小説「夢結ぶ星りんご」~ローアの故障~

お仕置きを終えて、アイシェを抱き上げつつソファで寛いでいたマホロアだったが…

ガタンッ!!

突然船内が大きく揺れた!

アイシェ「きゃあっ!」

マホロア「ローア、何が起きたノ!?」

驚くアイシェをしっかり抱きしめつつ、マホロアは操縦室へ向かってパネルを操作した。

アイシェ「マホロア、今のは…?」

マホロア「………軌道が大きく外れてるヨ!!」

アイシェ「えっ!?」

マホロア「一体何が…実験の前に確認した時ハ、間違い無くお昼には到着予定で進んでたノニ…!」

焦りの色を隠せないマホロアが原因を探るも、手がかりを得られないままローアはどんどん進んでいく…。

すると…

ガタンッ!!

再び大きな振動が船内を襲った!

アイシェ「きゃあぁっ!」

マホロア「アイシェ!ローア、近くの星でイイカラ降りテ!!」

これ以上は危険だと判断したマホロアは、ローアにそう呼びかけながらアイシェを強く抱きしめた。

しかしローアはどんどん進んで行き…

ガタガタガタガタッ……!!

船内は大きく揺れ、マホロアは必死にアイシェを抱きしめている。

ビーッ!!ビーッ!!

警告音が鳴り響き、スクリーンには歯車が外れていく様子が映し出された!

アイシェ「マホロア、歯車が!」

マホロア「まさか、今の衝撃デ!?」

そう思ったのも束の間、眩い光がローアを包み…2人は目を瞑った!

少しして、ゆっくりと目を開けると…

ローアはゆっくりと降りて…大きな岩山の影に不時着した。

アイシェ「どこかの星に…着いた…の…?」

マホロア「目的の星じゃないケド…とりあえず状況を確認シテ…。」

パネルを操作して調べるマホロアをじっと見守るアイシェ…しかし彼の表情は段々と曇っていき…しばらくして一通り状況を確認したが、その表情は険しい。

アイシェ「マホロア…ここは…どこ?」

マホロア「…元の世界ト違う所に迷い込んだみたいなんダ…。」

アイシェ「えっ…?」

マホロア「何かしらの原因で時空に裂け目が起きテ、ローアがそれに吸い込まれた…ッテ言えばイイのカナ…しかも、歯車が3つも外れてドコかに飛んでっちゃってるヨォ…。」

アイシェ「それじゃあ…歯車を見つけないと、ローアは飛べないんだね…。」

マホロア「ウン…。」

2人の間に沈黙が流れた……楽しいはずの旅行が、思わぬトラブルでこんな事になったのだから当然だ。

しかし…その沈黙を破ったのはアイシェだった。

アイシェ「…え…………うん…分かった。」

マホロア「アイシェ…?」

アイシェ「マホロア、ローアが教えてくれたの…時空の裂け目とは違う、何かの強い力に引き寄せられたって。歯車さえ見つかれば元に戻るって言ってるよ。」

マホロア「ローア…!」

アイシェ「探そう、マホロア!私も一緒に居るから、ね?」

そう言ってそっとマホロアの手を取って見つめるアイシェの瞳は優しくて…絶望していたマホロアの心に明かりを灯した。

マホロア「アイシェ…アリガトウ…!」

希望を見い出せたマホロアは大きめのショルダーバッグを取り出し、そこに入るだけの薬や食料、水や外套を詰め込んだ

その後2人はローアから降りて、マホロアが強力な魔法陣でローアを包んだ。

アイシェ「これでローアは安全だね。」

マホロア「少なくとも、ボク達以外は誰も近づけ無いヨ。とりあえず遠くに見えてるアノ町を目指ソウ。」

アイシェ「うん。」

しばらく荒野を歩いた2人は、漸く町に辿り着いたが…

マホロア「…何だか寂れた場所ダネェ…。」

アイシェ「植物も枯れてる…一体何が…。」

そんな話をしていたその時!

商人「ごほっ…ごほっ…うぅ…!」

少し離れた場所で、苦しそうに咳き込む商人の姿が!

アイシェ「大丈夫ですか?」

心配したアイシェが声をかけると…

商人「み…水…水が欲しい…!」

アイシェ「どうぞ、飲んで下さい。」

マホロア「アイシェ、罠カモしれないヨ。」

アイシェ「こんなに苦しんでるのに、放っておけないよ。」

マホロアの制止も聞かず、アイシェは自分のウエストポーチに入れていた水のボトルを商人に手渡した。

ゴクゴクゴク…!

商人「ぷはぁ…あぁ…はぁ…助かりました…ありがとうございます…!」

アイシェ「どういたしまして、あの…ここは一体?」

商人「この町は、元は緑豊かな町だったんですが…酷い日照りの影響で水が枯れてしまいましてね…深刻な水不足なんですよ…。」

アイシェ「そんな事に…!」

マホロア「他の場所カラ、水は汲んで来れないのカイ?」

商人「水を汲みに行くだけで、数日はかかるんです…なので町の人々は少ない水を分け合って耐えているのです…。お2人は旅人ですよね?悪い事は言いません、すぐにこの町から離れた方がいい…ここが滅びるのも時間の問題ですよ…。」

そう話している内に…大きなエンジン音と影がかかり、見上げると小型飛行機が二機、町の外れに降りていった。

マホロア「ン、何かあるのカナ?」

商人「水を補給しに行った人達が帰って来たんですね、また分け合って1週間は持たせないと…では私はこれで。」

そう言うと、商人は外れの方へと歩いて行ってしまった…。

アイシェ「水不足…何とかしてあげられたらいいのに…。」

マホロア「思いっきり雨が降れば違うんだろうケドネェ。」

心配するアイシェとは対象的に、マホロアは興味が無さそうな様子で…少しでも歯車の手掛かりが無いかと周りをキョロキョロしていた。

しばらくして、外れの方にいた人だかりは消え…置かれている飛行機の手入れをしている人影に近づいた2人は、心底驚いた顔をした!

アイシェ「カービィ、バンワドくん、大王さま、メタさん!」

マホロア「ミンナ、何でココに…イヤ、それよりも大変ダヨ!」

しかし振り返ったカービィ達はキョトンとしていて…

カービィ「キミ達は…誰?」

バンワド「旅人さんかな?」

デデデ「見た事ねぇ姿だが…何で俺様達を知ってるんだ?」

メタナイト「もしや…水を狙う賊か?」

そう言ってメタナイトは戦闘態勢に入ったが…いつものギャラクシアは持っておらず、赤い薔薇を持っている。

それに、よく見るとみんなの格好も違っていて…

アイシェ「マホロア…もしかして…。」

マホロア「ウン、ボク達の世界とは違う…コノ世界のミンナなんダネ…。」

カービィ「えっ…どういう事??」

表情を曇らせてしまったマホロアとアイシェの耳はペタンと垂れていて…カービィは青い瞳をぱちぱちさせながら不思議そうに見ているのだった。

To be continued…