小説「彼方からの旅人と夢色金平糖」~異空を駆ける魔術師~

アナザーディメンション…そこにマホロアの姿はあった

彼はカービィ達に敗れ、アイシェへ気持ちを伝えられないまま消滅した様に見えたが…カービィの予想、ローアがアイシェに語りかけた通り、彼は意識を失ったまま彷徨い続けていたのだ

稲妻が鳴り響く中、マホロアの体が白く輝き…鮮やかな青と黄色を基調とした衣装から一変、ボロボロの白い衣装に変化して…共に彷徨っていたマスタークラウンの破片と共に、開いていたディメンションホールに吸い込まれてしまった…。

サアァァァーーー

雨音が聞こえて…マホロアは意識を取り戻した

ゆっくりと起き上がって辺りを見渡すと、何かの遺跡の様にも見えるがどこなのかは分からず…アナザーディメンションだという事だけは唯一分かっている情報だった。

マホロア「ボク…確かカービィにクラウンを壊して貰っテ…アイシェに……ッ…何ダヨこの姿ハ…!?」

自分のボロボロな姿に驚いたマホロアだが、気づいた変化はそれだけではなく…体がとても重くて力を出せない…

自分の最大の武器である「魔力」を失っている事を理解するのに、そう時間はかからなかった。

友を裏切り、愛する人を傷つけた…その報いが帰ってきた所謂「自業自得」というやつだ…マホロアはそんな事を考えながらトボトボと歩いた

冷たい雨が体を打ち付け、涙の様に頬を伝う…ずっとこのままこの世界で彷徨うのか……そんな恐怖に怯えながら歩いていると、目の前に青い光が現れた。

青い光の真ん中には雫の形をした焔の様な物がユラユラと揺れていて…

アイシェ「マホロア。」

その青はまるでアイシェの瞳の様で…マホロアの脳裏には彼女の姿が強く浮かんだ。

マホロア「アイシェ…ボクはキミに酷い事ヲ…。」

そっと光に触れると、それはマホロアの体に吸い込まれていき…降り続ける雨で冷えてしまった彼の体にじんわりと温かい感覚が染み渡り、魔力が少しだけ回復したのが分かる

カシャン…

音を立ててマホロアのマフラー部分から何かが落ちて、拾い上げるとそれはアイシェが付けていたハートの通信機チャームの片割れで…

アイシェ『マホロア…私、伝えたい事があるの。』

あの時、ハルカンドラで彼女は何かを伝えようとしていた…そして戦っていた時にもカービィはアイシェに「もしかしてキミはこの事も知って…!?」と言っていた…

アイシェ…キミはこうなる事を知ってイタ…?

ダカラ時折…悲しげな瞳をしてタノ…?

ナッツヌーンであの時「もし自分がいけない事をしていたら」って言ったノモ、ボクを止めようと…助けようとしてくれていたカラ…?

マホロア「アイシェ…キミはコンナに苦しい思いを…1人で抱えてイタのカ…。」

彼女は最後までボクに手を差し伸べてくれタ

カービィ達も、最後まで助けようとシテくれタ

今のボクには何が…イヤ、今のボクだからこそ出来ル事がアル!

ココを抜け出して元の世界へ帰ル、そしてカービィ達に謝って…アイシェ、キミにもう一度会いタイ

強い決意を胸にマホロアはどんどん進んで行き、行き着いた先ではアナザーディメンションに住む敵が襲いかかって来て…僅かな魔力を絞り出しながら、マホロアは必死に戦い退けた!

すると、何やら緑色の大きな果物の欠片の様な物を落としていき…拾い上げるとディメンションホールが出現して吸い込まれた!

ロア…マホロア…

アイシェ「マホロア。」

カービィ「マホロア!」

声が聞こえてマホロアが目覚めると…そこに声の主は居なかったが、代わりに大きな祭壇の様な場所に居た。

すると先程の欠片が祭壇の真ん中にフワリと飛んで行き…燭台に緑の炎が灯されると、マホロアの体に光が吸い込まれていった…

すると体に力が漲るのを感じて…マホロアは「果実の欠片」によって魔力ボムを覚えた。

マホロア「コレを集めていけバ、ココから脱出する事ガ出来るカモ。」

必ず戻る、そう決意したマホロアにもう怖れは無かった。

休息を取り、同時にエデンの間と書かれている祭壇を調べながら、マホロアはひたすらに魔力を掻き集めて回復し、強力なボス達に苦戦しつつも退けて果実の欠片を集めていった。

………………………

同じ頃…プププランドでは平和な日々が続いていた

マルクはあの件以来、初めてアイシェと2人きりで木陰に座って話をしていた。

マルク「そうか…マホロアは消えたけど、どこかで生きてるのは確定なんだな。」

アイシェ「うん、カービィが直感的にそう感じてたし…ローアも教えてくれた。」

マルク「ま、アイツはこんな簡単にくたばる様な奴じゃねーけどな。」

アイシェ「マルク…前の告白のお返事だけど…」

マルク「言わなくていいのサ。」

アイシェ「えっ?」

マルク「…もうあの時に気づいてたのサ、アイシェはマホロアの事が好きなんだって…お前は自分の気持ちに気づいてなかったみたいだけどな。」

アイシェ「ごめんね、マルク…。」

マルク「謝るなよ、ボクの方こそ無理矢理で悪かったのサ。」

アイシェ「マルク…これからも友達でいてくれる?」

マルク「当たり前なのサ、アイシェみたいな揶揄い甲斐のある奴は貴重だからな!」

アイシェ「えっ…も~マルクったら!」

2人で笑い合い、穏やかな風が吹く…

いつか、マホロアとまた2人でこんな風に過ごしたい…アイシェはそんな事を思いながら、耳元のリボンにそっと触れた。

マホロアが「自分のモノである証」として結んだリボン…今のアイシェにとってこれは「再会の約束」を願う大切な宝物になっていた。

平和なプププランドで過ごすアイシェと、過酷なアナザーディメンションで復活をかけて奮闘するマホロア

お互いに再会を祈りながら時間は流れ…

マホロアの努力によって祭壇に置かれた果実の欠片は集まり、赤いりんごの実を携えた王笏の様な形になった。

ここまで来るとマホロアの魔力も最大まで戻り、果実によって得た新たな技も、彼の強力な武器の1つになっていた

しかしマホロアはずっと引っかかる事があって…

これまで対峙してきた「エレメントボス」達は「何者かの支配」を受けて果実を狙っていた…本来ならスフィアに反応するはずのローパー達もそれは例外では無く「暴走ローパーズ」として襲いかかってきた。

嫌な予感がするが自分はいつまでもこんな場所に居るつもりは無い、そう思いながらマホロアが果実に近づくと…

キラッ!

上空から何か禍々しい炎の様な物が近づいて来て果実を包み込み…光を放った次の瞬間、そこに居たのは「クラウンドローパー」!

マホロア「お前ナンカの為に集めてたんじゃネーヨ!」

怒りはマホロアの魔力を増幅し、激しい攻撃をしてくるクラウンドローパーに対しても強力な攻撃を浴びせる!

長期戦の末、クラウンドローパーを倒す事に成功したマホロアだったが…戦いの最中にクラウンドローパーが咆哮した時に、エデンの間は崩れ去ってしまった…。

クラウンドローパーが吐き出した果実の周りにはマスタークラウンの破片が渦巻いていて…マホロアが嫌な予感を察知した直後、欠片から邪悪な力が溢れて果実を包み込み時空が歪んで眩しい光に包まれた!

マホロアがゆっくり目を開けると、アナザーディメンションなのに上空は赤く燃えていて火の粉が落ち、ゆっくりと「禍々しい何か」が降りて来た。

To be continued…