小説「夢結ぶ星りんご」(ロボボ編)~ガトーショコラに癒やされて~

朝、アイシェが起きるとマホロアは居なくて…頭では分かってはいても少しだけ寂しくて…青い瞳は伏せられた

するとアイシェの頭の中にローアの声が聞こえてきて…

アイシェ「おはようローア……………え、マホロアが?ふふっ、ありがとう。」

マホロアが朝食を作っていってくれた事、自分の事をとても心配していたと教えてくれたローアにアイシェは嬉しそうに笑い、着替えてリビングへ向かった。

彼の作った朝食を食べ終えると食器を洗って片付けて、出かける準備をしているとカービィが来た

カービィ「アイシェ~おはよう!」

アイシェ「おはようカービィ!」

カービィ「お迎えに来たんだ。」

アイシェ「お迎え?1人で歩いて行けるのに…。」

カービィ「アイシェを戦艦ハルバードに送って欲しいって、昨日マホロアにお願いされたの。」

アイシェ「マホロアったら…心配し過ぎだよ。」

そう言って小さく溜息を吐きつつも嬉しそうなアイシェに、カービィは満面の笑みを浮かべていて…

カービィ「行こうアイシェ。」

アイシェ「ふふっ、うん。」

そう言いながら優しく手を差し伸べてくれたカービィの手を取り、外に出たアイシェは彼と共にワープスターに乗って戦艦ハルバードへ向かった。

しばらく飛んで到着すると、メタナイトが待っていて…

メタナイト「おはようアイシェ、カービィ。」

カービィ「おはようメタナイト。」

アイシェ「おはようメタさん、今日はお世話になります。」

メタナイト「フッ…そんなに畏まらなくても大丈夫だ、いつもの様に楽にしてくれ。」

アイシェ「ふふっ、ありがとうメタさん。」

仮面越しに穏やかな笑みを浮かべるメタナイトに、アイシェも優しい笑みを浮かべる。

カービィ「それじゃあボクは行くね!」

アイシェ「うん、ありがとうカービィ!」

キラキラキラーと小さな星を飛ばしながらワープスターで飛んで行くカービィに手を振って見送ったアイシェは、メタナイトに連れられて戦艦ハルバードの中に入った。

中ではメタナイツのメンバーとバル艦長が居て、作業をしつつアイシェを快く迎えてくれる

メイス「アイシェ、ようこそだス~。」

アックス「待ってましたよ。」

メタナイト「早速だがティータイムの準備を頼みたい。」

バル艦長「メタナイト様は、アイシェ嬢とガトーショコラを食べるのを楽しみにしておられましたからな。」

メタナイト「…それを言うな。」

バル艦長「ふふっ、失礼しました。それでは早速準備をしましょう。」

アイシェ「(ふふっ、メタさんたら…。)」

メタナイト「…コホン、ではアイシェ…私の部屋に行こうか。」

アイシェ「うん。」

そっと差し出されたメタナイトの手を取り、そのまま彼の部屋へ向かった。

遊びに行く度に見せて貰っているが、メタナイトの部屋はとても豪華で…でも必要な物以外は置いていない落ち着いた部屋だ

アイシェはカービィと遊びに来ると、決まって彼の本を読ませて貰ったり飾られている剣等を見せて貰っている

そこには昔使われていた剣も大切に飾られていて…初めて見た時は生前に遊んだゲーム「夢の泉の物語」で見た物だと驚いた記憶がある。

生前のアイシェの家にはあらゆるゲーム機が置いてあり、リメイク作品だけでは無く…アイシェの記憶には無いが、親が恐らく遊んでいたであろうファミコン等もあったので原作である夢の泉の物語も遊んだ事があったのだ。

顔も何も覚えていない両親だが…きっと2人の影響で自分も幼少期からカービィに触れてこられたんだと思いながら、アイシェは目の前の剣を眺めた。

メタナイト「その剣が気になるのか?」

アイシェ「うん…少し生前の事を思いだしてたの。」

メタナイト「そうか…アイシェは我々の歴史を見てきたからな。」

アイシェ「でも私が知っているのはマホロアの事まで…フロラルドからの事は何も知らない……だから時々怖くなるの…私は何者なんだろうって…。」

メタナイト「アイシェ…!」

アイシェ「この世界のみんなと明らかに種族も違う…妖精のリボンちゃんと身長は近いけど、羽が無ければ…カービィやメタさん、マルクやマホロアみたいに戦う力も魔法や魔術も無い…私はいつも守られてばかり…。」

そう話すアイシェの表情は少しばかりの笑みこそ浮かべているが寂しげで…メタナイトは彼女の手をそっと取ると口を開いた。

メタナイト「アイシェ、種族が違っても戦う力を持たずとも、其方はそのままでいいのだ。誰もそれを咎めたりもしないし、其方の存在を否定する者も居ない。それにアイシェは戦う力を持たずとも、癒やしの力を持っている。」

アイシェ「癒やしの力…?」

青い瞳をぱちぱちさせているアイシェを、メタナイトの金色の瞳はじっと見つめていて…

メタナイト「アイシェがお菓子を作ってくれたり、我々を労ってくれたり…何よりもこうして存在してくれている事が何よりもの癒しだと思っている。」

アイシェ「でも…何かあった時に戦えないと守れない…。」

そう言って耳をペタンと垂らして落ち込んでしまったアイシェだが、メタナイトは頭を優しく撫でながら再び口を開いた。

メタナイト「この世界は戦う力を持たぬ者の方が多い、その為にも我々が居るのだ。アイシェは気にしている様だが、その優しさは最大の武器になる。」

アイシェ「優しさが…武器に…?」

メタナイト「其方の優しさが、心の強さがマホロアの心を動かした…タランザを救った、我々を癒やして活力を…勇気を与えてくれるのだ。」

アイシェ「メタさん…!」

メタナイト「だから胸を張って堂々としていて良い、我々にはアイシェが必要なのだから。」

アイシェ「メタさん…あり…がとう…!」

ポロポロと青い瞳から涙が零れ落ちていき…メタナイトはそっとアイシェの涙を手で拭って抱きしめた。

メタナイト「どういたしまして、私からもありがとう…アイシェ。」

其方は我々の光……希望なのだ、アイシェ

そう思いながら、メタナイトはアイシェの背中を撫でた

少しして…アイシェが落ち着いたのと同時に、船員ワドルディがティーセットを持って入って来た。

船員ワド「メタナイト様、ティータイムの準備が出来ましたよ~。」

メタナイト「うむ、ご苦労。」

船員ワド「アイシェ、ゆっくりしていってね~!」

アイシェ「うん、ありがとう船員ワドくん!」

2人が席に着くと、船員ワドルディが手際よく紅茶を注いでいき…メタナイトがお気に入りのガトーショコラが目の前に置かれた

メタナイト「アイシェ、召し上がれ。」

アイシェ「頂きます。」

フォークで丁寧に小さく切り口に運んだ瞬間、濃厚なチョコの香りが口内に広がり…アイシェの瞳はキラキラと輝いた。

メタナイト「お気に召したかな?」

アイシェ「うん、すっごく美味しい!」

メタナイト「はははっ、それは良かった。」

そう言ってメタナイトも仮面をずらして器用に食べていく

楽しく談笑しながら時間は過ぎ、食べ終えたアイシェが紅茶を飲んでいると…

ピクッ…

何か嫌な気配を感じたメタナイトが反応したが、アイシェは全く気づく事は無く紅茶を飲んでいる

メタナイトはティーカップをそっと置き、席を立った。

アイシェ「メタさん、どうしたの?」

メタナイト「ん、いつもの見回りだ。アイシェはここで待っていてくれ。」

アイシェ「うん、行ってらっしゃい。」

メタナイトを見送り紅茶を飲むアイシェの脳裏を、ふとマホロアの姿が過った

マホロアからは、マルクと別の星に出かける用事が出来たと聞いていた…今頃は到着してるのかな、そう思いながらアイシェは窓から外を眺めた。

一方メタナイトはバル艦長の元に到着して…

バル艦長「メタナイト様、どうされました?」

メタナイト「今から見回りをしてくる、その間アイシェを頼んだ。」

バル艦長「分かりました、お気をつけて。」

部下達に見送られながら、メタナイトは翼を広げて飛び立って行った。

To be continued…