マホロアの事が引っかかりつつも、アイシェはタランザに連れられてフロラルドへ向かい…
タランザ「これが育ててるお花なのねっ!」
そこには色とりどりの花畑が広がっていて…
アイシェ「わぁっ…綺麗!」
素敵な景色に目を輝かせるアイシェに、タランザも嬉しそうに笑う。
タランザ「このお花の花弁を使ったクッキーが、美味しいのね。」
それはマホロアと同じ綺麗な青の小さな花で…
アイシェ「綺麗…香りだけじゃなくて、見た目も楽しめるんだね。」
タランザ「そこがお花のクッキーの魅力なんだよね。」
しばらく花畑を満喫した後に彼の家に向かい、アイシェは早速お花のクッキーを食べさせて貰った。
アイシェ「すごく美味しい!この紫のお花のクッキー、香りも良くて気持ちが落ち着いてくるね。」
タランザ「このラベンダーっていうお花にはリラックス効果があって、疲れてる時に食べるとよく眠れるのね。」
アイシェ「マホロアが時々、テーマパークの案で無理してあまり休まない時があるの…そういう時に食べて貰えたらいいのかな?」
タランザ「そういう時こそ、効果は抜群なのね。」
アイシェ「タランザ、私もこのクッキー作ってみたい!」
タランザ「お安いご用なのね!」
そう言ってタランザは優しく笑いながら自身の胸をトンッと叩き、アイシェも笑顔を見せた。
これで少しはマホロアの助けになる、彼の喜ぶ顔を思い浮かべながらアイシェはタランザと一緒にクッキーを作り始めた。
彼の丁寧な指導とお菓子作りが得意なのもあって、アイシェはすぐに作り方を習得したが…
アイシェ「せっかくだから、色んな形に作りたいなぁ。」
タランザ「アイシェが作るみたいに、型を使ってみるのもいいと思うのね。」
アイシェ「うん、試して見る…けどタランザ、マホロアにはもう少しだけ内緒にしたいから、しばらくここに通って作らせて貰ってもいい?」
タランザ「もちろんいいのね。」
せっかくだからとびきり美味しいのをプレゼントして驚かせたい…アイシェはそう思って、何回か試行回数を重ねてからマホロアに食べて貰う事にした。
同じ頃、マホロアは自分の部屋でテーマパークの案を練っていたが…集中出来るはずも無く、ペンを置いてそのままベッドにダイブした。
マホロア「アイシェ、タランザとばかり会ってル…。」
彼女は確かに自分を愛してくれている…だからこそ、本当はもっともっと2人きりで過ごしたい…それでなくても2週間近く離れていたのだから尚更だ…
あの後…結局アイシェの下着と服をこっそり持ち込んでいた事もバレたが、彼女は怒る事は無くて恥ずかしがりながらも…
アイシェ『事前に言ってくれれば…準備したのに…。』
そんな事を言われて我慢出来るはずも無く、そのままアイシェを美味しく頂いたのだが。
マホロア「寂しいヨォ、アイシェ…。」
独り呟いて、マホロアはそのまま眠ってしまった。
結局この日もアイシェが帰って来たのは夕方で…
アイシェ「マホロア、タランザとの約束の事…言わなくて本当にごめんなさい…。」
彼女は昼間の事を謝ってきたが…マホロアはもう何も言う気にはなれなかった
マホロア「…ホントにいいヨ、ケド明日はボクと一緒に居て欲しいナ。」
アイシェ「うん、分かった。」
約束通り翌日は2人きりの時間を過ごしたが…その翌日からアイシェは、毎日ではないもののフロラルドへ通う様になっていた。
何ならこの前なんてカービィも一緒に行った様で、アイシェを迎えにワールドツリーまで行ったら2人で歩いていて…クッキーを食べたらしく彼の口周りには食べカスが付いていた。
マホロア「(ボクには作っテくれないノニ…。)」
少しずつ、確実にマホロアの不満は溜まっていた…アイシェは必ず帰ってくるし、自分の事を求めて受け入れてくれる…それでもこの不安や嫉妬は止まらなくて、どんどんマホロアの心を蝕んでいった。
別の日、またアイシェはフロラルドへ出かける事に…
アイシェ「マホロア…怒ってる…?」
不機嫌な様子のマホロアを見て、不安になったアイシェが声をかけた。
マホロア「…アイシェ、ずっと出かけチャウんだモン…。」
アイシェ「ごめんねマホロア…明日は一緒に居るよ。」
マホロア「…ちゃんと埋め合わせシテくれる?」
アイシェ「うん、約束する。」
マホロア「…アイシェのアップルパイ食べタイ。」
アイシェ「うん、作ってあげるね。」
マホロア「あと…アイシェといーっぱいイイコトしたいヨォ。」
アイシェ「ふふっ…うん。」
そう言ってアイシェを抱きしめたマホロアに、アイシェは頬を真っ赤に染めつつも優しく笑って抱き返した。
マホロア「大好きダヨォ、アイシェ。」
アイシェ「ありがとうマホロア、私も大好き。」
2人で抱きしめ合い、アイシェが出かけようとすると…
マホロア「アイシェ、出かける前にコレ。」
そう言って、マホロアはアイシェのリボンに再び守護の魔術をかけた。
アイシェ「ありがとうマホロア。」
マホロア「どういたしましテ、それとコレもネ。」
ゴソゴソとマントの裏から取り出したのは、ハートの飾りが付いた歯車型のチャームで…
アイシェ「マホロア、このハートは…!」
そう、以前メタナイトがくれたハートの通信機チャームの方割れで…アイシェは驚いた様子で見ている
マホロア「あの時ボクが壊してマフラーのベルトの裏にしまったデショ?アナザーディメンションで絶望してた時にコレが落ちテ、アイシェの事を強く思い出したんダ。店主をしてた時モ、寂しい時にコレを見てアイシェを想ってたんダヨ。」
アイシェ「マホロア…!」
マホロア「この片割れをアクセントにシテ、ボクが新しい通信機チャームを作ったカラ付けていっテネ。」
そう言うと、マホロアはアイシェの耳元のリボンに付けてあげた。
アイシェ「ありがとう、マホロア!」
マホロア「どういたしましテ、気を付けテ行っておいデ!」
アイシェ「うん、行ってきます!」
マホロアからのプレゼントにとても喜び、優しくキスをするとアイシェはワールドツリーへ向かったが…
マホロア「…その通信機チャームで、キミのコトを見てるカラネェ…アイシェ。」
瞳こそいつものままだが、マフラーの下では口元が弧を描いていた。
何も知らないアイシェはタランザの元へ行き、クッキーを作った。
タランザ「すごいアイシェ、今まで以上にとっても美味しそうなのね!」
アイシェ「えへへ、これなら喜んでくれるかな?」
タランザ「大喜びするに違いないのね!」
アイシェ「ふふっ、楽しみ!」
クッキーが冷めるのを待ってから、丁寧に袋に包み…彼と同じ青いリボンを結んで準備は出来た。
一方マホロアは、ローアで何やら操作をしていて…
マホロア「クククッ…アイシェは何をしてるカナ?」
実はあの通信機チャームには盗聴機能が仕掛けられていた!
マホロアがアイシェを快く送り出したのも実は演技で、2人が何をしているのか探る為だったのだ。
しばらく操作をして、漸く通信機と繋ぐと…アイシェとタランザの声が聞こえてきた
2人は楽しそうに会話をしていて、その様子にマホロアは心底イライラしていたが…
タランザ『アイシェ、ちょっと目を閉じて欲しいのね。』
聞こえてきた言葉に、マホロアは一瞬固まった
マホロア「…今、何て言っタ?」
アイシェ『こう?』
タランザ『うん、そのまま閉じててね。』
マホロア「オイ、何してるんダヨ!?」
目を閉じたままでいろなんて…思いつく結末は1つしかない!マホロアは真っ青な顔をして叫んだが、当然2人に届くはずも無く…
アイシェ『んっ…んんっ…!』
マホロア「アイシェ!?」
タランザ『どうなのね?』
アイシェ『ふふっ…甘い。』
タランザ『よかった、いくらでもあげるのね。』
ドクン…ドクン…
マホロアの心臓は煩いくらいに早く激しく動き、全身を嫌な汗が伝う…
震える手は盗聴機能との通信を切り、浮かんでいた体はフラフラとその場に落ちた。
どうシテ…どうシテ!?
アイシェはボクを愛してるんじゃないノ!?
どうシテ…タランザと…
…………………………
頭の中でグルグルと同じ言葉がループするマホロアだったが、ゆらりと浮き上がると口を開いて…
マホロア「………ボクが居ながら、タランザとキスしちゃうナンテ…酷いヨォ、アイシェ。」
その黄色い瞳は激しい嫉妬でギラギラ光り…彼の体を邪悪なオーラが漂った…。
To be continued…