小説「夢結ぶ星りんご」(ロボボ編)~駆除されて下さいませ!~

出されたアイスクリームを完食したアイシェは、そっとテーブルに容器を置いた。

アイシェ「ごちそう様。」

スージー「やっとワタクシに対して、表情が少し優しくなってきたわね。」

アイシェ「えっ…?」

スージー「…突然こんな事したんだもの、警戒されても無理ないわよね…。」

そう話す彼女の水色の瞳は伏せられて、どことなく悲しげで…

アイシェ「スー…」

ピリリリリ…

話しかけようと彼女の名前を呼びかけたアイシェの声を遮る様に、スージーの持つ機械が鳴り響いた

スージー「もうっ…せっかくアイシェとお話してるのに……はい、何事ですの?…えっ?分かったわ、すぐに向かいます。」

ピッ…誰かと話をしていたらしく、会話を終えるとスージーは名残惜しそうにアイシェの頭を撫でた…

アイシェ「スージー…?」

スージー「ごめんなさい、アイシェ…緊急事態が起きたみたいだから行かなくちゃ。」

そう言うと、スージーは器を持って急いで部屋を出て行ってしまい…

アイシェ「緊急事態…何が起きたんだろう…。」

不安になったアイシェは部屋を出て、エリアを繋ぐ扉の前にそっと耳を当てた。

するとスージーとロボット兵の会話が聞こえてきて…

スージー「つまり、ピンクとオレンジの原住民がワタクシのアイスクリーム工場に侵入した上に、あのバリアを破壊したんですのね?」

ロボット兵「ハイ!」

スージー「分かりました、貴方は下がりなさい。」

ロボット兵「ハッ!」

アイシェ「(ピンクとオレンジの原住民…カービィとバンワドくんの事ね…でも2人なら大丈夫、必ず敵を倒して元に戻してくれる。)」

そっとその場を離れたアイシェは、心配しつつも2人を信じて部屋に戻った。

同じ頃

タランザ「はい、おにぎり作ったから少しは食べるのね。」

マホロア「ン、アリガトウ。」

ほとんど食べずにハルトマンワークスカンパニーへ魔術でハッキングしながら情報を集めていくマホロアを心配して、タランザがおにぎりを作ってくれた。

タランザ「何か新しい事は分かったの?」

マホロア「今カービィ達が居る場所ダケド、スージーが社長におねだりして作って貰ったアイスクリーム工場があるみたいダネ。」

タランザ「社長におねだりって…とんだ甘やかしなのね。きっとさぞかし社員に甘い奴なのね…。」

マホロア「…イヤ、そうでも無さそうダヨ。」

タランザ「どういう事なのね?」

マホロア「コレを見てヨ。」

そう言うと、マホロアはモニターに1人の人物の写真を映し出した。

タランザ「プレジデント・ハルトマン…コイツが社長なの?」

マホロア「ウン。経歴を調べタラ、遥か彼方の惑星で発明を生業にシテ一代でここまで大きな企業に育て上げたみたいダネ。タダ人を一切信用しない冷徹な性格デ、秘書のスージー以外は全部ロボットだってサ。」

タランザ「逆に言うと、どうしてスージーだけが許されてるのね…?」

マホロア「ソレが分かればコノ会社についてだいぶ知れる気がするんダケド…コレはハルトマン自身について調べる必要がありそうダナ。」

タランザ「どうやって調べるのね?」

マホロア「様々な星の出来事を片っ端から探して、コノ男についての記述を探すヨ。検索デ名前を登録シテ…こうすればハルトマンに関する記述ダケが出てくるカラ、しばらくは待つしか無いネ。」

タランザ「何か出てくるといいけど……そういえばやたら静かだけど、マルクはどうしたの?」

何やら嫌な予感がするタランザだったが、それは的中して…

マルク「マホロアーりんごも全部貰うのサ!」

そこには籠いっぱいのりんごを翼の鍵爪で持ちながら、既に1つをかじり始めているマルクの姿があった。

タランザ「ちょっ…マルクいくら何でも食べすぎなのね!カービィじゃないんだから少しは自重し…」

マホロア「構わないヨ、好きなだけ食べてイイカラ。」

タランザ「マホロア!?」

マルク「キシシ、分かってるじゃーん!それじゃあ遠慮なく食べるのサ!」

マホロア「遠慮なんて言葉、マルクの辞書には無いデショ。」

満足気にりんごを頬張るマルクに驚きを隠せないタランザだったが…マホロアは見向きもせずモニターを見ながらそう呟きつつおにぎりを食べていて…

タランザ「マホロア、本当にいいの?」

心配するタランザだが、マホロアはもう一口食べると口を開き…

マホロア「マルクは食べて魔力を最大まで溜めてるんダ、アイツには存分に暴れてもらうカラネ。食料なんテ騒動が終わったタラまた補充すればイイシ、ボクも食べ終えたら魔力を補充して来るヨ。」

タランザ「どうやって補充してるのね?」

マホロア「アイシェの部屋に行くんダヨ、フフフ…コレが一番早く溜まるんダヨネェ。」

タランザ「…聞いたボクが馬鹿だったのね。」

察したタランザは呆れた表情だったが、マホロアは性欲だけでなく沸き上がる怒りも全て魔力に変換していて…今の彼は源泉の如く魔力が無限に湧いていた。

一方のカービィ達は、ボスの居る建物の中へと侵入していた。

バンワドから元気ドリンクを受け取り、彼と共に奥へ行くと…

スージー「ウフフ、こんな所にまで原住民が来るなんて…。」

バンワド「カービィ、もしかしてこれがアイシェの言ってた夢の女性じゃ…?」

カービィ「きっとそうだね…!」

小声で話す2人を気にする事も無く、スージーは続けて話し始め…

スージー「あぁ、申し遅れました…ワタクシ「ハルトマンワークスカンパニー」の社長秘書を務めております、スージーと申します。以後御見知りおきを。」

カービィ「社長秘書スージー!」

バンワド「この星を好き勝手にはさせない!アイシェとメタナイトをどこに連れて行ったんだ!?」

怪我を負った体で、バンワドは背中に背負っていた槍を手に取るとスージーに向けて睨みつけた

しかしスージーは余裕の表情で…

スージー「あら、アイシェの知り合いですのね?ふふっ…彼女は安全に過ごしていますわ、だってワタクシの大切な話し相手になって頂くんですもの。そしてメタナイト…あの素敵な剣士様ですわね、彼も無事ですわ……まぁ、そんな事を話した所でもう意味は無いですわね。」

バンワド「何…!?」

スージー「貴方方は、我々の機械化侵略プロジェクトにとって「邪魔な存在」と判断されました。」

カービィ「なっ…!?」

スージー「ここまで御足労頂き、大変恐れ入りますが…速やかに…駆除されて下さいませ!

そう言うと、スージーはリモコンを取り出してボタンを押した

すると…上空から大きなピンク色の見た事の無い形をしたロボットが落ちてきて…スージーはそれに乗り込み、両耳のアンテナの様な物が彼女の輪郭に沿う様に下りて、フェイスガードで目元を隠してしまった

カービィ「この星もアイシェも渡さない!」

こうして、スージーとカービィの戦いが始まった!

スージー「幹部にしか扱えないこのワタクシの愛機、「リレインバー」によって駆除されて下さいませ!」

彼女の言うリレインバーは、機械とは思えない程に軽やかに素早く動きながら翻弄してきて…ジャンプで襲って来たり機械を支える足代わりのドリルを突きさしてきたりと強力な攻撃をしてくる

対してカービィも負けておらず、直前に取得してきた新コピー能力「ポイズン」を駆使して攻撃をしていく

すると、ある程度ダメージを与えた所でスージーの動きが変わり…真ん中の足場が大きく盛り上がった!

カービィ「何が起きるの…!?」

驚くカービィに対して、スージーはリレインバーのボタンをピッと押すと…彼女の操縦席の左右に小さなドリルの様な物が現れた!

スージー「うふふっ、これをかわせるかしら?」

小さなドリルがカービィが襲い、しばらく経つと時限爆弾の様に爆発した!

バンワド「カービィ!」

カービィ「大丈夫!」

スージー「あら、流石ですわね。今度はワタクシも行きますわよ!」

そう言うと、今度は小さなドリルを飛ばした後にスージー自身も降りてきて…盛り上がった足場を伝う様に回転攻撃をしてきた!

カービィ「負けないよ!」

すかさず毒々の霧で対抗するカービィ、すると再びスージーの動きが変わり…今度は盛り上がった足場の壁が大きく開いて…穴を通じて強力な電気を纏いながら突っ込んで来た!

バンワド「何て攻撃だ…!」

カービィ「くっ…!」

スージー「ワタクシこれでも忙しいんですのよ、そろそろ諦めて駆除されて下さいませ!」

カービィ「そんな訳にはいかない、ボクは諦めないよ!」

そう叫んで、カービィは「毒々バベル」をスージーに放った!

To be continued…