平和が戻って1週間後…アイシェはマホロアが作ってくれたタマゴサンドをご機嫌な様子で食べていた。
アイシェ「ふふっ、美味しい!」
マホロア「喜んで貰えテ嬉しいヨォ~!」
アイシェ「マホロアが作ってくれたんだもの、一番美味しいよ!」
彼女の好きなトロッとした半熟に、ふわふわのパンは相性が抜群で食欲も進む
ニコニコ笑顔で食べるアイシェを、マホロアが優しい笑みを浮かべながら頬杖をついて見守る…元通りの平和な光景がそこにはあった。
………ただ1つの変化を除けば
それは…あの一件以来、お預けを喰らっている事である。
初日は疲れていた、しかし翌日からマホロアが迫っても拒まれてしまう
自分がどんなに欲していても、嫌がるアイシェと無理矢理はしたくない…マホロアは魔力に変えたりして自分を抑えてはいたが、同時にどうして彼女が急に嫌がる様になってしまったのか疑問だった。
それはアイシェ自身も気にしていて…本当ならマホロアと熱く甘い夜を過ごしたい、それでも脳裏にはスージーに聞かれたあの言葉が過ってしまう
「家族」
マホロアといずれかはそうなりたいけど、もしその話をして彼自身はそう思っていなかったら…答えを聞くのが怖くてアイシェは切り出せないまま、お互いに話すタイミングを掴めず仲は良いのに夜は…な状態が続いていた。
その後タマゴサンドを食べ終えてからソファで寛いでいると、マホロアはアイシェの口元に僅かにタマゴが残っている事に気がついた。
マホロア「フフッ、アイシェの口にタマゴが少し付いてるヨ。」
アイシェ「えぇっ…ちゃんと拭いたのに恥ずかしい…どこ?」
頬を赤く染めて恥ずかしがりつつも尋ねるアイシェに、マホロアがちょっぴり意地悪な笑みを浮かべながらマフラーを下げて…
マホロア「ココダヨ、アイシェ。」
ゆっくりと顔を近づけると、アイシェの頬を両手で優しく掴みながら…ペロッとタマゴを舐め取った。
アイシェ「ひゃっ…!」
驚きで更に頬を赤く染めるアイシェを見て、マホロアは満足気に笑い…
マホロア「フフッ…可愛いネェ。」
そう言いながら、ちゅっと優しいキスから始まり…そのまま押し倒した
アイシェ「マホ…ロア…。」
マホロア「愛してるヨ、アイシェ。」
耳元でそっと甘く囁いて、マホロアは再びアイシェの唇を奪う
今度は舌で口をこじ開け、どんどん口内にマホロアの舌が入ってきて…
アイシェ「ふぅ…ぅ…。」
熱く甘く深いキスにアイシェの心は溶けて、更に彼を求めて体は疼く…
それはマホロア自身も同じで、抑えていた欲と共にキスが止まらず、角度を変えて何度も深く口づけていく。
キスを終えて口を離すと、黄色い瞳と青い瞳がトロンとしながらお互いを映していて…
マホロア「アイシェ…。」
アイシェ「マホロア…あの…」
熱い吐息と共に名前を呼ぶマホロアが愛おしくて、今なら勇気を出して打ち明けられる…そう思ったアイシェは、彼の瞳を真っ直ぐ見ながら話し始めたが…
コンコン…ローアの入り口を叩く音が聞こえてきた
マホロア「クソォ…せっかくアイシェとのイチャイチャタイムなのニ…!」
チッと舌打ちをしつつ、マホロアが起き上がって操縦室へ向かい…アイシェも続けて起き上がって彼の元へ向かった。
アイシェ「誰が来たんだろう?」
マホロア「どーせマルクの馬鹿ダヨォ、サッサと追い払うカラ待っててネ。」
眉間に皺を寄せて文句を言いつつ、マホロアはパネルを操作して入り口を開く…
しかし、入って来たのはマルクでは無くて…
スージー「ご機嫌よう、アイシェ!」
アイシェ「す…スージー!?」
マホロア「何しに来たんダヨォ!?」
何と1週間前に別れたばかりのスージーの姿がそこにあった!
その格好は前に見た時と全然違って…金のハートの飾りが付いた薄いピンクのベレー帽に赤いスクエアメガネ、ストレートだった髪は外ハネになっていて…全く違う姿に驚きが隠せない2人だったが…
スージー「ふふっ、貴女に会えるのを楽しみにしてたのよ!相変わらず可愛らしいわね~!」
嬉しそうに抱きつき、頬ずりをするスージーにアイシェは少しだけ戸惑いつつも抱き返した。
アイシェ「ありがとう…えっと、その格好は?」
スージー「これはアタシのオフの姿よ、ふふっ…アイシェに見せるのがとっても楽しみだったの。」
そう言って無邪気に笑うスージーに、アイシェも自然と笑みが零れ…
アイシェ「とっても素敵だよ、スージー!」
スージー「ありがとう、アイシェ!」
お互いにニコニコ笑顔で和やかな雰囲気だが、マホロアだけは眉間に深い皺を寄せて気に入らない顔をしていて…
マホロア「いきなり来て何なんダヨォ!ボクはアイシェと2人っきりの大切なイチャイチャタイムの真っ最中だったんダカラ!」
スージー「アイシェ、アイスクリームを持ってきたの!早速一緒に食べましょう。」
しかしスージーは文句を言うマホロアを全く気にも止めず、アイシェにアイスを渡している。
マホロア「オイ、話を聞けヨ!!」
ボンボンと湯気を出して怒るマホロアに、スージーはふぅ…と溜息を吐きつつ口を開き…
スージー「貴方にもアイスクリームを持ってきたわよ、はいどうぞ。」
そう言うと保冷バッグからバニラアイスのカップを1つ取り出し、彼の手にポンッと乗せた。
マホロア「アリガト~……ッテ、ソウジャネーヨ!」
スージー「もー煩いわね、何なのよ。」
マホロア「突然来てボク達の熱い時間を邪魔しておいテ…モウ許さないヨォ!」
アイシェ「マホロア、落ち着いて…!」
怒りでビキビキするマホロアを宥めるアイシェ…スージーはそんな2人の様子を見て…
スージー「(ここまで仲が良くて一緒に暮らしてるのに、どうしてまだ恋人同士なのかしら?)」
2人が家族になっていない事を不思議に思いつつ、少しの間眺めているのだった。
その後、マホロアが落ち着いた所で3人でアイスクリームを食べ始めた
アイシェ「美味しい!」
マホロア「ン、悪く無いネェ。」
スージー「ふふっ、喜んで貰えてよかったわ!」
アイシェ「ところでスージー、今日はどうしてここに?」
スージー「実はカンパニーを再建するのに、ちょっと機械の事で知りたくてね…貴方にそれを聞きに来たのよ。」
そう言ってスージーはマホロアの方を見て…
マホロア「エ、ボクに聞きたいノ?」
スージー「貴方はこの船の持ち主なんでしょう?こんなに素晴らしいテクノロジーが詰まった船を作り上げる力があるんだから、機械についても詳しいはず…だから貴方からアドバイスを頂きたいのよ。」
マホロア「(作ったと言うヨリ、修理してチョットダケ改造したんダケドネ…。)マァ…ボクの知識で良ければ教えてアゲテもイイケドォ…。」
少し歯切れの悪いマホロアに、アイシェもスージーも首を傾げる
アイシェ「どうしたの、マホロア?」
マホロア「くれぐれもソレを悪用しないデヨ?今回の侵略みたいに使われタんジャ堪んネーモン。」
スージー「そんな事?もちろん悪用なんてしないわよ。何なら誓約書も用意したわ。」
そう言ってスージーは鞄から誓約書を取り出し、マホロアがじっくりと目を通す
マホロア「フーン、結構本格的ジャン…ナラ、ボクの魔法デ…。」
ペンでサラサラと誓約内容を書いてサインすると、マホロアの魔法陣が誓約書に刻印された。
アイシェ「これは…?」
マホロア「魔法陣で誓約書を強化したんダ。コレでボクが解除しない限りハ内容を書き換えたり出来ないし廃棄も出来ないヨ。」
スージー「流石ね…用心深いわ。さて、それじゃあ頼みますわよ…マホロア。」
マホロア「クククッ…ボクが丁寧に教えてヤルヨ。」
アイシェ「(ふふっ、マホロア楽しそう。)」
ちょっと悪い笑みを浮かべるマホロアだが、どことなく嬉しそうで…アイシェはそんな彼の様子を見て優しく笑うのだった。
To be continued…