突然の告白に驚きを隠せないアイシェだったが…
バンワド「アイシェの気持ち、教えて欲しいな。」
彼の瞳は真剣そのもので…マルクに告白された時を思い出して胸がぎゅっとなった。
あの時、マルクにはちゃんと伝えられないままだったけど…今度はちゃんと伝えなきゃ
そう思ったアイシェは、深呼吸するとゆっくりと口を開いた。
アイシェ「ありがとうバンワドくん、すごく嬉しい……でも、私のバンワドくんへの大好きは友達としてなの。」
バンワド「アイシェ…。」
アイシェ「ごめんなさい。」
マホロアへの気持ちを自覚した今、アイシェに迷いは無かった
そしてそれを察したバンワドは、瞳に溜まった涙を拭うとキリッとした表情になり…
バンワド「ありがとう、アイシェの気持ちを聞けてよかった…僕はこれからも「大事な友達」として、ずっとアイシェを守るよ。」
アイシェ「どういたしまして、私こそ本当にありがとう、バンワドくん。」
お互いに笑顔で抱きしめ合っていたが、扉越しにそれを聞いていたのは…
マホロア「………………。」
伏せられた彼の黄色い瞳はギラギラしていて…強い嫉妬と焦りの感情が渦巻いていた。
その後、アイシェが見送る中でカービィ達はエッガーエンジンズに出発して、ローアの中に入るとマホロアがパネルを操作してランディアの動向を監視していた。
アイシェ「ランディアはどう?」
マホロア「今の所ハ大人しくしてるケド、いつ暴れ出すカ分からないからネェ。」
アイシェ「何も起きないといいけど…。」
ゲームの世界では順調だった、しかし今は違う…ストーリーこそ同じだが、明らかに生前に自分が遊んでいた時と違う状況がいくつも起きている…どうかカービィ達が無事であります様に、とアイシェは強く願った。
その願いが通じたのか、カービィ達は難なく進み…あっという間にエッガーエンジンズを突破したのだった。
カービィ「ここのエナジースフィアも集まったし、いよいよ次はあの火山だね。」
マホロア「あそこはハルドラボ火山、灼熱のマグマが滾る危険な場所ダヨ…気をつけてネ。」
カービィ「うん、ありがとうマホロア。」
休む間もなくカービィ達はハルドラボ火山のあるデンジャラスディナーへ向かい…
マホロア「アイシェ、カービィ達を待ってる間にお茶でもしようカ。」
アイシェ「うん。」
いつも通りマホロアがアップルティーやお菓子を用意して、穏やかな時間が始まる…はずだった。
マホロア「……………。」
ハルカンドラに来てから、マホロアの様子がどこかおかしい…カービィ達の前では平静を装っているものの、どこか急かす様な部分も見られて…アイシェ自身もこれから起きる事に焦りを感じていた。
アイシェ「マホロア、焦ってる…?」
マホロア「ン、そんな事無いヨ?」
アイシェ「そう…?」
マホロア「そうダ、アイシェには話しておくヨ…ボク1つだけ嘘を吐いていたんダ。」
アイシェ「嘘…?」
マホロア「実はボク、ハルカンドラが故郷じゃないんダ。ココは見ての通りボッロボロデショ?」
アイシェ「うん、とても住める場所には…。」
マホロア「だけど星中を巡ったり、火山でローアを発掘したり…1人でハルカンドラに長~く居たのはホントなんダ。」
アイシェ「そうなのね…でも、どうしてそんな嘘を?」
マホロア「カービィ達にもキミにも来て貰いたくて……アンナ嘘を吐いたケド、未知の魔力とテクノロジーが眠る約束の地!…何て言われててネ、ずっと憧れの星だったんダヨ。」
アイシェ「約束の地…そんな風に呼ばれてたんだね。」
マホロアの嘘とハルカンドラの秘密を教えて貰ったアイシェは、また新しい事を知れたと思いつつお菓子を口にした。
マホロア「と言う訳デ…お詫びに1つ、ボクが昔叶えたかった夢の話でもしようカナ。」
アイシェ「マホロアの夢?」
マホロア「ウン、ボク全宇宙のミンナがキャーキャー言っちゃうような…驚きと楽しさでイッパイの、夢のテーマパークを作りたかったんダ!」
アイシェ「わぁ…素敵な夢だね!」
マホロア「そんなテーマパークの支配人になるには、た~っぷりとお仕事シテ頑張らなきゃネェ…まずはお店でも開いて、アイテムとかを売ったりシテー…カナ。」
アイシェ「ふふっ、カービィが来たらサービスとかしてくれるの?」
マホロア「タダ同然の値段で大サービスしてアゲルヨォ!」
アイシェ「ほんと~?」
マホロア「ホントダヨォ!」
夢の話で盛り上がる2人だが…やっぱりマホロアはどこか落ち着かない様子でそわそわしていて…
カービィ達はまずエナジースフィアを集めて戻って来てからランディアに挑むと言っていた…それなら今マホロアに全てを話せば、彼は思い止まってくれるかもしれない!
決意を固めたアイシェはアップルティーを一口飲んで、口を開いた。
アイシェ「マホロア…私、伝えたい事があるの。」
マホロア「…奇遇ダネェ、ボクもアイシェに伝えたい事があるんダ。」
アイシェ「え、何…を………!?」
ぐらっ…目の前が歪み、マホロアがこちらを見ているのがやっと認識出来る状況で…
マホロア「ボク、これから大事な用事があってネ…アイシェにはアップルティーに入れたこの眠り薬デ、しばらく眠っててもらうヨ。」
アイシェ「マホ…ロ…ア…!」
止めなきゃ…彼を止めなきゃ…手を伸ばしたアイシェだがそのまま意識を失い、マホロアが優しく抱き上げた。
マホロア「次に目を覚ました時には、キミはボクの……少しの間おやすみ、アイシェ。」
その後、約束通りカービィはエナジースフィアを集めて来て…
カービィ「これで全部だよね?」
マホロア「ウン、120個全部集まったシ、キミにはホント~に感謝してるヨォ…アリガトウ!」
カービィ「あれ、アイシェは?」
マホロア「疲れが出てたカラ、休ませたヨ。」
カービィ「そっか、ボク達が戻る頃には起きてるかな。」
マホロア「…きっと起きてると思うヨォ。」
カービィ「分かった、それじゃあデデデ達が先に待ってるから…行ってくるねマホロア!」
マホロア「行ってらっシャイ!…ア、カービィ。」
カービィ「ん、どうしたの?」
マホロア「コレからも、ずーーっと友達で居てね、星のカービィ!」
カービィ「うん、もちろんだよ!」
満面の笑みで答えると、カービィはワープスターに乗ってランディアの元へ向かい…
マホロア「…コレで準備は整ったヨ、後はあの邪魔なドラゴンをカービィ達が倒すダケ。」
そう話すマホロアの黄色い瞳は弓なりに細められ、マフラーの下では満足そうに口角が上がり…心底愉快そうな笑い声がローア内に響いた。
To be continued…