まだ薄暗い翌日の早朝、準備を終えたまめみは庭でドスコイまるを待っていた。
すると…とぐろの背中に乗ってドスコイまるがやって来た。
ドスコイまる「キュッ、おはようまめみ!」
まめみ「おはようドスコイまる、よろしくね。」
ドスコイまる「キュッ、よろしく!」
とぐろ「おシャケさまのお言葉を忘れないで、しっかりな。」
ドスコイまる「キュッ、うん!」
まめみ「おシャケさまから何か伝えられたの?」
とぐろ「あぁ、そしてこれを授かった。」
そう言ってドスコイまるの服を少し捲ると…腹部の部分、服の裏側に金の鱗が縫い付けられていた。
おシャケさま『お前の力はきっと、まめみちゃんの助けになるだろう。大きく成長して帰ってくるのを待っているよ、ドスコイまる。』
そう言っておシャケさまは、自分の体から1枚の鱗を剥がしてドスコイまるに託してくれたのだという。
とぐろ「お前さん達が無事に帰ってくるのを待っている、気をつけてな。」
まめみ「うん、ありがとうとぐろさん。」
とぐろ「それと…すまないが頼みがあるんだ。」
まめみ「どんな事?」
とぐろ「こっちへ来てくれ。」
案内されて海の傍へ行くと…海面からザンナ、ジェレラが顔を出して…遅れて姿を現したモグモグの上には、見慣れないシャケが乗っていた。
まめみ「みんなどうして…それにモグモグの上に乗っているシャケは…?」
モグモグ「この…子…フィーナ、ジェレラ…の…幼馴染み。」
ジェレラ「ザンナさんから、まめみちゃんがバンカラへ行くと聞いて…お願いがあるの。」
まめみ「お願い?」
ジェレラ「フィーナ、話せそう?」
フィーナ「えぇ…大丈夫よ。」
まめみ「フィーナさんはもしかして…。」
ザンナ「あぁ、この前話したダイバーだ。」
まめみ「やっぱり、それで…どうしたの?」
フィーナ「ジェレラから聞いたの…貴女なら…きっと力になってくれるって…!あの子を…青いキンシャケの子を捜して欲しいの…!」
まめみ「青いキンシャケの子…?」
とぐろ「フィーナは暴れるオカシャラシャケの居るバンカラから青いキンシャケの子を連れて逃げてきたんだが、途中で巨大竜巻に巻き込まれてはぐれてしまったらしいんだ。」
まめみ「そんな事が…その時に大怪我をしたのね。」
とぐろ「ずっと捜しつつ、ポラリスの奴らにも聞いてみたんだが何も手がかりが無くてな…。」
フィーナ「お願いまめみちゃん…どんな些細な手がかりでもいい、もし見かけたら助けて欲しいの。」
まめみ「フィーナさん…うん、任せて。」
フィーナ「ありがとう…!」
安堵した様子のフィーナを見て、まめみも優しい笑みを浮かべた。
ジェレラ「負担をかけてごめんなさい、でもまめみちゃんにしか頼めなくて…。」
まめみ「全然、気にしないでジェレラさん。」
ザンナ「おシャケさまが仰るには、恐らく居るとしたら海岸周りだろうとの事だ。俺達も引き続き捜索は続けてみる、まめみ達も気をつけるんだぞ。」
まめみ「分かった、ありがとうザンナさん。」
少し話をした後、とぐろ達は帰って行き…
ドスコイまる「キュッ、行こうまめみ!」
まめみ「うん!」
ドスコイまるを抱き上げて、肩から下げたポシェットの中に彼を入れ…まめみは荷物を手にマサバ海峡大橋のバス停へ向かった。
バスに揺られてバンカラ地方へと入り…寂れた無人駅から電車に乗り…
モゾモゾ…
ドスコイまる「キュ…。」
まめみ「ここなら大丈夫そう…出てきていいよ。」
そう言ってまめみがポシェットの蓋を開けると、ドスコイまるが出てきた。
ドスコイまる「キュ…あつい。」
まめみ「お水飲む?」
ドスコイまる「キュ…のむ。」
まめみ「はい、どうぞ。」
そう言って、まめみが荷物を纏めた鞄からドスコイまる用の水筒を出して蓋を開けて注いであげると、ゴクゴクと飲み干していく
ドスコイまる「キュ、おいしい!」
まめみ「ふふっ、よかった。」
喜ぶドスコイまるを優しく笑いながら撫でて、電車の中を見渡すと…ハイカラ地方では見た事の無い種族ばかりで、しかしこちらを気にする様子も無くがら空きだ。
バンカラ街に着いたらまずアタリメさんと合流しなきゃ…そう思いながらイカスマホを見ていると、電車の中にアナウンスが流れて次の停車駅「バンカラ街」への案内が表示された。
ドスコイまる「キュッ、バンカラがい!」
まめみ「降りるよドスコイまる、中へ戻ってね。」
ドスコイまる「キュッ!」
ポシェットの中へ再びドスコイまるを入れて、まめみは荷物を持った。
そして駅に着いて電車を降り、改札を出ると…
広い広場、入り組んだ迷路の様な道…路地裏のお店…たくさんの住宅が密集している古びた景色に、一ヶ所だけ近未来的な建物がある不思議な光景…
まめみ「ここが…バンカラ街…。」
見上げてキョロキョロするまめみだが、肝心のアタリメの姿が無い…
そしてそんなまめみの姿を遠くから見ているガラの悪いイカとタコのボーイ2人…
イカボーイ「なぁ、あの子すっげー可愛くね?」
タコボーイ「見た感じ、ハイカラ地方の子っぽいし…何よりあの体つきが最高じゃん。」
イカボーイ「美味しそうだな…たまんねぇ。」
タコボーイ「何か道に迷ってるっぽいし、案内するフリして路地裏にでも連れ込んじゃう?」
イカボーイ「お前ほんと悪知恵が働くなー!」
タコボーイ「まぁな!」
お互いに顔を見合わせてニタッと笑うと、2人は鏡で身なりを整えて…まめみに近づいた。
To be continued…