だけど、ルイなら大丈夫…アイカを任せられるよ。」
ざくろ「(ツネったら…素直じゃないんだから。)」
先日エンからルイの様子を聞いて以来、ツネはアイカの件に関してルイへの態度を少し軟化させていて…内心は認めているのに素直では無い彼の様子に、ざくろは少しだけクスッと笑ってしまうのだった。
ツネ「さて…一段落したし、僕もちゃんと話さないとね。」
ざくろ「話すって…何を?」
ツネ「それはムツゴ楼に行ってからのお楽しみだよ。」
そう言うと、ツネはざくろを抱き上げた。
ざくろ「ひゃあっ…ツネ!?」
ツネ「もう僕の心は決めてあるからね。」
それだけ言うと、ツネは軽やかな動きでざくろを抱き上げたまま、ムツゴ楼へと向かうのだった。
ムツゴ楼へ着いた時には夜空に星が輝いていて、綺麗な星空の下でツネはざくろの手を優しく取った。
ざくろ「一体何の話を…?」
ツネ「まだ少し先の話になるけど…これを。」
そう言って、ツネはざくろに綺麗な飾りの付いた簪(かんざし)を渡し…受け取ったざくろは頬を真っ赤に染めた。
ざくろ「簪…という事は……!」
ツネ「僕の心は生涯ざくろと共にあるという、約束の証を渡しておきたかったんだ。」
ざくろ「嬉しい、ありがとうツネ!」
ツネ「どういたしまして、いつか君が僕の隣で見せてくれる花嫁衣装…とても楽しみだよ。」
ざくろ「ふふっ…その時は最高に綺麗な姿を見せるね。」
ツネ「愛してるよ、ざくろ。」
ざくろ「あたしも愛してる、ツネ。」
2人の頬は真っ赤に染まったまま、お互いを優しく見つめ合い…月明かりの下で口づけを交わした。
同じ頃…ブドーの経営するカフェが大繁盛したのに伴ってお店を拡大する事になり、ツミは遠くの街へ引っ越しを決意したアマナツ達の手伝いをしていた。
アマナツ「さて、これで準備完了ね。」
ツミ「アマナツさん、本当によかったのか?こんなに綺麗な家を…。」
アマナツ「もちろんよ、私達はツミちゃんになら喜んで譲れるわ。」
ベリア「ツミお姉ちゃん、いつも遊んでくれてありがとう。」
ツミ「どういたしまして、私こそ楽しかった…スイと仲良く元気でな、ベリア。」
ベリア「うん!」
スイ「あぅ!」
ブドー「最初の頃のツミちゃんはあまり食事を摂らなくて心配だったが…今はしっかり食べてくれる様になって安心した、これからも食事はちゃんと摂るんだぞ。」
ツミ「あぁ、約束するよブドーさん。」
アマナツ「ツミちゃんに出会えてよかった、本当にありがとう。」
ツミ「こちらこそありがとう、貴女達の事はずっと忘れない。」
お互いにとても暖かい笑顔で、その後はみんなで楽しい夕食の時間を過ごし…
2日後…皆が見送る中、アマナツ達は旅立った。
春は出会いと別れの季節
新たな出来事が始まる季節
桜の花びらと共に、穏やかながらも変化が生まれていく中、ハイカラ地方は春本番を迎えるのだった。
To be continued…