小説「彼方からの旅人と夢色金平糖」~スフィアローパー~

スフィアローパー「キュエッ!」

バシッ!!

アイシェ「きゃあっ!!」

スフィアローパーの翼がアイシェの体に当たり、その勢いで転がって壁にぶつかった!

ズキッ…体に痛みが走るのを感じながら、アイシェがゆっくりと体を起こすと…

ポタポタッ…赤い血が雫となって地面に落ちた。

スフィアローパー「キュアッ!」

その鋭い視線の先には、アイシェが持っているエナジースフィアがあって…

スフィアローパーはエナジースフィアの強いエネルギーに惹かれるという…つまり狙いはコレだとアイシェは確信した!

しかし、アイシェはぎゅっとスフィアを抱き抱えるとスフィアローパーを見て…

アイシェ「これはダメ、絶対に渡さない!」

そう言ったが、それがスフィアローパーには逆効果となってしまい…

スフィアローパー「ギュエェェェ!!」

ズバッ!バシッ!

怒り狂うスフィアローパーの猛攻がアイシェを襲う!

アイシェ「っ…うっ…!!」

体中が傷だらけになり、どんどん血が流れていく…それでもアイシェはエナジースフィアを抱き抱えたままうずくまって耐えていた。

痛い…怖い…助けてカービィ…!!

スフィアローパー「キュアッ!」

そう強く願ったアイシェに、スフィアローパーの炎の球が放たれて…迫ってくる熱気に目をギュッと閉じたその時!

???「リフバリア!」

カンッ!

炎の球が弾かれて、アイシェがゆっくりと体を起こして目を開けると…そこに居たのはマホロア!

アイシェ「マホ…ロア…!」

マホロア「アナザーディメンションにしか居ないハズのお前が何でココに居るのか謎だケド、ボクを怒らせた罰は受けて貰うヨ!」

そう言うとマホロアは魔力球を出して攻撃した!

スフィアローパー「キエッ!」

マホロア「これで終わりダ。」

最後はレボリューションフレイムを放って…

スフィアローパー「キュ…ギュワ…ッ…!!」

攻撃を受けたスフィアローパーは爆発しながら姿を消して…静かになった洞窟内には、マホロアと傷だらけのアイシェのみになった。

アイシェ「マホロア…。」

マホロア「何してるんダヨ!!」

小さな声でアイシェは彼を呼んだが、マホロアは振り返るなり彼女の小さな肩を掴んで怒りだした!

アイシェ「ご…ごめ…」

マホロア「アイツはエナジースフィアに惹かれて現れる…カービィ達ならともかく、何の力も持たないキミが敵う相手じゃないんダ!」

アイシェ「っ……!」

マホロア「無事でヨカッタ…!」

そう言うと、マホロアはアイシェをぎゅっと抱きしめた。

どうしてこんな事をしているのか自分でも分からない、でも何故かアイシェを放っておけなくて…体が勝手に行動を起こしていた。

アイシェ「うっ…うぅ…ひっく…ごめ…なさい…マホロア…う…あぁぁぁぁん!!」

恐怖と痛み、マホロアに助けて貰えた安心感からアイシェの感情は爆発して…彼の胸で泣き崩れてしまった。

マホロア「スフィアを守ってくれたのは感謝するヨ、でもキミは戦えないんダ…無理しないで欲シイ。」

アイシェ「う……ん…。」

しばらくアイシェは泣き続け…泣き疲れたのと緊張の糸が切れたのもあって、そのまま気を失ってしまった。

マホロア「コンナ傷だらけニ…すぐに手当しないト…!」

そう呟くと、マホロアはアイシェを抱き抱えたままローアに戻り…

アイシェ「んっ…。」

目を覚ますと、そこは洞窟では無くて…白くて明るい部屋の、ふかふかのベッドに居た。

ここは…まだ意識がボーッとする中で辺りを見渡していると、ウィンッと扉の開く音がした。

マホロア「ア、気がついタ?」

アイシェ「マホロア…ここ…。」

マホロア「ローアの一室ダヨ。」

アイシェ「私…洞窟でマホロアに助けられて…そして…。」

マホロア「アノ後、気を失ったんダ。」

アイシェ「そ…なの…?」

未だにボーッとしているアイシェにマホロアはそっと手を伸ばし、彼女の頭を優しく撫でた。

マホロア「モウ何も心配しなくてイイからネ、今日はゆっくり休んデ。」

アイシェ「う…ん…。」

彼の優しい手つきに安心したアイシェは、そのまま深い眠りについた。

それから少しして…

カービィ「マホロア…ってアイシェ、寝ちゃったかぁ。」

マホロア「少し前ニ寝た所ダヨ、今そっちに行くネ。」

そう言うとマホロアは、アイシェの枕元にあるランプを点けて、部屋の電気を消して出て行った。

バンワド「マホロア、アイシェの怪我は大丈夫?」

マホロア「かなり酷い怪我をしてたケド、とりあえずボクの魔法で出来る限りの治療をしたカラ大丈夫だと思うヨ。」

デデデ「スフィアローパー相手に何て無茶しやがるんだ…。」

メタナイト「すまないマホロア、我々の落ち度だ…。」

マホロア「ウウン、ボクの確認不足もあったカラ…。」

カービィ「とにかく、これからはお互いに気をつけようね。」

マホロア「ソウダネ、またアイシェが怪我をしタラ大変ダシ…。」

…………?

どうシテ、コンナ事言ってんダロ?

不思議に思うマホロアが、心の中の自分に問いかけてみても返事は無かった。

カービィ「それにしても、すっかり暗くなっちゃったね…ふあぁ…。」

マホロア「今日は遅いシ、ローアの客室に泊まっテ行ってヨ。」

カービィ「ありがとうマホロア…ふあぁ…おやすみ~。」

そう言うとカービィはさっさと部屋へ向かってしまい…

バンワド「待ってよカービィ…あ、おやすみマホロア。」

デデデ「お前も無理すんなよ。」

続いてバンワドとデデデも部屋へ向かったが、メタナイトだけはその場に残った。

メタナイト「……………。」

マホロア「アレ、メタナイトは休まないのカイ?」

メタナイト「用事が出来たから、今日は帰らせて貰う。」

マホロア「ソウ?気をつけてネ。」

メタナイト「あぁ。」

何か思う所がある様子のメタナイトは、そのまま戦艦ハルバードへと飛んで帰って行き…

マホロア「(…何か勘付かれタかと思ったケド、そうでは無さそうダナ。)」

安心するマホロアの表情とは正反対に、その腹の中はドス黒い思惑が渦巻いていた。

早朝

アイシェ「んっ…。」

ツイジーが鳴いている声で目を覚ましたアイシェは、起き上がって辺りをキョロキョロした

枕元のランプは優しい明かりを放ち、窓から見える薄暗い空には昇り始めの太陽が顔を出し始めていて…ふと鏡を見ると、耳や腕などに包帯が巻かれていて、小さな傷は消えて服も綺麗になっていた。

そっと起き上がって部屋を出たが、マホロアの姿は無い…彼の姿を捜しながらローアを探索していると…ローアの船首部分へ続く扉を見つけた

もしかしたらここに居るかもしれない…そう思ってアイシェが向かうと、予想通りマホロアが朝焼けを見ていて…歩いてくるアイシェの足音に気づいた様で、ゆっくりと振り返ると、優しい笑みを浮かべた。

マホロア「おはようアイシェ、気分はどうダイ?」

アイシェ「おはようマホロア、うん…眠気も取れて落ち着いてるよ。」

マホロア「ヨカッタ、とりあえず傷の方も大丈夫そうダネ。」

相変わらず笑顔を向けてくるマホロアだが、アイシェは悲しそうな顔をして俯いて…

アイシェ「マホロアが手当してくれたのね、本当にありがとう…そしてごめんなさい…。」

マホロア「キミは無事だったんだカラ、もう気にしなくてイイヨ。」

アイシェ「…ありがとう。」

朝焼けに照らされたアイシェの青い瞳は悲しげで…それを見たマホロアはぎゅっと胸が苦しくなった。

マホロア「アイシェ、あんな風にスフィアローパーがいつ出現するか分からナイ…心配だからボクと一緒にローアに居て欲しいナ。」

アイシェ「マホロア…。」

マホロア「大事ナ友達を1人になんテ出来ないヨ。ココに居れば安全ダシ、カービィ達にも会えル…何かあってもボクがキミをすぐに守れるカラネ。」

アイシェ「ありがとうマホロア………うん、しばらくお世話になります。」

彼の言葉がアイシェの心にじんわりと染みていって、暖かい気持ちになれる…

ローアに居れば…共に過ごしていけば、もしかしたらマホロアも考えを変えてくれるかもしれない…そう思ったアイシェは、彼の提案を受け入れたのだった。

To be continued…