小説「巡る虹色四季模様(完結編)」最終話~緑風に桃花舞う~

暖かい春の風が吹き、桜が咲き誇るハイカラ地方

ツミはアマナツ達から譲り受けた家を綺麗に保ちながら、地上に用事がある際にはそこでエンと2人きりで大切な時間を過ごし、アイカもルイと充実した春の日々を送りつつ、シキから届いたハガキで相手の男の子と仲睦まじく映る様子に喜び、一方のシキもイカラインでアイカからルイと恋人同士になった報告を受けて安堵すると同時に、心から祝福した。そしてツネとざくろは正式に婚約し、タコワサは泣いて喜んだ。

シャケの世界もザンナとジェレラの間に新たな命が宿り、毎日イクラの中で成長していく様子を叔父のルゴス共々楽しみにしていて…とぐろとシャケ子も日々成長していくドスコイまるを優しく見守り、おシャケさま専属の郵便配達係になったタマとテツが一緒に暮らし始めるという皆が驚く事もあったが、それらも含めて幸せな日々を送っていた。

フーとペコも順調な新婚生活を送り、そしてこの日はまめおが実家で過ごす最後の日となった。

まめお「ふぅ…これで最後だな。」

ダンボールに最後の荷物を詰め、一息ついたまめお

すると、リビングでの荷物纏めを手伝っていたまめみが来た。

まめみ「お疲れ様、リビングの方の荷物も纏まったよ。」

まめお「ありがとな。」

まめみ「どういたしまして、休憩してお茶飲もうよ。」

まめお「そうだな。」

2人でリビングに向かい、春の木漏れ日が差す中でお茶を楽しみ…

まめみ「今日も暖かいね。」

まめお「あぁ、春の風も気持ちいいぜ。」

リビングから庭に続く大きな窓から入ってくる春の暖かい風は、心地良くてお日様の香りがする

まめみ「あたし達、本当に今までずっと離れた事が無かったね。」

まめお「そうだな、生まれた時から…というか生まれる前から一緒だったのか。」

まめみ「ふふっ、そうだね。」

まめお「色々あったな…けど、タキとの出会いが俺達を変えてくれた。」

まめみ「うん。」

タキとの出会い…それは外の世界に関わろうとしなかった2人を大きく変え、今の幸せに繋がっている…まめおとまめみはそれを大きく実感していた。

まめお「まめみ、俺は明日この家を出るけどさ…俺達はずっと家族だ、何があってもそれだけは変わらないからな。」

まめみ「まめお…。」

まめお「お前は1人で抱え込む時がある、もしタキが任務で居ない時には俺を頼れ、もちろんツネやフー兄達でもいい…何も気を遣うな、いつだって俺はお前を大事に思ってる。」

まめみ「まめお…ありがとう。」

頬を伝って零れ落ちる涙を拭い、まめみは席を立ってまめおに抱きついた。

まめお「お前はいつまでも甘えんぼだな。」

まめみ「ぐすっ…まめおが気を遣うなって言ったもん。」

まめお「あぁ、それでいいんだ。」

そう言いながら、まめおも優しく抱きしめて頭を撫でた。

この日、2人は片時もお互いの傍を離れなかった

ずっと思い出話に花を咲かせ…

夜は2人で仲良く眠りについた。

そして次の日…まめおはスルメさんのお店へ引っ越して行った。

まめみ「さて…お洗濯しなきゃ!」

1人分になった洗濯物、洗い物を済ませてテレビを見ながらお茶を飲み…お気に入りの雑誌を読んでいつの間にか木漏れ日の暖かさにうたた寝して、夕飯も1人で済ませて夜は寂しくない様にりらびっとを抱きしめて眠り…

まめみは今までと違う不思議で少しだけ寂しい生活を送っていた

時々泊まりに来るタキもまめみの寂しさには気づいていて、彼女だけで暮らすというのは防犯上も危ないと内心はすごく心配していた。

そんなある日の事…タキはスルメさんのお店に寄った時に休憩中のまめおとスーの3人で話していたが、話題は家の事に…

タキ「まめお、あれから家は見つかった?」

まめお「まだ見つからねぇんだ、なかなか店に近い物件が無くてさ…。」

スー「早く見つけたいと思ってるんだけどね…。」

そう話す2人を心配しつつオレンジジュースを飲んだタキだったが、次の瞬間にある事を閃いた。

タキ「…ねぇ、2人共。」

まめお「ん、どうした?」

タキ「俺に考えがあるんだ。」

スー「えっ?」

タキ「もしよかったら……」

そう言って「ある提案」をしたタキに、2人はすごく驚いたが…話し合った末にとても喜んだ。

そして夜…タキはまめみの家に向かった

まめみ「いらっしゃいタキ君。」

タキ「夜遅くにごめんね。」

まめみ「ううん、来てくれて嬉しいよ。」

そう話すまめみはとても嬉しそうで、タキも優しく笑う

手洗い等を済ました後にリビングに向かい、出されたお茶を一口飲むと口を開いた。

タキ「実は、今日の昼間まめお達と家の事で話をしたんだ。」

まめみ「家がなかなか見つからないって言ってたけど、もしかして見つかったの?」

タキ「その事なんだけど、俺の家を譲ろうと思うんだ。」

まめみ「え…えぇぇぇぇ!?」

タキ「将来の事を考えて、俺がここに住んだ方がいいって思って。」

まめみ「将来の事って……せっかく2年前に家を買ったのに、どうして…?」

タキ「ここならとぐろさん達にもいつでも会える、それに…思い出がたくさん詰まったこの家を、まめみと一緒に守っていきたいんだ。」

まめみ「タキ君…!」

タキ「どうかな、まめみ?」

まめみ「嬉しい…すごく嬉しいよ…!」

喜ぶまめみを見てタキは優しく笑い、彼女の頬に手を添えてキスをした。

それから2週間後…タキは正式にまめお達に家を譲り、まめみの家に引っ越して来て2人は同棲を始めた

朝食を2人で済まし、その日の気分に合わせて一緒に出かけたりそれぞれ部屋で好きな事をしたり、自由で充実した心地良い日々…

それから1ヶ月経った春の終わり頃、タキの元にアタリメ司令から新たな任務の連絡が来て…翌日の早朝ヒーロー装備に身を包んだタキを見送る為に、まめみは家の近くにある遅咲き桜の木まで彼と一緒に歩いてきた。

タキ「今回は5日間のパトロールだよ、タコツボバレーだけだから近くだし安心して欲しい。」

まめみ「うん、でも無理だけはしないでね。」

タキ「ありがとう、絶対に無理はしないって約束する。それと…これをまめみに。」

そう言うとタキはポケットから小さな箱を取り出して、まめみの前でそっと開けた

そこには綺麗な花の形をしたダイヤの指輪があって…

まめみ「わぁ、綺麗…!」

タキ「まだ約束だけになっちゃうけど…まめみ、結婚しよう。」

そう言うと、まめみの桃色の瞳が大きく見開かれて、その頬は赤く染まった…

まめみ「タキ君……!!ありがとう…嬉しい………ぐすっ…!」

両手を口に当て喜びながら泣いてしまったまめみを優しく抱きしめるタキ、彼の背中にそっと手を回して抱きしめ返すと耳元で心地良い声が聞こえて…

タキ「まめみの返事を聞かせて?」

彼の吐息が耳にかかり、くすぐったくも安心する愛しい声に、まめみは桃色の瞳に涙を溜めつつも満面の笑みで答えた。

まめみ「喜んでお受けします。」

タキ「まめみ!」

まめみ「タキ君!」

彼女を抱き上げて大喜びするタキは、そのままくるくると回り…

そっと下ろすと、タキはまめみの左手薬指に指輪を嵌めて、2人は優しい笑みを浮かべて見つめ合い…

タキ「愛してるよ、まめみ。」

まめみ「あたしも愛してるよ、タキ君。」

朝陽に照らされて美しく咲き誇る桜の花、そして風に舞い踊る花びらの中で、2人は甘く幸せな口づけをした。

緑風に運ばれて桃花は舞い、新しい日々を運んでくる

巡る虹色四季模様(完結編)~Fin~

海賊ダイルです。小説を読んで頂いた皆様、本当にありがとうございます!

小説「巡る虹色四季模様(完結編)」はこれにて完結しました!

シャケの世界ではジェレラの叔父ルゴスと一悶着あったものの、ザンナの強い想いとおシャケさまの行動によりシャケの問題も解決し、ツミとエン…そしてルイもアイカへの想いをちゃんと伝えて両思いになりました。

フーとペコも結婚し、ツネとざくろやまめおとスー、そしてタキも最後にまめみにプロポーズして婚約しました。

スプラ1の物語「幼き記憶とダイオウイカ」編の始まりが2016/5/1、スプラ2の物語「孤独なヒーローと瞳に映る2つの光」編の始まりが2017/11/3…このシリーズ、6年も続いていたんですね!(本人もびっくり)

ここまでの間に色々な事がありましたが、最後までこのお話を書き続けてこれたのは私の誇りです。

さて、まめみ達のその後ですが…次は新たな舞台「バンカラ地方」で物語が始まります。

新たな役職に就いたタキ、そしてそれを支えるまめみ…

そんな2人に新たな舞台と任務、危機が訪れますが…小さな頼もしい相棒を迎え入れてそれらに立ち向かっていきます。

これらはスプラ3が発売されてしばらくしてからになりますが、また読んで頂ければ幸いです!

それでは3の世界でまた会いましょう!

 

2022/6/30 海賊ダイル