小説「夢結ぶ星りんご」~初めてのお買い物~

翌朝、2人で朝ご飯を食べた後にマホロアが確認すると、目的の星に到着する寸前だった。

マホロア「アイシェ、もうすぐ着くヨ。」

アイシェ「ふふっ、どんな所かな?」

マホロア「ボクは何回か訪れたコトがあるケド、コノ星は色んなお店が並ぶ場所なんダ。」

アイシェ「お祭りの屋台みたいだね。」

マホロア「ケド屋台と違っテ、建物は無いんだヨ。」

アイシェ「えっ?」

マホロア「実際に見て貰えば分かるヨォ。」

そんな会話をしている間にローアは星に到着し、期待に胸を膨らませながらアイシェは降りた。

少し歩いて行くと、目の前に広がっていたのは色んな商人達が地面にシートを敷いて、様々な商品を並べて売っている光景だった。

アイシェ「これがお店…?」

マホロア「ココでは商人達がこんな風にシートの上に商品を並べて売る「露店」が盛んな星なんダヨ。」

アイシェ「露店…みんな楽しそうにお買い物してるね。」

マホロア「商人達が選んだ一級品ばかりが並んでいるカラネ。…中には「ぼったくり」もいるカラ気をつけないとダケド。」

ちょっとだけ渋い顔をしながらマホロアがそう言うが、アイシェはキョトンとしていて…

アイシェ「ぼったくり?」

マホロア「高い値段で売りつけるトンデモネー奴等ダヨ。ケド、ボクは引っ掛からないカラ安心してネ。」

アイシェ「ふふっ、うん。」

自信満々に言うマホロアにアイシェは少し笑ってしまったが、同時に彼なら絶対に大丈夫だという安心感もあった。

2人が露店を見ながら歩き始めると、色んな商人達が声を掛けてくる。

すると、マホロアが足を止めて…

店主「お客様、魔法を扱う御方ですね?こちらは先日仕入れたばかりの一級品、是非とも手に取って見て下さい!」

マホロア「ン、珍しいのがあるネェ…。」

そう言うと、並べられている枯れ草の様な物を手に取って眺め始めた。

アイシェ「マホロア、それは?」

マホロア「魔法の研究に使う材料ダヨ、珍しい材料がこんなにたくさんあるなんてネェ?」

そう言いながら、マホロアは自身の魔力を使いながら品定めをしている

アイシェには枯れ草の様にしか見えないが、マホロアは真剣な表情で見ていて…しばらく終わりそうに無い。

少し退屈してしまったアイシェがキョロキョロと辺りを見渡すと、少し先に服を売っている露店を見つけた。

アイシェ「マホロア、あの服屋さんを見てくるね。」

マホロア「ン~、イイヨ。」

品定めに夢中なマホロアは生返事だったが、アイシェは気にせずに服屋へ向かうと…

服屋「いらっしゃい、これは可愛らしいお客様ですねぇ。」

アイシェ「あ…えと…ありがとうございます…。」

少し恥ずかしがりつつも答えると、服屋は優しい笑みを浮かべる

服屋「服をお探しですかな?」

アイシェ「えっと…欲しいというか…気になって…。」

服屋「どうぞ、好きなだけご覧下さい!」

そう言ってニコニコしながら言う服屋に、アイシェはまだ少し緊張しつつも見始めた。

並べられている服はどれも不思議な衣装ばかりで、アイシェの興味を誘う…

すると、奥に飾られていた服が目に止まった。

首元に黒と紅色のリボンが付いたノースリーブの白シャツには、飾りボタンとフリルレースが付いている。

胸元はハートカット、腰元はコルセット風で金のボタンと黒い紐リボンが付いているワンピースはシャツと一体になったデザインの様だ。

スカート部分の両端には紅色の生地が挟まれていて黒い紐リボンがデザインされており、スカートの裾は白いフリルレースがあしらわれている。

今まで着た事の無い色合いとデザインに、アイシェは青い瞳を輝かせて見ていて…

アイシェ「素敵…。」

ポツリとそう呟いたアイシェに、店主は嬉しそうにしながら口を開いた。

店主「その服がお気に召しましたかな?」

アイシェ「はい、あっ…でも私、お金を持って無くて…。」

店主「えっ?」

アイシェ「その…一緒に来てる彼が持ってるので、お願いしてみます…。」

頬を真っ赤にして、気まずそうに青い瞳を伏せてしまったアイシェだが、店主はニコニコしていて…

店主「そうでしたか、その方が来てからでも大丈夫ですよ。せっかくだし、他の服も見ていって下さい!」

アイシェ「あ…ありがとうございます…!」

店主に勧められるまま、アイシェが他の服も見ていると…しばらくして、漸く買い物を終えたマホロアが大きな紙袋を持ってやって来た。

マホロア「お待たせ~アイシェ!」

アイシェ「マホロア!」

マホロア「ゴメンネェ~珍しい材料がたくさんあったカラ、ついつい見ちゃったヨォ。」

アイシェ「ううん、大丈夫。欲しいの見つかったみたいだね。」

マホロア「ウン、たくさん手に入ったヨォ~!交渉シテ安く買えたしネ。」

アイシェ「ふふっ、よかったね。」

交渉とマホロアは言うが…実際の所は得意の話術で上手く言い包めて、半ば強引な値切りをさせたのだが…アイシェは全然気づいていない。

マホロア「ところでアイシェ、何か欲しいのカナ?」

アイシェ「あのね、この服が欲しいの。」

ソウ言うとアイシェは、さっき一目惚れした服を見せた。

マホロア「ワォ、アイシェが持ってない色で素敵ダネェ!イイヨ~買ってアゲル!」

アイシェ「ありがとうマホロア!」

ご機嫌なマホロアはワンピースを購入して、アイシェは丁寧に包装された袋を大喜びで受け取った。

店主「ありがとうございました!」

笑顔で見送る店主に手を振り、アイシェはマホロアと共に再び露店を歩き出した。

途中で食べ物を買い、2人で分け合って食べたり…美しい景色を眺めたり…

すっかり満喫した2人はローアに戻り、マホロアは次の目的地を設定した後にアイシェと共に眠りについた。

To be continued…