アタリメ「まめみちゃん!」
まめみ「アタリメさん、お久しぶりです!」
アタリメ「元気そうで良かったぞい、早速じゃが大事な話があるんじゃ。」
まめみ「何でしょう?」
アタリメ「…今までの任務と違って、かなり危険を伴うものになりそうじゃ…オヌシの大切な人達にも話した方がえぇぞ。」
まめみ「え…?」
アタリメ「確かこの辺に、お父上が経営しておるお店があるんじゃろ?ワシをそこへ連れて行っておくれ。」
まめみ「アタリメさん…!」
それは即ち、今まで隠していたヒーローである事を明かす…まめみは意味を理解したと同時に、今回の任務が如何に大変なものなのかを察して…背中をゾクリと嫌な寒気が襲った。
少し歩いて案内すると、臨時休業の札が出ていて…まめおがお店の前に立っていた。
まめお「まめみ、タキから連絡が来たんだ。」
まめみ「あたしも電話が来て、アタリメさんと合流する様にお願いされたの。」
アタリメ「ん、ツネとざくろは来ておらんのか?」
まめみ「2人も呼んでるんですか?」
アタリメ「本当ならタコワサも一緒に来るはずなんじゃが…きっと後から来るんじゃろう。」
まめお「みんな中で待ってる、裏口から入ってくれ。」
まめみ「分かった。」
アタリメを連れて裏口から入っていくと、まめおの言う通り、既に皆が揃っていた。
ペコ「その方は…?」
まめお「まずはお互いに自己紹介した方がいいな。」
アタリメ「そうじゃな。」
お互いに簡単に自己紹介をしたが…スー達は驚きを隠せなかった。
スー「伝説の大ナワバリ時代から生きてるって、とんでもない話よ…!?」
よっちゃん「そんなすごい方が、どうしてまめみちゃんと知り合いに…?」
まめお「…実は俺も関係者なんだ。」
スー「まめお!?」
フー「どういう事だ、まめお?」
アタリメ「それについてはワシから話させておくれ。」
そう言うと、アタリメは今までの事を全て話してくれた
7年前にタキをヒーロー3号として迎え、5年前に新たにまめおとまめみを4号として迎えた事…オオデンチナマズの事…タコワサ達の事…深海実験施設での事…そしてスー達はそれを真剣な眼差しで聞いていて、アタリメが全て話し終えてもスー達は驚きを隠せないでいた…
ペコ「3人共、何て危険な事を…!」
フー「…結婚する前に話しておいて欲しかった、という気持ちは正直あるが…事情なだけに話せなかったのも無理ないよな。」
まめお「フー兄…俺…。」
理解を示してくれるフーに対し、感謝しつつも申し分け無い気持ちが大きくて少し俯いてしまったまめお…しかし、スーは彼の手をそっと握って口を開いた。
スー「まめみはあたし達を危険に巻き込みたくなかった…そしてまめおはあたしを守る為に黙っていてくれたんでしょう?」
まめお「スー…!」
アタリメ「ヒーローというのは孤独…かつてのワシがそうだった様に、タキ君達はそれを誰にも言わずに守ってくれていたんじゃ…。」
すると、今度はよっちゃんが口を開いた。
よっちゃん「…私ね、実は薄々気づいていたの。」
まめみ「えっ!?」
スルメさん「よっちゃん!?」
よっちゃん「5年前、まめみちゃんが事情があってタキ君と会えないって落ち込んでた時があったでしょう?」
まめみ「あの時から…?」
よっちゃん「あの数日前に、まめみちゃんと不思議な格好をしたタキ君をハイカラシティのマンホール付近で見かけたの。あの時から、タキ君は何か秘密を…きっと何か使命を背負っているんだと思ってたわ。」
まめみ「よっちゃん…!」
スルメさん「よっちゃん…どうしてそれを今まで黙って…!?」
よっちゃん「いつか話してくれる時が来るまで…そう思ってたの、無理矢理まめみちゃんから聞くのは違うと思ったからね。」
まめみ「よっちゃん…あたし…!」
よっちゃん「まめみちゃんは何も悪くないわ、もちろんまめお君とタキ君もね。ツネ君達も立場上は敵対してしまう時もある…でもプライベートではみんな仲良くしてくれてる、だから大丈夫よ。」
優しい笑顔でよっちゃんはまめみを抱きしめて頭を撫で、まめみは泣きながら彼を抱き返して胸に顔を埋めた。
しばらくしてまめみが落ち着くと、話は再開された
アタリメ「今回こうして話した理由じゃが、現地に居る指令からまめみちゃんに任務の依頼をする為なんじゃ。」
まめみ「タキ君が…あたしに?」
アタリメ「バンカラ街の近くにクレーターがあっての、そこの地下深くに広がる世界「オルタナ」の調査じゃ。」
スー「バンカラ街…!」
フー「よりによってあそこなのか…!」
まめお「知ってるのか?」
フー「…俺達の生まれ故郷だ。」
まめお「えっ…!?」
まめみ「バンカラ街が2人の故郷…!?」
スー「みんな知ってる通り、あたし達は幼い頃に両親に棄てられたけど…元々はバンカラ街で暮らしてたの。」
フー「俺がヒト化出来る様になって、稼ぎに出る為に一足先にハイカラ地方に入ったが、まだ幼かったスーはバンカラ街に残してたんだ。」
まめお「そうだったのか…。」
まめみ「スーちゃん、オルタナの事は?」
スー「聞いた事も無い…兄貴は?」
フー「俺も初耳だ、そんな場所があのクレーターの地下深くにあったとはな…。」
アタリメ「危険は重々承知しておる、司令も強く反対しおってな…じゃが1号と2号だけでは手が回らんとの事で、苦渋の決断との事じゃ…。」
まめお「俺は反対だ。」
まめみ「まめお…!」
アタリメ「まめお君…。」
スー「あたし達も賛成は出来ない。」
フー「知らなかったとはいえ、今まで危険な目に遭わせてしまっていた…それに今度はバンカラ街、遠すぎて何かあってもすぐには助けに行けない。」
ペコ「タキを説得しましょう、それに強く反対してたっていうし…まめみに何かあったらあの子も私達も…!」
スルメさん「ボクも流石に今回は賛成出来んで、ペコの言う通りや…お前に何かあったらと思うと………ボクはもうナデシコやさくらの様に、見えない所で失うのは嫌なんや…!」
まめみ「スルメさん…みんな…!」
まめお「お前はどうなんだ、まめみ?」
まめみ「…みんなの気持ちはすごく嬉しいよ、けど…もう1人でタキ君の無事を祈りながら待ち続けるのは苦しいの…あたしも力になりたい。」
まめお「お前の気持ちも分かる、けど今までの調査とは明らかに違う…危険が大きいのはお前も分かってるだろ…!」
まめみ「分かってる…でも…!」
辛い胸の内を明かすまめみだったが、まめお達は変わらず反対の意思を示していて…
苦しむまめみだったが、ずっと目を瞑って黙っていたよっちゃんが口を開いた。
よっちゃん「…行ってらっしゃい、まめみちゃん。」
まめみ「よっちゃん…!」
スルメさん「なっ…何言うてるんや、よっちゃん!!」
まめお「どうして…!?」
よっちゃん「もちろん私も心配だし本当だったら反対よ、でもタキ君が苦渋の判断をしてまでもまめみちゃんに助けを求めたの、そしてまめみちゃんも力になりたいと強く思ってる…覚悟を決めているのよね?」
まめみ「うん。」
よっちゃん「それなら私達に止める権利は無いわ、タキ君とまめみちゃんを信じて待つだけよ。」
スルメさん「よっちゃん…!」
みんなは驚いていたが、スルメさんは彼の小さく震える手を見逃さなかった…
自分と同じで怖くて仕方が無いのだ…愛する人を知らない所で亡くした様に、まめみを…たった1人の愛娘を危険に晒すのが…
それでも2人の気持ちを尊重し、信じて送り出そうとするよっちゃんの気持ちを察したスルメさんは、そっと彼の背中を撫でた。
スルメさん「…まめみ、そこまで強い決意をしたなら…よっちゃんを悲しませる様な事はしたらアカンで。」
まめみ「スルメさん…!」
よっちゃん「必ず2人で帰ってくる事、そして…毎日必ず連絡をする事を約束して。」
まめみ「はい!」
よっちゃん「ありがとう、まめみちゃん。」
まめお「スルメさん…よっちゃん…。」
スルメさん「本当なら、お前が引き受けようとしたんやろ…まめお?」
まめお「あぁ…。」
スルメ「お前にはスーと、1歳になったばかりのあの子がおるんや…家族を守る事が今のお前の使命やで。」
まめお「そうだな、ありがとうスルメさん。」
スー「…まめみ、みんな反対したけど…あたし達は…っ…!」
まめみ「分かってるよスーちゃん、みんなあたしを心配して言ってくれてるって…わがまま言ってごめんね。」
スー「まめみ…絶対よ…絶対帰ってきてね。」
まめみ「うん、約束する。」
泣いているスーの頭を撫でて、お互いに抱きしめ合った2人…
ペコ「まめみ、気をつけるのよ。」
フー「もし何かあったら必ず助けを求めるんだぞ、俺達も手を貸すからな。」
まめみ「ありがとうペコちゃん、フーさん。」
よっちゃん「まめみちゃん…気をつけて、行ってらっしゃい。」
まめみ「行ってきます、よっちゃん…みんな。」
そう言ってよっちゃんと抱き合うまめみ…それを見たアタリメ相談役は穏やかな笑みを浮かべて…
アタリメ「決まりじゃな。」
まめみ「はい。」
決意を固めたその時…
ガチャ…
お店の扉が開き…そこに立っていたのは…戦闘服を着たツネとざくろだった。
To be continued…