小説「彼方からの旅人と夢色金平糖」~墜ちてきた船~

マルクと仲良くなって以来、彼はよくカービィやアイシェと遊ぶ様になった

隠れんぼや鬼ごっこ…今日も賑やかな笑い声がプププランドの草原に響き渡り、一通り遊ぶとみんなでお菓子を食べながらアイシェはマルクとカービィの戦いの話を聞いていた。

カービィ「アイシェは人間だった頃に、ボクとマルクの戦いを見てたんだよね?」

アイシェ「うん、銀河に願いをっていう名前のストーリーモードで見たよ。」

マルク「それにしても、自分がアイシェの世界でゲームのキャラクターだったとか…不思議な気分なのサ。」

アイシェ「今の私には、ゲームの世界でしか見れなかったカービィやマルクが友達になって、遊んだりお話してるのがすごく不思議で幸せな気持ちだよ。」

カービィ「えへへ、ボクも幸せ。」

そう言ってカービィはお菓子を頬張り、それを見ていたマルクも普段のイタズラ好きとは思えないくらいの穏やかな笑みを浮かべた。

マルク「あの時は命懸けでぶつかったし、何ならソウル化もしたけど…お前は絶対に諦めないでボクを助けようとしてたよな。」

カービィ「だって、マルクも大事な友達だもん。」

マルク「あーーーお前って奴は、ほーんとお人良しだな!」

そう言って悪態を吐きながらお菓子をガブッと囓るマルクだが、その頬は赤く染まっていて…

カービィ「マルクったら素直じゃないんだからー!」

マルク「う、うるさいのサ!」

アイシェ「あははっ!」

そんな2人のやりとりを見て、アイシェも笑う

いつもと変わらない、平和で幸せな日々が続くと思っていた

この日が来るまでは…

ある日の事…

???「クソッ、全っ然話にならないヨォ!!」

苛立ちを隠せない様子でバンバンと操縦席の光るキーボードを叩く魔術師は、全く歯が立たない相手からの猛攻を喰らい続けていた。

このままでは危ない!絶望的な状況の中で思考を巡らせて…

ドゴンッ!!追撃を喰らって大きく揺れる船内で、行き先「ポップスター」を決定するボタンを押した!

同じ頃…

カービィ「早く帰ってアイシェに見せようっと!」

デデデ「おい、落とすなよ!?」

バンワド「待ってよカービィ、走ったら危ないよ!」

大きなケーキを持って家路に急ぐカービィ、それを追うデデデとバンワド

そしてそれを少し離れた丘の上から読書をしながら見ていたのは…

メタナイト「やれやれ…相変わらずだな。」

少しだけふぅっと溜息を吐きつつも、穏やかな表情で読書を続けるメタナイト

一方、アイシェはマルクと一緒に釣りをしていた。

ツン…ツン…ポチャッ!

アイシェ「あ、かかった!」

マルク「またさっきみたいに変なの釣れるんじゃないのサ?」

アイシェ「もー、マルクの意地悪!」

意地悪そうな笑みを浮かべてニヤニヤするマルクにアイシェは少しだけ頬を膨らませつつ、釣り竿を引っ張った!

バシャバシャ!魚は釣れた…が!

マルク「ブリッパーなのサ。」

アイシェ「あらら…ごめんね。」

釣り糸を外して戻してあげると、アイシェは釣りを中断して座り込んだ

マルク「もう終わるのサ?」

アイシェ「ちょっと休憩……ねぇ、マルク?」

マルク「ん?」

アイシェ「マルクって、魔術師の知り合いとか…いる?」

マルク「魔術師…あーーアイツか…。」

そう言うと、マルクは歯切れの悪い返事をした。

アイシェ「やっぱり知ってるんだね。」

マルク「アイシェが知ってるって事は…ボクの事を喋ってたのサ?」

アイシェ「直接マルクの名前が出てないから憶測でしか無かったけど、カービィと喧嘩した奴も居るって言ったから…。」

マルク「アイツ…余計な事を喋りやがって…。」

悪態を吐くマルクだったが、真剣な表情になってアイシェをじっと見てきて…

アイシェ「どうしたの?」

不思議に思いアイシェが訪ねると、マルクは真剣な表情のまま口を開いた。

マルク「アイシェ…アイツの事はどれくらい知ってる?」

アイシェ「え…どれくらいって…」

答えようとしたその時!

キラッ!!

空が突然光ったかと思うと、空に光の渦が出現して…

メタナイト「あれは…!?」

カービィ「え、何!?」

ドンッ!!

デデデ「おわっ、カービィ急に止まるな…ってえぇ!?」

ドンッ!!

バンワド「わっ…ととっ……何が起きたの!?」

カービィ「あ…ケーキが!」

地面に落ちてぐちゃぐちゃになってしまったケーキを嘆いたカービィだったが、次の瞬間…

大きな裂け目が出来て、そこから出てきたのは船!

デデデ「何じゃありゃ!?」

バンワド「飛行船!?」

カービィ「ねぇ、黒い煙が出てるよ!」

メタナイト「部品が次々と外れている…!」

一方、アイシェ達もそれを見ていて…

アイシェ「あれは…ローア!」

マルク「知ってるのサ、アイシェ!?」

アイシェ「うん…!」

それぞれが見ている中、ローアは大量の部品を落としながら徐々に高度を落としていき…

ドオォォォン!!

マルク「危ない!」

アイシェ「きゃあっ!」

墜落したローアは地面を抉りながら滑っていき、その勢いでたくさんの小石や砂が飛んでくる中、マルクは翼を出してアイシェを覆って守り、一方のカービィ達も墜落した方向へ向かって走って行った。

マルク「アイシェ、大丈夫なのサ?」

アイシェ「うん、ありがとうマルク。」

マルク「ど…どういたしまして…なのサ。」

お礼を言われるのにまだ慣れないマルクは、頬を真っ赤に染めつつもポリポリと掻きながら返事をした。

アイシェ「ローアが墜ちてきたって事は…。」

「彼」が来た…アイシェの心は嫌な予感に包まれた

一方のマルクも、バツが悪そうな表情をして…

マルク「悪いけど、今日は帰るのサ…。」

アイシェ「えっ、マルク…」

マルク「とにかくアイシェ、アイツには気をつけろ…カービィにもよく言っておくのサ!」

それだけ言い残すと、マルクは翼を広げて飛び去ってしまった…。

アイシェ「とにかくカービィに話さなきゃ…!」

彼に接触する前なら何とかなるかもしれない、そう願って急ぐアイシェだが…

彼女の願いも虚しく、カービィ達はローアの船の中に入って行ったのだった。

To be continued…