あれ以来、マホロアはアイシェとあの機械を使っては曲を楽しんでいた。
マホロア「クラウンを被った時のボクの曲、確かにマルクみたいに激しくてテンポの速い曲ダネェ。そしてコノ曲がクラウンに飲み込まれた時にゲームで流れていた「CROWNED」カァ…タイトルも中々ダヨォ。」
アイシェ「曲自体は好きなんだけどね。」
マホロア「ボクがアノ姿になっちゃったのが嫌カナ?」
アイシェ「うん…それにマホロアがあのまま…。」
マホロア「フフッ、今はこうシテ隣に居るヨ?」
そう言ってマフラーを下げてアイシェに熱い口づけを落とすと、その頬は赤く染まって嬉しそうに笑う。
アイシェ「うん、ずっと一緒に居てくれるもんね。」
目を閉じてマホロアに寄りかかるアイシェの肩に手を回して抱き寄せ、彼女の温もりに安心しつつ他の曲も聴いてくと…。
マホロア「閃いたヨォ!」
突然そんな風に言ってはしゃぎだしたマホロアに、アイシェは驚いて青い瞳をぱちぱちさせた。
アイシェ「マホロア…?」
マホロア「お試しのテーマパークの案を思いついたんダ!」
アイシェ「前に作った「カービィのもっとチャレンジステージ」みたいな物?」
マホロア「ウン、デモ今度は曲を使った遊びダヨ。」
アイシェ「曲を使って、どう遊ぶの?」
マホロア「アイシェが聴かせてくれた曲と、ボクが閃いた曲デ仕掛けを作るんダ。曲に合わせてタンバリンを叩きながらメダルも集めテ、ゴールを目指すんダヨ。」
アイシェ「わぁ、面白そう!」
話を聞いたアイシェは、目を輝かせていて…マホロアの黄色い瞳も弓形に細くなる
マホロア「アリガト~アイシェ、早速準備に取りかかるヨォ!」
そう言ってマホロアは自分の部屋にダッシュして準備を始め…
1週間後、お試しのテーマパークが完成した。
アイシェ「わぁ~空中にドラムが浮いてる!それにあちこちの仕掛けや飾りも、全部マホロアが作ったの?」
マホロア「もちろんダヨォ!チョー楽しいテーマパークを作るには、こういう細かい作業モ出来ないトネッ!」
アイシェ「すごいねマホロア!」
マホロア「エヘヘ~照れちゃうヨォ…。」
そう話すマホロアの頬は真っ赤に染まり、表情も緩みきっていて…アイシェはそんな彼の様子に優しい笑みを浮かべる
アイシェ「それじゃあカービィを呼んでくるね。」
カービィを呼びに行こうとしたアイシェだが、マホロアは満面の笑みで首を横に振り…
マホロア「今回のテーマパークのゲストは、大王ダヨォ!」
アイシェ「え、大王さま?」
マホロア「ドラムを踏んデ大ジャンプするのモ、大王じゃナイと出来ないカラネェ。」
アイシェ「ふふっ…大王さま、きっと楽しんでくれるね。」
マホロア「大満足して貰えるハズダヨォ!」
そう言って楽しそうに笑う2人だが…アイシェは知らなかった
見せて貰ったのは序盤のステージのみ…つまり、マホロアが後半のステージに行くにつれ、過激で危険な仕掛けをしている事に気づいていないのだ。
そしてこの時のマホロアも「大王なら大丈夫」という過信から、自分がどれだけ危険な物を使っているかという自覚が無かった。
そして何も知らないまま、デデデが招待され…
デデデ「おー、これが俺様専用のテーマパークか?」
マホロア「あくまデお試しのダケドネ、ステージ毎にスコアに合った色のメダルが貰えテ、最高はプラチナダヨ。記念のトロフィーも貰えるカラ、支配人のボクが作った今回のテーマパーク…「デデデでデンZ」を楽しんでネェ!」
デデデ「よし、たーっぷり楽しませて貰うぜ!」
そう意気込んで、デデデは遊び始めた。
最初のステージはマホロアが閃いた新曲「浮遊大陸の花畑」
アイシェからフロラルドでの冒険の話を聞いたマホロアがイメージして作った曲だ。
裏打ちや飛ぶタイミング、ジャンプの高さなど…最初こそは少し苦戦していたものの、それらもすぐに覚えて順調にステージをクリアし、プラチナメダルを獲得した。
次のステージもマホロアがアイシェから聞いた話からイメージした新曲「はずんでデンデン♪」
羽付きのドラムが出てきたが、難なくクリアし…
次のステージは「奥のカガミで笑う影」、フロラルドにあったオバケ屋敷をイメージして作られた曲で、その次も新曲「とびだせ!奥へ手前へボスバトル」
この頃になると、ドラムの足場が途切れている場所が現れたり、大きなゴルドーが嫌な場所に配置されている…更には2匹のブロントバートがデデデの模様をした目隠しフラッグで見づらくしたりと仕掛けも意地悪な物が増えてきた。
そして、その様子をローアの映し出す画面から見ていたマホロアは…
マホロア「ブラボーダヨ大王、デモ…コノ先の仕掛けはモット大変ダヨォ~?クククッ…反応が楽しみダネェ!」
楽しそうにイタズラっぽく笑うマホロア…すると奥から良い香りが漂ってきて…
アイシェ「マホロア、クッキー焼けたよ。」
マホロア「今行くヨォ~!」
モニターを消して、マホロアはルンルンでアイシェの元へと向かった。
一方デデデは、次のステージである「シティトライアル:街」と「戦艦ハルバード:甲板」をクリアしていた。
足場は更に不安定になり、中には動くドラムで移動しながら裏打ちとメダルを集めなくてはならない場所もあり、苦戦する場面も…
更にメダルが設置されたリングに棘が追加されていたり、戦艦ハルバードのステージは今までの明るいステージから一変、夜の様に暗くて少し見づらくなっていた。
デデデ「マホロアの奴、段々とキツイ仕掛けが増えてきたじゃねぇか…!」
とはいえ全てのステージはクリアした。後は帰ってマホロアに報告するだけ…と思っていたその時!
マホロア「ブラボー、ブラボー、流石は大王…よくボクの作った仕掛けをくぐり抜けテ、全部プラチナを取ってクレタネェ。」
デデデ「マホロア…お前それは、あの時みてぇなセリフじゃねぇか…。」
マホロア「クックック…デモ今度はクラウンなんて無いカラ何も起きないヨォ?」
デデデ「それはそうだが…それよりも、クリアしたからトロフィーが貰えるんだろ?」
マホロア「ア、ソノ事なんダケド…実はコレ「表」でマダ続きがあって、「エクストラ」と「裏」も頑張ってクリアしてネェ!」
そう話すマホロアは満面の笑みを浮かべていて…デデデは口をあんぐりと開けて驚いた顔をしている…。
デデデ「な…ななななな…!?」
マホロア「クククッ…な~んて顔してるんダイ?」
デデデ「マホロアお前!」
マホロア「オット、アイシェの所に帰らなキャ!ジャア頑張ってネェ~!」
そう言ってマホロアは手をブンブン振りながら異空間バニシュを使って帰ってしまい、その場にはデデデ1人が残された…。
デデデ「アイツ…最初からそのつもりで俺様を呼んだな…!」
若干ビキビキしつつも、アイツに一泡吹かせてやろうと意気込み、エクストラステージ「CROWNED」に挑んだ!
マホロアソウル戦をイメージしたこの曲は、テンポも速い上に新しいギミックである鉛筆型の棘付き棒が飛び出して来て行く手を阻み、時にはぶつかったりドラムに乗りそびれて落ちたり…何度もやり直しながらやっとの思いでプラチナを獲得した。
その日は城に帰ってゆっくり休み…次の日から「裏」ステージの攻略も始めた。
何も知らないアイシェはマホロアとティータイムを楽しんでいて…
アイシェ「大王さま、楽しんでくれてるかな?」
マホロア「きっと最高のテーマパークだって、大喜びしてるヨォ!」
アイシェ「ふふっ、今日も遊んでるみたいだね。」
マホロア「ボクの作った仕掛けが、病みつきになっチャッタカナァ~?」
楽しそうに談笑するマホロアだが、その腹の内は真っ黒で…今頃デデデが苦戦しながら何度も挑戦しているのだろうと、マフラーの下ではニヤニヤしていた。
そう…デデデ大王は努力家で、どんなに無理難題でも諦めない事をマホロアは知っているのだ
努力家で闘争心の強いあの大王が、自分の作った滅茶苦茶な仕掛けに何度も挑戦していつかはクリアしてくれる…それはマホロアのデデデに対する信頼でもあった。
そんな彼の期待通り、デデデは裏ステージも順調にクリアして…
ついに裏のエクストラステージ「CROWNED:Ver.2」に挑んだのである。
今までの仕掛けが全て出てきて、序盤は鉛筆型の棘付き棒とゴルドーのラッシュ、そこを抜けると棘付きのドラムが頻繁にひっくり返りながら惑わせてくる
羽付きのドラムも奥や手前へ素早く行き来して、順番にとるメダルの地帯も1回踏んだだけで壊れてしまうドラム地帯と油断出来ない…
敵の数も多ければ動きも速く当たらない様にするのが精一杯で、やっとの事で抜けると…
マホロア「ヤァ、大王~!」
デデデ「ま、マホロア!?」
マホロア「ホラホラ、足場のドラムは小さいヨ~ボクに気を取られてるとメダルも取り逃しチャウし落ちるヨォ~?」
デデデ「おまっ…止めろ!」
マホロアの持つ目隠しフラッグはとても長くて…デデデの行く手を妨害するのには十分過ぎるものだった。
そして…案の定、足を踏み外してデデデは落ちてしまい…
マホロア「アレェ~大王ドコに行っちゃたノォ?」
わざとらしく言うマホロアは心底楽しそうで、耳はピコピコと揺れている。
デデデ「マ~ホ~ロ~ア~!!」
ビキビキしたデデデが戻って来たが、マホロアは楽しそうに笑うばかりで…
マホロア「ボクのお手伝いはココマデ、後は頑張ってネェ~!」
瞳を弓形に細めて笑いながら、マホロアは去って行き…
デデデ「あんの野郎…覚えてろよ…!」
ボロボロになったデデデはその後何とかクリアして…
数日後…何度も挑戦した末、ついに裏エクストラもプラチナクリアをしてローアに来た。
そこにはアイシェの他に、遊びに来ていたマルクとタランザも居て…
アイシェ「どうしたの大王さま!?すぐに手当てしないと!」
ボロボロのデデデを見て、驚いたアイシェが救急箱を取りに行き…マルクとタランザも驚いた様子で見ていて…
マルク「ちょっ、どうしたのサ?」
タランザ「何があってそうなったのね?」
しかしマホロアだけは嬉しそうな様子で…
マホロア「ワォ、さすがダネ〜大王!楽しめたカイ?」
ゴマすりをしながら尋ねるマホロアだったが、デデデはゆらりとマホロアに近づくと口を開いて…
デデデ「あぁ、楽しかったぜ。けどな…お前の仕掛けは過激過ぎるんだよ!」
そう言って拳を振り上げて…
ゴチィィィン!!
ローア中にデデデの拳骨の音が響き渡った…
マホロア「痛いヨーー何するノォ!?」
同じくらいにマホロアの悲鳴に近い叫び声が響き渡り…
アイシェ「マホロア、どうしたの!?」
驚いたアイシェが救急箱を抱えて戻って来ると、そこには頭に大きなたんこぶを作ったマホロアが両手で摩りながら地面に降りてピクピクしていて…
デデデ「テーマパークを作るのはいいが、お前はもう少し加減を覚えろ!」
その後…アイシェに手当てされたデデデはそのまま帰ったが、説教されたマホロアは拗ねてしまい…話を聞いてステージを見てきたマルクとタランザは、若干引いた様子で戻ってきた。
マルク「お前、あれは流石にやり過ぎなのサ…デデデ大王ならともかく、他の客にアレをやったら大惨事なのサ。」
タランザ「まぁ、これでいい勉強になったでしょ?大王様にお仕置きされて、少しは懲りたと思うのね。」
マホロア「ボクは悪くないヨォ!大王が短気なんダ!」
そう言って怒るマホロアだが…
アイシェ「マホロア…喜ばせたいのは分かるけど、やり過ぎて怪我させちゃったらテーマパーク所じゃなくなっちゃうよ。」
マホロア「ウゥ……!!」
アイシェに指摘されたマホロアは、耳をペタンと垂らして落ち込みつつも反省し…彼女にたんこぶを撫でて貰った。
これに懲りて加減を覚える様になったのは、また別の話である。
To be continued…