小説「夢結ぶ星りんご」(トリデラ編)~キミを護る魔術~

少しの休息を取った後、3人は最後の場所「ロイヤルロード」へ向かったが…

カービィ「お城の入り口にはシャッツオがいる…それに扉も閉ざされてて簡単には開きそうにないね。」

しかしアイシェが気になったのはそれだけではなくて…

アイシェ「あの旗に描かれてるの…夢で見た人に似てる…。」

バンワド「鏡を見てた人?」

アイシェ「断言は出来ないけど、あの羽が似てる様な…。」

カービィ「あれがこのお城の主なのかもしれないね、こうなったら正面突破するよ!」

3人を乗せたワープスターは勢いよく突っ込んで、お城の扉を破壊して強行突破した!

中には今までの敵とは違って虫の様な見た目の敵「セクトルディ」が居て…明らかに雰囲気が違う。

宝箱の様な戦車が奥から砲撃してきたり、今まで対峙してきたボスの幻影と戦ったり…更には今まで冒険してきた様々な地形がごちゃ混ぜになっていたりと不思議な場所が続き…

そのエリアを抜けた先では、花の妖精の様な見た目をした「天空の民」を助け出した!

助け出した6人の天空の民達の話によれば、この国は女王「クィン・セクトニア」によって統治されており、彼女の圧政によって長年苦しめられているとの事だった。

そして救いを求める為に天空の民達が落とした種こそが、今回の地上に突如現れた巨大なツルの正体であった事も判明した。

アイシェ「クィン・セクトニア…夢で途切れながら聞こえてた名前はこれだったのね。」

バンワド「やっぱりアイシェは、予知夢を見ていたんだね。」

アイシェ「でも結果的に大王さまが連れてかれちゃったから、防ぐ事は出来なかった…。」

そう言って耳をペタンと垂らして落ち込むアイシェだったが…

カービィ「デデデを助けて、そのクィン・セクトニアっていう女王を懲らしめれば全部解決するよ、だから大丈夫。」

バンワド「そうだよ、元気出してアイシェ。」

アイシェ「カービィ、バンワドくん…ありがとう。」

2人に励まされたアイシェは優しく笑い、それを見たカービィとバンワドも笑顔になる。

しかし突然、頭上に大きな影が…

見上げるとそこに居たのは、デデデを攫った謎の男だった!

謎の男「城に入った侵入者…様子を見に来てみれば、天空の民を助け出したみたいなのね。」

バンワド「大王様はどこにいる!?」

謎の男「クフフ、そんなのボクが教える訳無いでしょ?」

手に持った槍を向けて睨みつけるバンワドに対し、ニタァ〜と笑って人を小馬鹿にしたような態度を取る男の姿は、どこか以前のマホロアと似ていて…

カービィ「教えないなら、ここでやっつけるんだから!」

そう言って戦闘態勢に入ったカービィとバンワドだったが…

謎の男「ボクはキミ達と戦う暇なんてないのね、それよりもそこの女の子…。」

アイシェ「えっ…?」

謎の男はアイシェをじっと見て…アイシェは羽織っていたマントをぎゅっと掴んだ…

謎の男「キミはボクと一緒に来るのねっ!!」

そう叫び、謎の男はアイシェに勢いよく飛び込んでそのまま抱き上げた!

アイシェ「きゃあぁ!!」

カービィ「アイシェ!!」

バンワド「アイシェを離せ!!」

謎の男「この子は不思議な力を感じるの、邪魔されたら堪らないから閉じ込めておくのねっ!」

アイシェ「カービィ、バンワドくんっ!」

謎の男「こらっ…暴れちゃダメなのね!」

抵抗してアイシェが暴れ、男がグッと力を入れたその時!

パンッ!!

カービィがアイシェにプレゼントした、小さなマホロアのバルーンが衝撃で破裂してしまった…。

ハラハラと青と黄色の風船の残骸が落ちていき…

アイシェ「あぁ…!」

謎の男「全く驚いたのね…とにかく連れて行くのね!」

今にも泣きそうなアイシェを、謎の男はそのまま連れ去り…

カービィ「アイシェ、アイシェーー!!」

バンワド「そんな…アイシェまで…!!」

絶望する2人だったが、カービィが風船の残骸を見て立ち上がった。

カービィ「行こうバンワド、アイシェもデデデも助けなきゃ!」

バンワド「カービィ…うん、そうだね!」

2人はキリッとした表情になって、城の奥へと進んで行った。

一方アイシェは、男の自室と思われる部屋に連れて来られた

謎の男「着いたのね。」

アイシェ「…ぐすっ…。」

そっとソファに下ろしたが、アイシェは俯いたままマントをギュッと握って泣いていて…

謎の男「泣くのは勝手だけど、キミにはこれからボクの思い通りになってもらうのね。」

じりじりと泣いてるアイシェに近づき、4本の手で彼女の手足を拘束して…残る2本の手を目の前で怪しく動かしながら顔を掴んだ

アイシェ「っ…嫌っ…やめて!」

タランザ「ボクは操りの魔術師タランザ、キミはボクの魔術で何でも言う事を聞くのね。」

アイシェ「(操りの魔術師…マホロア以外にもこんなに強い魔術師が居たなんて…!)」

驚きを隠せないアイシェだが、タランザの魔力で目も反らせなければ声も出せない…。

謎の男「クフフ…無駄な抵抗は止めるのね。」

怪しい笑みを浮かべながら、タランザの手がアイシェの顎をクイッと持ち上げて彼の顔が近づく…まるで夢で見たあの時の様に…

アイシェ「(嫌…マホロアっ!!)」

心の中で彼の名前を強く叫んだ瞬間!

バチッ!!

電気の様な音と共にアイシェのリボンが光り…タランザの操りの魔術を跳ね返した!

タランザ「なっ…そのリボンに細工が…!?」

そう言って一旦離れたタランザだが、リボンから光と共に「魔法陣」が出現して…そのままパリンと割れて消えた。

アイシェ「何が…起きたの…!?」

突然の出来事にアイシェは驚いていたが、タランザはバツが悪そうな顔をして口を開いた。

タランザ「その魔法陣は見覚えがあるのね…それによく見たらそのマントも……キミはもしかして、マホロアの知り合いなの!?」

アイシェ「…………!!」

あのお化け屋敷で見た肖像画…やっぱりマホロアはタランザを知っているんだ…アイシェはそう確信したと同時に、彼の悔しがる様子を見て言葉を失った。

同じ頃、ローアでは…

マルク「マホロア?」

食事をしていた2人だが、突然マホロアが動きを止め…

カシャン!

大きな音を立てて、皿にフォークが落ちた。

マホロア「アイシェ…!!」

そう言うと突然席を立ち、大慌てでローアのパネルを操作し始めたマホロアに、マルクも席を立って駆け寄った。

マルク「おい、どうしたのサ!?」

マホロア「アイシェにかけた魔術が発動シタ…何かあったンダ!」

マルク「魔術?お前また変なのかけたのかよ。」

そう言って呆れるマルクだったが…

マホロア「ソンナ事するワケネーダロ、馬鹿ピエロ!!」

すごい剣幕で怒るマホロアはパネルを操作し続けて、その勢いに驚いたマルクも「緊急事態」だと察した。

マルク「何の魔術をかけてたのサ?」

マホロア「出発前、アイシェのリボンに守護の魔術をかけテたんダ…何かあった時に護れる様にっテネ。」

マルク「それが発動したのが分かるのサ?」

マホロア「魔法陣が消えた事デ、ボクの魔力が反応したンダ。」

マルク「アイシェは無事なのサ!?」

マホロア「少なくとも怪我はしてないネ…ケド今からブッ飛ばして帰るヨ!!」

実は予定よりも3日早く目的地巡りは終わっていて…少しだけのんびりしつつも早めに帰ろうとしていたマホロアだが、術の発動によってアイシェの危機を察知したので大急ぎで帰る為にローアの操作を続けた。

一方のアイシェは、タランザにマホロアとの関係を話したが…

タランザ「あの虚言の魔術師が恋人を作るなんて…一体何があったのね!?」

驚いたタランザは操るのを止め、今度はお菓子や紅茶を用意してアイシェをもてなし始めた

マホロアとは魔術師同士という事もあって、お互いに知り合いである事も明らかになり…

アイシェ「だから貴方とマホロアの肖像画が飾ってあったのね。」

タランザ「うん。それにしてもマホロアがそんな愚かな事を…でもアイシェが彼を大きく変えてくれたのね。」

アイシェ「私が…?」

タランザ「あの男は一見すると社交的で明るいけど、本性は嘘で固められたプライドの塊…目的の為なら手段を選ばない奴で、とても誰かを愛する様な男ではなかったの。それなのにキミをそこまで溺愛するんだからよっぽどなのね。」

そう言って紅茶を淹れるタランザを見て、アイシェはマホロアの変わり様に安心したと共に…溺愛する「唯一の存在」となれた事に嬉しさが込み上げてしまう自分もいて…その頬は真っ赤に染まった。

To be continued…