翌日、アイシェはマホロアが見守る中で、装置を試してみた。
マホロアの言う通り、装置を両手で包むように優しく握って目を閉じると…装置から曲が流れ始めた。
それはこの前マルクが聞きたがっていた「マルク戦」の曲で…
1ループ流し終えると、アイシェはそっと目を開けた。
アイシェ「すごい、私が思い浮かべた通りに曲が流れてる!」
マホロア「大成功みたいダネ!」
アイシェ「ありがとうマホロア!」
マホロア「どういたしましテ!」
アイシェ「ふふっ…生前に遊んでた時と同じ曲が流れて、ちょっと懐かしい気持ちになっちゃった。」
マホロア「ソレにしテモ、かなり激しい曲ダネェ~野蛮なアイツにピッタリダヨォ。」
アイシェ「マホロア、またそんな事言って…。」
意地悪な笑みを浮かべてマルクを馬鹿にするマホロアに、アイシェはほんの少し困った様子でふぅ…と溜息を吐いた。
マホロア「アイシェが難しいっテ言ってたケド、コレは簡単には弾けないネェ…曲のテンポも速いし、不協和音ダシ…。」
アイシェ「でも、これでマルクも満足してくれると思うよ。」
マホロア「だとイイケド…アイシェのピアノで聞きたがってたカラ、弾けってうるさく言いそうダヨォ。」
アイシェ「これを聞きながら、もう少し練習してみるよ。」
友達の為に努力しようとするアイシェに、マホロアは関心すると同時に、ほんの少しだけやきもちを妬いていて…
マホロア「マルクの事ばっかり構ってると、ボク寂しくテ拗ねちゃうヨォ~?」
そう言ってぎゅっと抱きしめてくるマホロアは、まるで大きな子供で…アイシェは笑ってしまう
アイシェ「ふふっ、マホロアの曲も弾ける様に頑張るからね。」
マホロア「ソレは嬉しいケド、ボクはアイシェと熱~い時間を過ごす方が嬉しいナァ~。」
そう言ってマフラーを下げて、アイシェの頬にキスをした。
アイシェ「それは夜になってからだよ、今はりんごのタルト作ってあげるから、ね?」
マホロア「ンン~~~アイシェ、お預けのタイミングが上手になって来たネェ…デモ、りんごのタルト食べれるカラ最高ダヨ!」
すっかりご機嫌になったマホロアは、アイシェと共にキッチンへ向かい…
その後は2人で仲良くりんごのタルトを作り、ゆっくり食べながらティータイムを楽しむのだった。
別の日…
装置はイメージした曲を再現するだけで無く、その曲を保存する機能もあった。アイシェはマルク戦を流しながら少しずつ練習を重ねていて、まだ完全では無いが以前よりは弾ける様になっていた。
アイシェ「もう少しで弾けそう…。」
苦戦しつつも頑張るアイシェだったが、どうしても途中で引っ掛かってしまう…
すると…マホロアが部屋に入って来た。
マホロア「アイシェ。」
アイシェ「マホロア…。」
マホロア「アイシェ、1人で弾こうとしなくてイイんダヨ。」
アイシェ「えっ?」
マホロア「ボクも演奏するカラ、一緒にやってみようヨ。」
そう言ってマホロアが手をかざすと…優しい光を発しながら、透き通る様な綺麗な青いヴァイオリンが出てきた
アイシェ「マホロア、それは?」
マホロア「ボクのヴァイオリンダヨ。」
アイシェ「すごく綺麗!」
彼のヴァイオリンを見てうっとりしているアイシェに、マホロアは優しい笑みを浮かべて頭を撫でた。
マホロア「アイシェ、弾いてごらん…ボクが難しいトコを弾いてアゲルカラ。」
アイシェ「うん。」
再びピアノを弾き始めたアイシェ、マホロアもそれに合わせて弾くと、ヴァイオリンは美しい音色を奏で始めて…アイシェが引っ掛かってしまう部分も、マホロアが上手にカバーしてくれて…美しい音色が響き渡る
最後はアイシェのピアノで締め、演奏を終えた2人は笑顔で顔を見合わせた。
マホロア「フフッ、最高ダネ!」
アイシェ「ふふっ、うん!」
マホロア「ネェ、アイシェ…せっかくダカラ、あの曲も演奏しようヨ。」
アイシェ「どんな曲?」
マホロア「ボク達の思い出の曲…『雲の夢』ダヨ。」
アイシェ「雲の夢…マホロアと演奏出来る日が来るなんて、夢みたい。」
そう言って嬉しそうに笑うアイシェに、マホロアも優しい笑みを浮かべてマフラーを下げ、頬にキスをした
マホロア「ジャア、いくヨ?」
アイシェ「うん。」
マホロアの合図でまずアイシェが弾き始め、マホロアもタイミングを合わせて弾き始めると…2人の奏でる音色は美しいハーモニーとなって部屋中に響き渡った。
弾き終えた2人は再び顔を見合わせて…
マホロア「最高ダヨ、アイシェ…2人でこんなに美しく綺麗な音色を生み出せるなんテ…!」
アイシェ「マホロアと2人で生み出した、新しい雲の夢…すごく嬉しい…!」
2人の瞳はキラキラと輝いていて、溢れ出る喜びを分かち合う様に強く抱きしめ合った。
後日…早速マルクの前で機械によって再現された「マルク戦」を聴かせた後、ピアノとヴァイオリンで演奏を披露した。
マルク「おーーー、すごいのサ!!」
紫の瞳をキラキラ輝かせ、翼をバタバタと動かしながら大喜びするマルクは、まるで玩具を与えられた小さな子供の様だ。
アイシェ「満足して貰えたかな?」
マルク「大満足なのサ!」
アイシェ「よかった。」
マホロア「当然ダヨネェ~、アイシェとボクの2人デ演奏したんダカラ!」
そう言って自慢げにしているマホロアだが…
マルク「お前の演奏はともかく、アイシェがよく頑張ったのサ!」
全くマホロアを労おうとしないマルクの態度に、マホロアはカチンと来て…
マホロア「アレェ~~馬鹿ダカラ、ボクのヴァイオリンの音色が分からなかったのカナァ?」
マルク「よーーーく聞こえてたのサ。けどボクはアイシェのピアノが一番なのサ、だからお前のはオマケなのサ。」
マホロア「ハァ~寝言は寝て言えヨ、クソピエロ!」
マルク「ボクは寝てなんかいないし、寝言も言わないのサ。」
マホロア「次から次へと口が減らない奴ダヨォ!!」
マルク「キシシ、お前に言われたくないのサ!」
ビキビキするマホロアを揶揄うマルク…今や2人のそんな光景はいつも通りの日常になっていた。
アイシェ「2人共やめて…!」
2人の間に入って止めるアイシェだったが…
カービィ「おーい、アイシェ!」
開いている窓の外からカービィの声が聞こえて、アイシェが顔を出して下を見ると…バンワドと共に満面の笑みで手を振る姿が見えた。
アイシェ「カービィ、バンワドくん!」
バンワド「近くを通ったら、ローアから雲の夢が聞こえてきたんだよ!」
アイシェ「ちょうど演奏してたの、2人にも聴いて欲しいなぁ。」
カービィ「わーい、今行くね!」
バンワド「待ってよカービィ、大王さまとメタナイトが待ってるのに…!とりあえず、今呼んでくるね!」
大喜びのカービィはローアに入り、バンワドはデデデ大王とメタナイトを呼びに戻った。
その後…4人揃った所で改めてアイシェとマホロアは雲の夢を披露して…
カービィ「すごい綺麗!」
バンワド「アイシェのピアノとマホロアのヴァイオリンが合わさって、素敵な音色になってるね!」
デデデ「今まで以上に、いい曲になってるじゃねぇか。」
メタナイト「とても美しく、優しい響きだ。」
マルク「ま、2人と一緒で相性がイイって事なのサ。」
マホロア「当たり前ダロォ~、ボクとアイシェの相性は全宇宙デ一番なんダカラ!」
自信満々にそう言ってドヤ顔をするマホロアに、アイシェを含めて全員が穏やかな笑みを浮かべ…
アイシェ「マホロア、ありがとう。」
満面の笑みでお礼を言えば、マホロアの頬は赤く染まり…嬉しそうに笑うのだった。
To be continued…