ツネ「ごめん、遅くなった…。」
アタリメ「おぉ、着いたか…ん、タコワサはおらんのか?」
ツネ「ちょっとこっちでトラブルがあってね、詳しくは言えないけど、お爺様はその件で来れなくて…。」
フー「そうだったのか…だがこうして情報を共有出来た事は嬉しい、これからは力になってやれるからな。」
ツネ「ありがとう、フー。」
スー「アイカは今回の件を知っているの?」
ツネ「うん、アイカとルイにも全て伝えた上で、彼には地下でエンのサポートをして貰ってるよ。それとまめみ。」
まめみ「ん、どうしたのツっくん?」
ツネ「任務で動きは限られてしまうけど敵対する事は無いはずだ、まめみ達が困ったら必ず助けると約束する。」
ざくろ「遠慮無く言って、それと無理しないでね。」
まめみ「ありがとうツっくん、ざくろちゃん。」
4人はお店を後にして、アタリメ相談役は一足先にバンカラ街へ向かい…ツネとざくろの2人と別れたまめみは家に戻った。
明後日の準備をしつつ、とぐろとの約束もあったので窓を開けるとちょうど陸へ上がってきた所で…
とぐろ「まめみ!」
まめみ「とぐろさん、ちょうどよかった…突然で申し訳無いけど、シャケト場へ連れて行って欲しいの。」
とぐろ「何か急用があるみたいだな…分かった、背中に乗ってくれ。」
まめみ「ありがとう。」
とぐろの背中に乗りシャケト場へ向かったまめみは、明後日からバンカラ地方で調査の為、しばらく家を留守にする事を伝えた。
ザンナ「そうか…バンカラは荒れている地と聞く、気をつけて行くんだぞ。」
まめみ「うん、ありがとうザンナさん。」
とぐろ「それにしても…バンカラで何か起きてるのか?」
まめみ「どういう事、とぐろさん?」
とぐろ「実は2週間前に酷い怪我をしたダイバーを保護してな…ジェレラの幼馴染みで、バンカラから来たシャケなんだ。」
まめみ「そんな事が…!それで、そのダイバーの怪我は?」
ザンナ「瀕死の大怪我だったが、一命を取り留めて今は順調に回復している。」
まめみ「よかった…!」
ホッと胸を撫で下ろしたまめみを見て、ザンナは穏やかな笑みを浮かべた。
おシャケさま「バンカラでは今オカシラシャケという巨大なシャケが暴れていると聞いているから、海には近づかない様にするのだよ。」
まめみ「はい。」
すると…
ドスコイまる「キュッ…。」
シャケ子「どうしたの、ドスコイまるちゃん?」
ずっとシャケ子に抱っこされていたドスコイまるは、ピョンっと飛び降りるとまめみの傍にパタパタと走って行き…
ドスコイまる「ぼく、まめみといっしょ!」
そう言ってまめみの胸元に大ジャンプして飛びついた!
まめみ「ど、ドスコイまる!?」
シャケ子「まめみちゃんと一緒って…まさか…!?」
ドスコイまる「ぼく、まめみとバンカラいく!」
とぐろ「な…何を言ってるんだドスコイまる!」
シャケ子「ダメに決まってるでしょう!」
ドスコイまる「いくの!」
ザンナ「ドスコイまる、お前がまめみと一緒に居たいのは分かる…だがこれは遊びでは無いんだ。」
テツ「怪我したりまめみとはぐれたらどうする、ここで待った方がいいと思うぞ。」
まめみ「ザンナさんとテツさんの言う通りだよドスコイまる、ここで待ってて欲しいな。」
ドスコイまる「ダメ、ぜったいいくの!」
まめみ「ドスコイまる…。」
いつもはこんなに我が儘を言わないドスコイまるが頑なに一緒に行くと聞かず、みんなは困り果ててしまった。
すると、それを見たおシャケさまが口をひらいた。
おシャケさま「…一緒に連れて行ってはどうだい?」
まめみ「えっ!?」
とぐろ「おシャケさま!?」
シャケ子「どうして…!?」
おシャケさま「ここまで強く言うのなら…と思ったのだよ。」
ザンナ「お言葉ながらおシャケさま、ドスコイまるはまだ幼い…それにまめみにも負担がかかってしまうかと…。」
おシャケさま「ザンナの言う通り、ドスコイまるは幼いしまめみちゃんに心配をかけてしまう…けどね、彼の瞳には強い意志が宿っているのだよ。」
ザンナ「強い意志…ですか?」
おシャケさま「揺るぎない強い決意、覚悟を決めた目をしている。ドスコイまるは何かを感じているのかもしれないね、まめみちゃんだけでは太刀打ち出来ない何かが起きる…その為に彼の力が必要になるのかもしれない。」
シャケ子「ドスコイまるちゃんの力が…ですか?」
まめみ「おシャケさま…。」
おシャケさま「ドスコイまる、お前はまめみちゃんがこれから向かう場所で何が起きても…決して逃げ出さずに立ち向かう勇気はあるのかな?」
ドスコイまる「キュッ、ある!」
おシャケさま「では、私の目をじっと見続けてごらん。」
ドスコイまる「キュッ、はい。」
彼の赤い瞳をじっと見つめるおシャケさま…子供のシャケはおろか、大人のシャケでもじっと見続ける事は難しいというのに、ドスコイまるは逸らす事無くじっと見つめ返してくる…
その瞳に迷いは無く、必ずまめみの力になるという強い意志が伝わってきて…
それを見ていたとぐろ達はただただ驚いていた…
テツ「おシャケさまの赤い瞳を見続けていられるなんて…!」
ザンナ「何という意思の強さだ…!」
シャケ子「ドスコイまるちゃん…!」
とぐろ「そこまでお前の意思は強いという事なのか…ドスコイまる…!」
おシャケさま「…とぐろ、シャケ子…行かせてみてはどうだい?」
そう言って穏やかに話しかけるおシャケさまに、とぐろとシャケ子はしばらく無言だったが…深く深呼吸をして口を開いた。
とぐろ「分かりました、おシャケさまがそこまで仰るのなら。」
シャケ子「まめみちゃん、大丈夫かしら…?」
まめみ「あたしはもちろん大丈夫、でも…本当にいいの?」
とぐろ「おシャケさまは不思議な力をお持ちでな、これから起きる変化を感じ取れるんだ。」
まめみ「未来予知…って事?」
おシャケさま「そこまで大した物ではないけどね、ドスコイまるの決意からそれを感じ取ったのだよ。」
まめみ「すごい、そんな事が…!」
とぐろ「改めてまめみ、ドスコイまるを連れて行ってやって欲しい。」
シャケ子「私からもお願い、きっとまめみちゃんの力になれるわ。」
まめみ「とぐろさん、シャケ子さん…うん、任せて。」
ドスコイまる「キュッ、まめみいっしょ!」
まめみ「その代わり絶対に傍を離れないでね、ドスコイまる。」
ドスコイまる「キュッ、うん!」
まめみ「ドスコイまるをお預かりします、必ず一緒に戻るからね。」
とぐろ「あぁ、息子を頼んだ。」
シャケ子「どうか無事で。」
まめみ「うん、ありがとう。」
とぐろ「それじゃあ、明日ドスコイまるを送っていくよ。」
まめみ「うん、分かった。」
こうして…ドスコイまると共にバンカラ街へ向かう事になったまめみは、準備の為にドスコイまると別れ再びとぐろの背中に乗って家に帰った。
To be continued…