小説「彼方からの旅人と夢色金平糖」~心の変化~

その後、マホロアが朝食を用意してくれて…起きてきたカービィ達と共に皆で食べた。

カービィ「アイシェ、本当に無事でよかった…もうこんな無理しちゃダメだよ。」

アイシェ「うん、約束する。」

デデデ「俺様達は大丈夫だから、今は自分の体をゆっくり休めるんだぞ。」

アイシェ「はい。」

バンワド「……………。」

アイシェ「バンワドくん、どうしたの?」

無言で何かを考え込んでいる様子のバンワドに、アイシェが不思議に思って声をかけると…

バンワド「…あ、ううん大丈夫。ボク、この後少し特訓をしてくるね!」

そう言うとバンワドはもりもり食べ始めて…アイシェは青い瞳をぱちぱちさせていた。

宣言通り、朝食を終えた後はバンワドが特訓を始め…カービィは食後のデザートのパフェを食べながらそれを眺めていた。

デデデ「それにしても、メタナイトはどうしたんだ?」

マホロア「用事が出来たカラ、帰るって言ってタヨ。」

デデデ「そうなのか、まぁもうすぐ戻って来るとは思うが…。」

アイシェ「カービィ、美味しい?」

カービィ「うん、すごく美味しいよ!あ、このウェハース2枚あるから1枚はアイシェにあげるね。」

アイシェ「ありがとうカービィ、頂きます。」

そう言ってアイシェがウェハースを口にすると、サクッとした食感と共に甘い風味が口内に広がる

その後カービィがデザートを食べ終えたタイミングで、メタナイトが飛んできた。

メタナイト「すまない、遅くなった。」

アイシェ「おはようメタさん。」

メタナイト「おはようアイシェ、体は大丈夫か?」

そう言うと、メタナイトは心配そうにアイシェの手を取り見つめてきた。

アイシェ「うん、もう大丈夫。」

メタナイト「そうか、無事で本当によかった。」

カービィ「メタナイト、用事は済んだの?」

メタナイト「あぁ、もう大丈夫だ。」

デデデ「よーし、それじゃあ出発すっか!」

バンワド「アイシェ、ボクもっともっと強くなるからね!」

アイシェ「うん、楽しみにしてるね。」

バンワド「任せて!」

何故かいつもより張り切った様子のバンワド、その理由は全く分からないが、アイシェは純粋に応援の気持ちを伝えた。

そして出発する時…

メタナイト「アイシェ、これを。」

そう言ってメタナイトがアイシェに渡したのはハートの形をしたピンク色のチャーム

アイシェ「メタさん、これは?」

メタナイト「通信機だ、危険を感じた時にこれを開いて連絡して欲しい。」

そう言って、メタナイトはアイシェの首元…ケープのリボンの飾りの下にそれを付けてくれた。

アイシェ「メタさん、ありがとう。」

メタナイト「どういたしまして。本当なら私が傍で守りたいが…代わりにそれがアイシェを守ってくれるだろう。」

そんな2人の様子を離れた所で見ていたマホロアだったが…

マホロア「………………。」

気に入らない、どうしてこうもイライラするのか…ただ、バンワドとメタナイトがアイシェに好意を持っているのは確信したのと同時に、マホロアは腹の底から湧き上がる「正体不明」の真っ黒な感情を感じていた。

カービィ「それじゃあマホロア、アイシェ、行って来るね!」

アイシェ「行ってらっしゃい!」

マホロア「気をつけてネ!」

キラッ…ワープスターがレーズンルインズに出発したのを見届けた2人はローアに入っていき…

アイシェ「マホロアはこれから修理?」

マホロア「そうダネ、デモその前にキミの怪我を見ないト。」

アイシェ「え、自分で見れるから大丈夫…」

マホロア「いいカラ行くヨ。」

アイシェを半ば強引に部屋へ連れて行き、ベッドの上に座らせて包帯を剥がし始めたマホロア

スルスル…パサッ

乾いた音が響き、マホロアがアイシェの腕や耳の怪我の具合を丁寧に見ていく

アイシェ「傷、酷い…?」

マホロア「腕はすぐに良くなるケド、耳の方はチョット時間がかかるカモ。」

アイシェ「傷痕とか残っちゃう…?」

マホロア「痕にはならナイ様に治療したカラ大丈夫ダヨ、後はコノ薬を使えばバ…。」

そう言ってマホロアは右手の手袋を脱いで、特製の塗り薬をアイシェの耳に塗り始めた。

ヒヤッ…

アイシェ「んっ…!」

冷たい感触で、アイシェからは声が漏れた。

マホロア「痛イ?」

アイシェ「ううん…ちょっと冷たくてびっくりしちゃった。」

マホロア「ちょっと我慢してネ。」

そう言ってマホロアは傷の部分に薬を塗り込んでいくが…

むにっ…触る度にアイシェの柔らかい耳の感触が伝わって、プルプルと小刻みに震えているのが伝わってくる…

ふとアイシェの顔を見ると、

アイシェ「…っ…!」

耳を触られているくすぐったさで、アイシェは声を押し殺しているものの体はプルプルと小刻みに震えていて頬は赤く、青い瞳は潤んでいて…

ゾクゾクゾクッ…マホロアの全身を強い電流の様な感覚が襲った

マホロア「(ヤバ…!)終わったヨ、後は包帯を巻いていくネ。」

アイシェ「う…うん…。」

内心ドキドキしつつ、マホロアは包帯を巻いていき…

マホロア「ハイ。これで大丈夫ダヨ。」

アイシェ「ありがとう。」

マホロア「どういたしましテ。…それじゃあ、ボクはローアの修理をしてくるネ。」

アイシェ「うん。」

そう言ってマホロアは出て行き…アイシェは部屋を見渡すと、部屋の隅にポツンと置いてあるピアノに気がついた。

透き通った水色のピアノは埃を被って長い事使われていない様子で、アイシェが綺麗にした後そっと鍵盤に触れてみると…

ポーン…見た目と同じく透き通った綺麗な音色を奏で、アイシェの心に響いた。

一方のマホロアはローアの修理をしていたが、脳裏にはさっきのアイシェの表情や声が離れなくて…好意を抱いていないとはいえ、あんな表情で声を出されたら男なら誰でも興奮してしまうだろうとマホロアは思った

マホロア「…とんダ誘惑ダヨォ…。」

誰も居ない空間で1人呟いたマホロアの言葉は、ローアの優しい空間の中に消えて行った。

To be continued…