ある日、アイシェは部屋でピアノを弾いていたが…
マルク「まだなのサー?」
アイシェ「待って、これ難しいの…。」
マルク「これじゃあ日が暮れるのサ。」
アイシェ「だってマルクの曲、大変なんだもん…。」
困った様子でピアノを弾くアイシェと、ソファで足をブラブラさせながら催促するマルク
アイシェが困っている原因…それは「マルク戦の曲」を演奏して欲しいというマルクからのリクエストである。
テンポが速い上に変拍子が多く、弾くのはとても難しいのだ
それでもアイシェは何とか応えようと頑張ってはいるものの、ほとんど弾けず…マルクも満足するはずは無く今に至る。
マルク「なら予定変更なのサ、ボクがアイシェをくすぐる時間にするのサ!」
アイシェ「えぇーーそれはやだ!」
マルク「キシシ、このマルク様に口答えするのサ?」
意地悪な笑みを浮かべながらマルクは翼を出してじりじりと迫り、アイシェはピアノの椅子から下りて部屋中を逃げ回り…完全にマルクとの鬼ごっこになっている。
アイシェ「だって、マルクは一度くすぐるとなかなか止まらないんだもん…!」
マルク「それは、アイシェの反応がイイからなのサ!」
アイシェ「やだ…!」
眉も下がり困った表情のアイシェだが、それはマルクのイタズラ心という名の火に油を注いでいるだけで…
マルク「やだって言われたら更にイタズラしたくなるのサ!ま、許してちょーよ!」
アイシェ「うぅ…マル…ク…!」
とうとう壁際に追い詰められたアイシェは、マルクの魔法で出した植物のツルで拘束され身動きが取れない…
マルク「さーて、どこからくすぐってやろうか?」
ニヤニヤしながらマルクはアイシェを見下ろしていて、ゆっくりと鉤爪が迫る。
アイシェ「くすぐったいのはやだぁ…。」
困った表情のアイシェがそう言った瞬間…
マホロア「何してんダヨ、クソピエローーーー!!」
実験を終えたマホロアがアイシェの部屋に向かうと、マルクが彼女を壁際に追いやり魔法で拘束しているのが目に入って…怒りながら向かって来た!
アイシェ「マホロア…!」
マルク「チッ…バッドタイミングなのサ!」
マホロア「グッドタイミングダロ!部屋デ実験してる間に勝手に来た挙げ句、ボクのアイシェに何してくれてんダヨ!!」
マルク「くすぐろうとしてしたのサ。」
黄色い瞳をつり上げて湯気を出しながら怒っているマホロアだが、マルクは全く悪びれる様子も無くあっさりと目的を口にして…その態度がマホロアの怒りを更に加速させる。
マホロア「テメー今すぐアイシェを開放シテ出てケ!二度と来るナ!何ならコノ星カラ追放サレロ!!」
マルク「酷い言い様なのサ〜。」
マホロア「ボクが今すぐ追い出してヤルヨ!!」
ビキビキするマホロアは、そう言ってマルクの帽子を掴んで引っ張り出した。
マルク「ちょっ…止めるのサ!」
帽子を押さえた拍子に魔法は解除されて、アイシェは自由の身になった
アイシェ「マホロア、やめて…!」
喧嘩にならない様にと、マホロアを止めに入るアイシェだったが…
マホロア「アイシェ、怖かったダロ!?モウ大丈夫ダヨ~ボクが付いてるカラネッ!」
そう言ってマルクの帽子をパッと離して抱きしめるマホロアだが、左手はアイシェのお尻を撫で回していて…
アイシェ「ま、マホロアぁ…!」
マルク「何してんだよ、ド変態タマゴ!」
頬を真っ赤に染めて困るアイシェに、瞳を弓形にしてその反応を楽しむマホロア…そしてそれを見たマルクは怒りながら彼の行動を咎める。
マホロア「アイシェとのコミュニケーションを取ってるんダヨ、そんなのも分かんないノォ~?」
マルク「お前のやってる事は、ただの変態だろ!」
マホロア「恋人同士なんだカラ、今更ドコ触っても許されるダロ!」
アイシェ「えぇ…!?」
マルク「そんなワケねーだろ!どんな頭してるのサ!?」
マホロア「こんな頭ダケド~?」
マルク「お前って奴は…!」
そう言ってビキビキしながら鉤爪をジャキンと光らせるマルクだが、マホロアはアイシェを抱きしめながらスリスリしていて…
マホロア「アイシェ~馬鹿ピエロはサッサと追い出しテ、ボクと2人きりの時間を過ごそうネェ~!」
アイシェ「えぇ…あの、私まだ何も…」
マホロア「モォ~照れチャッテ可愛いヨォ!」
マルク「はぁ~……ピアノは聴けねーし、マホロアに邪魔はされるしで散々なのサ。」
そう言って溜息を吐くマルクの言葉に、マホロアの耳がピクッと反応した。
マホロア「ピアノ?」
アイシェ「マルクに曲をお願いされたの、でも上手く弾けなくて…。」
マホロア「アイシェにも弾けない曲があるノ?」
アイシェ「雲の夢やレインボーリゾートみたいなゆっくりの曲なら弾けるけど、マルク戦みたいな激しくてテンポの速い曲は難しくて苦手なの…。」
マホロア「テンポの速い曲……アイシェ、ボクにも聴かせテ。」
アイシェ「うん。」
興味が湧いたマホロアがアイシェにお願いすると、再びピアノ椅子に座って演奏を始めた。
弾き始めまでは出来ているが、途中からやはり苦戦していてまともに弾けなくなってしまう。
マホロア「ン、コレは難しそうダネェ…。」
マルク「そうなのサ?」
マホロア「正直ピアノの音ダケデ、コノ曲を再現するのは難しいと思うヨ。」
アイシェ「……マルクの曲もだけど、マホロアの曲もこんな感じなの。」
マホロア「エェーーーボクもナノ!?」
マルク「コイツと同じとか、何の嫌がらせなのサ…。」
マホロア「コッチのセリフダヨォ!ソレはともかく、上手い事アイシェの思い描く曲を再現出来ないカナァ…。」
アイシェ「私、もっと練習してみるよ…ごめんねマルク。」
マルク「ま、今日はアイシェの作るホットケーキで許してやるのサ。」
アイシェ「私が作るのでいいの?」
マルク「アイシェの作るホットケーキじゃないと、満足出来ないのサ。」
アイシェ「も~マルクったら…ふふっ、今作るから待っててね。」
そう言いつつもアイシェは楽しそうにマルクと共にキッチンへ向かったが…マホロアも向かいつつマフラーに手を当てて何か考えていて、ブツブツと呟いていた。
それから数日後…
マホロア「アイシェーーーー!!」
部屋で何かを作っていたマホロアが、突然叫びながらリビングに走ってきたものだから…アイシェは青い瞳をぱちぱちさせながら驚いた。
アイシェ「マホロア、どうしたの!?」
マホロア「出来たんダヨォ~ホラ!」
そう言うとマホロアは、アイシェの目の前に小さな箱を見せた。
それはマホロアの頭の形をしている可愛い箱で、オルゴールの様にも見える。
アイシェ「わぁ、マホロアの形で可愛い!」
マホロア「デショ~……っテそうジャなくテ!」
アイシェ「え、違うの?」
マホロア「コレ、アイシェが頭の中でイメージした曲を再現してくれる機械なんダ!」
聞けばそれは、こないだスージーから聞いた機械の話から構想を得て作られた物で、彼の説明通りアイシェが頭の中でイメージした音楽がマホロアの魔法の力で伝わり、機械によってそのまま曲となって再現される物だと言う。
アイシェ「すごい、すごいよマホロア!」
マホロア「デショ~!エヘヘ、ご褒美はボクへの熱いキスが欲しいヨォ~何ならこのままイイコトしちゃってもイイネェ~!」
アイシェ「ふふっ、これで色んな曲を再現出来るかな?」
1人で妄想を膨らませて喜んでいるマホロアだが、アイシェは機械の方に興味津々で、目を輝かせながら見ている。
マホロア「アイシェ~ボク、ご褒美が欲しいヨォ!」
アイシェ「あははっ、マホロア子供みたい…。」
まるで小さな子供が駄々をこねているみたいで、アイシェは思わず笑ってしまう。
マホロア「ボク、アイシェの為二頑張ったんダヨ~?」
わざとらしくちょっとだけ拗ねた様子で見れば、アイシェは優しく笑いつつ…
アイシェ「ふふっ、ごめんね…大好きだよマホロア。」
そう言ってアイシェは彼の柔らかい頬にちゅっとキスをしたら、マホロアは満足気に瞳をに細めてニコ~ッと笑う。
マホロア「ボクも大好きダヨォ~アイシェ。」
2人はそのまま抱きしめ合い、穏やかな時間をすごしたのだった。
To be continued…